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馬の減胎のための胎児胸郭圧迫法

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馬という動物は、双子を分娩すると、その両方が死産や奇形、発達障害を起こしてしまうリスクが高いことから、二頭の胎児を妊娠(双胎妊娠)してしまった場合には、減胎処置(Reduction of twin-pregnancy)を施すことによって、一頭の胎児のみの妊娠にさせることが重要となります。通常は、着床前(妊娠16日目まで)に片方の胚胞を直腸壁越しに手指で潰すことで、低侵襲性かつ高確率(>90%)で減胎できますが[1]、その時期を逃して、二頭の両方が着床してしまうと、減胎処置の難易度が上がってしまう、という問題があります。

そこで、下記の研究では、オランダのユトレヒト大学の獣医病院にて(2020〜2022年)、双胎妊娠した16頭の牝馬(妊娠期間は51〜79日)に対して、エコー誘導を用いながら、直腸壁を介した胎児の胸郭圧迫法(Fetal thorax compression)が実施され、その後の繁殖成績が評価されました。

参考文献:
Arnold LC, Stout TAE, Claes ANJ. Ultrasound-guided fetal thorax compression to reduce post-fixation twins in the mare. Equine Vet J. 2024 Jan 24. doi: 10.1111/evj.14060. Online ahead of print.

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一般的に、二頭の胎児が着床してしまった後に減胎させる手法として、経腟エコー誘導での胎児穿刺や卵黄嚢吸引(成功率:33〜49%)[2,3]、臍帯/胎児の振動法(成功率:4/5頭)[4]、および、胎児の頚椎脱臼法(成功率:63%)[5]などが挙げられます。また、直腸壁越しに、盲目的に胎児の胸郭を圧迫する手法[6]も報告されていますが、成功率は明らかにされていませんでした。

この研究の手法では、減胎処置の対象となる胎児をエコー画像で視認した後、プローブを用いて胎児に外側及び下方向への圧迫を加えることで、周囲の液体から胎児を分離させて、エコープローブと骨盤縁(もしくは腹壁)で挟みつけるように胎児が固定されました。上写真では、左→右の順に、胎児の周囲の液体を徐々に減退させながら、プローブと骨盤縁のあいだに胎児を挟み込んでいく過程を示しています。なお、二つの胎児の両方が、片方の子宮角に着床している場合には(片側双胎妊娠)、子宮角の先端に近いほうの胎児を対象として減胎処置が実施されました。一方、二つの胎児が、左右別々の子宮角に着床している場合には(両側双胎妊娠)、用手操作しやすいほうの胎児を対象として減胎処置が実施されました。

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その後、胎児の心臓の動きが視認できるようプローブ角度を調整してから、そのままエコープローブを用いて胎児を骨盤縁(もしくは腹壁)に押し付けることで胸郭を圧迫して、心拍数が1回/分まで下がるか、完全に心停止するまで胸郭圧迫を続けました。この際、圧迫時間は1〜5分間であり、必要とされた圧迫処置の回数は最多で五回となっていました。上写真では、エコープローブと骨盤縁のあいだに固定された胎児の心臓(青い部位)を視認しながら、プローブを用いて胸郭圧迫している様子を示しています。

結果としては、エコー誘導での胎児胸郭圧迫法では、減胎処置の成功率は56%(9/16頭)となっていました(退院時に片方の胎児のみが生存していた場合を成功と定義)。このうち、二卵性の双胎妊娠では、減胎の成功率は90%(9/10頭)でしたが、これらの成功例のうち二頭は流産したため、出産率は70%(7/10頭)となっていました。さらに、二卵性の双胎妊娠のうち、片側双胎妊娠での成功率は8/8頭で、両側双胎妊娠での成功率は1/2頭でした。一方で、一卵性の双胎妊娠では、胸郭圧迫の24時間以内に、両方の胎児が死亡したため、減胎の成功率は0%(0/6頭)となっていました(当然ながら出産率も0%)。

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この研究で試みられたエコー誘導での胎児の胸郭圧迫では、子宮壁を穿刺するような侵襲性が無く(卵黄嚢の漏出のリスクが無い)、処置した胎児のミイラ化が迅速に進むため(無処置の胎児への胎盤からの血液供給が維持される)、高い成功率が達成されたと考察されています。また、この手法の利点としては、通常の直検用エコー機器さえあれば実施できること(経腟エコーや穿刺針、吸引装置などは不要)、片側双胎妊娠の症例でも、一方の胎児のみを減胎処置できること、および、処置による心停止をエコー画像上で確実に視認できること、などが挙げられています。

この研究では、エコー誘導での胎児の胸郭圧迫により心停止が達成されるまでに、複数回の処置を要した症例が八割に及んでおり、その結果、数日間の入院を要するというデメリットが指摘されています。また、胸郭圧迫の際には、胎児の周囲の液体を十分に取り除けていないと、プローブで圧迫する過程で、胎児が滑り出てしまう危険性が高くなるため、ある程度の手技の熟練を要する手法であると述べられています。その一方で、過去の報告にある盲目的に胸郭圧迫する手法[6]に比較すると、獣医師が用手で胎児を掴む必要が無いため、母馬の直腸壁へのダメージが小さくて済むという利点が挙げられています。

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Photo courtesy of Equine Vet J. 2024 Jan 24. doi: 10.1111/evj.14060.

参考文献:
[1] McKinnon A. Twin reduction techniques. In: Samper JC, Pycock JF, McKinnon AO, editors. Current therapy in equine reproduction. St. Louis, MO: Saunders; 2007. p. 357-373.
[2] Journee SL, de Ruijter-Villani M, Hendriks WK, et al. Efficacy of transvaginal ultrasound-guided twin reduction in the mare by embryonic or fetal stabbing compared with yolk sac or allantoic fluid aspiration. Theriogenology. 2013 Sep 1;80(4):346-9.
[3] Klewitz J, Krekeler N, Ortgies F, et al. Evaluation of pregnancy and foaling rates after reduction of twin pregnancy via transvaginal ultrasound-guided aspiration in mares. J Am Vet Med Assoc. 2013 Feb 15;242(4):527-32.
[4] Beavers K, Burden C, McKinnon A. Management of twin pregnancies by umbilical and fetal oscillation in the mare. Clin Theriogenol. 2017;9(3):468.
[5] Tan DK, Krekeler N. Success rates of various techniques for reduction of twin pregnancy in mares. J Am Vet Med Assoc. 2014 Jul 1;245(1):70-8.
[6] McCue PM. Twin reduction: thoracic compression. In: Dascanio J, McCue P, editors. Equine reproductive procedures. Hoboken, NJ: John Wiley & Sons; 2021. p. 307-308.

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馬の負重性蹄葉炎における炎症反応

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馬が重度疼痛を呈する運動器疾患を起こした時には(骨折、滑膜感染、蹄底膿瘍など)、対側肢に持続的な体重負荷を生じて、負重性蹄葉炎(Support limb laminitis)を続発することが知られています。この際には、蹄機作用の減退や、蹄上皮組織での物理的牽引に起因して、蹄葉組織の虚血を引き起こすことが主要な病因であると仮説されています[1,2]。

そこで、下記の研究では、負重性蹄葉炎の病態を解明するため、13頭の健常な実験を用いて、片方の前肢に特殊な蹄鉄を装着させて体重支持不可とさせてから、92時間後に蹄葉組織を採取して(跛行前肢、対側前肢、同側後肢、斜対後肢)、炎症系シグナルに関連する蛋白質の発現量や遺伝子活性が測定されました。

参考文献:
Burns TA, Watts MR, Belknap JK, van Eps AW. Digital lamellar inflammatory signaling in an experimental model of equine preferential weight bearing. J Vet Intern Med. 2023 Mar;37(2):681-688.

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結果としては、跛行肢での体重支持が不可となった92時間後において、対側前肢の蹄葉組織では(実験的に作成した跛行前肢の反対側の肢)、IL-6及びCOX-2の遺伝子活性が有意に増加していましたが(斜対後肢の蹄葉組織や対照臓器を比較対象とした場合)、IL-1beta、IL-10、COX-1の遺伝子活性は変化していませんでした。また、対側前肢の蹄葉組織における、活性型STAT1及びSTAT3蛋白質の発現量も有意に増加していることが分かりました(同側後肢の蹄葉組織や対照臓器を比較対象とした場合)。

このため、跛行肢の対側肢の蹄葉組織において、炎症促進性サイトカインとその関連因子が活性増加していたことから(IL-6、COX-2、STAT1/3)、馬の負重性蹄葉炎においては、蹄葉組織の虚血だけではなく、炎症反応の伝達経路が関与していることが示唆されました(一次的もしくは二次的に)。ただ、同様の変化は、敗血症関連性の蹄葉炎[3,4]、および、高インスリン血症関連性の蹄葉炎[5]でも認められていることから、蹄葉組織での「古典的な」炎症反応に起因している可能性もある、と考察されています。近年では、上述のような炎症反応そのものは、蹄葉炎の直接的な原因というよりも、蹄葉角化細胞の機能不全や癒着障害から生じる変化であり、蹄葉炎の結果であるという知見も示されています[6]。

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過去の文献では、インターロイキン(IL)-17Aという非感染性炎症の介在物質が、自然発症および実験的な蹄葉炎の急性期や慢性期の病態に関与していることが示唆されており[7,8]、薬理的または遺伝子学的にIL-17Aを抑制する治療法が、馬の蹄葉炎に有用である可能性が指摘されています(既にヒト医療での乾癬で検証されている)。また、蹄葉炎の罹患蹄では、蹄葉組織の物理的牽引を生じて、別の炎症系経路(JAK-STATシグナル)が活性化されることが知られており[9]、ヤヌスキナーゼ(JAK)を抑制する小分子阻害剤(ヒト医療や獣医療で市販開始された薬剤)[10]によって、蹄葉組織の防護作用を得られるという仮説も成されています。

他の文献では、蹄葉組織の物理的牽引に関連して、角化細胞を牽引したときに活性化される上皮成長因子(EGF)[11]という物質が、過剰な体重負荷に起因する蹄葉炎(負重性蹄葉炎)の発症にも関与していると推測されています。また、他細胞の物理的牽引時に活性増加するインスリン様成長因子(IGF-1)[12]という成分が、三種類の実験的な蹄葉炎での蹄葉上皮組織でも、ダウンストリームにて活性化していることが分かっています。そう考えると、これらの成長因子の活性化が、蹄葉炎の病態解明や新治療法の確立に繋がると予測されます。また、このような活性化が、蹄葉炎の発症機序の相違に関わらず起こっていることを鑑みると(敗血症関連性/高インスリン血症例関連性/負重性の蹄葉炎)、全ての種類の蹄葉炎に対して、同一もしくは類似の治療方針が奏功する可能性も否定できないと言えそうです。

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参考文献:
[1] Medina-Torres CE, Underwood C, Pollitt CC, et al. The effect of weightbearing and limb load cycling on equine lamellar perfusion and energy metabolism measured using tissue microdialysis. Equine Vet J. 2016 Jan;48(1):114-9.
[2] Medina-Torres CE, Pollitt CC, Underwood C, et al. Equine lamellar energy metabolism studied using tissue microdialysis. Vet J. 2014 Sep;201(3):275-82.
[3] Leise BS, Faleiros RR, Watts M, et al. Laminar inflammatory gene expression in the carbohydrate overload model of equine laminitis. Equine Vet J. 2011 Jan;43(1):54-61.
[4] Leise BS, Watts M, Tanhoff E, et al. Laminar regulation of STAT1 and STAT3 in black walnut extract and carbohydrate overload induced models of laminitis. J Vet Intern Med. 2012 Jul-Aug;26(4):996-1004.
[5] Burns TA, Watts MR, Weber PS, et al. Laminar inflammatory events in lean and obese ponies subjected to high carbohydrate feeding: Implications for pasture-associated laminitis. Equine Vet J. 2015 Jul;47(4):489-93.
[6] van Eps AW, Burns TA. Are There Shared Mechanisms in the Pathophysiology of Different Clinical Forms of Laminitis and What Are the Implications for Prevention and Treatment? Vet Clin North Am Equine Pract. 2019 Aug;35(2):379-398.
[7] Cassimeris L, Engiles JB, Galantino-Homer H. Interleukin-17A pathway target genes are upregulated in Equus caballus supporting limb laminitis. PLoS One. 2020 Dec 10;15(12):e0232920.
[8] Cassimeris L, Armstrong C, Burger QC, et al. Continuous digital hypothermia reduces expression of keratin 17 and 1L-17A inflammatory pathway mediators in equine laminitis induced by hyperinsulinemia. Vet Immunol Immunopathol. 2021 Nov;241:110326.
[9] Pan J, Fukuda K, Saito M, et al. Mechanical stretch activates the JAK/STAT pathway in rat cardiomyocytes. Circ Res. 1999 May 28;84(10):1127-36.
[10] Machida T, Nishida K, Nasu Y, et al. Inhibitory effect of JAK inhibitor on mechanical stress-induced protease expression by human articular chondrocytes. Inflamm Res. 2017 Nov;66(11):999-1009.
[11] Yano S, Komine M, Fujimoto M, et al. Mechanical stretching in vitro regulates signal transduction pathways and cellular proliferation in human epidermal keratinocytes. J Invest Dermatol. 2004 Mar;122(3):783-90.
[12] Honsho S, Nishikawa S, Amano K, et al. Pressure-mediated hypertrophy and mechanical stretch induces IL-1 release and subsequent IGF-1 generation to maintain compensative hypertrophy by affecting Akt and JNK pathways. Circ Res. 2009 Nov 20;105(11):1149-58.

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馬の文献:軟骨下骨嚢胞(Kold et al. 1984)

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「馬の大腿骨内顆の軟骨下骨嚢胞の治療のための海綿骨移植」
Kold SE, Hickman J. Use of an autogenous cancellous bone graft in the treatment of subchondral bone cysts in the medial femoral condyle of the horse. Equine Vet J. 1983 Oct;15(4):312-6.
Kold SE, Hickman J. Results of treatment of subchondral bone cysts in the medial condyle of the equine femur with an autogenous cancellous bone graft. Equine Vet J. 1984 Sep;16(5):414-8.

この症例論文では、馬の軟骨下骨嚢胞に対する外科的療法の手法を確立させるため、大腿骨内顆に軟骨下骨嚢胞を発症した十頭の症例馬に対して、関節切開術にて嚢胞腔の掻爬処置を施した後、寛結節(腰角)から採取した海綿骨を嚢胞腔に充填するという自家移植治療が実施されました。

結果としては、海綿骨移植が適用された十頭のうち八頭で、臨床的な治癒が達成されたことが報告されており、大腿骨の内顆における軟骨下骨嚢胞に対する治療法として有用であると結論付けられています。この研究は、1980年代のもので、骨嚢胞への外科的治療が一般的ではなかった時代の報告であるため、無治療群や陰性対照群(嚢胞の掻爬のみ行なって、海綿骨移植を行なわない群)が設定されていないという、研究デザインにおける限界点が指摘されています。

一般的に、馬の軟骨下骨嚢胞の外科的療法では、嚢胞腔が健常な骨で再充填されることよりも、嚢胞と関節腔とが連絡している箇所の関節軟骨が再生して、体重負荷や関節面滑走の機能を回復させることが重要であると推測されます。しかし、海綿骨の移植では、掻爬術創での骨増生をする作用が主であるため、軟骨再生の促進作用を付与する療法も検討されるべきと考えられます。また、関節切開術よりも侵襲性の低い、関節鏡を介した術式も評価されるべきだと言えます。

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馬の飼養管理方針と眼科病との関連性

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馬の眼科病のなかには、角膜潰瘍や角膜実質膿瘍(Corneal ulceration and abscess)など、疼痛が強く、難治性の疾患も多いことから、未然に予防措置を講じることが重要となってきます。ここでは、馬の飼養管理方針と眼科病との関連性を調査した知見を紹介します。下記の研究では、米国のカリフォルニア州北部にて、馬飼養管理者に対する聞き取り調査が行なわれ、446頭の馬における飼養管理法と、発症していた眼科病のデータが解析されました。

参考文献:
Ludwig C, Barr E, Gilger BC. Relationship between stable management practices and ocular disease in horses. Equine Vet Edu. March 4th, 2024. doi.org/10.1111/eve.13963. Online ahead of print.

