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馬の文献:喉頭片麻痺(Bischofberger et al. 2013)

「喉頭形成術の術後に声門裂最大領域を得るためのインプラントの最適な緊張、位置、および数」
Bischofberger AS, Wereszka MM, Hadidane I, Perkins NR, Jeffcott LB, Dart AJ. Optimal tension, position, and number of prostheses required for maximum rima glottidis area after laryngoplasty. Vet Surg. 2013; 42(3): 280-285.

この研究論文では、馬の喉頭片麻痺(Laryngeal hemiplegia)に有用な外科的療法を検討するため、22個の馬の屍体喉頭(Cadaveric equine larynges)に対する喉頭形成術(Laryngoplasty)において、声門裂の最大領域(Maximum rima glottidis area)を得るためのインプラントの最適な緊張、位置、および数(Optimal tension, position, and number of prostheses)が評価されました。

この研究では、試験された三本のインプラントのうち最初の二本は、外側(輪状軟骨の正中から1cmの位置)および背側(輪状軟骨の正中の位置)に設置されており、これらは、背側輪状披裂筋(Cricoid arytenoid dorsalis muscle)の外側神経筋区画の走行(Orientation of the lateral neuromuscular compartment)に一致しており、最も一般的なインプラントの設置箇所とされています(Ahern et al. Vet Surg. 2010;39:1)。また、三本目のインプラントは頭側(輪状軟骨の中央堤)に設置されており、これは、背側輪状披裂筋の内側神経筋区画の走行(Orientation of the medial neuromuscular compartment)に一致しており、最も一般的な代替的・付加的な設置箇所(Alternative or additional location)として提唱されています(Perkins et al. AJVR. 2010;71:1003, Cramp et al. EVJ. 2009;41:328)。

結果としては、声門裂の横断面積(Cross-sectional area)は、インプラントの緊張度合いが上昇するに連れて増加することが分かり(20ニュートンが最大)、15ニュートンの緊張を掛けた状態では、二本または三本のインプラントを設置した場合のほうが、一本だけの場合に比較して、有意に大きな声門裂の横断面積が達成されたことが報告されています(三箇所のどのインプラントと比較しても)。他の文献では、喉頭形成術におけるインプラントの牽引角度としては、0~30度の場合において、70度の場合に比べて、有意に優れた披裂軟骨外転(Arytenoid cartilage abduction)が達成できるという知見が示されています(Cramp et al. EVJ. 2009;41:328)。そして、これらのインプラントの緊張度としては、14.7ニュートンまたは15.2ニュートンの牽引力において、最大の披裂軟骨外転が達成できることが報告されています(Perkins et al. AJVR. 2010;71:1003, Cramp et al. EVJ. 2009;41:328)。

一般的に、馬の喉頭形成術では、ポリブチラート被覆されたNo.5のポリエステルの編み糸(5 braided polyester coated with polybutilate)などの非吸収性縫合糸(Non-absorbable suture)を、一本または二本用いて、それらを丸針(Taper needle)にて設置する術式が推奨されています(Ahern et al. Vet Surg. 2010;39:1)。このようなインプラントにおいては、嚥下や発声における生理学的な負荷(Physiologic loads during swallowing or vocalization)である25ニュートンが掛かっても、一本のインプラント破損にも至らないことが示唆されています(Rossignol et al. Vet Surg. 2006;35:49)。また、反復的な負荷試験においても、生理学的な負荷が一万回作用した場合にも、インプラント破損には至らないことが報告されています(Ahern et al. Vet Surg. 2010;39:1)。

この研究では、インプラントが二本使われる場合には、外側+背側に設置されることで声門裂の最大横断面積が達成されており、他の二種類の組み合わせパターン(外側+頭側、または、背側+頭側)よりも優れていたことが報告されています。このため、外側+背側の二箇所にインプラントが設置された場合に比べて、三本のインプラントを三箇所(外側+背側+頭側)に設置することの利点は低い(少なくとも15ニュートンに緊張度においては)という考察がなされています。しかし、他の文献では、これらの三箇所のインプラントは、それぞれ異なった機序で作用していると考えられており(Cheetham et al. EVJ. 2008;40:70, Cramp et al. EVJ. 2009;41:328)、これらを組み合わせる際の相乗効果(Synergistic effect)については、更なる検証を要すると考察されています。また今回の研究では、声門裂の総面積(Total area)のみが評価対象となっており、披裂軟骨がどの程度の背側・外側・尾側への変位または回転(Dorsal, lateral, or caudal displacement or rotation)を生じているのかに関しては評価されていませんでした。

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馬の文献:喉頭片麻痺(Fjordbakk et al. 2012)

「頚部屈曲時の動的喉頭圧潰に対する新治療:改良型支持手綱」
Fjordbakk CT, Holcombe S, Fintl C, Chalmers H, Strand E. A novel treatment for dynamic laryngeal collapse associated with poll flexion: the modified checkrein. Equine Vet J. 2012; 44(2): 207-213.

この研究論文では、馬の動的喉頭圧潰(Dynamic laryngeal collapse)に有用な保存性療法(Conservative treatment)を検討するため、頚部屈曲(Poll flexion)に起因する動的喉頭圧潰の確定診断(Definitive diagnosis)が下された十四頭の速歩競走馬(Trotter racehorse)に対して、通常の支持手綱(Conventional checkrein)、または、頚部屈曲を制限するように頭頂部への緊張を掛ける改良型支持手綱(Modified checkrein)を装着させて、トレッドミル運動時の内視鏡検査(Endoscopy during treadmill exercise)、および、気管内圧(Tracheal pressure)の測定が行われました。

