タグ:先端医療 のエントリー一覧
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陰圧療法での馬の外傷治療
話題 - 2023/05/27一般的に、馬は細菌感染に弱い動物であることが知られています。このため、重度の外傷を起こした場合、抗生物質の全身投与では感染制御が難しくなり、創傷治癒の遅延や癒合不全を続発したり、広範な蜂窩織炎を併発して、敗血症や蹄葉炎などの合併症を引き起こすこともあります。ここでは、陰圧創傷療法(Negative pressure wound therapy)を適応して、馬の重度外傷の治療を試みた知見を紹介します。この研究では、2016〜2020年に...
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血液精製物による馬の関節炎の治療
馬の飼養管理 - 2023/05/08馬の健康問題のうち、約八割を運動器疾患が占めており、そのうち、最も多いのが関節炎であると言われています。これには、競走馬の腕節炎や球節炎、乗用馬の飛節内腫やリングボーン、および、若齢馬のOCDやボーンシストに併発する変性関節疾患(DJD)から、高齢馬の顎関節炎に至るまで、多様な年代の馬において、多くの病態が起こり得ます。ここでは、馬の自己血液から精製される物質を用いた関節炎の治療に関して、その概要を解説...
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馬の理学療法での指針と手法
馬の飼養管理 - 2023/04/17馬の健康問題のうち、実に八割を占めているのが運動器疾患であり、その治療のためには、クスリの投与や手術など、様々な内科的および外科的療法が適応されています。一方で、運動器機能の回復や維持を目的として、物理的手段を用いる手法もあり、一般的に「理学療法(Physical Therapy)」と呼ばれています。ここでは、馬の運動器疾患に対する理学療法に関して、その基本的な指針や手法を解説した記事を紹介します。参考資料:Shel...
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馬の息労でのBAL液中のエヌガル濃度
話題 - 2023/04/09一般的に、気管支肺胞洗浄(BAL: Broncho-alveolar lavage)で採取した体液は、下部気道の病態を反映することから、息労(回帰性気道閉塞)などの呼吸器疾患の診断に応用されています。一方で、エヌガル(NGAL)とは、好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン(Neutrophil gelatinase-associated lipocalin)の略号で、腎臓前駆細胞の分化誘導因子として同定された蛋白質であり、急性腎不全において尿中および血中での濃度上昇を呈する...
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馬のフレグモーネに対する空気圧縮療法
話題 - 2023/04/02馬は細菌感染に弱い動物であるため、四肢にフレグモーネ(蜂窩織炎)を発症すると、治癒した後にも、四肢の皮下組織に浮腫や線維化が慢性的に残ってしまい(=慢性進行性リンパ浮腫:Chronic progressive lymphedema)、持続的な歩様不整や易感染性が続くことが知られています。ここでは、空気圧縮療法によって、リンパ循環の向上を試みた知見を紹介します。参考文献:Koch DW, Schnabel LV, Reynolds J, Berry CR. Pneumatic comp...
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馬の跛行をスマホで見つける?
話題 - 2022/09/22馬に起こる健康問題で最も多いのは、運動器疾患に起因する跛行であることが知られています。その中でも、特に後肢の軽度跛行は、前肢の跛行に比べて、ホースマン自身で気付くのが難しいことがあるため、獣医師への相談が遅れるケースもあると考えられます。一方、近年は、スマホ機器の発達によって、様々な測定機能が付与された結果、垂直または水平方向への加速度をスマホで計測できるようになってきました。ここでは、スマホ機器...
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馬のメラノーマは予防接種で防げるのか?
話題 - 2022/09/19馬のメラノーマ(別名:黒色腫)は、最も多く見られる皮膚の腫瘍の一つで、15歳以上の芦毛馬における有望率は八割にのぼると言われています。幸いにも、悪性の病態を示すものは少ないものの、肛門やノドの周りにできると、排便障害や呼吸困難を呈することもあります。ここでは、馬のメラノーマの予防接種に関する現状を紹介します。参考資料:Nancy S Loving. Equine Melanoma Vaccines. The Horse, Topics: jan19, 2018.New Treat...
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馬の麻酔覚醒の手法
診療 - 2022/09/14馬の麻酔覚醒の手法について総括です。あくまで概要解説ですので、詳細は成書や論文をご確認ください。馬は、獣医師が取り扱う家畜のなかでも、麻酔を掛けるのが最も難しい動物であることが知られており、その大きな要因の一つが、麻酔覚醒の難しさにあります。過去の知見を見ると、馬の全身麻酔では、覚醒時の事故率が1~2%に上ると言われており、犬のそれより数十倍も高いことが知られております。このため、麻酔下から安全に馬...
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キネシオテープは馬の腹筋に効く?
話題 - 2022/09/10キネシオテープとは、正式名をキネシオロジーテープ(Kinesiology taping)と言い、伸縮性のある綿やアクリル製のテープに接着剤がついているもので、筋肉と同じ伸縮率を持ったテープだと言われています。このテープを筋肉の走行に沿って、緊張を掛けるように皮膚に貼り付けることで、体内に隙間が出来てリンパ液の流れが良くなり、新陳代謝の改善および自然治癒力の向上を誘導して、筋肉の痛みを取り除くと言われています。キネシ...
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馬の幹細胞治療は本当に効くのか?
話題 - 2022/09/09馬の運動器疾患には、屈腱炎や繋靭帯炎、関節炎などの難治性の病気も多く、抗炎症剤やヒアルロン酸の全身又は局所投与、ショックウェーブ治療、多血小板血漿の局所投与などの治療法が実施されています。また、近年では、間葉系間質細胞(Mesenchymal stromal cells)などの幹細胞を局所投与する再生医療も、様々な疾患に応用されて、良好な治療成績も報告されています。その一方で、幹細胞治療における有効投与量(注射する細胞数...