この研究では、調査対象となった446症例における眼科病(有病率)としては、角膜潰瘍(37%)が最も多く、次いで、ブドウ膜炎(15%)、免疫関連性角膜炎(3%)、結膜炎(3%)、眼周囲扁平上皮癌(3%)、白内障(2%)、真菌性角膜疾患(2%)、角膜穿孔(2%)などが含まれました(複数回の角膜潰瘍を発症していた症例は10%)。また、角膜潰瘍以外の眼科病を一括にすると、その有病率は32%となっていました。

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この研究では、飼養形態の違いによって角膜潰瘍の有病率を比較すると、放牧飼いのみの馬(306頭)では34%に留まったのに対して、放牧飼いと厩舎飼いを併用している馬(134頭)では43%に上っており、放牧飼いのみの飼養形態では角膜潰瘍の有病率が有意に低いことが分かりました。一方、厩舎飼いのみの馬は六頭のみであり、角膜潰瘍の有病率は0%となっていました。

このように、放牧飼いの飼養形態が、角膜潰瘍の発症リスクを下げる要因としては、厩舎飼いの場合に比べて、角膜の外傷を起こしにくいことや、ホコリや粉塵による眼組織への病原体の侵入が少ないことが挙げられています。過去の文献でも、厩舎飼いされている馬のほうが、眼組織が真菌に曝露される度合いが大きいことが報告されています[1]。ただ、厩舎飼いの馬に比較して、放牧飼いのみの馬では、眼科病の徴候を視認しにくいケースも多いため、軽症の角膜潰瘍が見逃されてしまった可能性もあると考察されています。

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この研究では、蠅除けマスクの装着の有無によって複数回の角膜潰瘍の有病率を比較すると、装着させていない馬(124頭)では4%に留まったのに対して、一年中装着させている馬(54頭)では30%に達していました。このため、蠅除けマスクを一年中装着させることで、複数回の角膜潰瘍の有病率が有意に高くなることが示されました。なお、蠅除けマスクを特定の季節のみ装着させている馬(268頭)では、同有望率は9%となっており、統計的に有意な危険因子にはなっていませんでした。

同様に、この研究では、蠅除けマスクの装着度合いによって複数回の角膜潰瘍の有病率を比較すると、装着させていない馬(124頭)では、やはり4%に留まったのに対して、放牧地と馬房内の両方で装着させている馬(115頭)では17%に及んでいました。このため、蠅除けマスクを放牧地と馬房内の両方で装着させている馬では、複数回の角膜潰瘍の有病率が有意に高いことが示唆されました。一方で、蠅除けマスクを放牧地のみで装着させている馬(207頭)では、同有望率は9%となっており、統計的に有意な危険因子ではありませんでした。

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このように、蠅除けマスクを装着させている馬においては、複数回の角膜損傷を起こした割合は高かったものの、角膜潰瘍の有病率そのものは増加していなかったことから、マスク自体が角膜潰瘍の原因にはなった訳ではないと考察されています。むしろ、今回の研究結果では、角膜潰瘍を何度も発症するような馬に対して、目を防御する目的で蠅除けマスクが装着されていたことを反映したデータであったと結論付けられています。過去の文献でも、蠅除けマスクにより眼組織の外傷を防げることが報告されており[2]、今回の研究でも、眼科病を頻発する馬においては(眼球が突出している顔付きの馬、不注意な馬、視力が不自由な馬など)、積極的に蠅除けマスクを着けて、角膜を保護することが推奨されています。

この研究では、通常の乾草を給餌されている馬に比べて、細断された乾草を給餌されている馬では、角膜潰瘍の有病率が有意に高いことが分かりました。この要因としては、丈の短い乾草片そのものが病因になった訳ではなく、乾草の細断を要するような高齢馬においては、角膜上皮の再生能力が低かったり、クッシング病に起因する角膜の触覚減少があったことで、角膜潰瘍を起こし易かったという可能性が指摘されています[3,4]。また、細断された乾草は、飼い桶での給餌を要するため、眼球を飼い桶の縁などに衝突させ易かったことも、危険因子の一つとして挙げられています。

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参考文献:
[1] Utter, M., Davidson, E. & Wotman, K. (2009) Clinical features and outcomes of severe ulcerative keratitis with medical and surgical management in 41 horses (2000–2006). Equine Veterinary Education, 21, 321–327.
[2] Plummer, C.E. (2005) Equine eyelid disease. Clinical Techniques in Equine Practice, 4, 95–105.
[3] Ireland, J.L., McGowan, C.M., Clegg, P.D., Chandler, K.J. & Pinchbeck, G.L. (2012) A survey of health care and disease in geriatric horses aged 30 years or older. The Veterinary Journal, 192, 57–64.
[4] Knickelbein, K.E., Scherrer, N.M. & Lassaline, M. (2018) Corneal sensitivity and tear production in 108 horses with ocular disease. Veterinary Ophthalmology, 21, 76–81.


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馬の胃潰瘍発症と胃粘膜治癒における唾液マーカー

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馬における胃潰瘍症候群(Equine gastric ulcer syndrome)は、有病率の高い消化器疾患であることが知られていますが、特異的な臨床症状に乏しいことから、確定診断のためには内視鏡検査を要します。しかし、胃の内視鏡では、長時間の絶食を要するなど、煩雑さと馬体の負担が大きいという問題があります。ここでは、唾液バイオマーカーによる胃潰瘍の診断、および、薬物療法による胃粘膜治癒の経過評価を試みた知見を紹介します。

下記の研究では、九頭の胃潰瘍の発症馬から唾液サンプルの採取して、二種類の電気泳動やELISAでの成分解析を行ない、その後、オメプラゾール投与による胃粘膜治癒の過程において、同様な唾液分析が実施されました。また、これらの採材と解析は、九頭の健常な対照馬でも実施され、測定値が比較されました。

参考文献:
Lopez-Martinez MJ, Lamy E, Ceron JJ, Ayala I, Contreras-Aguilar MD, Henriksen IH, Munoz-Prieto A, Hansen S. Changes in the saliva proteome analysed by gel-proteomics in horses diagnosed with equine gastric ulcer syndrome (EGUS) at diagnosis and after successful treatment. Res Vet Sci. 2024 Feb;167:105112.

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結果としては、胃潰瘍の発症馬では、対照馬に比較して、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、トリオースリン酸異性化酵素、ケラチン、及び、免疫グロブリンヘビーコンスタントミューなどの蛋白質が増加している一方で、炭酸脱水酵素(CA)、アルブミン/プロラクチン誘導性蛋白質などが減少していました。これらの変化は、免疫機能の活性化、胃の防御機構の低下、炎症反応の存在など、胃潰瘍の発症に関与する幾つかの病態生理学的な機構を示唆するものとなっていました。また、胃潰瘍の発症馬において、オメプラゾール投与によって胃粘膜が治癒した後には、チオレドキシン(TRX)の発現レベルが有意に低下していました。

このため、馬の胃潰瘍においては、唾液中にある特定の蛋白質を定量することで、推定診断のためのバイオマーカーとして有用であると推測されました。さらに、胃酸抑制剤での治療後にTRXの発現低下を確認することで、胃粘膜の治癒を客観的に評価できるのみならず、診断的治療のための指標の一つになりうると考えられました。近年の研究では、胃潰瘍の発症馬でADA活性が増加しているという所見や[1]、ADA活性が正常範囲内の馬では、胃潰瘍の発症が無いことが報告されており[2]、今回の研究と同様に、馬の胃潰瘍のバイオマーカーとして有用であると考えられています。

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この研究では、胃潰瘍の発症馬でCA活性の増加が認められた一方で、ヒトの潰瘍性大腸炎では、CA活性が低下しているという知見もあります[3]。しかし、哺乳類の胃粘膜にはCAが豊富で、胃酸の分泌機能に寄与したり、胃粘膜の保護作用を果たすことに加えて、潰瘍原性物質が胃粘膜のCA蛋白量を減少させるという可能性も示唆されています[4]。また、ヒト医療では、消化管出血において漏出性の低アルブミン血症を伴ったり[5]、消化管の炎症病態でプロラクチン減少を生じることから[6]、今回の研究での胃潰瘍の発症馬において、アルブミン/プロラクチン誘導性蛋白質が減少していた事象も、同様な機序が関与していたためと考察されています。

この研究では、馬の胃潰瘍における胃粘膜治癒のマーカーとして、TRXの発現低下が有用であることが示されました。過去の文献では、TRXが酸化還元状態を調節したり、酸化ストレスが誘発する細胞/組織損傷に対する保護効果を有することが示されています[7]。このため、胃粘膜の治癒モニタリングの指標としてのTRXの有用性を評価するため、他の動物種を含む大規模な研究が行われるべきであると考察されています。特に、TRXの測定では、短時間で実施できるELISAが使用できるため、臨床検査の一つとして汎用性が高くなると推測されています。

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参考文献:
[1] Contreras-Aguilar MD, Rubio CP, Gonzalez-Arostegui LG, et al. Changes in Oxidative Status Biomarkers in Saliva and Serum in the Equine Gastric Ulcer Syndrome and Colic of Intestinal Aetiology: A Pilot Study. Animals (Basel). 2022 Mar 7;12(5):667.
[2] Munoz-Prieto A, Contreras-Aguilar MD, Ceron JJ, et al. Changes in Proteins in Saliva and Serum in Equine Gastric Ulcer Syndrome Using a Proteomic Approach. Animals (Basel). 2022 May 2;12(9):1169.
[3] Fonti R, Latella G, Caprilli R, et al. Carbonic anhydrase I reduction in colonic mucosa of patients with active ulcerative colitis. Dig Dis Sci. 1998 Sep;43(9):2086-92.
[4] Kivilaakso E. Inhibition of gastric mucosal carbonic anhydrase by taurocholic acid and other ulcerogenic agents. Am J Surg. 1982 Nov;144(5):554-7.
[5] Tung CF, Chow WK, Chang CS, et al. The prevalence and significance of hypoalbuminemia in non-variceal upper gastrointestinal bleeding. Hepatogastroenterology. 2007 Jun;54(76):1153-6.
[6] Negm FF, Soliman DR, Ahmed ES, et al. Assessment of serum zinc, selenium, and prolactin concentrations in critically ill children. Pediatric Health Med Ther. 2016 Apr 4;7:17-23.
[7] Taketani Y, Kinugasa K, Kitajima R, et al. Protective effects of oral administration of yeast thioredoxin against gastric mucosal injury. Biosci Biotechnol Biochem. 2014;78(7):1221-30.

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馬のパーグ治療における関節組織の異物反応

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馬の跛行の原因としては、最も多いのが変性関節疾患であることが知られており、その治療法として注目されるのがパーグ関節注射法(PAAG: Polyacrylamide hydrogel)になります。パーグという物質は、オムツ、コンタクトレンズ、美容整形の充填材などに用いられており、近年では、馬の関節炎に対しても、合成潤滑剤として投与されています[1,2]。

そこで、下記の研究では、パーグ治療における関節組織での異物反応を検証するため、10頭の健常な実験馬を用いて、球節および中間手根関節に対して2.5%PAAG製剤が注射されて(一つの関節あたり50〜100mg)、臨床所見、滑液検査、および、剖検・組織学的検査・電子顕微鏡検査が実施されました。

参考文献:
Lowe J, Clifford L, Julian A, Koene M. Histologic and cytologic changes in normal equine joints after injection with 2.5% injectable polyacrylamide hydrogel reveal low-level macrophage-driven foreign body response. J Am Vet Med Assoc. 2024 Feb 21:1-9. doi: 10.2460/javma.23.10.0553. Online ahead of print.

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結果としては、対照群の関節組織に比較して、PAAG注射された関節では、滑膜へのマクロファージ浸潤と、絨毛の過形成/血管新生が有意に増加しており、また、電子顕微鏡検査では、三次元足場構造に広範組織統合が生じている所見が認められました。なお、臨床症状や滑液検査、剖検での肉眼検査でも、異常所見は認められず、PAAG関節内投与による明瞭な副作用は確認されませんでした。

このため、馬のパーグ治療では、関節組織における一般的な異物反応を生じることが分かりましたが、線維化や石灰化の所見は認められませんでした。今回の研究では、推奨される投与量(一つの関節あたり2mL[50mg]の注射)の二倍までの量が検証されており、明瞭な副作用は報告されていませんでした。しかし、今回は、あくまで健常馬を用いた実験であったため、実際の関節炎の症例では、有害な炎症反応を続発するリスクは否定できないことから、今後は、臨床例を用いた検証を要すると考えられました。なお、ヒト医療では、重度の関節炎の患者に対して、最大で6mL(150mg)のPAAGが関節内注射されてきています[3]。

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この研究では、PAAG注射された関節組織では、14日目まで異物反応を生じることから、この期間は運動制限をすることが提唱されています。また、この期間では、関節包の浮腫など、一過性の軽度な炎症反応を生じることにも留意すべきである、とも述べられています。ただ、過去の文献を見ると、馬でのPAAG治療での副作用は、0.04%の発生率に留まるという知見も報告されています[1]。なお、将来的には、2.5%と4%のPAAG製剤の関節注射を、長期的な関節炎の効能に関して比較することが重要だという考察もなされています。

この研究では、PAAG投与された関節における滑膜肥厚や絨毛過形成は、ヒト医療の生物学的な素材でも一般的に認められることから[4]、PAAG注射の場合も、関節への刺激作用や抗原性に至ることはなく、感染病巣や線維化病変になる可能性も低いと考察されています。一方で、馬に対するパーグ治療は、欧州の一部の国で多数の症例に適用された結果、感染性関節炎や肉芽腫形成などの深刻な長期的な副作用が報告されていることから、この治療法の安全性に関して、更なる検証が重要であるという警鐘も鳴らされています。

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過去の文献では、馬の関節炎に対するパーグ治療では、跛行が完全に消失する割合が65 〜83%に達するのみならず、そのような関節炎の治療効果が最長で二年間も持続することが報告されています[1,2,5,6]。ただ、これらの臨床応用では、無作為割り当てやプラセボ対照群、盲検、客観的評価指標を欠くなど、研究デザインに改善点がある研究が多いと言えます。そのような研究においては、無治療でも自然治癒するような、軽度な関節炎が多数含まれていた懸念も残ります。更に、マクロファージ浸潤という現象が、滑膜炎症を続発させて、馬の関節炎を悪化させる危険性も示唆されていることから[7]、PAAG注射での異物反応が、長期的な有害作用に繋がる可能性も否定できないと考察されています。

この研究は、JAVMAという北米で有名な獣医学雑誌に掲載されており、パーグ治療が欧州の一部でのみ広く臨床応用されてきた経緯を鑑みると、政治的な意味は大きいのかもしれません。今後は、既存の関節炎の治療法との競合を見据えた企業政治的な意図を推し量りながら、パーグ治療のエビデンスに関する後追い研究を注視していくのが重要だと言えそうです。

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参考文献:
[1] Tnibar A, Schougaard H, Camitz L, et al. An international multi-centre prospective study on the efficacy of an intraarticular polyacrylamide hydrogel in horses with osteoarthritis: a 24 months follow-up. Acta Vet Scand. 2015 Apr 15;57(1):20.
[2] de Clifford LT, Lowe JN, McKellar CD, et al. A Double-Blinded Positive Control Study Comparing the Relative Efficacy of 2.5% Polyacrylamide Hydrogel (PAAG) Against Triamcinolone Acetonide (TA) And Sodium Hyaluronate (HA) in the Management of Middle Carpal Joint Lameness in Racing Thoroughbreds. J Equine Vet Sci. 2021 Dec;107:103780.
[3] Henriksen M, Beier J, Hartkopp A, et al. 3-year results from a prospective study of polyacrylamide hydrogel for knee osteoarthritis. Osteoarthritis Cartilage. 2023;31(5):682-683.
[4] Anderson JM, Rodriguez A, Chang DT. Foreign body reaction to biomaterials. Semin Immunol. 2008 Apr;20(2):86-100.
[5] de Clifford LT, Lowe JN, McKellar CD, et al. Use of a 2.5% Cross-Linked Polyacrylamide Hydrogel in the Management of Joint Lameness in a Population of Flat Racing Thoroughbreds: A Pilot Study. J Equine Vet Sci. 2019 Jun;77:57-62.
[6] Tnibar A. Intra-articular 2.5% polyacrylamide hydrogel, a new concept in the medication of equine osteoarthritis: A review. J Equine Vet Sci. 2022 Dec;119:104143.
[7] Menarim BC, Gillis KH, Oliver A, et al. Macrophage Activation in the Synovium of Healthy and Osteoarthritic Equine Joints. Front Vet Sci. 2020 Nov 26;7:568756.

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馬の安楽殺処置でのストレス反応の評価

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英語で安楽殺を意味するEuthanasiaは、ギリシャ語の「良い死(Good death)」に由来し、痛みや不安なく永眠することを指します[1]。馬の安楽殺においても、動物の利益と福祉に鑑みて、最も迅速かつ苦痛の少ない方法で安楽殺を実施することは、獣医師の責務であると提唱されています[2]。ここでは、馬の安楽殺におけるストレス反応を検証した知見を紹介します。

参考文献:
Gehlen H, Loschelder J, Merle R, Walther M. Evaluation of Stress Response under a Standard Euthanasia Protocol in Horses Using Analysis of Heart Rate Variability. Animals (Basel). 2020 Mar 13;10(3):485.

上記の研究では、ドイツのベルリン大学の獣医病院にて、諸疾患で予後不良となり、安楽殺が選択された40頭の症例馬において、安楽殺過程の三つの時点(鎮静、全身麻酔、バルビツレート注射)での心拍数変動性(Heart rate variability: HRV)および心電図が計測されました。そして、脳神経系のストレス反応の指標である、HRVの低周波(LF)と高周波(HF)の比率(LF/HF比率:交感神経迷走神経均衡)が算出されました。

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結果としては、馬の安楽殺の過程におけるLF/HF比率は、鎮静後(0.97)、全身麻酔後(0.46)、バルビツレート注射後(2.8)の時点で有意に増減していましたが(いずれも平均値)、馬が興奮様症状や呻吟声を呈した場合でも有意な変化は認められませんでした。このため、各時点において、適切な深麻酔下にて安楽殺処置が実施されており、当該馬への苦痛や不快感は生じていない、ということを再確認させるデータが示されたと言えます。

この研究では、安楽殺の要因として、消化器疾患(疝痛)と運動器疾患の症例馬が比較されており、疝痛馬を安楽殺する場合には、バルビツレート注射後に自発呼吸が戻ってくる割合が有意に高いことが分かりました。この現象は、疝痛馬での脱水や循環不全によって、安楽殺のための薬剤の作用が不安定になったためと推測されています。過去の文献では、犬の安楽殺において、バルビツレートにリドカイン投与を併用することで、呼吸反応が安定化されることが報告されており[3]、今後は、馬での検証も要すると考察されています。

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この研究では、臨床症例での検証であったため、一次疾患の種類や重篤度に応じて、安楽殺前に投与されている薬剤は多様であった、という限界点が指摘されています。しかし、疝痛症例を例に挙げると、多くの馬で抗炎症剤(フルニキシン)や鎮痛剤(オピオイド)が投与されており、これらは交感神経活動を減退させることから[4]、LF/HF比率の減少に繋がり、HRVの安定化に寄与すると考察されています。

過去の文献では、簡便かつ非侵襲的に実施可能なHRV計測が、臨床症例におけるストレス反応の指標として有用であることが報告されており[5]、今後も、馬の安楽殺の経過評価に適用していく(バルビツレート注射前に、深麻酔状態が達成されているのを確認する等)ことが提唱されています。また、バルビツレート注射以外の安楽殺の手法に関しても、同計測手技により、ストレス反応が生じていないことを確認していく必要があると言えそうです。

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Photo courtesy of Animals (Basel). 2020 Mar 13;10(3):485.