結果としては、改良型の支持手綱を装着させることで、効果的に頚部屈曲の制限が達成できたことが報告されています。その結果、内視鏡検査における披裂軟骨圧潰(Arytenoids cartilage collapse)および声帯圧潰(Vocal fold collapse)の病態スコアが有意に改善して、気管内陰圧(Tracheal negative pressure)も有意に減少していた事が示されました。このため、動的喉頭圧潰の罹患馬(もしくは発症が疑われる馬)に対しては、改良型支持手綱を用いて頚部屈曲を制限することで、圧潰の予防および上部気道機能の改善(Improvement in upper airway function)が期待できることが示唆されました。上写真左は、通常の支持手綱と、その装着時の内視鏡所見(動的喉頭圧潰が発現している)で、上写真右は、改良型の支持手綱と、その装着時の内視鏡所見(動的喉頭圧潰が予防できている)を示しています。

一般的に、馬における片側性動的喉頭圧潰は、片側性披裂軟骨圧潰(Unilateral arytenoid cartilage collapse)および同側声帯圧潰(Ipsilateral vocal fold collapse)を併発した病気で、初期経過(Early progression)の反回喉頭神経障害(Recurrent laryngeal neuropathy)において、背側輪状披裂筋(Cricoarytenoideus dorsalis muscle)と輪状甲状筋(Cricothyroideus muscle)の両方の異常が原因で、発症に至ると推測されています。一方、両側性動的喉頭圧潰は、披裂喉頭蓋襞軸性偏位(Axial deviation of aryepiglottic folds)や喉頭蓋縁背内側偏位(Dorsomedial deviation of the epiglottic margins)を併発した病気で、頚部屈曲を要するハーネスレース競走馬に好発し、吸気性陰圧の減少(Decreased negative inspiratory pressures)から二次性披裂軟骨圧潰を起こして、発症に至ると推測されています。

他の文献では、馬の両側性動的喉頭圧潰に対して、両側性の声嚢声帯切除(Bilateral ventriculocordectomy)による競走能力の回復(Restoration of racing performance)や呼吸器雑音の減退(Reduction of respiratory noise)は、期待できないことが報告されています(Fjordbakk et al. Vet Surg. 2008;37:501)。一方、馬の頭部位置(Head position)は、上部気道インピーダンス(Upper airway impedance)に影響することが確認されており(Petche et al. EVJ. 1995;18:18)、また、頚部屈曲を促すように手綱へと強い緊張力(Tension on reins)が掛けられた場合には、吸気時の気管内最大陰圧(Negative tracheal peak inspiratory pressures)が有意に上昇することが報告されています(Strand et al. EVJ. 2009;41:59)。そして、今回の研究においても、これらの知見を裏付けるように、過剰な頚部屈曲を制限するような改良型支持手綱を使うことで、動的喉頭圧潰の発現を防ぎ、上部気道機能を改善する効果が期待できる、というデータが示されました。

この研究で試験された改良型支持手綱は、プロトタイプであるため、かさばって扱いにくく、また、金属製のプレートが用いられているため、馬が突発的または予想外に頭部を振り動かした際には(Sudden or unexpected head tossing)、馬自身や御者に怪我の危険がおよぶ可能性が指摘されています。このため、この改良型の支持手綱を実用するためには、デザインの精錬(Refinement)を要すると考察されていますが、この場合にも、頭頂部手綱(Overhead rein)と頚部革紐(Neck strap)のバランス機能は失われてはならない、という提唱がなされています。

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馬の文献:喉頭片麻痺(Perkins et al. 2011)

「声嚢声帯切除術を喉頭形成術より前に行うことによる馬の披裂軟骨外転への影響の生体外的評価」
Perkins JD, Meighan H, Windley Z, Troester S, Piercy R, Schumacher J. In vitro effect of ventriculocordectomy before laryngoplasty on abduction of the equine arytenoid cartilage. Vet Surg. 2011; 40(3): 305-310.

この研究論文では、馬の喉頭片麻痺(Laryngeal hemiplegia)に対する外科的療法に有用な術式を評価するため、13頭の健常馬から採取した喉頭組織を用いて、まず右側の披裂軟骨(Arytenoid cartilage)を喉頭形成術(Laryngoplasty)によって最大外転(Maximal abduction)させた後(=健常馬の正常な右側喉頭筋の作用を再現するため)、左側の披裂軟骨も喉頭形成術によって最大外転させ、その際の最大牽引力(Maximum force)を測定してから、喉頭形成術を取り除き、左側の声嚢声帯切除術(Ventriculocordectomy)を施してから、再び左側に喉頭形成術を行い、前述の最大牽引力時またはその過程における、左右角度商(Left:right angle quotients)および声門横断面積比(Glottic cross-sectional area ratios)の解析が行われました。

結果としては、喉頭形成術だけが行われた場合に比べて、声嚢声帯切除術してから喉頭形成術が行われた場合のほうが、左右角度商および声門横断面積比が、有意に高い値を示しました。また、後者の術式のほうが、左右角度商および声門横断面積比が0.8となる段階での牽引力が、それぞれ12%および45%も低くて済むことが報告されています。これは、披裂軟骨の内側支持機能(Medial supporting function)を担っている声帯(Vocal cord)が無くなることで、披裂軟骨を外転させるのに必要な牽引力が、少なくて済んだためと考えられます。このため、喉頭片麻痺の罹患馬に対する外科的療法においては、喉頭形成術の前に声嚢声帯切除術を行うことで、より良好な披裂軟骨の外転が達成でき、また、それに要する牽引力が低いため、披裂軟骨の筋突起(Muscular process of arytenoid cartilage)に対する損傷度合いや、軟骨の亀裂を生じる危険性を抑制できることが示唆されました。

一般的に、馬の喉頭片麻痺に対する外科的療法では、滅菌手術(Sterile surgery)を要する喉頭形成術を先に行い、麻酔下の馬を無菌室(Clean room)の外に出した後、非滅菌手術(Non-sterile surgery)である喉頭切開術(Laryngotomy)および声嚢声帯切除術を行う、という順番での術式が選択されることが通例的です(Brown et al. EVJ. 2003;35:570)。しかし、今回の研究では、声嚢声帯切除術→喉頭形成術という順番で手術をしたほうが、より効率的に披裂軟骨の外転を誘導できる、という提唱がなされています。しかし、今回の生体外実験においては、喉頭形成術→声嚢声帯切除術という治療郡は含まれていないため、「手術の順番を変えることで治療効果が上がる」という結論付けをするには、必ずしも適切な研究デザインではありませんでした。