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馬のアイラップ治療と運動の関連性
話題 - 2022/09/03馬のアイラップ治療と運動の関連性について検証が行なわれています。馬の運動器疾患のうち、最も発症率が高いのは関節炎であると言われており、抗炎症剤の関節内投与が行なわれていますが、副作用の懸念があることに加えて、禁止薬物であるため競走馬に使用できないという制約があります。その代わりとして、近年では、馬自身の血液を処理した自己調整血清(ACS: Autologous conditioned serum)を関節内に注射する療法が応用され...
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馬の結腸の生存能検査
話題 - 2022/08/09馬の結腸の生存能検査について馬の結腸捻転では、捻じれた箇所より遠位側に虚血性壊死を生じて、結腸の切除および吻合術が必要となるケースもあります。しかし、その際には、術中に腸管の生存能を判定して、切除吻合術を行うか否か、また、そのまま安楽死処置を選択するかを判断する必要があります。しかし、罹患部位の漿膜面の色、および、骨盤曲切開部の粘膜の色などに基づく腸管生存率は、約50%の信頼性しかないことが示されて...
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馬の義足手術
診療 - 2022/08/06馬の義足手術について馬における断脚術(Limb amputation)および義足(Prosthesis)は、遠位肢の重篤な運動器疾患(Severe musculoskeletal disorder)に対する救援療法(Salvage therapy)の一つであり、これまでに数多くの成功例が報告されています。しかし、他の動物種に比べ、馬の義足手術は、実施の是非およびタイミングを判断するのが難しい治療法です。そして、断脚術と義足手術を応用する症例を適切に見極めるためには、...
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ビッコ探知機
診療 - 2022/07/30米国の馬臨床の場では、金属探知機ならぬ“ビッコ探知機”が使われています。「跛行位置指定装置」(Lameness locator)と呼ばれるこの機械は、原理的には運動学的歩様解析(Kinematic gait analysis)のひとつに分類され、馬体の三箇所(頭部、臀部、右前肢)にセンサーを取り付けた状態で速歩させることで、馬体の異常な動きや非対称な動き(Abnormal/Asymmetric motion)を、ワイヤレスシステムを通して専用のコンピューター(iPa...
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馬の肢の冷やし方
馬の飼養管理 - 2022/07/26馬の肢はどうやって冷やすのが一番良いのか?という質問は、多くのホースマンが持たれているようです。馬の運動器疾患には、多種類の組織の損傷が含まれますが(筋肉、骨、関節、腱、靭帯、蹄など)、急性期には冷却療法、慢性期には温熱療法を行なうことが基本となります。このうち冷却療法は、特に損傷発生後の24~72時間では重要であり、罹患部を冷やして血流を減らすことで、痛みや腫れを抑えると同時に、炎症メディエイターの...
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オス馬とメス馬の産み分け?
未分類 - 2015/08/09近い将来には、オス馬とメス馬の産み分けが出来るようになるのかもしれません。カナダの獣医繁殖サービスの企業は、“性別分別された種牡馬の精液”(Sex-sorted stallion semen)を提供するための研究を進めており(下記リンクの文献)、このシステムでは、高速流動細胞計測法(High-speed flow cytometry)を用いることで、X染色体を持つ精子とY染色体を持つ精子を、90~95%の精度で分別することが可能になります。つまり、もしオ...
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衝撃波療法への規定強化の動き
未分類 - 2015/08/09衝撃波療法への規定強化の動きについて。国際競馬規定の評議委員協会(Association of Racing Commissioners International Rules Committeee)では、衝撃波療法(ショックウェーブ治療:Shockwave therapy)に対する新しい規定案(Model rule)が審議されました。この問題は、騎手組合(Jockeys’ Guild)から提起されており、その背景には、衝撃波療法を受けた馬が致死的怪我(Breakdown injury)を発症して、人馬転などの大事故...
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“次の”世代の屈腱炎の治療
話題 - 2015/08/09“次の”世代(NEXT generation)の屈腱炎の治療法が検討されています。Erica Larson. Study Evaluates Injectable Treatment for Tendon Injuries. The Horse News: May 12th, 2012, Article #20014.“ネクスト”(NEXT)と呼ばれる新たな治療法は、『非外科的外因性架橋療法』(Nonsurgical exogenous crosslink therapy)の略で、ジェニピン(Genipin)という植物由来性化学物質(Plant-derived chemical)の投与によって、結合組織...
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馬にも広がる再生医療
未分類 - 2015/08/08再生医療(Regenerative medicine)の臨床応用は、馬の獣医学分野にも急速に広がっているようです。ケンタッキー州のレキシントンにある大規模な馬の診療施設、「ルッド・アンド・リドル馬病院」(Rood and Riddle Equine Hospital)では、今月、馬主を対象とする再生医療の説明会が開かれました。このなかでは、(1)幹細胞入門(Stem Cell 101)、(2)IRAP、PRP,および幹細胞の抽出(Sorting Out IRAP, PRP and Stem Cells)...
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義足の馬、モリーの物語
未分類 - 2015/08/07アメリカで一番有名な馬といえば、競走馬でもオリンピック馬でもなく、義足の馬“モリー”ではないかと思います。数年前にアメリカ南部を襲ったハリケーン・カタリーナの災害時に、モリーは右前肢に重症を負いました。しかし幸いにも、緊急搬送されたルイジアナ州立大学獣医学部での集中治療が奏功して、モリーは一命を取り留めることが出来ました。そして、深手を負った右前肢に義足を付けることで、無事に歩行が可能なまでに回復す...