参考文献:
[1] Turner TA. When All Else Fails: Alternative Methods of Euthanasia. Vet Clin North Am Equine Pract. 2021 Aug;37(2):515-519.
[2] AVMA Members of the Panel on Euthanasia. AVMA Guidelines for the Euthanasia of Animals (2020 Edition). American Veterinary Medical Association; 2020.
[3] Evans AT, Broadstone R, Stapleton J, et al. Comparison of pentobarbital alone and pentobarbital in combination with lidocaine for euthanasia of dogs. J Am Vet Med Assoc. 1993 Sep 1;203(5):664-6.
[4] Eller-Berndl D. Herzratenvariabilitat. Verlagshaus der Arzte; Vienna, Austria: 2010. pp. 142–143.
[5] Heart rate variability. Standards of measurement, physiological interpretation, and clinical use. Task Force of the European Society of Cardiology and the North American Society of Pacing and Electrophysiology. Eur Heart J. 1996 Mar;17(3):354-81.

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このエントリーのタグ: ヒトと馬 獣医療

馬の文献:軟骨下骨嚢胞(Jeffcott et al. 1982)

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「馬の膝関節骨嚢胞における臨床的及びX線画像的特徴」
Jeffcott LB, Kold SE. Clinical and radiological aspects of stifle bone cysts in the horse. Equine Vet J. 1982 Jan;14(1):40-6.

この症例論文では、馬の後膝での軟骨下骨嚢胞における病態解明のため、スウェーデンの獣医大学病院において、膝関節での骨嚢胞を呈した33頭の馬において、X線検査での所見と臨床経過との関連性が評価されました。

この研究では、後膝の骨嚢胞を二種類に分類しており、大腿骨内顆に円状又はドーム状の透過域を認めた病態(グループA)が28頭であり、その一方で、脛骨近位部や大腿骨の顆間窩辺縁部に多様な形状の透過域を認めた病態(グループB)が5頭となっていました。

この研究では、いずれのグループにおいても、膝関節の離断性骨軟骨炎の併発は見られておらず、多くが間欠的な後肢跛行を呈していました(33%の症例)。また、他の症状としては、臀部筋萎縮(33%)、後膝屈曲痛(15%)、膝関節可動域減少(9%)などが含まれました。

この研究では、全症例に対して、休養(馬房繋留)での保存療法が実施されましたが、再検査において骨嚢胞が消失した症例は無く(4〜33ヶ月後の再X線検査)、嚢胞周囲に軽度な骨硬化を生じてくる傾向が見られました。また、休養で歩様良化したのは、24%の症例に留まっていました。

この研究では、保存療法の結果として、跛行が消失して、意図した用途に使役できた場合を治癒と定義した場合には、グループAの骨嚢胞での治癒率は50%(14/28頭)であったのに対して、グループBの治癒率は20%(1/5頭)に過ぎませんでした。また、グループAの他の五頭では、騎乗使役に復帰できたものの、軽度跛行を回帰性に示したことが報告されています。

この研究は、1980年代初頭の報告で、後膝の骨嚢胞に対する外科的治療が一般的でなかった時代のものであったため、保存療法による治癒率は、症例全体で45%(15/33頭)に留まっていました。また、脛骨近位や顆間窩での骨嚢胞という稀な病態も報告されており、一般的な骨嚢胞病態(大腿骨内顆)に比較して予後が芳しくないことが示唆されています。

Photo courtesy of Equine Vet J. 1982 Jan;14(1):40-6.

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加速度計による馬の疝痛症状の検知

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現代においても、馬の死因の第一は疝痛(消化器疾患)であり、腹痛症状を早期発見して、遅延なく疝痛の治療を施すことが重要になってきます。近年では、動物の体に取り付けた加速度計(Accelerometer devices)を用いて普段とは異なる行動を探知することで、牛の摂食行動の変化(諸疾患の初期徴候)を検知できることが知られており[1]、また、馬においても、加速度計による馬体の動きの変化から、運動器疾患の初期症状[2]や分娩徴候の検知[3]も試みられています。

そこで、下記の研究では、八頭の健常な牝馬に、実験的な腹痛を誘導して(プロスタグランディン投与による黄体融解)、その結果として生じる疝痛症状(前掻き、寝起き、膁部見返り等)の行動変化を、ビデオ録画、および、前肢の管部に取り付けた加速度計を用いて検知して、疝痛症状に特有な行動様式を発見するアルゴリズムを確立させることで、疝痛症状の検知における正確性が評価されました。

参考文献:
Eerdekens A, Papas M, Damiaans B, Martens L, Govaere J, Joseph W, Deruyck M. Automatic early detection of induced colic in horses using accelerometer devices. Equine Vet J. 2024 Feb 6. doi: 10.1111/evj.14069. Online ahead of print.

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結果としては、実験的に誘導された疝痛症状のうち、加速度計によって検知された割合は91.2%に及ぶことが分かりました。また、ビデオ録画した馬の行動を獣医師が視聴して、疝痛症状の度合いを腹痛スコアで点数化した上で、無疝痛、レベル1疝痛、および、レベル2疝痛に分類したところ、加速度計によってレベル1とレベル2の疝痛が、93.8%の正確性で鑑別できたことも報告されています。この際には、疝痛症状を示唆する行動様式を見分けるアルゴリズムが開発されて、普段の正常な行動との鑑別が、高い正確性で達成されたことも報告されています。

このため、馬の消化器疾患においては、前肢に装着させた加速度計を用いて、疝痛症状を機械的に検知できることが示唆されました。今回の研究では、中程度以上の明瞭な疼痛症状のみが検証の対象であり、また、厳密には、消化器由来の疼痛では無かったことから、今後の研究では、実際の消化器疾患の臨床症例において、軽度な腹痛症状を早期診断できるか否かを評価する必要があると考察されています。

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一般的に、馬の疝痛における疼痛症状では、痛みの表現には個体差が大きく、此処の症状の有無・頻度・強さなどには多様性が大きいことが知られています。このため、加速度計による疝痛症状の検知においても、各症例馬の普段の行動様式をデータ化して、それを比較対象にすることで、より感度及び特異度の高い早期診断が可能になると考えられます。また、運動器や呼吸器などの疾患との鑑別診断、および、分娩徴候との見分けが可能であるかも、将来的な検証の価値があると言えます。

Photo courtesy of Equine Vet J. 2024 Feb 6. doi: 10.1111/evj.14069.

参考文献:
[1] Ruuska S, Hamalainen W, Kajava S, et al. Evaluation of the confusion matrix method in the validation of an automated system for measuring feeding behaviour of cattle. Behav Processes. 2018 Mar;148:56-62.
[2] Anderson K, Morrice-West AV, Walmsley EA, et al. Validation of inertial measurement units to detect and predict horse behaviour while stabled. Equine Vet J. 2023 Nov;55(6):1128-1138.
[3] Hartmann C, Lidauer L, Aurich J, et al. Detection of the time of foaling by accelerometer technique in horses (Equus caballus)-a pilot study. Reprod Domest Anim. 2018 Dec;53(6):1279-1286.


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腹部エコー検査した獣医師での呼気アルコール濃度

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一般的に、馬の疝痛を診断するときの腹部エコー検査では、腹壁を広範に剃毛するのは大変であるため、馬体をエタノールで濡らしてプローブを当てることが多いと言えます[1]。この場合、揮発したエタノールを獣医師が吸引してしまう可能性があります。一方で、ヒトの手指のアルコール消毒では、噴霧されたアルコールを実施者が吸い込むことで、呼気アルコール濃度が上昇して、飲酒運転の基準を超えてしまうことが報告されています[2]。

そこで、下記の研究では、馬の腹部エコー検査を行なった後の実施者(6名)の呼気アルコール濃度が測定され、馬体に塗布したエタノールの量や(90%エタノール溶液を塗布)、検査時間との関連性が調査されました。なお、エタノールの塗布量の範囲は100~25,000mLで、検査時間の範囲は0~60分間となっていました。

参考文献:
Vitale V, Nocera I, van Galen G, Sgorbini M, Conte G, Aliboni B, Verwilghen D. Breath Alcohol Test Results in Equine Veterinarians after Performing an Abdominal Ultrasound with Ethanol. Vet Sci. 2023 Mar 14;10(3):222.

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結果としては、馬の腹部エコー検査におけるエタノールの塗布量等を多因子解析したところ、呼気アルコール濃度の測定値は、塗布量が300mL未満では0.02%、塗布量が300~1,000mLでは0.04%、及び、塗布量が1,000mL以上では0.06%となっていました(いずれも平均値)。これらは全て、当該国(イタリア)の飲酒運転の基準値(0.019%)を越えてしまっていました。また、呼気アルコール濃度が、基準値以下になるまでの時間は、塗布量が300mL未満では3.65分間、塗布量が300~1,000mLでは22.44分間、及び、塗布量が1,000mL以上では29.26分間となっていました(いずれも平均値)。なお、検査時間の長さや、エタノールを塗布する手法(瓶から直接かける、または、スプレーで吹き付ける)の違いは、呼気アルコール濃度に有意な影響は与えていませんでした。

このため、馬の腹部エコー検査では、馬体に300mL以上のエタノールを塗布すると、それが揮発して吸引されることで、実施者の呼気アルコール濃度が、飲酒運転の基準値を超えるようなレベルまで上昇してしまうことが示唆されています。このため、獣医師が疝痛馬の診察のために腹部エコーを行なう際には、エタノール塗布を少量(300mLまで)にしたり、検査後に30分間以上経ってから運転することで、違法なレベルの呼気アルコール濃度が検出されてしまうリスクを避けられると考えられました。また、獣医師の傍にいる保定者などにおいても、同様な配慮を要するのかもしれません。

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この研究では、実験に参加した被験者6名は、22~26歳の獣医学生であり(女性が5名、男性が1名)、普段の飲酒量は0~2杯/週であったことが報告されています(実験の24時間以内には飲酒無し)。ただ、このうち2名の被験者では、呼気アルコール濃度の測定値が、飲酒運転の基準値を超えなかったため、揮発したエタノールの吸収や体内分解の度合いには、かなり個人差が大きいと推測されました。このため、腹部エコー検査を実施した獣医師は、念のため、一時間以上を置いてから運転するべきである、という提唱もなされています。

この研究は、イタリアで実施されており、検査機器の仕様も日本とは異なることから、当該国での飲酒運転の基準値と、日本における酒気帯び運転の基準値(0.15mg/L以上)を直接的に比較するのは難しいと言えます。ただ、一般的には、イタリア人は飲酒量が多く、呼気アルコール濃度の基準値も日本ほど厳しくないと推測されます。そう考えると、上述の対策(腹部エコーの実施後は、一時間以上経ってから運転すべき)についても、日本では、より厳格に考えておいた方が良いのかもしれません。

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Copyright (C) nairegift.com/freephoto/, freedigitalphotos.net/, pakutaso.com/, picjumbo.com/, pexels.com/ja-jp/ All Rights Reserved.

参考文献:
[1] le Jeune S, Whitcomb MB. Ultrasound of the equine acute abdomen. Vet Clin North Am Equine Pract. 2014 Aug;30(2):353-81, viii.
[2] Strawsine E, Lutmer B. The Effect of Alcohol-Based Hand Sanitizer Vapors on Evidential Breath Alcohol Test Results. J Forensic Sci. 2018 Jul;63(4):1284-1290.


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馬のクロストリディウム大腸炎

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馬におけるクロストリディウム・ディフィシル感染症(Clostridioides difficile infection)は、大腸炎の重要な病因の一つであることが知られており(俗名:X大腸炎)、北米の論文では、致死率は37%に及ぶことが報告されています[1]。ここでは、日本の複数のサラブレッド飼養施設において、2010~2021年にかけて、クロストリディウム大腸炎を呈した34頭の馬に関する症例集積研究を紹介します。

参考文献:
Uchida-Fujii E, Niwa H, Senoh M, Kato H, Kinoshita Y, Mita H, Ueno T. Clostridioides difficile infection in thoroughbred horses in Japan from 2010 to 2021. Sci Rep. 2023 Aug 11;13(1):13099.

この研究では、クロストリディウム大腸炎の罹患馬のうち、診療施設に入院中の馬が55.9%で(開腹術や整形外科手術等)、輸送後の馬が17.6%となっていました。また、抗生物質が投与されていた馬は76.5%でした。なお、性別分布は、牡馬(58.8%)が騙馬(14.7%)や牝馬(26.5%)よりも多い傾向にあり、年齢分布は、2~3歳が55.8%で、4~6歳が44.1%となっていました。

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この研究では、クロストリディウム大腸炎の症状としては、水様性下痢症(76.5%)、血様下痢症(5.9%)、および、疝痛症状(67.6%)などが含まれました。また、分離されたクロストリディウム菌の分子解析では、主要株であるRT078が分離された症例が35.3%に上っており、毒素AとBの産生菌も47.1%となっていました。なお、下痢症状の治療のために、抗生剤のメトロニダゾールが投与された馬は58.8%でした。

この研究では、クロストリディウム大腸炎における致死率は79.4%に達しており(斃死または安楽殺)、また、RT078株の感染馬における致死率は75%で、その他の馬での致死率は83.3%となっていました(有意なオッズ比[OR]は無し)。また、毒素タイプによる致死率の差異においても、有意なORは確認されませんでした。さらに、入院中に発症した馬での致死率は73%で、その他の馬での致死率は92%でした(やはり、有意なORは無し)。

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この研究では、メトロニダゾールが投与されていた馬での致死率は65%に抑えられたのに対して、非投与の馬での致死率は100%に達しており、メトロニダゾール治療により生存率が有意に向上するというデータが示されました(OR=無限大)。しかし、メトロニダゾールの投与は、2013年以降に開始されていたことから、医療技術の向上やデータの蓄積に伴って、病気の早期診断や、他の治療法が向上されたことを含めて、メトロニダゾール以外の要素が、生存率の上昇に寄与した可能性もあると考察されています。

過去の文献では、クロストリディウム大腸炎の危険因子として、手術[2]および輸送が挙げられており[3]、今回の研究でも同様な病因が関与していたことが示唆されました。一方、クロストリディウム大腸炎の致死率は26~37%と報告されていますが[1,4]、今回の研究における致死率の高さ(約八割)の要因については、明瞭には結論付けられていませんでした。ただ、手術時の全身麻酔によって一時的な循環不全を生じたり、輸送ストレスによる免疫防御能の一過性の低下[5]などが、病態の重篤度や生存率の低下に繋がった可能性もあると考えられます。

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参考文献:
[1] Arroyo LG, Staempfli H, Weese JS. Molecular analysis of Clostridium difficile isolates recovered from horses with diarrhea. Vet Microbiol. 2007 Feb 25;120(1-2):179-83.
[2] Nomura M, Kuroda T, Tamura N, et al. Mortality, clinical findings, predisposing factors and treatment of Clostridioides difficile colitis in Japanese thoroughbred racehorses. Vet Rec. 2020 Jul 25;187(2):e14.
[3] Baverud V. Clostridium difficile diarrhea: infection control in horses. Vet Clin North Am Equine Pract. 2004 Dec;20(3):615-30.
[4] Weese JS, Toxopeus L, Arroyo L. Clostridium difficile associated diarrhoea in horses within the community: predictors, clinical presentation and outcome. Equine Vet J. 2006 Mar;38(2):185-8.
[5] Zandona Meleiro MC, de Carvalho HJC, Ribeiro RR, et al. Immune Functions Alterations Due to Racing Stress in Thoroughbred Horses. Animals (Basel). 2022 May 7;12(9):1203.

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馬の条虫における駆虫剤抵抗性の前兆

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近年では、多くの寄生虫が駆虫剤抵抗性(Anthelmintic resistance)を持つことが世界的な問題になってきており、ヒトと動物の双方における医療の観点から、駆虫剤の責任ある使用(駆虫剤スチュワードシップ:Anthelmintic Stewardship)の重要性も提唱されています。ここでは、馬の条虫(主にAnoplocephala perfoliata)において、駆虫剤への抵抗性が起こり始めているという知見を紹介します。

参考文献:
Nielsen MK. Apparent treatment failure of praziquantel and pyrantel pamoate against anoplocephalid tapeworms. Int J Parasitol Drugs Drug Resist. 2023 Aug;22:96-101.