この研究では、適切な喉頭形成術を行う時の牽引力を算出するため、左右角度商および声門横断面積比が0.8(つまり80%の披裂軟骨外転)となる段階を、“適切な披裂軟骨外転”と定義しています。他の文献では、適切な喉頭形成術の度合いとして、88%の最大外転(Rakesh et al. EVJ. 2008;40:629)、80~90%の最大外転(Adreani et al. Equine Respiratory Medicine and Surgery, 1st Eds. 2007:497)、などの定義づけがなされています。

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馬の文献:喉頭片麻痺(Parente et al. 2011)

「輪状披裂関節強直を促進させる喉頭形成術の変法アプローチ」
Parente EJ, Birks EK, Habecker P. A modified laryngoplasty approach promoting ankylosis of the cricoarytenoid joint. Vet Surg. 2011; 40(2): 204-210.

この研究論文では、馬の喉頭片麻痺(Laryngeal hemiplegia)の治療のための喉頭形成術(Laryngoplasty)に有用な術式を検討するため、八頭の健常馬を用いて、三頭には通常の喉頭形成術、残りの五頭には輪状披裂関節強直(Ankylosis of the cricoarytenoid joint)を促進させる喉頭形成術の変法アプローチ(Modified laryngoplasty approach)を実施して、術後の一日目と三ヵ月目における内視鏡検査(Endoscopy)での左右対称性商(Right:Left symmetry quotient)の算出、および、三ヶ月目における経喉頭インピーダンス(Translaryngeal impedance)の測定と組織学的検査(Histologic evaluation)が行われました。

この研究で検討された、喉頭形成術の変法では、通常の喉頭組織への外側アプローチの後、背側輪状披裂筋(Criocoarytenoideus dorsalis muscle)の付着部を筋突起(Muscular process)から剥離して、頭側へと反転(Cranial retraction)させることで、輪状披裂関節を露出させました。次に、関節包(Joint capsule)を切開して、電動バーを用いて関節軟骨(Articular cartilage)が除去されました。そして、通常の喉頭形成術と同様に、Ethbond®装具による筋突起への牽引が施されました。

結果としては、喉頭形成術の変法が行われた馬では、通常の術式が行われた馬に比べて、術後の三ヶ月目における披裂軟骨外転(Arytenoid abduction)の緩みが少なく、また、経喉頭インピーダンスと、装具が筋突起を亀裂(Fissure)させていた割合が、有意に低かった事が示されました。さらに、喉頭形成術の変法では、組織学的検査において、輪状披裂関節の繊維性架橋形成(Fibrous bridging formation)が達成されたことが報告されています。このため、喉頭片麻痺の罹患馬に対しては、上述のような喉頭形成術の変法を応用することで、輪状披裂関節の外科的強直を達成して、インプラントの緩みや破損(Loosening and failure of implants)の危険性を抑え、より良好な上部気道機能の回復(Restoration of upper airway function)が期待できることが示唆されました。

一般的に、馬の喉頭片麻痺に対する喉頭形成術においては、披裂軟骨外転の緩みが手術失敗および治療効果の減退につながる事が知られており、喉頭筋の除神経(Denervation of the laryngeal muscles)によっても治療成績は改善しないことが示されています(Davenport et al. Vet Surg. 2001;30:417)。また、筋突起に装具を通す際に、骨用外套針(Bone trocar)を使って穴を開けることで、筋突起の亀裂を予防できるという知見もありますが(Rossignol et al. Vet Surg. 2006;35:49)、生体内試験(In vivo experiment)による効能は証明されていません。このため、今回の研究で試みられた術式のように、筋突起を牽引した状態で、輪状披裂関節の繊維性強直が起これば、インプラントの残存性に頼ることなく、披裂軟骨を外転位置に保持する作用を促進できると考えられました。

この研究では、関節軟骨の除去と、喉頭形成術を介しての不動化(Immobilization)によって、輪状披裂関節の強直が達成されており、他の人間の医学分野の文献においても、輪状披裂関節は他の骨格筋器官(Musculoskeletal system)に類似した構造と機能を有する可動関節(diarthrodial joints)であることが報告されています(Paulsen et al. Osteoarthritis Cartilage. 1999;7:505)。馬の喉頭形成術に関する他の文献では、馬の輪状披裂関節に対するレーザー焼烙(Laser ablation)や、ポリメタクリル酸メチル(Polymethylmethacrylate: PMMA)による関節固定(Arthrodesis)なども試みられていますが(Hawkins et al. Proc ACVS. 2008, Cheetham et al. EVJ. 2008;40:584)、披裂軟骨外転の長期的な持続性(Long-term persistency)については評価されていません。

この研究では、偽手術(Sham surgery)の治療郡は設定されておらず、関節軟骨の切除なしでの、背側輪状披裂筋の剥離および関節包の切開というそれぞれのステップが、披裂軟骨の外転に対してマイナスに作用したかに関しては、明確には評価されていません。また、喉頭形成術の変法において、筋肉を反転させることで、筋突起から輪状軟骨(Cricoid cartilage)へと装具を渡す際に適切な牽引力を作用させやすかったり、筋肉の深部に装具を通す過程で生じるたるみを無くす事ができる、という利点も指摘されており、輪状披裂関節を強直させる過程そのものが、どれ程のプラスに作用したのかは定かではありません。

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馬の文献:喉頭片麻痺(Ahern et al. 2010)

「馬の喉頭形成術の力学的評価」
Ahern BJ, Parente EJ. Mechanical evaluation of the equine laryngoplasty. Vet Surg. 2010; 39(6): 661-666.