一般的に、馬の条虫感染では、回腸や盲腸の疾患を起こすことが知られており[1,2]、感染率は地域や季節によって多様ですが、7~80%であると言われています。馬の条虫に対する駆虫剤としては、ピランテルが95%の有効性[3]、パラジクアンテールが99%以上の有効性を示すことが報告されています[4]。ただ、近年の症例報告では、ピランテルで定期的に駆虫されている四頭の若齢馬が、条虫に起因する疝痛を発症したという知見もあり[5]、駆虫剤抵抗性の発現が懸念されています。

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上記の症例研究では、米国のケンタッキー州の四箇所の馬牧場において、56頭の若齢馬に対して、イベルメクチン、パラジクアンテール、及び、ピランテルによる駆虫が実施されました。しかし、条虫における糞便虫卵減少検査(FECRT)の数値は、ピランテルでは50.9%で、パラジクアンテールでは23.5%に留まった(信頼区間の上限も72%以下)ことが分かりました。また、イベルメクチンとピランテルの併行投与の後、円虫におけるFECRTの数値も75.6%に過ぎない(信頼区間の上限も90%以下)というデータが示されました。

この研究では、糞便虫卵検査で条虫感染に陽性であった馬において、ピランテル投与で陰性になった馬は0%であり、パラジクアンテール投与で陰性になった馬も18%に過ぎないことが分かりました。また、有効性の無かった馬のうち、パラジクアンテール投与後に陰性から再び陽性に戻ってしまった馬も29%に上っていました。そして、同牧場で飼養されている母馬においても、糞便虫卵検査で条虫感染に陽性であった母馬のうち、パラジクアンテール投与で陰性になったのは22%に留まっていました。

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以上の結果から、この牧場の若齢馬と母馬においては、条虫が駆虫剤への抵抗性を獲得しつつあることが示唆されており、定期的なFECRT評価により、駆虫剤の有効性を監視することが重要であると提唱されています。ただ、馬の条虫においては、糞便検査での虫卵検出の感度は低く、FECRT評価の手法も完全には標準化されていない[6]、という問題点が指摘されています。特に、糞便中に見られる条虫の虫卵数の少なさから、感染度合いの評価での信頼性が不十分になってしまうため、ELISAによる条虫への抗体を検出する手法も試みられています[7]。

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参考文献:
[1] Proudman CJ, Edwards GB. Are tapeworms associated with equine colic? A case control study. Equine Vet J. 1993 May;25(3):224-6.
[2] Proudman CJ, French NP, Trees AJ. Tapeworm infection is a significant risk factor for spasmodic colic and ileal impaction colic in the horse. Equine Vet J. 1998 May;30(3):194-9.
[3] Reinemeyer CR, Hutchens DE, Eckblad WP, et al. Dose-confirmation studies of the cestocidal activity of pyrantel pamoate paste in horses. Vet Parasitol. 2006 Jun 15;138(3-4):234-9.
[4] Slocombe JO. A modified critical test and its use in two dose titration trials to assess efficacy of praziquantel for Anoplocephala perfoliata in equids. Vet Parasitol. 2006 Mar 15;136(2):127-35.
[5] Peregrine AS, Trotz-Williams L, Proudman CJ. Resistance to Pyrantel in Anoplocephala Perfoliata on a Standardbred Farm in Canada? Proceeding, Equine Parasite Drug Resistance Workshop, Samfundslitteratur Grafik, Denmark (2008), pp. 32-33.
[6] Tomczuk K, Kostro K, Szczepaniak KO, et al. Comparison of the sensitivity of coprological methods in detecting Anoplocephala perfoliata invasions. Parasitol Res. 2014 Jun;113(6):2401-6.
[7] Lightbody KL, Davis PJ, Austin CJ. Validation of a novel saliva-based ELISA test for diagnosing tapeworm burden in horses. Vet Clin Pathol. 2016 Jun;45(2):335-46.

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馬の文献:仙腸関節亜脱臼(Gorgas et al. 2009)

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「歩様異常やプアパフォーマンスを呈した馬における仙腸関節部のシンチグラフィー及びX線画像所見」
Gorgas D, Luder P, Lang J, Doherr MG, Ueltschi G, Kircher P. Scintigraphic and radiographic appearance of the sacroiliac region in horses with gait abnormalities or poor performance. Vet Radiol Ultrasound. 2009 Mar-Apr;50(2):208-14.

この症例論文では、馬の仙腸関節疾患における診断法の有用性を検証するため、スイスのベルン大学の獣医病院において(2004~2006年)、歩様異常やプアパフォーマンスの症状を呈した79頭の乗用馬(殆どがウォームブラッド)に対して、仙腸関節部のシンチグラフィー検査、および、X線検査が実施され(いずれも全身麻酔下)、異常所見の解析が行なわれました。

結果としては、歩様異常やプアパフォーマンスを示した症例馬のうち、シンチグラフィー検査で仙腸関節部での異常所見を認めた馬は88.6%に及んでおり、具体的な異常所見としては、仙腸関節部における放射医原性取り込みの増加(仙腸突起部よりも高い値)、および、同所見の左右非対称性などが含まれました。また、シンチグラフィー画像での所見では、変動係数が11%に留まっており(観察者内変動が小さい)、評価者間での計測値における相関係数は0.87と高値となっていました(観察者間変動も小さい)。

なお、下写真の上側は、健常な仙腸関節部を示しており、仙骨突起の放射医原性取り込みが(黒矢印)、仙腸関節部のそれ(左右の四角形の関心領域)よりも高くなっているのが分かります。一方、下写真のA~Dは異常所見であり、下写真のAおよびBでは、仙腸関節部における放射医原性取り込みが、仙骨突起のそれより高い、もしくは同程度となっている所見(黒矢印)が見てとれます。また、下写真のCでは、仙腸関節部の放射医原性取り込みの増加(白矢印)に加えて、同部位と仙骨突起との境界が不明瞭になっている所見が見てとれます。そして、下写真のDでは、仙腸関節部の放射医原性取り込みが、左右非対称になっている所見(画像の左側で増加)が認められました。

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この研究では、シンチグラフィーの背腹側撮影像における、仙椎縦軸に対する腸骨翼の角度に応じて、仙腸関節部の形状が、T型(角度が67.5°以下)およびY型(角度が67.5°以上)に分類されており、前者のほうが、仙腸関節部における放射医原性取り込みが有意に高いことが分かりました。また、仙椎の形状が「角型」よりも「翼型」のほうが、放射医原性取り込みとの相関が有意に高くなっており、「蝶型」や「葉型」はその中間となっていました。

この研究では、仙腸関節部や腸骨翼において、シンチグラフィー検査での放射医原性取り込みの度合いと、X線検査での硬化域の視認度合いとのあいだには、有意な相関は認められませんでした。一方で、仙骨突起部における放射医原性取り込みは、オス馬よりもメス馬のほうが高い傾向にありました(牝馬における骨盤腔の広さに関連すると推測される)。ただ、この所見では、年齢や体重との相関は認められませんでした。

以上の結果から、馬の仙腸関節部の診断法としては、シンチグラフィー検査での感度は高く、再現性や信頼性も高いことが示唆されましたが、骨盤の形状により、シンチグラフィー画像に多様性が生まれることから、各形状に応じた正常画像を定義しておく必要があると考察されています。一方、仙腸関節部のX線検査では、全身麻酔下での撮影でさえも、診断能は低く、シンチグラフィー所見との相関も低かったことから、同部位の疾患における有用性に劣ると考えられました。

この研究では、シンチグラフィー画像において、左右の仙腸関節部の異常に起因すると思われる放射医原性取り込みの増加が明瞭に認められ、背腹側撮影像によって、その左右非対称性を明瞭に視認できるという利点が示されました。一般的には、同所見は立位での撮影でも得られることから、全身麻酔を要するX線検査よりも優れていると考えられます。残念ながら、馬におけるシンチグラフィー機器は、日本では未整備ですが(特に、乗用馬サイズの馬においては)、X線画像で視認が難しい仙腸関節部の画像診断を可能にする有用性を鑑みると、近い将来、整備が望まれる診断手法であると言えそうです。

Photo courtesy of Vet Radiol Ultrasound. 2009 Mar-Apr;50(2):208-14.

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馬の管骨外顆骨折での螺子配列の影響

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馬における管骨の外顆骨折(Lateral condylar fracture)は、競走馬の運動器に起こる重篤損傷の約三割を占めており、螺子固定術によって骨片安定化が達成されない場合には、球節の変性関節疾患を続発して予後不良になることが知られています[1,2]。

ここでは、管骨外顆骨折に対するラグスクリュー固定術(Lag-screw fixation)での、螺子配列の影響について評価した知見を紹介します。下記の研究では、18本の馬の屠体肢に管骨の外顆完全骨折を作成して、直線状または三角形状の螺子配列(Linear or Triangular configuration)で内固定を行ない、非荷重時および荷重時での骨折間隙ギャップがグレード化評価されました。

参考文献:
Brabon A, Hughes KJ, Jensen K, Xie G, Labens R. Influence of screw configuration on reduction and stabilization of simulated complete lateral condylar fracture in equine limbs. Vet Surg. 2024 Feb 21. doi: 10.1111/vsu.14077. Online ahead of print.

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結果としては、荷重時での骨折間隙グレード(中央値)を見ると、直線状の螺子配列(グレード2)よりも三角形状の螺子配列(グレード1)のほうが低いことが分かりました(両方とも非荷重時はグレード0)。しかし、データの因果関係を示すベイジアンネットワークの確率値は、僅か0.8%に留まっていました。なお、上写真では、臨床症例における直線状の螺子配列(上写真の左側)、および、三角形状の螺子配列(上写真の右側)を示しています。

このため、馬の管骨の外顆骨折では、従来法の直線状の螺子配列に比較して、三角形状の螺子配列でのラグスクリュー固定によって、骨片整復の安定性を向上できることが示唆されました。しかし、その向上の度合いによって、骨折間隙のギャップに及ぼされる影響は非常に小さい(1%以下)というデータが示されたことから、そのような螺子配列の違いにより、外顆骨折の内固定による治療効果が上がる可能性は低い、という考察がなされています。

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この研究では、実験的な骨切術で外顆骨折を作成したため、骨折面には凹凸が少なくなり(螺子固定した骨同士の摩擦が小さく、内固定での強度が落ちる)、また、外顆の骨片の近位部には1cmの隙間が設けられるなど(上写真の赤*印)、臨床的な骨折病態よりも不安定になり易いような形態となっており、さらに、直線状よりも三角形状の螺子配列のほうが、スクリューの数は1本多くなっていました。にも関わらず、三角形状の螺子配列による安定性向上の度合いは限定的であったことから、臨床症例における螺子固定術では、螺子配列を三角形状にすることの有用性には疑問符がつくと考察されています。

過去の文献では、馬における基節骨の縦骨折に対するラグスクリュー固定術では、三角形状の螺子配列のほうが(下写真の右側)、骨片整復の安定性が有意に向上することが報告されています[3]。このような違いが生じる要因としては、管骨の円柱状の形状では、周囲結合組織からの支持作用により、元々の安定性が優れていること[4]、基節骨の中央部には、管骨の矢状稜が食い込むように荷重伝達するため、骨折面への剪断力が強く生じること[5]、および、基節骨よりも管骨のほうが、骨全体に対する骨片の相対的なサイズが小さく、安定性の減退度合いも少ないこと、等が挙げられています。

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この研究では、螺子固定の強度試験として、垂直方向への圧迫負荷のみが掛けられており、評価対象も、骨片の変位度合い(骨折間隙のギャップ)が主とされていました。しかし、実際の管骨の外顆骨折では、屈折負荷や捻転負荷も整復箇所に掛かるため、これらの負荷が最大となる管骨の遠位端に複数の螺子を挿入することで(=三角形状の螺子配列)、内固定の硬度や耐久度(負荷変位曲線の傾斜及び曲線下面積)を向上できる可能性もあると考えられます。

この研究では、管骨の外顆における骨折のみを実験的に作成して、三角形状の螺子配列の物理的強度が評価されていました。一方で、管骨の内顆骨折(Medial condylar fracture)では、亀裂骨折線が骨幹部まで伸びて、捻転負荷が強く生じることが知られています(特に後肢の管骨)。そのような、縦軸に長い骨折面においては、その遠位端において三角形状に螺子配列することで、捻転負荷から生じる前後方向への剪断力に対して、複数の螺子で抵抗することになるため、内固定の強度を有意に向上させられる可能性もあると推測されます。この辺りは、今後の研究での検証を要すると言えます。

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Photo courtesy of Vet Surg. 2024 Feb 21. doi: 10.1111/vsu.14077.
Photo courtesy of Equine Surgery: Jorg A Auer, John A Stick, Jan M Kummerle, Timo Prange; 5th eds, 2019, Saunders.

参考文献:
[1] Bassage LH 2nd, Richardson DW. Longitudinal fractures of the condyles of the third metacarpal and metatarsal bones in racehorses: 224 cases (1986-1995). J Am Vet Med Assoc. 1998 Jun 1;212(11):1757-64.
[2] Maeda Y, Hanada M, Oikawa MA. Epidemiology of racing injuries in Thoroughbred racehorses with special reference to bone fractures: Japanese experience from the 1980s to 2000s. J Equine Sci. 2016;27(3):81-97. doi: 10.1294/jes.27.81. Epub 2016 Sep 30.
[3] Labens R, Khairuddin NH, Murray M, et al. In vitro comparison of linear vs triangular screw configuration to stabilize complete uniarticular parasagittal fractures of the proximal phalanx in horses. Vet Surg. 2019 Jan;48(1):96-104.
[4] Richardson DW. Fractures of the Proximal Phalanx. Equine Fracture Repair, Second Edition. Wiley; 2019.
[5] Singer E, Garcia T, Stover S. How do metacarpophalangeal joint extension, collateromotion and axial rotation influence dorsal surface strains of the equine proximal phalanx at different loads in vitro? J Biomech. 2013 Feb 22;46(4):738-44.


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乗用馬のプアパフォーマンスでの運動中の内視鏡

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一般的に、馬のプアパフォーマンスでは、運動器系や心脈管系のほか、呼吸器系の疾患に起因する症例が多いことが知られています。そのようなケースでは、上部気道を内診できる内視鏡検査が行なわれており、特に、近年では、馬の頭部に装着させながら撮影する、運動中の内視鏡検査(Overground endoscopy)が広く用いられるようになってきました。

そこで、下記の研究では、カナダのカルガリー大学の獣医病院において(2014〜2022年)、呼吸器系疾患に起因すると思われるプアパフォーマンスを呈した164頭のウェスタン乗用馬(バレルレーシングの競技馬)に対して、安静時及び運動中の内視鏡検査が実施され、異常所見の回顧的解析が行なわれました。

参考文献:
Massie SL, Leguillette R. Upper airway endoscopy in exercising horses: Findings in 164 barrel racing horses with respiratory clinical signs and/or poor performance. Vet J. 2023 Oct-Dec;300-302:106038.

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結果としては、呼吸器系症状(呼吸雑音、発咳、鼻出血等)やプアパフォーマンスを呈した馬のうち、安静時の内視鏡で異常所見が認められた馬は23%に過ぎなかったのに対して、運動中の内視鏡で異常所見が認められた馬は85%に上ったことが分かり、このうち、複数の呼吸器系疾患が確認された馬も56%に及んでいました。また、運動中の内視鏡においては、異常所見が認められた時点の運動強度としては、軽度運動が55%で、強度運動が22%となっていました(残りの23%では運動強度は不明)。

このため、呼吸器系疾患に起因する乗用馬のプアパフォーマンスでは、運動中の内視鏡検査によって、より感度の高い病因の推定診断が可能になることが示唆されました。この際には、必ず、軽度と強度運動の両方を課した状態で、内視鏡での上部気道機能を評価することが重要だと言えます。なお、今回の研究において、内視鏡で異常が見られなかった馬では、異常行動の稟告(競技アリーナへの入場を拒否する等)が32%、運動誘発性肺出血の前歴が28%、および、呼吸雑音の前歴が24%となっていました。

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この研究では、運動中の内視鏡検査で認められた呼吸器系疾患としては、鼻腔咽頭虚脱(NPC: 49%)、口蓋不安定症(PI: 42%)、間欠的な軟口蓋背方変位(iDDSP: 39%)、声帯虚脱(VFC: 27%)、反回神経麻痺(RLN: 19%)、披裂軟骨角突起の腹内側脱臼(VLAC: 10%)、披裂喉頭蓋ヒダの内側変位(MDAF: 6%)、輪状気管靱帯虚脱(CTLC: 6%)などが含まれました。なお、RLN発症馬のうち、重症度分類の割合は、グレード1→2→3→4の順に、58%→13%→18%→11%となっていました。

この研究では、内視鏡検査で複数の疾患が認められたケースにおいて、併発率が十倍以上(オッズ比が有意かつ10以上)になる疾患の組み合わせとしては、NPCとMDAF、NPCとVLAC、NPCとCTLC、PIとMDAF、iDDSPとMDAF、iDDSPとCTLC等が挙げられました。また、咽頭リンパ過形成(PLH)が見られた馬では、NPC及びiDDSPとの併発率が十倍以上となっていました。なお、症例の年齢や性別は、諸疾患の発生率とは有意には相関していませんでした。

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この研究では、安静時の内視鏡検査で認められた呼吸器系疾患としては、RLN(42%)、PLH(26%)、iDDSP(18%)、持続的な軟口蓋背方変位(11%)、披裂軟骨炎(5%)、喉頭蓋下嚢胞(5%)、声帯肉芽腫(5%)、喉頭蓋の軟骨炎(3%)等が挙げられました。ただ、安静時の内視鏡で異常を認めた馬のうち、複数の疾患が認められたのは16%に過ぎませんでした。

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馬の購入前検査でX線読影するときの多様性

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ホースマンにとって、馬を購入することは、新たなライフパートナーに出会う楽しみの瞬間であると同時に、その後の飼養管理にコミットしていく意味では、慎重を期さなければいけないタイミングでもあります。このため、その馬の健康状態を適正にチェックするため、獣医師による購入前検査(Pre-purchase examination)が実施されることが一般的です。ここでは、購入前のX線検査における画像の読影に関して、獣医師のあいだの多様性を評価した知見を紹介します。

参考文献:
Esselman AM, Johnson SA, Frisbie DD, Barrett MF, Zhou T, Contino EK. Substantial variability exists in the interpretation of survey radiographs among equine veterinarians. Equine Vet J. 2024 Jan 9. doi: 10.1111/evj.14045. Online ahead of print.

上記の研究では、米国の馬獣医師211名に対して、三つの馬体の部位(舟状骨、飛節、後膝)における4セットのX線画像の読影を依頼して、各病変の重症度(正常、軽度、中程度、重度)の分類、および、それらの病変での懸念の度合いが10段階で評価されました(数値が10に近いほど懸念が強い)。その結果、X線画像上での病変の重症度が上がるほど、懸念度の数値が上がるだけでなく、獣医師のあいだで懸念度のバラつきが大きくなるという傾向が認められました。この要因としては、此処の獣医師の臨床経験によって、各病変に対する有意性や重要性の解釈に大きな幅が生まれたためと推測されました。また、病変が重度になるほど、一般的に病気の経過も長くなるため、古傷が遺残しているケースと、アクティブな疼痛性病態が現在進行しているケースが混在するため、その馬の将来的な懸念にも多様性が生じたものと考えられます。

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この研究では、読影をした馬の獣医師の専門分野によって、X線画像上での病変に対する懸念の度合いが異なる、という傾向が認められました。具体的には、飛節の軽度病変においては、ウェスタン乗用馬およびブリティッシュ乗用馬のいずれの獣医師も、懸念度の数値が低かったものの、後者のほうがより高い値となっていました(平均懸念度は順に3.3 vs 4.2)。また、飛節の重度病変においても、ウェスタン乗用馬よりもブリティッシュ乗用馬の獣医師のほうが、懸念度の値が高くなっていました(平均懸念度は順に7.1 vs 8.0)。当然ながら、軽度病変より重度病変のほうが、懸念度が約二倍も高かったことになります。一方で、舟状骨の重度病変においては、ウェスタン乗用馬よりもブリティッシュ乗用馬の獣医師のほうが、懸念度の値は低くなっていました(平均懸念度は順に7.2 vs 6.1)。

以上の結果から、馬の購入前検査でのX線画像では、獣医師によって解釈や懸念度の多様性が大きいため、複数の獣医師に読影を依頼して、X線画像上の病変に対するセカンドオピニオンを求めることで、より信頼性の高い解釈を得られると推測されます。この際には、特に、重度な異常所見が見られた画像について、各獣医師に解釈を報告してもらうことで、その病変の将来的な懸念の度合いを推測しやすくなると言えます。その一方で、各獣医師の専門分野によって、病変に対する懸念にも差異が生じやすいことから、セカンドオピニオンを求める獣医師を慎重に選択する必要があるのかもしれません。なお、二人以上の獣医師からの解釈を比較するためには、読影を依頼するX線画像のクォリティ(撮影角度や解像度)が充分に高いことが必要不可欠である、という警鐘も鳴らされています。

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一般的に、馬の購入前検査におけるX線画像は、買い手と売り手が別々の獣医師に読影を依頼することが多く、それぞれの獣医師が、クライアントの利益を尊重する傾向がどうしても生じるため、双方の解釈に相違があること自体は自然なことだと言えます。しかし、例え懸念の度合いには多様性があったとしても、病変の性質上、それが昔の古傷なのか、それとも、将来的に病態悪化の心配がある前駆徴候なのかについては、懸念の有無という側面で、明瞭かつ正直に述べるという獣医師の倫理観が重要であると考えられます。例として、舟状骨の難治性病態を疑う異常所見が認められたようなケースでは、例え、売り手から依頼された側の獣医師であっても、売却価格の低下等に忖度してしまうことなく、その病変に関する懸念の有無や度合いを正確に報告することで、馬自身の長期的な利益につなげる姿勢が大事だと言えます(次の馬主[=買い手]が、その舟状骨の疾患を未然に予防する装蹄療法を施せる等)。

一方で、獣医師に読影を依頼するホースマンにおいても、画像上の病変に対する解釈に多様性が生まれることを常に念頭に置き、報告された解釈の相違が、獣医師の技量とは必ずしも相関しない、という考えを持つのが良いと言えます。一般的に、X線画像というものは、病気の重篤度を過小評価してしまうことが多く、また、画像を読影する獣医師の殆どは、その馬の視診・触診・歩様検査などの所見が無いため、画像上の病変の重要性を常に正確に見極めるのは難しい、という点を考慮されるべきだと考えられます。仮に、獣医師の読影にミスが一切許容されなくなると、保守的な解釈が増えてしまい(軽度な病変でも少し大袈裟に指摘する等)、結果的に、ホースマンの取り越し苦労や、馬社会全体でのダイナミックな馬の循環が停滞してしまう、というデメリットも生じてしまうのかもしれません。

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駆虫剤への抵抗性に関する馬の飼養管理者の認識

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近年では、多くの寄生虫が駆虫剤抵抗性(Anthelmintic resistance)を持つことが世界的な問題になってきており、ヒトと動物の双方における医療の観点から、駆虫剤の責任ある使用(駆虫剤スチュワードシップ:Anthelmintic Stewardship)の重要性も提唱されています。ここでは、豪州のサラブレッドの飼養管理者に対して、馬の寄生虫疾患や駆虫法、および、駆虫剤への抵抗性などに関して、聞き取り調査および回答の解析を行なった知見を紹介します。

参考文献:
Abbas G, Bauquier J, Beasley A, Jacobson C, El-Hage C, Wilkes EJA, Carrigan P, Cudmore L, Hurley J, Beveridge I, Nielsen MK, Hughes KJ, Stevenson MA, Jabbar A. Worm control practices used by Thoroughbred horse managers in Australia: A national survey. Vet Parasitol. 2024 Jan 12;327:110116. doi: 10.1016/j.vetpar.2024.110116. Online ahead of print.

結果としては、馬の寄生虫疾患に関して適切な知識を持っていた飼養管理者は70%に及んでおり(例:子馬では寄生虫感染が致死的な病気に繋がること等)、寄生虫の制御のために駆虫剤を用いていたのは93%に達していたものの(逆に、駆虫剤を使っていない飼養管理者が7%もいた、とも解釈できる)、実際に、寄生虫による馬の疾患を経験していた飼養管理者は15%に留まっていました。

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この研究では、糞便の虫卵検査を実施していた飼養管理者は40%に留まっており、虫卵検査の結果に基づいて駆虫剤投与の判断をしていたのは20%に過ぎませんでした。また、駆虫の方針として、定期的に全頭を駆虫するという方針であった飼養管理者は55%であり、大環状ラクトン系の駆虫剤(イベルメクチン及びモキシデクチン)を投与している割合が最も高い(飼養管理者の88%)ことも分かりました。

この研究では、糞便検査で駆虫剤の有効性を評価していた飼養管理者は29%に留まっており、当該地域の寄生虫における駆虫剤抵抗性を認識していた飼養管理者は僅か9%しかいませんでした。また、放牧地における寄生虫の予防対策(馬糞を頻繁に清掃する等)を取っていた割合は、0.2ヘクタール未満の小さな放牧地では58%に達していたのに対して、0.2ヘクタール以上の放牧地では18%に留まっていました。

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以上の結果から、豪州のサラブレッドの飼養施設においては、寄生虫に起因する馬の健康問題は広く認識されているものの、駆虫剤抵抗性に関しては認識不足である現状が浮き彫りになりました。このため、駆虫剤への抵抗性に関しては、馬の飼養管理者に対する指導や情報提供を積極的に行なうべきである(駆虫剤抵抗性の検査方法も含めて)という考察がなされています。また、聞き取り調査の結果から、問題点のある寄生虫対策が取られていたのは、中規模〜大規模な馬な飼養施設よりも、小規模な施設に多く認められた、というデータも示されています。

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馬の文献:仙腸関節亜脱臼(Cousty et al. 2008)

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「エコー誘導による馬の仙腸関節周囲注射法:屠体での検証」
Cousty M, Rossier Y, David F. Ultrasound-guided periarticular injections of the sacroiliac region in horses: a cadaveric study. Equine Vet J. 2008 Mar;40(2):160-6.

この研究論文では、馬の仙腸関節疾患における診断麻酔や注射療法の手法を確立させるため、14頭の馬の屠体腰臀部を用いて、エコー誘導を介した仙腸関節周囲への注射法が試験されました。

この研究では、仙腸関節への頭側アプローチ(下写真)においては、腸骨翼の頭側縁と第五腰椎の横突起のあいだにプローブを頭尾側方向に当てて、仙腸関節の頭側辺縁を視認してから、プローブの頭側縁から穿刺した脊髄針を尾内側へと進展させることで、仙腸関節周囲組織にアプローチされました。下写真の(c)では、Nが脊髄針、L5が第五腰椎の横突起、及び、ILが腸骨の頭側縁を表しています。

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この研究では、仙腸関節への頭内側アプローチ(下写真)においては、仙骨突起の頭側縁にプローブを斜めに当てて(頭内側-尾外側に45°の角度)、第六腰椎の背側突起と仙骨突起の頭側縁を描出してから、プローブの頭側縁から穿刺した脊髄針を対側の腸骨の尾内側へと進展させることで、仙腸関節周囲組織にアプローチされました。下写真の(c)では、Nが脊髄針、L6が第六腰椎の背側突起、及び、ILが腸骨の頭側縁を表しています。

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この研究では、仙腸関節への内側アプローチ(下写真)においては、左右仙骨突起(尾側縁)を跨ぐように、馬体正中線に直角にプローブを当てて、片方の仙骨突起(注射する側の反対側)の内側中央部から脊髄針を穿刺させて、対側の腸骨の内側面へと針を進展させることで、仙腸関節周囲組織にアプローチされました。下写真の(c)では、Nが脊髄針、ILが腸骨の内頭側縁を表しています。

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この研究では、仙腸関節への尾側アプローチ(下写真)においては、従来法からの変法で、腸骨翼の尾側縁より外側の位置で、馬体正中線に平行にプローブを当てて、腸骨翼と仙骨外側隆起を視認し、そこから仙骨外側隆起が見えなくなる位置まで外側にプローブをずらしてから(神経脈管束の近くを穿刺するのを避けるため)、プローブの尾側縁から穿刺させた脊髄針を、腸骨翼のすぐ腹側に誘導して、針先を1cmだけ進展させた箇所で、仙腸関節周囲組織への注射を実施しました(腹腔内注射を避けるため)。下写真の(c)では、Nが脊髄針、ILが腸骨の尾側縁、及び、SACが仙骨外側隆起を表しています。

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結果としては、上述の四種類の注射法のうち、頭側アプローチで成功率が92%でしたが(残りの8%では腸腰筋への誤注射)、頭内側・内側・尾側アプローチでは、全て100%の成功率が達成されました。また、注射液と仙腸関節の平均距離は、頭側(1.7cm)、頭内側(2.4cm)、内側(2.3cm)に比較して、尾側アプローチ(1.1cm)では顕著に近くなっていました。一方、注射液と仙椎神経脈管束との接触は、内側(4%)と尾側アプローチ(18%)で認められていました(頭側と頭内側アプローチでは0%)。さらに、注射液と骨間靭帯との接触は、頭側(50%)、頭内側(52%)、内側(54%)で認められていました(尾側アプローチでは0%)。

このため、今回の研究で検証された注射法のうち、尾側アプローチにおいて、仙腸関節に最も近い箇所への注射が可能でしたが(仙腸関節腔内への局所麻酔薬や抗炎症剤の注入がしやすい)、他の注射法に比較して、神経脈管束の周囲や腹腔内への誤注射が起こるリスクも高いことが分かりました。一方、他の三種類の注射法(頭側、頭内側、内側アプローチ)においては、注射液が関節周囲まで届きにくかったり、神経脈管束や骨間靭帯への誤注射のリスクも否定できないものの、エコー画像で深部組織を視認しながら針を進展させることで、関節外注射や他組織への誤注射の危険性を抑えられると考察されています。

Photo courtesy of Equine Vet J. 2008 Mar;40(2):160-6.

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英国の馬における抗生物質投与の推移

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近年のヒト医療では、抗生物質への耐性を獲得した細菌(Bacterial antimicrobial resistance)が深刻な問題になってきています。このため、2019年には、耐性菌による死者数が世界で495万人に上っており[1]、この数は、2050年には年間1,000万人に達すると予測されています[2]。第二次世界大戦での死者が、六年間で約五千万人であったことを考えると、ある意味では、耐性菌によるヒトの感染症は、戦争よりも大きな人類の脅威になりうると言えます。

耐性菌の発生を抑えるためには、ヒト医療だけでなく、獣医療における「抗生物質の責任ある使用(Antibiotic stewardship)」が重要となってきます。特に、牛馬豚などの大動物では、ヒトよりも体重が大きく、生きている年数(飼養期間)が短いため、抗生物質の総使用量が非常に多くなることから、耐性菌を生み出しやすいという問題があります。このため、下記の研究では、電子カルテによる医療記録の解析を介して、十年間にわたる英国での馬の医療における、抗生物質の使用状況が調査されました。

参考文献:
Tallon RE, Whitt B, Bladon BM. Antibiotic usage in 14 equine practices over a 10-year period (2012-2021). Equine Vet J. 2023 Aug 16. doi: 10.1111/evj.13988. Online ahead of print.

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この研究では、英国の14箇所の馬病院での医療記録を、2012〜2021年にかけて、電子カルテソフト(Eclipse®︎)を用いて集積・解析することで(十年間で計107,977頭)、十年前の数値(中央値)と比較した増減度合いが評価されました。

結果としては、馬に使用された抗生物質の重量は54.25mg/kgであり、過去十年間で23%の減少(60.27→46.32mg/kg)となっていました(馬の体重当たりにおける抗生物質の総重量として計算)。このうち、ヒト医療において重要な抗生物質(ヒトの重症患者の生死に関わる重要性から優先されるべき抗生物質:HPCIA)に限って言えば、使用された重量は0.67mg/kgであり、過去十年間で65%の減少(1.71→0.59mg/kg)となっていました。

この研究では、抗生物質での馬の治療回数は1.52回/頭/年であり、過去十年間で10%の減少に留まっていました(1.70→1.52回/頭/年)。このうち、HPCIAの抗生物質に限ると、治療回数は0.12回/頭/年で、過去十年間で59%の減少(0.27→0.11 回/頭/年)となっていました。

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現在、英国での馬飼養頭数は726,000頭であり、過去十年間で15%増加していると言われています。一方で、馬に対する抗生物質投与の重量や回数は、過去十年間で10〜23%も減少しており、特に、ヒト医療で重要性の高い抗生物質(HPCIA)に関しては、馬に対する投与の重量や回数が、59〜65%も減少されていました。このため、英国の馬医療では、近年の「抗生物質の責任ある使用」の考え方に則って、抗生物質の投与量や投与回数が適切に統制されてきている状況が読み取れた、という考察がなされています。

この研究では、抗生物質の投与量を検証する目安として、体重あたりの抗生物質の重量が指標とされていますが、薬剤の種類によっては、体重あたりの処方重量が異なるため、必ずしも、抗生物質投与の増減を正確に表していない可能性もあると考察されています。このため、投与回数のデータを併せて解析したり、使用薬剤の種類、および、此処の薬剤が占める割合なども検証する必要があると言えます。一方、今回の研究データには、局所肢灌流や滑膜内投与による使用量(筋注や静注よりも投与総量を抑えられる)も含まれていましたが、外傷薬や目薬などを介した抗生物質投与のデータは含まれていない、という点も指摘されています。

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この研究では、英国の食肉動物(牛・豚・鶏等)に対する抗生物質の投与重量は、過去十年間で55%も減少(66→30mg/kg)していることが報告されており、馬での減少度合い(23%減少)や、現時点での馬に対する投与重量(46.32mg/kg)よりも少なくなっていました。ただ、2014〜2018年の五年間にかけての調査では、馬に対する抗生物質の投与重量も、50%の減少になっていたことが報告されています[3]。一方で、英国の小動物に対する抗生物質の投与重量は、犬では65.5mg/kgで、猫では32.9mg/kgであり、ヒトと犬猫との接触度合いの大きさを鑑みると、小動物に対する抗生物質の責任ある使用、および、頻繁な細菌培養検査による耐性菌の監視などが重要であると提唱されています。

この研究では、10万頭以上の馬における抗生物質の使用状況が、十年間にわたって調査されており、英国における獣医療の電子カルテ化によって可能になった研究であると言えます。今後は、日本においても、獣医療領域に電子カルテが普及していくと推測されますが、電子化すること自体が目的となってしまうことなく、そのデータを有効に活用し、今回の研究のような情報の集積と解析を推し進めていくことで、「抗生物質の責任ある使用」の状況を検証していくことが重要だと言えそうです。

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参考文献:
[1] Antimicrobial Resistance Collaborators. Global burden of bacterial antimicrobial resistance in 2019: a systematic analysis. Lancet. 2022 Feb 12;399(10325):629-655.
[2] O'Neill J. The review on antimicrobial resistance. Tackling drug resistant infections globally: Final report and recommendations. 2016 Available from amr-review.org [accessed 4 April 2023].
[3] Mair TS, Parkin TD. Audit of antimicrobial use in eleven equine practices over a five-year period (2014-2018). Equine Vet Educ. 2022;34:404-408.