この研究論文では、馬の喉頭片麻痺(Laryngeal hemiplegia)の治療のための喉頭形成術(Laryngoplasty)に有用な術式を検討するため、46頭の健常馬から採取した披裂軟骨(Arytenoid cartilage)および輪状軟骨(Cricoid cartilage)を用いて、それぞれの軟骨に三種類の装具(Ethilon®, Ethibond®, Fiberwire®)を、手術を再現するように挿入し、単一回および周期性負荷試験(Single and cyclic loading test)による力学的評価(Mechanical Evaluation)が行われました。

結果としては、単一回負荷試験において、披裂軟骨に対する装具強度(Strength)は、Ethibond®>Ethilon®=Fiberwire®の順になっており、輪状軟骨に対する装具強度は、Ethibond®>Ethilon®の順になっていました。また、披裂軟骨および輪状軟骨に対する装具硬度(Stiffness)は、Ethibond®=Fiberwire®>Ethilon®の順になっていました。さらに、周期性負荷試験において、披裂軟骨の筋突起(Muscular process)および輪状軟骨の尾側縁(Caudal edge)に対する破損度(Distraction)は、Ethibond®<Ethilon®=Fiberwire®の順になっていました。このため、馬の喉頭軟骨に対しては、Ethibond®装具のほうが、Ethilon®およびFiberwire®装具に比べて、物理的強度が高く、軟骨組織の破損を起こしにくい事から、馬の喉頭形成術に用いるインプラントとしては、有意に優れていることが示唆されました。

この研究では、披裂軟骨に対して、Ethilon®のほうがEthibond®よりも強度が低かった要因としては、インプラントの直径が細かった事が上げられているのに対して、Fiberwire®のほうがEthibond®よりも強度が低かった要因としては、使用したのが付属していた角針(Cutting needle)であったため、装着箇所の破損を起こし易くなった事が上げられています。この裏付けとしては、針穴ではなく軟骨縁に負荷が集中する輪状軟骨に対しては、Fiberwire®とEthibond®の強度に有意差が無かった事があります。つまり、同じ丸針(Non-cutting edge)を用いた場合には、披裂軟骨の筋突起(Muscular process)に対しても、Fiberwire®とEthibond®が同レベルの強度を有する可能性もあると考察されています。

この研究では、披裂軟骨および輪状軟骨に対して、Ethilon®のほうがEthibond®およびFiberwire®よりも硬度が低かった要因としては、Ethilon®が単一繊維ナイロン糸(Monofilament nylon suture)、Ethibond®がポリエステルの編み糸(Braided polyester suture)、Fiberwire®がポリエチレン基質の編み糸(Polyethylene-based braided suture)であるという、それぞれのインプラントの組成の違いに由来する、という考察がなされています。

この研究では、周期性負荷試験によって、いずれの装具においても、披裂軟骨および輪状軟骨の完全破損(Complete distraction)を起こした検体はありませんでした。しかし、この周期性試験では、一万回の周期性負荷が与えられた時点で終了されており、これは、競走馬における毎分180回の呼吸数に換算すると、55分間の運動にしか相当しません。また、実際の臨床症例においては、嚥下(Swallowing)の回数などもインプラントへの負荷に加算されると推測されることから、喉頭形成術の耐用日数(Fatigue life)の評価のためには、更に負荷回数を増やした周期性試験を行う必要がある、という考察がなされています。

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手足口病が減った!新型コロナはナゼ減らない?

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新型コロナウイルス感染症に対する私たちの対策は、本当に不十分なのでしょうか?

日本での新型コロナの感染拡大が報じられるなか、子供の「手足口病」の患者数が、昨年の100分の一だったというニュースが目に留まりました。手足口病とは、エンテロウイルスの感染によって起こり、ヘルパンギーナやプール熱と合わせて、子供の三大夏風邪と呼ばれています。このウイルスは、飛沫感染と接触感染によって伝搬し、マスク着用や手洗い・消毒による予防が重要であると言われており、新型コロナの対策と同じです。つまり、昨今の新型コロナ感染への予防対策が奏功したことが、昨年よりも患者数が大きく減った要因であると推測されています。

ここで不思議に感じるのが、なぜマスク着用や手洗いによって手足口病は大幅に減っているのに、新型コロナは感染拡大が続いているのか?という点です。この二種類はいずれもRNAウイルスで、粒子サイズはあまり変わりませんので、マスクによる飛沫対策に大きな差があるとは思えません。また、エンテロウイルス(ノンエンベロープウイルス)は、コロナウイルス(エンベロープウイルス)に比べて、むしろ、アルコールや消毒剤に抵抗力が強いので、手洗い・消毒が新型コロナに効いていない訳でもなさそうです。

もし、大人と子供の違いを挙げるとすると、いわゆるエピセンターと呼ばれている場所(夜の街、飲食店、ライブハウスなど)には、子供だけでは殆ど行かないという点です。また、満員電車などの人が密集する場所も、子供よりも大人のほうが接する機会が多そうな気がします。そう考えると、私たち大人も子供に負けないように、みんなで感染対策に取り組んで、新型コロナのパンデミックを抑え込んでいくべきなのかもしれません。子供たちが頑張って感染症を100分の一に減らせるのであれば、きっと大人にも出来るハズだと思います。

ただ、手足口病がそんなに減っているのであれば、対策が同じである新型コロナもかなり抑え込めているのでは?という見方もできます。手足口病の情報は、症状を示した「患者数」であるのに対して、新型コロナのデータは、PCR陽性を示した「ウイルス付着者数」(=厳密な感染者数ではない)であるという違いがあります。実際のところ、新型コロナによる死者数は少なく、例年の全国の死者総数と比べると、わずか0.1%以下であると言われています。また、無症状のPCR陽性者が多いという事実も、もともと“毒性”は低い病原体であることを示していて、厳密な意味での新型コロナの患者数は抑え込めているという事なのかもしれません。

いずれにしても、新型コロナの“感染者数”、および、検査数に占める感染者数の割合(いわゆる陽性率)は増加傾向にありますので、私たちも気を緩めることなく、シッカリと感染予防対策に取り組んでいくべきだと思います。

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馬の文献:喉頭片麻痺(Ducharme et al. 2010)

「神経補綴による馬の背側輪状披裂筋歩調の考察」
Ducharme NG, Cheetham J, Sanders I, Hermanson JW, Hackett RP, Soderholm LV, Mitchell LM. Considerations for pacing of the cricoarytenoid dorsalis muscle by neuroprosthesis in horses. Equine Vet J. 2010; 42(6): 534-540.

この研究論文では、馬の喉頭片麻痺(Laryngeal hemiplegia)に有用な外科的療法を検討するため、安静時の内視鏡検査(Endoscopy at rest)によって喉頭片麻痺の診断が下された七頭の馬に対して、喉頭反回神経の主幹遠位端(Distal end of the common trunk of the recurrent laryngeal nerve)への神経袖電極(Nerve cuff)の装着、および、プログラム可能な内部刺激器具(Programmable internal stimulator)の皮下移植(Subcutaneous implantation)を介して、反回神経の神経補綴(Neuroprosthesis)による背側輪状披裂筋(Cricoarytenoid dorsalis muscle)の歩調取り(ペースメイキング:Pacemaking)を施してから、一週間おきの刺激反応実験(Stimulation-response experiment)が最長一年間にわたって行われました。

結果としては、グレード2または3の喉頭片麻痺(不全麻痺:Paresis)を呈した馬では、背側輪状披裂筋のペースメイキングによって、素晴らしい披裂軟骨の外転(Excellent arytenoid cartilage abduction)が誘導できたのに対して、グレード4の喉頭片麻痺(完全麻痺:Paralysis)を呈した馬では、披裂軟骨の外転は芳しくなかった事が示されました。このため、馬に対する反回神経補綴を介しての背側輪状披裂筋の歩調取りによって、上部気道機能(Upper airway function)を回復できることが示され、喉頭片麻痺の罹患馬(特にグレード3以下の馬)への潜在的な治療手段(Potential treatment modality)として、臨床応用できる可能性があることが示唆されました。また、一時間にわたる連続的なペースメイキングによっても、筋肉疲労(Muscle fatigue)を起こすことなく完全な披裂軟骨外転が誘導できた事から、レース時間中の継続的な神経補綴が可能であると考えられました。

一般的に、人間の医学分野における、上部気道組織への神経補綴(喉頭神経のペースメイキング)は、両側性声帯麻痺(Bilateral vocal fold paralysis)の治療のため、1990年代から試験されており、2000年代からの移植器具の進歩によって、多くの臨床応用が始まりました(Verschuur et al. Cochlear Implants Int. 2003;4:13, Ramsden et al. Otol Neurotol. 2005;26:988)。その後、犬猫への転用にも成功しており(Zealear et al. Ann Otol Rhinol Laryngol. 2001;125:183, Chi et al. Otolaryngol Head Neck Surg. 2006;135:40)、今回の研究では、馬に対しても概念実証(Proof of concept)が達成され、今後は臨床応用に向けた更なる検討を要する、という考察がなされています。

この研究では、術後の時間経過に伴って、刺激反応性が衰えていく傾向が認められ、手術から一年目まで良好なペースメイキングができた馬は、一頭のみでした。そして、七頭中の三頭においては、反回神経に装着した電極が滑り落ちて、適切な神経刺激を与える事が不可能になっており、これは、馬の喉頭および期間の動きの大きさ(High degree of movement of the larynx and trachea)が影響していると推測されています。このため、実際の臨床応用のためには、神経ではなく筋肉内に電極を埋め込む手法(Intramuscular electrodes implantation)を検討する必要がある、という考察がなされています。その場合には、神経組織への外科的侵襲(Surgical infestation)が最小限に抑えられるため、反回神経の医原性損傷(Iatrogenic damage)に起因して、不全麻痺を完全麻痺へと悪化させてしまう危険を避けられる、という利点も指摘されています。

一般的に、馬の喉頭片麻痺における、背側輪状披裂筋の神経再支配(Reinnervation)のためには、肩甲舌骨筋(Omohyoid muscle)の神経筋接合根部を移植する方法(Neuromuscular pedicle graft)も試みられていますが、この場合には、効能発現までに最大一年間を要することが知られており(Fulton et al. AJVR. 1991;52:1461)、手術直後から披裂軟骨の外転を誘導できるペースメイキングのほうが、臨床症例への適用性(Applicability)や時間的効率(Time efficiency)が高いと推測されています。しかし、今回の研究では、グレード4の喉頭片麻痺では、ペースメイキングによる披裂軟骨の外転は思わしくなく、これは、除神経された筋肉(Denervated muscle)に対しては、神経袖電極を介しての刺激は到達しにくかったためと仮説されています。そして、このような症例に対しては、神経筋接合根部の移植や、上述のような筋肉内電極を介してのペースメイキングを要する、という考察がなされています。

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馬の文献:喉頭片麻痺(Barakzai et al. 2009)

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「ハンター競走馬における喉頭形成術と声嚢声帯切除術のあとの競走能力」
Barakzai SZ, Boden LA, Dixon PM. Race performance after laryngoplasty and ventriculocordectomy in National Hunt racehorses. Vet Surg. 2009; 38(8): 941-945.