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若齢な競走馬での鼻出血の病態と影響

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競走馬の鼻出血は、その多くが肺からの出血で起こり、運動中に血圧が上がることと、呼吸増加で肺胞の内圧が下がることが相まって出血に至ることから、運動誘発性肺出血(EIPH: Exercise-induced pulmonary hemorrhage)という病名で呼ばれます。馬がEIPHを起こすと、肺組織の線維化および換気機能低下を続発するのみならず、長期間の出走停止となるため、医学的にも経済的にもダメージの大きい疾患であると言えます。

ここでは、若齢な競走馬での鼻出血における病態の解析と、それが競走能力に影響を与える度合いについて評価した知見を紹介します。下記の研究では、米国の10州での15箇所の競馬場において(2020~2021年)、二歳齢のサラブレッド競走馬に対して、レース直後(30〜60分後)に内視鏡検査が実施され、ビデオ動画の盲検による病態解析と、それらの所見と競走能力指標との相関が評価され、また、オッズ比(OR)の算出による危険因子の解析も行なわれました。

参考文献:
Shoemaker S, Wang Y, Sellon D, Gold J, Fisher A, Bagshaw J, Leguillette R, Sanz M, Bayly W. Prevalence and severity of exercise-induced pulmonary hemorrhage in 2-year-old Thoroughbred racehorses and its relationship to performance. J Vet Intern Med. 2024 Feb 16. doi: 10.1111/jvim.17003. Online ahead of print.

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結果としては、内視鏡によるEIPHの重症度を見ると、グレード0が34%、グレード1が35%、グレード2は23%、グレード3又は4は8%となっていました(これらの発生率は、全年齢の競走馬を調査したものと同程度であった)。そして、スピード指数(平均値)を見ると、グレード0→1→2→3/4の順で、51.3→47.9→49.2→44.6というように下がっていく傾向にあり、スピード指数が低い馬ほどEIPHの重症度も有意に上がることが分かりました。また、発症時のレース距離を見ると、グレード0→1→2→3/4の順で、1,315→1,331→1,367→1,387メートルというように伸びていく傾向にあり、レース距離が長くなるほどEIPHの重症度も有意に上がることが示されています。

この研究では、競走前にフロセミド投与されていた馬では、EIPHの発症率は58.3%で、重篤(グレード3以上)なEIPHの発症率は5.5%であったのに対して、無投与の馬では、EIPHの発症率は66.8%で、重篤なEIPHの発症率は8.5%に上っていました。このため、フロセミド投与によって、EIPHの発症率および重症度が有意に低くなることが示されています(自発的内視鏡検査を受けた馬において)。

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この研究では、ロジスティック回帰分析の結果から、EIPHの危険因子が解析されており(自発的内視鏡検査を受けた馬において)、スピード指数が1上がるごとに、EIPHの発症リスクが1%下がる(OR=0.99)ことが分かりました。つまり、スピード指数が51と45の馬を比較すると、前者のほうがEIPH発症のリスクが6%低くなる(0.99の6乗は0.94)という解釈になります。また、フロセミド投与された馬では、EIPHの発症リスクが約1/5まで下がる(OR=0.22)ことも分かりました。

以上の結果から、若齢な競走馬においては、他の年齢層での調査結果と同様に、重篤(グレード3以上)なEIPHを発症することで競走能力への悪影響が生まれることから、スピード指数の低下につながったものと考察されています。一方、レース距離の増加とEIPHの重症度が正の相関を示している点に関しては、この年齢層の競走馬におけるレース距離の幅が狭いことから、その影響の有無や度合いを推し測るのは難しいと考察されています。一般的には、レース距離が短いほど、走行速度が上がるため、EIPHを発症しやすくなることが知られています。

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この研究では、フロセミド投与によって、EIPHの発症や重症化を予防できるという効能に関して、統計的な解析力が0.35と低かったため(通常は0.80以上が適切)、投与のメリットに関しては、更なる検証を要するという警鐘が鳴らされています。米国では、2020年以降、殆ど全頭に投与されていた競走前のフロセミドが禁止となったことから、EIPHを起こし易くなるという懸念がありました。しかし、今回の研究では、無投与の馬のほうが獲得賞金が低く、能力の高い馬のほうがフロセミド投与されている割合が高かったと推測されるため、フロセミドの投与禁止によるEIPHへの影響(発症率や重症化リスクの高さ)を検証するのは好ましくないと考察されています。

この研究では、馬場の素材を比較した場合には、全天候型コースに比べて、芝コースではEIPHの発症リスクが三倍以上も高くなり(OR=3.34)、ダートコースではEIPHの発症リスクが十倍以上も高くなる(OR=10.15)ことが分かりました。そのため、芝とダートを比べると、前者のほうがEIPHの発症リスクが四割も下がる(OR=0.60)ことも示されています。しかし、このような全天候型コースにおけるEIPHの発症率の低さについては、競馬場の違いやフロセミド投与の割合など、他の因子との相互作用が生じていると推測されるため、全天候型コースのメリットとして強調され過ぎるべきではない、という考察がなされています。

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疝痛馬の血液ガス/電解質による開腹術の予後判定

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馬の疝痛においては、その多くが内科的治療によって回復しますが、開腹術などの外科的治療を要するような重度の症例では、手術適応を早期判断したり、手術が選択肢で無いときには、アグレッシブな保存療法を初期段階で開始することが重要となります。このため、外科的疝痛の診断指標や、予後判定のための指標を確立させることが、馬の疝痛を診察する際に有益であると言えます。

ここでは、疝痛馬の血液ガスや電解質の測定値によって、内科的および外科的疝痛の鑑別と、短期生存率との関連性を調査した知見を紹介します。この研究では、英国の馬の二次病院において、2010〜2019年にかけて、352頭の疝痛馬、および、139頭の対照馬における医療記録の回顧的解析、および、オッズ比(OR)の算出による鑑別能の評価が行われました。

参考文献:
Viterbo L, Hughes J, Milner PI, Bardell D. Arterial Blood Gas, Electrolyte and Acid-Base Values as Diagnostic and Prognostic Indicators in Equine Colic. Animals (Basel). 2023 Oct 17;13(20):3241.

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結果としては、血中のカルシウムイオン濃度(Ca2+)を比較すると、内科的疝痛(1.47mmol/L)よりも外科的疝痛(1.37mmol/L)のほうが有意に低いことが分かりました。この結果、Ca2+濃度が1単位上がるごとに、開腹術を要しない確率が五千倍近くも高くなる(1単位ごとのOR=4,962)ことが示されました。つまり、Ca2+濃度が、1.37と1.47(mmol/L)の馬を比べると、後者のほうが開腹術を要しない確率が二倍以上も高くなる(4,962の0.1乗は2.34)という解釈になります。このように、疝痛馬のCaイオン濃度が低下する要因としては、小腸からのカルシウム吸収不全や、内毒素誘発性のカルシウム恒常性の攪乱などが挙げられ、そのような病態が、開腹術を要するレベルの重篤な消化器病変と関連していたと考えられました。

この研究では、血中のクロールイオン濃度(Cl-)を比較すると、内科的疝痛(101.0mmol/L)よりも外科的疝痛(98.3mmol/L)のほうが有意に低いことが分かりました。この結果、Cl-濃度が1単位上がるごとに、開腹術を要しない確率が一割も高くなる(1単位ごとのOR=1.1)ことが示されました。つまり、Cl-濃度が、98.3と101.0(mmol/L)の馬を比べると、後者のほうが開腹術を要しない確率が三割近くも高くなる(1.1の2.7乗は1.29)という解釈になります。このように、疝痛馬のClイオン濃度が低下する要因としては、小腸絞扼での多量の胃液逆流や、重度大腸炎によるクロール吸収不全などが挙げられ、これらの病態が外科的疝痛の一因になったと考えられます。

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この研究では、生存馬と非生存馬のあいだで血中のCa2+濃度を比較すると、生存馬(1.42mmol/L)よりも非生存馬(1.32mmol/L)のほうが有意に低いことが分かりました。この結果、Ca2+濃度が1単位上がるごとに、生存できる確率が三百倍以上も高くなる(1単位ごとのOR=365)ことが示されました。つまり、Ca2+濃度が、1.32と1.42(mmol/L)の馬を比べると、後者のほうが生存できる確率が八割も高くなる(365の0.1乗は1.80)という解釈になります。そのようなCaイオン濃度の低下は、小腸での吸収不全や内毒素血症のほか、乳酸アシドーシスの続発等と関連していたケースもあると予測されるため、有用な予後判定指標の一つになると考えられました。

この研究では、開腹術となった小腸疾患の症例に限定して、生存馬と非生存馬のあいだで動脈血の酸素分圧(PaO2)を比較した場合には、生存馬(90.6mmHg)よりも非生存馬(84.2mmHg)のほうが有意に低いことが分かりました。この結果、PaO2値が1単位上がるごとに、生存できる確率が一割も高くなる(1単位ごとのOR=1.1)ことが示されました。つまり、PaO2値が、84.2と90.6(mmHg)の馬を比べると、後者のほうが生存できる確率が八割以上も高くなる(1.1の6.4乗は1.84)という解釈になります。そのような動脈血O2分圧の低下は、重度な敗血症(SIRS)から急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を引き起こしていたり、小腸絞扼した箇所の虚血性病態の発現(虚血再灌流障害による肺浮腫の可能性もあり)を反映していると推測され、開腹術後に予後不良を呈する一つの指標になりうると考えられました。

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この研究では、一部の血液ガス/電解質の測定値が、特定の疾患と相関している傾向が認められていました。例えば、血中のCa2+濃度を見ると、小腸の非絞扼性疾患(1.42mmol/L)よりも絞扼性疾患(1.30mmol/L)のほうが有意に低いことが分かり、また、結腸捻転(1.39mmol/L)よりも小腸の絞扼性疾患(1.30mmol/L)のほうが有意に低くなっていました。このため、これらの疾患を鑑別診断する際に、血液ガスの測定値が鑑別基準の一つになりうると推測されます。しかし、今回の研究では、此処の疾患の症例数が少ないため、統計解析による鑑別能の判定は出来なかったことから、今後は、さらにサンプル数の多い臨床研究での精査を要すると考えられました。

この研究で最も印象的なデータは、計12項目におよぶ血液ガス/電解質の測定値のうち、前述のように、開腹術の必要性や生存率と関連していたのは、僅かに数項目に過ぎなかったことだと言えます。言い換えると、それ以外の測定項目には症例間での変動が大きく、統計的に有意な指標には成り得なかったと言えます。この要因としては、①外科的病変のタイプ(腸管絞扼など)によっては、測定値の変化に至るまでに長時間を要したため、搬入時の血液検査には現れなかったこと、②血液ガスや電解質の性状変化が、全身循環に回ることなく、局所的に限局してしまい(絞扼している消化管の部位など)、血液検査の測定値には現れなかったこと、及び、③血液ガスや電解質の異常値が、搬入前の補液療法などで補正されてしまい、検査した時点では検知できなかったこと、などが考えられます。このうち、特に①や②を鑑みると、血液ガス/電解質の測定値は、搬入時の一回測定だけでなく、開腹術の前後で比較したり、入院中に経時的に測ってその推移を監視することで、より信頼性の高い予後判定指標になりうると考えられました。

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スウェーデンでの馬の選択的駆虫法

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近年では、多くの寄生虫が駆虫剤抵抗性(Anthelmintic resistance)を持つことが世界的な問題になってきており、ヒトと動物の双方における医療の観点から、駆虫剤の責任ある使用(駆虫剤スチュワードシップ:Anthelmintic Stewardship)の重要性も提唱されています[1]。ここでは、先進的な馬の駆虫方針が実践されているスウェーデンにおいて、馬の円虫に対する駆虫剤の抵抗性を調査した知見を紹介します。

参考文献:
Alm YH, Osterman-Lind E, Martin F, Lindfors R, Roepstorff N, Hedenstrom U, Fredriksson I, Halvarsson P, Tyden E. Retained efficacy of ivermectin against cyathostomins in Swedish horse establishments practicing selective anthelmintic treatment. Vet Parasitol. 2023 Oct;322:110007.

スウェーデンの馬においては、選択的な駆虫法(Selective anthelmintic treatment)という管理指針が広く実践されている点が特徴的です。具体的には、飼養馬すべてを定期的に駆虫しているのは馬飼養施設の6%に過ぎず、逆に、糞便検査で寄生虫感染が確認された馬のみ駆虫する施設は69%に上っていました(残りの施設では、糞便検査の結果を一定程度考慮して駆虫する馬を判断)。また、飼養馬の全頭での糞便検査を、最低でも年一回は行なうという施設も88%に上っていました。このような管理指針は、2007年に、スウェーデン国内での駆虫剤が、全て獣医師の処方箋を要するようになって以降、15年間以上にわたって実践されてきたと述べられています。

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この研究では、スウェーデン国内の16箇所の馬飼養施設(糞便1g中の虫卵数[EPG]が150以上の施設)において、イベルメクチンの投与前と投与二週間後におけるEPG測定を行ない、その減少度合いから糞便虫卵減少検査(Faecal egg count reduction test: FECRT)が実施されました。その結果、全ての施設において、FECRT測定値は99%以上となっており、イベルメクチンの有効性が維持されていることが示されました。また、これらの施設における虫卵再出現期間は、全て六〜八週間となっていました。

このため、スウェーデンでは、選択的駆虫法の適用によって、馬の円虫がイベルメクチン抵抗性を獲得するのを予防できている、という考察がなされています。一般的に、糞便検査に基づいて駆虫する馬を選ぶことで、駆虫剤投与の総量を抑えて、駆虫剤抵抗性が獲得されるリスクを抑えられると考えられます(虫卵検知できないほどの軽度な寄生虫感染馬は、敢えて駆虫しないという方針であるため)。その結果、馬の寄生虫に対する駆虫剤の有効性を維持できるため、長期間の馬飼養の観点に立てば、長年にわたって馬の寄生虫感染症を制御するのに役立つと推測されています。

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この研究では、スウェーデンの馬飼養施設への聞き取りが実施され、駆虫剤以外の管理対策の状況も調査されました。その結果、実施されている対策としては、新しい入厩馬を隔離するという施設が69%、新しい入厩馬を全て駆虫する施設が63%、夏季と冬季で放牧地を分離している施設が81%、輪牧(輪換放牧)を実施している施設が75%、放牧地の馬糞を毎週清掃している施設が50%となっていました。このため、選択的駆虫法に加えて、これらの管理対策が、駆虫剤の有効性維持に寄与していた可能性もあると推測されています。更に、駆虫剤の投与に際しても、複数の駆虫剤を併用している施設が75%に上っていました。

現在の日本では、多くの諸外国と同様に、飼養馬の全頭に定期的に駆虫薬を投与する指針が一般的ですが、将来的に、駆虫剤の有効性を長期にわたって持続させるためには、スウェーデンのような選択的駆虫法を適用していくことを、国全体で検討していくのが重要だと考えられます。その場合には、正確な糞便検査を多頭数に実施できる体制を確立させて、寄生虫の感染度合いを誤診しないことが大切なのかもしれません。

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馬の文献:仙腸関節亜脱臼(Engels et al. 2004)

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「馬の仙腸関節周囲への注射手技の開発と検証」
Engeli E, Haussler KK, Erb HN. Development and validation of a periarticular injection technique of the sacroiliac joint in horses. Equine Vet J. 2004 May;36(4):324-30.

この研究論文では、馬の仙腸関節疾患における診断麻酔の手技を確立させるため、26頭の実馬及び屠体腰臀部を用いて、内側アプローチによる仙腸関節への注射が試みられました。この際、注射した染色液が、関節腔から2cm以内に到達していた場合を、注射手技の成功と定義されました。

この研究では、馬の仙腸関節への注射法として、従来の頭側や尾側アプローチに加えて(上図のAとB)、内側アプローチが開発および検証されました(上図のC)。この手法では、対側の仙骨突起から頭側へ2cmの位置から脊髄針(25cm長)を穿刺して、水平面から40°の角度にて、罹患側の寛結節(腰角)と大腿骨大転子の中間点を狙って針を伸展させることで、仙腸関節の背内側からアプローチされました。下写真では、TSが仙骨突起、TCが寛結節、GTが大腿骨大転子を表しています。

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結果としては、馬の仙腸関節への内側アプローチによって、関節の中央部から尾側1/3の領域に染色液が到達していたのは96%に上っており、関節周囲注射が成功していたのは88%となっていました。この際、注射した染色液と仙腸関節のあいだの距離は、中央値で1.0cm(範囲0.2〜3.8cm)となっていました。このため、馬の仙腸関節に対しては、内側からの針穿刺によって、信頼性の高い薬液(局所麻酔薬や抗炎症剤)の注入が可能であることが示唆されました。

一般的に、馬の仙腸関節疾患では、X線検査では関節組織を描出できず、エコー検査でも関節腔そのものを評価することは難しいことから、この関節部の疼痛を限局化できないケースも多いことが知られています(シンチグラフィー検査は有用だが、日本では未整備)。このため、今回の研究で示されたような注射手技により、仙腸関節の局所麻酔を施して、歩様良化を確認することで、この関節部に疼痛が存在することを確定診断する有益な診断手法になると考察されています。

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この研究では、屠体腰臀部の剖検によって馬の仙腸関節部の解剖学的構造も精査されています。その結果、仙腸関節の尾側部には、坐骨神経や臀部神経脈管束が走行しており、内側アプローチでの針穿刺では、これらの構造物の医原性損傷を避ける意味で有用だと考えられました。一方、馬の第六腰椎の形状には個体差があり、棘突起の位置が尾側寄りになっている場合には(上図のb)、対側から針を伸展させる際の障壁となるため、穿刺開始位置を頭尾側方向に微調整する必要があると考察されています。

Photo courtesy of Equine Vet J. 2004 May;36(4):324-30.