この研究論文では、馬の喉頭片麻痺(Laryngeal hemiplegia)に有用な外科的療法を検討するため、1990~2007年にかけて、安静時またはトレッドミル運動時の内視鏡検査(Endoscopy)によって喉頭片麻痺の確定診断(Definitive diagnosis)が下され、喉頭形成術(Laryngoplasty)と声嚢声帯切除術(Ventriculocordectomy)による治療が応用された71頭のハンターレース(長距離競走)のサラブレッド競走馬、および、126頭の対照馬(各症例と年齢および性別の合致する馬)における、競走能力(Race performance)の解析が行われました。

結果としては、喉頭形成術と声嚢声帯切除術を受けた症例郡では、術後に78%の馬がレース出走を果たし、47%の馬が個人競走能力の向上(Improvement in individual performance)を示しており、また、術後に一回または三回以上レース出走する確率は、症例郡と対照郡のあいだで有意差は無かった事が報告されています。そして、治療直前の五回のレース(Five pre-operative races)における平均獲得賞金(Average earning per race)は、症例郡のほうが対照郡の少なかったのに対して、治療後の五回のレースにおける平均獲得賞金は、両郡のあいだに有意差が無く、つまり、手術によって競走能力が向上できた(少なくとも健常馬並みの能力を維持できた)という結果が示されました。このため、長距離レースのサラブレッド競走馬においては、喉頭形成術と声嚢声帯切除術を介しての喉頭片麻痺の治療によって、充分な上部気道機能の回復(Restoration of upper airway function)が期待され、競走能力の向上または維持を達成する馬の割合が、比較的に高いことが示唆されました。

この研究では、症例郡のほうが対照郡に比べて、生涯出走レース数(Total lifetime race number)が有意に少なかった事が示され、外科的療法が応用された場合においても、喉頭片麻痺の罹患馬のほうが、競走馬としての寿命(Longevity:“選手生命”)が短いことが示唆されました。しかし、出走レース数に関しては、患馬の病歴および手術歴を考慮した馬主や調教師が、引退させて繁殖馬に転用する時期を意図的に早めるという、管理方針の偏向(Bias)を生じた可能性は否定できません。このため、今回のデータのみから、馬の喉頭片麻痺に対する、喉頭形成術と声嚢声帯切除術の治療効果を、いたずらに過小評価(Under-estimation)するのは適切ではない、という警鐘が鳴らされています。

この研究で検証された英国のサラブレッド競走馬は、3200~7200mの長距離レースを走行しており、喉頭片麻痺に関する他の文献に含まれる、2000m以下の短距離レースを走る競走馬とは、基本的に異なったレベルの呼吸器機能を要求されると推測されます。例えば、人間の陸上選手におけるエネルギー生成では、無酸素代謝(Anerobic metabolism)が占める割合は、100m走では80%、400m走では60%、1500m走では20%である事が知られており、長距離レース馬においても同様に、無酸素代謝よりも有酸素代謝(Aerobic metabolism)が占める割合が高いと考えられます。このため、長距離レースを走る馬ほど、有酸素代謝を介してのエネルギー生成に要する充分な酸素を確保するため、完全な気道機能への依存性が強い(Heavily dependent on a fully functional airway)という考察がなされています。

この研究と同じ著者が発表した、長距離競走のサラブレッド症例に関する他の文献では、喉頭形成術の際に、披裂軟骨の外転(Abduction of arytenoid cartilage)が最大限まで行われると、インプラントの損失から手術失敗になりやすい反面、披裂軟骨の外転が不十分な場合にも、術後の競走能力が悪くなる傾向が認められた、という知見が示されています(Barakzai et al. Vet Surg. 2009;38:934)。これは、術中および術後の内視鏡検査(Intra/Post-operative endoscopy)によって、適切な披裂軟骨外転の達成を視診することの重要性を、再確認させるデータであると考えられます。

この研究では、術前の喉頭片麻痺のグレードと、術後の競走能力は負の相関(Negative correlation)を示しておらず、不全麻痺(Paresis)または完全麻痺(Paralysis)の違いに関わらず、喉頭形成術および声嚢声帯切除術を介しての外科的療法によって、良好な治療効果が誘導できることが示唆されました。一方、短距離レースのサラブレッド競走馬を調査した他の文献では、不全麻痺の罹患馬のほうが、完全麻痺の罹患馬に比べて、有意に良好な予後を示したことが報告されています(Witte et al. EVJ. 2009;41:70)。

この研究では、馬の喉頭片麻痺の病態を、より定量的かつ正確に評価(Quantitative and accurate evaluation)するため、以下のようにサブグレードの付いた、七段階の点数化システムが応用されています。
グレード1:披裂軟骨の動きが常に同調的かつ対称的で、披裂軟骨の完全外転が達成かつ維持できる。(All arytenoid cartilage movements are synchronous and symmetrical and full arytenoid cartilage abduction can be achieved and maintained.)
グレード2a:披裂軟骨の動きが非同調的で、喉頭は非対称的な場合があるものの、披裂軟骨の完全外転は達成かつ維持できる。一過性の非同調、震え、または遅延が見られる。(Arytenoid cartilage movements are asynchronous and/or larynx is asymmetric at times but full arytenoid cartilage abduction can be achieved and maintained: Transient asynchrony, flutter or delayed movements are seen.)
グレード2b:披裂軟骨の動きが非同調的で、喉頭は非対称的な場合があるものの、披裂軟骨の完全外転は達成かつ維持できる。披裂軟骨および声帯の可動性減退に起因する、声門裂の非対称性がかなりの時間見られるが、時折、嚥下または鼻孔閉鎖のあとには、披裂軟骨の完全外転が達成かつ維持できる。(Arytenoid cartilage movements are asynchronous and/or larynx is asymmetric at times but full arytenoid cartilage abduction can be achieved and maintained: There is asymmetry of the rima glottidis much of the time due to reduced mobility of the affected arytenoid and vocal fold but there are occasions, typically after swallowing or nasal occlusion when full symmetrical abduction is achieved and maintained.)
グレード3a:披裂軟骨の動きが非同調的で、かつ、または非対称的。披裂軟骨の完全外転は達成できず維持もできない。披裂軟骨および声帯の可動性減退に起因する、声門裂の非対称性がかなりの時間見られるが、時折、嚥下または鼻孔閉鎖のあとには、披裂軟骨の完全外転が達成できるが、維持はできない。(Arytenoid cartilage movements are asynchronous and/or asymmetric. Full arytenoid cartilage abduction cannot be achieved and maintained: There is asymmetry of the rima glottidis much of the time due to reduced mobility of the arytenoid and vocal fold but there are occasions, typically after swallowing or nasal occlusion when full symmetrical abduction is achieved but not maintained.)
グレード3b:披裂軟骨の動きが非同調的で、かつ、または非対称的。披裂軟骨の完全外転は達成できず維持もできない。披裂外転筋の欠陥および披裂軟骨の非対称性が顕著で、披裂軟骨の完全外転はまったく見られない。(Arytenoid cartilage movements are asynchronous and/or asymmetric. Full arytenoid cartilage abduction cannot be achieved and maintained: Obvious arytenoid abductor deficit and arytenoid asymmetry.Full abduction is never achieved.)
グレード3c:披裂軟骨の動きが非同調的で、かつ、または非対称的。披裂軟骨の完全外転は達成できず維持もできない。披裂外転筋の欠陥および披裂軟骨の非対称性は明瞭だが完全ではなく、披裂外転筋の僅かな動きが残るものの、披裂軟骨の完全外転はまったく見られない。(Arytenoid cartilage movements are asynchronous and/or asymmetric. Full arytenoid cartilage abduction cannot be achieved and maintained: Marked but not total arytenoid abductor deficit and asymmetry with little arytenoid movement. Full abduction is never achieved.)
グレード4:披裂軟骨および声帯の完全な不動性。(Complete immobility of the arytenoid cartilage and vocal fold.)