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馬の浅屈腱炎での幹細胞治療とリハビリ療法の比較

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一般的に、馬の腱や靭帯は、治癒スピードの遅い組織であることが知られており、競走馬に好発する屈腱炎においても、長期間の休養を要することが報告されています。一方、近年の獣医学では、運動器疾患に対する再生医療の臨床応用が進んでおり、間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cells: MSC)の局所投与を介して、組織の再生過程を促進する療法が試みられています。

そこで、下記の研究では、豪州の馬病院において、2005〜2016年にかけて、浅屈腱炎(Superficial digital flexor tendonitis)の治療のために、骨髄または脂肪由来の間葉系幹細胞の病巣内注射療法が実施された66頭及び17頭のサラブレッド競走馬(リハビリ療法も併行して実施)における、医療記録と競走成績の回顧的解析、および、130頭の対照馬(リハビリ療法のみが実施された)との比較とオッズ比(OR)の算出が行なわれました。

参考文献:
Salz RO, Elliott CRB, Zuffa T, Bennet ED, Ahern BJ. Treatment of racehorse superficial digital flexor tendonitis: A comparison of stem cell treatments to controlled exercise rehabilitation in 213 cases. Equine Vet J. 2023 Nov;55(6):979-987.

この研究では、骨髄由来の間葉系幹細胞(BM-MSC)は、自家の骨髄液から分離培養されて、1,000万個のBM-MSCが、エコー誘導にて浅屈腱の病巣内に注射されました。一方、脂肪由来の間葉系幹細胞(A-MSC)は、他家の脂肪組織から分離培養されて、2,100万個のA-MSCが、やはりエコー誘導にて浅屈腱の病巣内に注射されました。また、全症例に適応されたリハビリ療法は、馬房繋留とパドック放牧を中心にした12ヶ月間のプログラムで、三ヶ月おきのエコー所見に基づいてリハビリ内容が調整されていました。

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この研究では、浅屈腱炎が治癒して競走復帰した馬の割合が調査されており、具体的には、対照馬での競走復帰率は39%(51/130頭)に留まったのに対して、BM-MSC治療を受けた馬での競走復帰率は59%(39/66頭)に達していました。この結果、浅屈腱炎に対するBM-MSC治療によって、競走に復帰できる確率が三倍以上も高くなる(OR=3.19)ことが分かりました。一方で、A-MSC治療を受けた馬での競走復帰率は29%(5/17頭)に過ぎず、対照馬とのあいだで有意差は認められませんでした。

この研究では、競走復帰後に五回以上の出走を果たした馬の割合も調査されており、具体的には、対照馬での五回出走率は20%(26/130頭)に過ぎなかったのに対して、BM-MSC治療を受けた馬での五回出走率は39%(26/66頭)となっていました。この結果、浅屈腱炎に対するBM-MSC治療によって、競走復帰した上で、五回以上の出走を果たす確率は二倍以上も高くなる(OR=2.64)ことが分かりました。一方で、A-MSC治療を受けた馬での五回出走率は29%(5/17頭)であり、対照馬とのあいだで有意差は認められませんでした。

このため、競走馬の浅屈腱炎に対しては、従来のリハビリ療法を実施しながら、骨髄幹細胞治療を併用することで、屈腱炎の治癒率向上および競走能力を回復させる効能が期待されることが示唆されました。しかし、今回の研究では、幹細胞治療を行なうという判断は、馬主や調教師に委ねられていることから、治療選択でのバイアスが、治療成績に影響してしまった可能性が懸念されます。例えば、未勝利の馬や、治る確率が低そうな重篤な屈腱炎に対しては、高額治療費が無駄になるのを恐れて、幹細胞治療が適用されなかったケースが考えられます。逆に、レース復帰後に勝利できそうな実力馬に対しては、例え軽度な浅屈腱炎であっても、より積極的に幹細胞治療が適用された可能性は否定できず、これらは何れも、幹細胞の治療効果を過大評価する方向にデータを偏向させてしまうと考えられます。このため、今後の研究では、治療群の無作為割り当てや、盲検(馬主や調教師が治療内容を知らない)によって、バイアスの掛からない治療効果の検証を行なうのがベストだと言えます(経済価値の高い競走馬の臨床症例に対しては、そのような研究デザインは困難な場合が多い)。

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この研究では、脂肪幹細胞による治療において、対照馬と比較して、競走復帰率や五回出走率には有意差が無く、浅屈腱炎に対する有意な治療効果は示されなかったと結論付けられています。この要因としては、脂肪由来よりも骨髄由来の幹細胞のほうが、腱の治癒を促進させる効果が高かったという可能性がある一方で、脂肪幹細胞は他家であったため(他の個体の細胞を症例馬に注射していた)、免疫拒絶などの生体反応が、治療効果の低さに繋がったことも考えられます。また、病巣内注射された細胞数も、脂肪幹細胞のほうが二倍以上も多かったことから、注射箇所での酸素や栄養が不足して、幹細胞の生存率を下げたというケースも考えられます(ただ、腱組織内に注射された幹細胞は、そもそも数日間しか生存していないという知見もあります)。

この研究では、治療内容とは別に、浅屈腱炎の病態が治療成績に影響するかが評価されています。その結果、浅屈腱炎の病巣が1cm長くなるごとに、競走復帰を果たす割合が約一割も低くなる(1cmごとのOR=0.91)というデータが示されています。つまり、浅屈腱の病変が1cmと5cmの場合を比べると、後者のほうが、競走復帰する確率が三割以上も低くなる(0.91の四乗は0.69)という解釈になります。一方で、病変の断面積や、エコー画像での病変グレードは、競走復帰率や五回出走率には、有意な影響を与えていませんでした。

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この研究では、治療内容とは別に、症例の性別が治療成績と相関するかも評価されていました。その結果、性別ごとの競走復帰率を見ると、牝馬(22%)よりも、騙馬(59%)や牡馬(38%)のほうが有意に高いことが示されており、競走復帰率が、騙馬では十倍近く(OR=9.53)、牡馬では三倍近く(OR=2.97)も高くなることが分かりました。この事象は、浅屈腱炎の病歴を踏まえた結果、繁殖転用の選択肢が大きい牝馬のほうが、競走復帰を目指すのが少し消極的になったことを反映していると推測されています。

この研究では、浅屈腱炎の発症前の出走数が、競走復帰と正の相関を示す傾向が認められました。具体的には、発症前の出走数による競走復帰率を見た場合、0~2回の馬では32%であったのに比べて、3~7回の馬では47%(OR=4.60)、8~14回の馬では57%(OR=7.57)、及び、15回以上の馬では44%(OR=3.56)となっていました。つまり、浅屈腱炎の発症前に出走した回数が多いほど、競走復帰率が四倍~七倍も高いことになり、やはりこれも、実力馬ほど積極的に競走復帰を目指すという、馬主や調教師のバイアスが働いたことを示していると言えそうです。

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関節鏡による馬の頚椎の骨片摘出

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一般的に、関節鏡手術(Arthroscopic surgery)は、馬の無菌手術のなかで、最も頻繁に実施されるものの一つで、OCDや小片骨折の摘出の他にも、多様な関節疾患の治療に適応されています。

ここでは、馬の頚椎の関節突起間関節(Cervical articular process joint)での関節鏡治療を評価した知見を紹介します。この研究では、ドイツのベルリン大学の獣医病院において、頚椎関節突起間関節の骨片形成の治療のために関節鏡が実施された三頭の馬における医療記録の回顧的解析が行なわれました。

参考文献:
Schulze N, Ehrle A, Beckmann I, Lischer C. Arthroscopic removal of osteochondral fragments of the cervical articular process joints in three horses. Vet Surg. 2023 Aug;52(6):801-809.

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一般的に、馬の頚椎での関節突起間関節(APJ)は、椎間の左右両側に位置している滑膜性関節で、硝子軟骨で覆われた関節面を有しています。この関節は、椎骨孔の背側に位置しており、椎骨腔に向けて内側に伸展していき、その楕円形の関節面は斜め方向(水平から45〜55°の角度)に尾側に伸びています。通常では、頚椎の関節突起間関節における骨片病変は、離断性骨軟骨炎、骨折、変性関節疾患に伴って生じると考えられています。

この研究における頚椎のAPJ関節への外科的アプローチは下記の通りです。
・全身麻酔下での横臥位にて施術。
・頚の下に補液バッグを挿入して挙上させてから、術創の消毒とドレーピング。
・エコー誘導を介して、20G脊髄針をAPJ関節腔へと穿刺(頭腹側-尾背側方向に60°の角度で穿刺)。
・X線画像で針先の位置を確認した後、生食15mLで関節包を膨満させる。
・関節包に向かって穿刺切開創(No.11メス刃)を設けて、関節鏡カニューレ(4mm径、18cm長)とカメラを挿入。
・関節腔の内診と骨片の位置を視認。
・カメラポータルの2cm頭背側から別の脊髄針を穿刺して位置を確認してから、穿刺切開によって器具ポータルを設置。
・骨膜剥離子で骨片を遊離させ、FSロンジュール(14cm直)で骨片を掴み出す。
・病巣掻爬と関節包灌流(生食1L)、
・閉創(皮膚のみ)とバンテージ装着。


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結果としては、三頭すべての症例において、頚椎の関節突起間関節における骨片が、関節鏡によって摘出可能であったことが示されました。そして、今回の三頭では、深刻な術後合併症や神経症状を起こすことなく(術後五日間に軽度な頚部強直性を呈したのみ)、術後には、全症例が意図した用途に使役されており、良好な予後が達成されたことが報告されています(論文発表時点で術後14〜31ヶ月間生存)。なお、三頭中の一頭では、関節腔へのカメラ挿入が困難であったため、二度目の手術を要したことが報告されています。

一般的に、馬の頚椎の関節内骨片では、前肢跛行や運動失調を起こすことが知られており[1,2]、約二割の症例で頚椎機能障害が認められていました[3]。しかし、これらの症例では、もともと椎骨病変も併発していたことから、骨片そのものが直接的な原因であるか否かに関しては論議があります。近年では、頚椎の診断麻酔の手法として、エコー誘導による背側脊髄神経の内側枝への浸潤麻酔法が提唱されていますが[4]、臨床症例への有用性については今後の検討を要すると考察されています。

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上写真の左側(A)は、頚椎の関節突起間関節における骨片(星印)を示しており、右側(B)は、骨片摘出後の関節腔を示しています。

この研究では、頚椎APJ関節へのアプローチに際して、頚を側方に屈曲させることで(頚の下にバッグを挿入して持ち上げる)、関節腔を開かせることが出来て、関節鏡によるアクセスが容易になったと考察されています。一方、第六・第七頚椎間の関節では、周囲の筋組織が厚いため、関節包が圧迫されて視野が確保しにくいという問題点も指摘されています。そのような場合には、馬の頚椎の長軸に対して、尾背側-頭腹側方向に60~80°の角度になるようにカメラを操作することで、関節腔内での内診や骨片の精査が容易になるという提唱が成されています。

Photo courtesy of Vet Surg. 2023 Aug;52(6):801-809.

参考文献:
[1] Stewart RH, Reed SM, Weisbrode SE. Frequency and severity of osteochondrosis in horses with cervical stenotic myelopathy. Am J Vet Res. 1991 Jun;52(6):873-9.
[2] Ricardi G, Dyson SJ. Forelimb lameness associated with radiographic abnormalities of the cervical vertebrae. Equine Vet J. 1993 Sep;25(5):422-6.
[3] Tucker R, Hall YS, Hughes TK, et al. Osteochondral fragmentation of the cervical articular process joints; prevalence in horses undergoing CT for investigation of cervical dysfunction. Equine Vet J. 2022 Jan;54(1):106-113.
[4] Corraretti G, Vandeweerd JM, Hontoir F, et al. Anatomy and Ultrasound-Guided Injection of the Medial Branch of the Dorsal Ramus of the Cervical Spinal Nerves in the Horse: A Cadaveric Study. Vet Comp Orthop Traumatol. 2020 Nov;33(6):377-386.

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敗血症の新生子馬での好中球リンパ球比率

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ヒト医療に小児科があるのと同様に、子馬の病気に対する獣医療では、成馬とは異なる知識と技術が必要になります。ここでは、敗血症を起こした新生子馬における、好中球数とリンパ球数の比率(Neutrophil to lymphocyte ratio: NLR)について調査した知見を紹介します。近年、ヒトの感染症や炎症性疾患においては、NLR値による鑑別診断や予後予測が有用であることが示されています。

この研究では、米国のオハイオ州立大学、ルッド&リドル馬病院、及び、ハガード馬病院において、2009〜2019年にかけて診察された四日齢以下の新生子馬のうち、健常な子馬(203頭)、入院した子馬(993頭)、病気だが敗血症ではない子馬(686頭)、および、敗血症を発症した子馬(307頭、敗血症スコアが12点以上)における、医療記録の回顧的解析が行なわれ、オッズ比(OR)およびROC曲線下面積(AUC)の算出によって、NLR値による敗血症の診断能の評価が実施されました。

参考文献:
Samuels AN, Kamr AM, Reed SM, Slovis NM, Hostnik LD, Burns TA, Toribio RE. Association of the neutrophil-lymphocyte ratio with outcome in sick hospitalized neonatal foals. J Vet Intern Med. 2024 Jan 29. doi: 10.1111/jvim.16995. Online ahead of print.

結果としては、初診時のNLR値は、健常な子馬(6.61)、入院した子馬(3.55)、病気で非敗血症の子馬(4.35)に比較して、敗血症の子馬(2.00)では有意に低いことが分かりました。この結果、NLR値で3.55以下をカットオフ値とした場合、敗血症の子馬を鑑別診断する際に、鑑別能は86%(AUC)に上っていました(感度=72%、特異度=90%)。なお、入院した子馬での鑑別能は74%で(カットオフ値=5.27)、病気の非敗血症の子馬での鑑別能は70%となっていました(カットオフ値=5.90)。一般的に、NLR値の算出に必要な血球系の検査は、生化学検査よりも安価かつ簡易に実施できることから(用手カウントでの計測も可能)、馬の臨床現場での有益性も高いと考えられます。

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この研究では、生存した症例と死亡した症例で、初診時のNLR値を比較しており、敗血症の子馬においては、生存症例(2.60)よりも死亡症例(1.47)のほうが有意に低いことが分かりました。この結果、敗血症の子馬におけるNLR値で3.90以下をカットオフ値とした場合、死亡する症例を予後予測する際に、鑑別能は92%(AUC)に達していました(感度=86%、特異度=86%)。なお、入院した子馬における死亡症例の鑑別能は86%で(カットオフ値=4.10)、病気の非敗血症の子馬における死亡症例の鑑別能は73%となっていました(カットオフ値=5.50)。

この研究では、三種類の子馬の群(入院・非敗血症・敗血症)をまとめた場合の統計解析も行なっており、初診時のNLR値において、3.06以下をカットオフ値とした場合には、死亡する確率が三倍以上も高くなる(OR=3.21)ことが分かり、さらに、1.67以下をカットオフ値とした場合、死亡する確率が四倍以上も高い(OR=4.03)ことも示されています。なお、この群から未熟児の子馬(320日齢以下で出産)におけるNLR値を見てみると、生存症例(3.09)よりも死亡症例(1.48)のほうが有意に低く、いずれの値も、未熟児でない子馬よりも有意に低くなっていました。

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以上の結果から、病気の子馬を診療するときには、好中球数とリンパ球数の比率を算出することで、敗血症の鑑別診断や、予後予測の指標として有用であることが示唆されました。一般的に、敗血症を起こした子馬では、細菌食作用や辺縁移動により好中球数が明瞭に減少することに加えて、免疫応答や血液濃縮(脱水)によりリンパ球数は僅かに増加することが知られています。その結果、好中球数とリンパ球数の比率を計算することで、この二つの事象が相補的に増強されて、NLR値が敗血症の重篤度を高感度に反映できることになります。今回の研究でも、好中球数は、健常な子馬(8,400個/μL)よりも敗血症の子馬(2,800個/μL)のほうが顕著に少なく、リンパ球数は、健常な子馬(1,290個/μL)よりも敗血症の子馬(1,330個/μL)のほうが僅かに多くなっていました。

この研究では、NLR値の低さが、子馬の病気の重篤さや死亡率の高さに相関していました。その一方で、ヒトや犬猫の報告では、感染症・炎症性疾患・悪性腫瘍などにおいて、好中球増多とリンパ球減少を生じることから、子馬とは逆の傾向となり、NLR値の高さが、病気の重篤さ及び病態進行に相関することが示されています。また、ヒト医療におけるNLR値は、急性全身性炎症反応の4〜8時間以内に急激に変動することが報告されており、急性期蛋白(C反応性タンパク)よりも、菌血症の診断指標として優れていることも知られています。このため、子馬においても、入院中に経時的なNLR値の推移をモニタリングすることで、病態の良化や悪化の指標になりうるかを評価する必要があると考えられます。

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馬の円虫における複数ラクトン系駆虫剤への抵抗性

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近年では、多くの寄生虫が駆虫剤抵抗性(Anthelmintic resistance)を持つことが世界的な問題になってきており、ヒトと動物の双方における医療の観点から、駆虫剤の責任ある使用(駆虫剤スチュワードシップ:Anthelmintic Stewardship)の重要性も提唱されています[1]。ここでは、英国での調査において、複数のラクトン系駆虫剤に抵抗性を示す馬の円虫が確認された、という知見を紹介します。

参考文献:
Bull KE, Allen KJ, Hodgkinson JE, Peachey LE. The first report of macrocyclic lactone resistant cyathostomins in the UK. Int J Parasitol Drugs Drug Resist. 2023 Apr;21:125-130.