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馬の病気:喉頭片麻痺


馬の文献:喉頭片麻痺(Cramp et al. 2009)

「喉頭外転に及ぼす力の方向と度合いの影響:神経筋接合根部移植の手技への関連」
Cramp P, Derksen FJ, Stick JA, de Feijter-Rupp H, Elvin NG, Hauptman J, Robinson NE. Effect of magnitude and direction of force on laryngeal abduction: implications for the nerve-muscle pedicle graft technique. Equine Vet J. 2009; 41(4): 328-333.

この研究論文では、馬の喉頭片麻痺(Laryngeal hemiplegia)の治療のための、背側輪状披裂筋(Criocoarytenoideus dorsalis)の神経筋接合根部移植(Nerve-muscle pedicle graft)における適切な手技を検討するため、五頭の健常馬から採取した喉頭組織を用いて、披裂軟骨(Arytenoid cartilage)の筋突起(Muscular process)に対して複数の方向および強さで緊張力(Tensile force)を掛けて、声門裂拡張(Rima glottidis dilation)の指標となる左右角度指数(Right to left angle quotient)の解析が行われました。

結果としては、披裂軟骨筋突起への緊張力の増加に伴って、左右角度指数が進行性に上昇(Progressively increase)しており、披裂軟骨の外転を示す指標であると見なされ、また、同じ緊張力(7.84~11.76ニュートン)が掛けられた際には、牽引角度が0~30度の場合のほうが、角度が40~70度の場合よりも、左右角度指数が有意に上昇していました。そして、この0~30度の角度は、背側輪状披裂筋の外側区画(Lateral component)からの牽引の方向と合致していました。このため、喉頭片麻痺の罹患馬に対する神経筋接合根部移植においては、背側輪状披裂筋の内側よりも外側区画を再神経支配(Re-innervation)することで、より効果的に披裂軟骨外転が達成できることが示唆されました。

一般的に、馬の背側輪状披裂筋における二つの区画は、堅固な結合組織で分離(Separation by firm connective tissue)されているため、内側区画に移植された神経筋接合根部が、外側区画まで神経支配する可能性は低いと考えられています(Cheetham et al. EVJ. 2008;40:70)。また、正常な披裂軟骨外転の際には、披裂軟骨は外側および背側への牽引(Lateral and dorsal tractions)だけでなく、尾側への動きもある事から、背側輪状披裂筋の内側および外側区画は、異なった機能を担っている可能性が指摘されており、完全な上部気道機能の回復(Full recovery of upper airway function)のためには、両方の区画への神経植え込み(Neurotization)を要すると考察されています。

この研究で示された、披裂軟骨筋突起に対する理想的な牽引角度(0~30度)は、喉頭形成術(Laryngoplasty)の実施の際にも重要であると考えられます。通常の喉頭形成術において、筋突起に通した装具を、輪状軟骨後部(Posterior aspect of cricoid cartilage)に設置する時には、その尾側縁(Caudal border)から頭側へ2~3cmで、輪状軟骨椎(Spine of cricoid cartilage)から外側へ1cmの位置に通すことが推奨されています。この結果、筋突起に対する牽引角度は20~40度のなる事が知られており、この箇所よりも更に外側に装具を設置すると、尾側縁の湾曲した部分から装具が滑り落ちて、インプラントの緩みおよび手術失敗につながるという知見が示されています。しかし、甲状軟骨後部(Posterior aspect of the thyroid cartilage)へと装具が滑り落ちないよう施術できるのであれば、可能な限り外側箇所への装具設置を試みることで、それほど強い牽引力を与えなくても、最善の角度で緊張を掛けること(Applying a tension in an optimal angle)が可能になり、より良好な披裂軟骨外転を誘導できるという考察がなされています。

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馬の文献:喉頭片麻痺(Witte et al. 2009)

「人工喉頭形成術と同側声嚢声帯切除術の併用または披裂軟骨部分切除術での治療後の競走能力:1997~2007年に掛けて2400m以下のレースに出走した135頭のサラブレッド競走馬」
Witte TH, Mohammed HO, Radcliffe CH, Hackett RP, Ducharme NG. Racing performance after combined prosthetic laryngoplasty and ipsilateral ventriculocordectomy or partial arytenoidectomy: 135 Thoroughbred racehorses competing at less than 2400 m (1997-2007). Equine Vet J. 2009; 41(1): 70-75.

この研究論文では、馬の喉頭片麻痺(Laryngeal hemiplegia)に有用な外科的療法を検討するため、1997~2007年にかけて、人工喉頭形成術(Prosthetic laryngoplasty)と同側声嚢声帯切除術(Ipsilateral ventriculocordectomy)の併用、または披裂軟骨部分切除術(Partial arytenoidectomy)での治療を受けて、2400m以下のレースに出走した135頭のサラブレッド競走馬の、医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。

結果としては、喉頭形成術と声嚢声帯切除術の併用治療を受けた馬群では、グレード3(不全麻痺:Paresis)の罹患馬のほうが、グレード4(完全麻痺:Paralysis)の罹患馬よりも、有意に高い競走能力を示し、また、グレード3の罹患馬と対照馬(年齢と性別が合致する馬)とのあいだで、術後の獲得賞金(Post operative earnings)に有意差が無かったことが報告されています。このため、喉頭片麻痺の罹患馬に対しては、人工喉頭形成術と同側声嚢声帯切除術の併用療法によって、充分な上部気道機能の回復(Restoration of upper airway function)が期待でき、競走能力の維持および向上(Maintenance/Improvement in racing performance)を達成する馬の割合が高いことが示唆されましたが、グレード4の喉頭片麻痺を呈した場合では、予後が有意に悪くなると考えられました。

一般的に、馬の喉頭片麻痺においては、完全麻痺(グレード4)よりも不全麻痺(グレード3)のほうが、披裂軟骨(Arytenoid cartilage)の動きが残っているため、術後にインプラントの損失を起こし易く、結果的に予後が悪くなるという仮説がなされていますが(Hawkins et al. Vet Surg. 1997;26:484)、今回の研究では、これに相反する結果(Conflicting result)が示された事になります。このため、経験的に提唱されてきた、“グレード3で喉頭形成術をしてもインプラントが破損しやすいから、グレード4まで病気が進行(Progression)するのを待ってから手術に踏み切る”という治療指針は、競走能力の維持という面から言えば、必ずしも適切ではないと考察されています。

一般的に、喉頭形成術後の声帯裂(Rima glottidis)の拡大度合いは、グレード4とグレード3で顕著な差が無いことから、今回の研究において、グレード4の喉頭片麻痺のほうが予後が悪かった要因としては、経喉頭抵抗の上昇(Translaryngeal resistance)によって気圧性外傷(Barotrauma)や下部気道機能の減退(Lower airway dysfunction)を生じて、不可逆的なガス交換能の悪化(Irreversibly decreased gas exchange capacity)を呈した事(=この変化は不全麻痺よりも完全麻痺の症例のほうが重篤であったため?)が上げられています。また、その他の要因としては、完全麻痺を起こした馬に喉頭部に生じる乱流(Turbulence)によって、軟骨変性および虚弱化(Cartilage degeneration and weakening)を生じて、喉頭組織の不安定化(Laryngeal tissue instability)を引き起こしたり、グレード4の喉頭片麻痺を呈した馬は、より長期間にわたって呼吸器閉塞(Chronic respiratory obstruction)を持っていたため、最大強度で運動(Exercise at maximal level)するのを躊躇した可能性が示唆されています。

この研究では、喉頭片麻痺の罹患馬における、喉頭形成術後のレース復帰率は、68%(グレード3)~72%(グレード4)で、他の文献におけるレース復帰率である50~70%とも合致していました(Goulden et al. NZ Vet J. 1982;30:1, Speirs et al. Aust Vet J. 1983;60:294, Russell et al. JAVMA. 1994;204:1235, Strand et al. JAVMA. 2000;217:1689, Davenport et al. Vet Surg. 2001;30:417, Kidd et al. Vet Rec. 2002;150:481)。一方、最大以下強度での運動(Submaximal exercise)のみを要するスポーツ乗用馬における喉頭片麻痺では、喉頭形成術後の競技復帰率は88~92%に上ることが報告されています(Marks et al. JAVMA. 1970;157:157, Dixon et al. EVJ. 2003;35:397, Kraus et al. Vet Surg. 2003;32:530)。

この研究では、披裂軟骨部分切除術を受けた症例群のうち、喉頭片麻痺と片側性披裂軟骨炎(Unilateral arytenoid chondritis)の罹患馬郡のあいだには、術後の競走能力に有意差はありませんでした。また、喉頭形成術と声嚢声帯切除術の併用治療を受けた症例群と、披裂軟骨部分切除術を受けた症例群のあいだにおいても、レース復帰率には有意差はありませんでしたが、術後の獲得賞金は、併用治療を受けた馬のほうが有意に多かった事が示されました。さらに、披裂軟骨部分切除術を受けた症例群における術後の競走能力は、対照馬郡よりも有意に低かった事が報告されています。このため、馬の喉頭片麻痺および披裂軟骨炎に対しては、披裂軟骨部分切除術によって良好な上部気道機能の回復が期待されるものの、喉頭片麻痺の罹患馬の中には、披裂軟骨部分切除術よりも喉頭形成術と声嚢声帯切除術の併用治療のほうが、有意に高い治療効果を示す症例もありうると推測されています。

この研究では、完全麻痺(グレード4)の喉頭片麻痺を発症した患馬のみを見ると、喉頭形成術と声嚢声帯切除術の併用治療を受けた場合と、披裂軟骨部分切除術を受けた場合とで、治療効果に有意差は認められませんでした。また、他の文献では、披裂軟骨部分切除術による上部気道機能の回復度合いは、喉頭形成術には及ばないという知見がある反面(Belknap et al. AJVR. 1990;51:1481)、両手術のあいだに治療効果の有意差は無かったという報告もあります(Radcliffe et al. Vet Surg. 2006;35:643)。そして、不全麻痺(グレード3)の喉頭片麻痺を発症した患馬では、背側輪状披裂筋(Cricoarytenoideus dorsalis muscle)の機能が残っているため、喉頭形成術によって筋突起(Muscular process)が引っ張られた状態から、筋牽引によって更に声門裂を拡張できるのに対して、完全麻痺の患馬ではこのような付加的な作用は期待できない、という考察がなされています。さらに、馬に対する披裂軟骨部分切除術は、喉頭形成術よりも手技的難易度が低く、インプラントを用いないため手術失敗になる可能性が無いという利点も考慮すると、完全麻痺(グレード4)の喉頭片麻痺に対しては、喉頭形成術だけでなく、披裂軟骨部分切除術も適合性のあるアプローチ(Suitable approach)とみなされる、という結論付けがなされています。

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