一般的に、馬の円虫を駆虫する際には、ベンジミダゾール系(フルベンダゾール)、および、ピリミジン系(ピランテル)の駆虫剤の有効性が著しく低下していることから、大環状ラクトン系の駆虫剤(イベルメクチン及びモキシデクチン)が主に用いられています。しかし、米国での2020年の報告では、馬の円虫が、大環状ラクトン系の駆虫剤に対する抵抗性を獲得していることが報告されており、この米国の事象では、アイルランドから導入された馬から同寄生虫が土着したことが示唆されています[2]。

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今回の英国での研究では、四箇所の馬の牧場において、イベルメクチン及びモキシデクチンの投与前と投与二週間後における糞便中の虫卵数が計測され、その減少度合いから、糞便虫卵減少検査(Faecal egg count reduction test: FECRT)が実施されました。そして、FECRTの測定値が95%以下であった場合には、駆虫剤抵抗性が獲得されたものと判断されました。また、この研究では、子馬と母馬で別々にFECRTが実施されており、また、ピリミジン系の駆虫剤に対する抵抗性も同時に評価されていました。

この研究では、調査対象となった牧場のうちの一つ(牧場A)において、子馬でのFECRT測定を行なったところ、イベルメクチンでは36~79%、モキシデクチンでは73%という測定値が出ており、両方の大環状ラクトン系の駆虫剤に対して、馬の円虫が抵抗性を獲得してしまったことが確認されました(ピランテルでのFECRTは81%)。一方、同牧場における母馬では、イベルメクチンとモキシデクチンの何れにおいても98%以上のFECRTが確認されました。また、他の三箇所の牧場では(牧場B~D)、子馬と母馬の両方において、いずれの大環状ラクトン系の駆虫剤に対しても、99%以上のFECRTが示されていました。

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このため、今回の調査対象となった英国の一牧場では、子馬の円虫において、複数の大環状ラクトン系駆虫剤に対する抵抗性が確認されたことになりました。今回の論文は、2020年の米国からの報告、および、2021年の豪州からの報告[3]に並んで、英国での初めての報告となっていました。馬の寄生虫の制御に関して、長期的な視点に立った場合、残念ながら、新しい作用機序を持つ駆虫剤の開発は、現在も将来も期待されていません。このため、イベルメクチンとモキシデクチンの有効性が低下した場合には、円虫による消化器疾患を制御することが困難となるため、馬の健康と福祉に深刻な悪影響を与えてしまう、という警鐘が鳴らされています。

この研究では、牧場Aの子馬での円虫において、イベルメクチンとモキシデクチンに比べて、ピランテルの方が僅かに優れたFECRT測定値が示されており、大環状ラクトン系に、ピリミジン系の駆虫剤を併用することで、駆虫効果を増強できる可能性が示唆されました。過去の文献でも、大環状ラクトン系とベンジミダゾール系の駆虫剤を併せて投与することで(例:モキシデクチン+フルベンダゾール)、大環状ラクトン系に対する抵抗性の発現を遅くできることが報告されています(例え、ベンジミダゾール系駆虫剤の有効性が、50%を下回っていたとしても)[4]。

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一般的に、馬の寄生虫における駆虫剤抵抗性を防ぐためには、放牧地から馬糞を除去することや、新しく入厩する馬を一定期間だけ隔離することなど、幾つかの管理指針が防疫に役立つことが知られています[5]。また、他の家畜で試みられているような、選択的な駆虫プログラム(重篤な寄生虫感染している個体を主な標的として、駆虫剤の投与を優先的に実施する手法)によって駆虫剤の総使用量を抑えることで、その有効性を温存できることも報告されています[6]。なお、今回の研究での牧場Aでは、古典的な、全頭に対して定期的に駆虫する手法が実施されていました。

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参考文献:
[1] Anthelmintic Stewardship and Sustainabilit. BEVA. Dec 17th, 2021.
[2] Nielsen MK, Banahan M, Kaplan RM. Importation of macrocyclic lactone resistant cyathostomins on a US thoroughbred farm. Int J Parasitol Drugs Drug Resist. 2020 Dec;14:99-104.
[3] Abbas G, Ghafar A, Hurley J, et al. Cyathostomin resistance to moxidectin and combinations of anthelmintics in Australian horses. Parasit Vectors. 2021 Dec 4;14(1):597.
[4] Scare JA, Leathwick DM, Sauermann CW, et al. Dealing with double trouble: Combination deworming against double-drug resistant cyathostomins. Int J Parasitol Drugs Drug Resist. 2020 Apr;12:28-34.
[5] Corbett CJ, Love S, Moore A, et al. The effectiveness of faecal removal methods of pasture management to control the cyathostomin burden of donkeys. Parasit Vectors. 2014 Jan 24;7:48.
[6] Leathwick DM, Sauermann CW, Nielsen MK. Managing anthelmintic resistance in cyathostomin parasites: Investigating the benefits of refugia-based strategies. Int J Parasitol Drugs Drug Resist. 2019 Aug;10:118-124.

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馬の文献:仙腸関節亜脱臼(Dyson et al. 2003)

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「仙腸関節領域の疼痛:74頭の症例馬の臨床診断」
Dyson S, Murray R. Pain associated with the sacroiliac joint region: a clinical study of 74 horses. Equine Vet J. 2003 May;35(3):240-5.

この症例論文では、馬の仙腸関節疾患の診断法を確立させるため、英国の二次馬病院において、1997~2002年にかけて、仙腸関節領域の疼痛を呈した74頭の馬における、医療記録の回顧的解析が実施されました。

この研究では、仙腸関節痛を呈しているという推定診断を下すための基準として、同部位のX線検査での異常所見、もしくは、仙腸関節の局所麻酔による歩様良化の所見のいずれかを取り込み基準としていました。そして、74頭の症例馬のうち、温血種の割合が51%を占めており(この病院における全症例に占める温血種の割合は29%)、この品種が有意な危険因子となっていました。その他には、症例馬は対照馬と比較して、高齢(中央値:症例馬9.8歳 vs 対照馬7.8歳)、キ甲の高さ(168cm vs 163cm)、体重の重さ(578kg vs 554kg)などが、統計的には有意な危険因子となっていました。

この研究では、仙腸関節痛の症例馬における外観として、仙骨突起部の非対称性を示した馬は5%に留まっており(背側筋の左右非対称性の萎縮はあり)、臨床症状としては、胸腰椎部の可動域減少(症例馬の35%)、仙骨突起部の圧痛(16%)、片方の後肢で長時間駐立するのを躊躇する(19%)などが認められませんでした。また、歩様検査では、後肢における直線的な蹄弧を示した馬が75%に上っており、他の所見としては、後肢跛行(20%)、前肢跛行(7%)、複数肢の跛行(10%)などが認められました。

この研究では、仙腸関節痛の症例馬において、シンチグラフィーにて仙腸関節部の放射線取り込み増加が認められた馬は99%に上っており、また、仙腸関節の診断麻酔(上写真)によって歩様改善が認められた馬も100%となっていました。一方で、症例馬のうち、仙腸関節部のみに病態が限局していた馬は47%に過ぎず、胸腰椎部や後肢の疼痛性病態を併発している症例が多かったことが示されました。

このため、馬の仙腸関節疾患においては、同関節での診断麻酔による陽性反応が、推定診断を下すときに有用であることが示唆されており、日本では、シンチグラフィー機器が未整備であることを考えると、関節麻酔による診断法が特に有益であると推測されます。ただ、74頭の症例馬のうち、仙腸関節以外にも疼痛箇所を生じていた症例が過半数であったことから、背部や後肢など、他の部位の疾患を除外診断すること、及び、そのような併発疾患の確定診断を下すことで、適切な治療方針の決定に役立つと考えられました。

Photo courtesy of Equine Vet J. 2003 May;35(3):240-5.

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若齢馬の「種子骨炎」による長期的な影響

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若齢馬の病気を診療するときには、成馬になったときのパフォーマンスへの影響も考慮する必要があります。一般的に、馬の近位種子骨のX線画像における脈管溝の増加や骨形状の不整は、いわゆる「種子骨炎(Sesamoiditis)」という用語で呼ばれており、その臨床的な有意性や、将来的な競走能力への影響については論議があります。

ここでは、馬の「種子骨炎」における新たなグレード分類法と、長期的な競走成績との関連性を調査した知見を紹介します。下記の論文では、2016〜2017年にかけて、北米の六箇所の競売に掛かった当歳馬(2,508頭)及び二歳馬(436頭)において、競売前X線画像の解析と種子骨病態のグレード分類、及び、それらの馬たちの二歳〜四歳での競走成績との関連性が多因子回帰分析で評価されました。

参考文献:
Peat FJ, Kawcak CE, McIlwraith CW, Keenan DP, Berk JT, Mork DS. Radiological findings in the proximal sesamoid bones of yearling and 2-year-old Thoroughbred sales horses: Prevalence, progression and associations with racing performance. Equine Vet J. 2024 Jan 18. doi: 10.1111/evj.14051. Online ahead of print.

この研究では、X線画像上での近位種子骨の病態におけるグレード分類として、下表の基準が適用されました。
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結果としては、レース出走を果たした馬の割合は、グレード0脈管溝(73%)に比較して、グレード3脈管溝(52%)では有意に低いことが分かりました。一方、グレード1脈管溝(74%)およびグレード2脈管溝(69%)では、グレード0脈管溝との有意差は認められませんでした。なお、グレード3脈管溝の所見を示した馬は、当歳馬のうち僅か0.8%で、二歳馬でも僅か0.4%に留まっていました。

この研究では、レース出走を果たした日齢は、グレード0脈管溝(993日齢)に比較して、グレード3脈管溝(1,047日齢)と、54日間も遅くなることが分かりました。また、四歳までの総出走回数は、グレード0脈管溝(平均12.7回)に比較して、グレード3脈管溝(平均9.9回)では有意に少ないことが分かりました。

この研究では、遠軸面の新生骨を認めた馬では、レース出走を果たした馬の割合が有意に低くなる(62%)ことが示されていました(それ以外の馬では73%)。また、上記のグレード分類以外の病変として、尖端部または遠軸面の骨片形成(下写真)を認めた馬では、レース出走を果たした馬の割合が有意に低くなる(55%)ことも示されています(それ以外の馬では78%)。なお、遠軸面の新生骨の所見を示した馬は、当歳馬のうち1.6%で、二歳馬のうち2.1%となっていました。

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この研究では、四歳までの総獲得賞金は、前肢の種子骨における遠軸面の新生骨を認めた馬では有意に少ない(平均7,236ドル。それ以外の馬では平均15,734ドル)ことが分かりました(約54%の減額)。また、一レースごとの獲得賞金を見ても、前肢の種子骨における遠軸面の新生骨を認めた馬では有意に少ない(平均992ドル。それ以外の馬では平均1,845ドル)ことが分かりました(約46%の減額)。

以上の結果から、若齢馬の種子骨のX線画像所見としては、幅の広い脈管溝が三つ以上あることや、遠軸面の新生骨があることが、競走成績の低下に繋がるというデータが示されました。今回の研究では、エコー病変との相関は評価されていませんが、これらの骨組織の所見が、脚部繋靭帯の損傷と関連していて、長期的な競走能力の減退に寄与した可能性があると考察されています。また、遠軸面の骨片形成も、競走能力に悪影響を与えるというデータも示されており、種子骨の剥離骨折、もしくは、石灰化を伴うような重篤な繋靭帯損傷を起こした結果であると推測されています。

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Photo courtesy of Equine Vet J. 2024 Jan 18. doi: 10.1111/evj.14051.

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馬の蹄葉炎への鎮痛剤はインスリンにも有益

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一般的に、クッシング病の罹患馬においては、インスリン調節異常(Insulin dysregulation: ID)を引き起こし、高インスリン血症関連性の蹄葉炎(Hyperinsulinemia-associated laminitis)を併発することが多いことから、長期的な疼痛管理のために、フェニルブタゾン等の非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)の投与が必要となります。一方で、ヒトの医療では、糖尿病患者へのNSAID投与によって、膵臓の活動亢進が起こり、インスリン調節異常を緩和できることが知られています[1,2]。

ここでは、馬のフェニルブタゾン投与による、インスリン濃度や血糖値への影響を評価した知見を紹介します。下記の研究では、七頭のインスリン調節異常の発症馬(ID発症馬)、及び、九頭の健常馬に対して、プラセボ(生食)またはフェニルブタゾンを9日間投与(静注)した後、経口ブドウ糖負荷試験(Oral glucose test: OGT)におけるインスリン血中濃度と血糖値の反応性が評価及び比較されました。

参考文献:
Kemp KL, Skinner JE, Bertin FR. Effect of phenylbutazone on insulin secretion in horses with insulin dysregulation. J Vet Intern Med. 2024 Feb 16. doi: 10.1111/jvim.17013. Online ahead of print.

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結果としては、ID発症馬でのOGTにおいて、インスリン血中濃度の曲線下面積は、プラセボ群(22.9mIU/mL*min)よりも、フェニルブタゾン投与群(17.7mIU/mL*min)のほうが有意に低いことが分かりました。また、OGTでの血糖値の曲線下面積を見ても、プラセボ群(平均2,847mmol/L*min)よりも、フェニルブタゾン投与群(2,429mmol/L*min)のほうが有意に低くなっていました。一方で、健常馬においては、いずれの指標においても、フェニルブタゾン投与による有意な影響は認められませんでした。

このため、馬におけるフェニルブタゾン投与では、鎮痛効果だけでなく、インスリン調節異常に対する効能も期待できることが示唆されています。馬のクッシング病に続発する蹄葉炎に対しては、高インスリン血症を制御する目的で、メトフォルミン(糖尿病薬)やピオグリタゾン(血糖降下薬)が投与されることもありますが、これらの薬剤は、馬での生体利用効率や効能の低さから、実用性が低いと考えられています。今後は、実験的に示されたNSAIDによるID緩和効果が、実際の蹄葉炎の罹患馬において、臨床的に有意なレベルの効能を示すかどうかを検証していく必要があると言えます。

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一般的に、フェニルブタゾンを含むNSAIDでは、COX-1/2等の炎症介在物質を抑制して、消炎鎮痛効果が示されますが、それに併行して、プロスタグランディンE2(PGE2)などのダウンストリーム精製を減退させることも知られています。一方、膵臓では、ブドウ糖の三型プラスタノイド受容体(EP3)において、PGE2が拮抗伝達物質として作用しています[1]。このため、NSAID投与によりPGE2精製が抑えられると、インスリンの分泌促進につながり、糖尿病患者の血糖値を低下させる効能が得られることが分かっています[2]。このため、今回の研究でのデータも、同様な発現機序に由来するものと仮説されています。

過去の文献では、馬にフェニルブタゾンを五日間投与した場合に、血糖値は有意に下がるものの、インスリンと血糖の動力学には影響を与えないという知見がありますが[3]、これは、健常馬を用いた実験であったため、ID発症馬を用いた今回の実験とは異なるデータが示されたと考察されています。また、他の文献では、ID発症馬の消化管におけるグルカゴン様ペプチド二型(GLP2)が活性増加している可能性が示唆されており[4]、今回の研究において、健常馬よりもID発症馬が、投与前の時点で高い血糖値を示した理由も、これに起因すると推測されています(GLP2には腸管栄養作用があるため)。

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更に、ID発症馬では、消化管ホルモンであるインクレチン(GLP1及びGIP)が増加して、インスリン分泌上昇の25%を担っているという知見もあることから[5]、この機序を介して、NSAIDによるインクレチン抑制、及び、インスリン分泌低下の効能が示された一因になったとも考察されています。加えて、ID発症には、高インスリン血症の他に、インスリン抵抗性(Insulin resistance: IR)も関与しており、IR発症馬では軽度炎症が存在しているという知見を踏まえると[6]、今回の研究で示された、NSAID投与によるインスリン血中濃度の低下は、膵臓への作用だけでなく、他の臓器/組織におけるIR病態の改善が寄与している可能性もあると仮説されています。

この研究では、九日間のフェニルブタゾン投与によって、副作用を示すことなく、本来の鎮痛作用に加えて、インスリン調節異常を改善するという付帯的な効能が示された点が興味深いと言えます。一般的に、馬に対する長期的なNSAID投与では、胃潰瘍や大腸炎などが懸念されますが(食欲低下や軟便)、短期間の投与では副作用のリスクは低いことが提唱されています。このため、将来的な研究では、NSAID投与とID発症の関連性を解明して、高インスリン血症に関連した蹄葉炎における薬物療法の選択肢として、NSAID投与の有用性を検証していくことが重要であると考察されています。

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参考文献:
[1] Kimple ME, Keller MP, Rabaglia MR, et al. Prostaglandin E2 receptor, EP3, is induced in diabetic islets and negatively regulates glucose- and hormone-stimulated insulin secretion. Diabetes. 2013 Jun;62(6):1904-12.
[2] Bellucci PN, Gonzalez Bagnes MF, et al. Potential Effects of Nonsteroidal Anti-Inflammatory Drugs in the Prevention and Treatment of Type 2 Diabetes Mellitus. J Pharm Pract. 2017 Oct;30(5):549-556.
[3] Zicker SC, Brumbaugh GW. Effects of phenylbutazone on glucose tolerance and on secretion of insulin in healthy geldings. Am J Vet Res. 1989 May;50(5):743-6.
[4] de Laat MA, Fitzgerald DM, Sillence MN, et al. Glucagon-like peptide-2: A potential role in equine insulin dysregulation. Equine Vet J. 2018 Nov;50(6):842-847.
[5] de Laat MA, McGree JM, Sillence MN. Equine hyperinsulinemia: investigation of the enteroinsular axis during insulin dysregulation. Am J Physiol Endocrinol Metab. 2016 Jan 1;310(1):E61-72.
[6] Vick MM, Murphy BA, Sessions DR, et al. Effects of systemic inflammation on insulin sensitivity in horses and inflammatory cytokine expression in adipose tissue. Am J Vet Res. 2008;69:130-139.

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