タグ:呼吸器病 のエントリー一覧
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突然死した競走馬の剖検に関する国際的調査
話題 - 2023/02/26一般的に、突然死(サドンデス)とは、健康な生活を営んでいた個体が急に死亡する現象を指します。幸いにも、ヒトでも動物でも、極めて稀な事象ではありますが、治療は間に合わないため、如何に未然に防ぐかが鍵となります。このため、馬の突然死においても、その病因の特定、および、発生に寄与する危険因子を解明して、突然死の予防を図ることが重要になってきます。ここでは、馬の突然死における剖検所見を、多国間で収集および...
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サク癖する馬は疝痛になり易い?
話題 - 2023/01/16サク癖は、馬用語で「グイッポ」とも呼ばれ、固定された物体を前歯で咥えて、それを支点にして頭頚部を屈曲させながら空気を飲み込むような動作を指します。ここでは、サク癖をする馬としない馬で、疝痛の発生状況の違いを比較した知見を紹介します。この研究では、米国のUCデービスの獣医大学病院にて、2006~2008年に診察を受けた227頭の疝痛馬および347頭の対照馬において、馬主への聞き取り調査および疝痛病態に関する医療記録...
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馬の喉頭片麻痺での外科的治療法の比較
話題 - 2023/01/08一般的に、馬の喉頭片麻痺に対する外科的治療では、治療成功率は60~80%と多様であることが知られており[1,2]、内視鏡で観察される披裂軟骨の外転や声門の断面積などで、治療効果が推測されてきました[3,4]。しかし、近年の研究では、喉頭から気管開口部までの構造を三次元的に解析することで、通気のメカニズムを評価できるようになってきました[5]。そこで、下記の研究では、馬の屠体から採取した喉頭軟骨(10個)を用いて、喉頭...
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馬の喉頭片麻痺に対する披裂角切除術
話題 - 2023/01/08一般的に、馬の喉頭片麻痺に対する外科的治療では、喉頭形成術(タイバック手術)に声嚢声帯切除術を併用する術式が選択肢の一つとされていますが、長期経過を評価した研究では、八割近い症例において、披裂軟骨炎や軟部組織虚脱などの異常所見が認められています[1,2]。このため、喉頭形成術が失敗した場合には、披裂軟骨を部分切除または亜全切除する術式が提唱されており、インプラントを使わないメリットと(感染リスクが低い...
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馬の声帯切除術による経喉頭抵抗の緩和
話題 - 2023/01/07一般的に、馬の喉頭片麻痺において、運動中に披裂軟骨の部分的外転(RakestrawグレードB)を維持する機能が残っていれば、喉頭形成術(タイバック手術)は必須ではないと考えられています。しかし、その場合でも、運動中に片側の声帯虚脱を起こす症例が散見され、22%の症例では披裂軟骨と声帯の虚脱が併発し、5%の症例では声帯虚脱だけ起こることが報告されています[1]。このような症例に対しては、喉頭形成術よりも侵襲性が低い声...
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馬運車での繋留法の影響
話題 - 2022/12/07馬という動物にとって、馬運車での輸送は、肉体的負担やストレスの多い行為であるため、馬体への影響を考慮してあげることが大切です。ここでは、馬運車の内部での繋留法が、馬の健康状態に及ぼす影響ついて調査した知見を紹介します。この研究では、10頭の健常馬を用いて、24時間の輸送中に、頭絡を左右の曳き縄で張り馬にした状態、もしくは、広い区画に自由起立させた状態にして、輸送前と輸送後における身体検査や血液検査が実...
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SAAによる馬の輸送熱の診断
話題 - 2022/11/01血清アミロイドエー(SAA: Serum amyloid A)は、急性期蛋白の一つで、炎症発生から36~48時間で血中に増加することから、炎症病態の早期診断に有用であると言われており、馬においても、呼吸器疾患を探知する目的などで臨床応用されています。ここでは、長距離輸送による炎症病態を早期診断する目的で、SAA測定の有用性を評価した知見を紹介します。この研究では、2016年に三つの目的地に向けて空路輸送された122頭の競技馬におい...
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馬の鼻中隔の切除術
診療 - 2022/10/07馬の鼻中隔の亜全切除術についてのまとめです。あくまで概要解説ですので、詳細な手技については成書や論文を確認して下さい。馬の鼻中隔の疾患は稀ですが、シスト変性、過誤腫、膿瘍、外傷性肥厚、骨折性壊死、長軸性変形、腫瘍、真菌性鼻炎などによって、鼻中隔の肥厚や変形を生じて、通気障害や気道閉塞、呼吸雑音、鼻汁排出、顔面変形等の症状を呈することがあります。そのような症例では、鼻中隔を切除することで症状改善が見...
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馬の副鼻腔への骨フラップ
診療 - 2022/10/07馬の副鼻腔への骨フラップについてのまとめです。あくまで概要解説ですので、詳細な手技については成書や論文を確認して下さい。骨フラップは、馬の副鼻腔に外科的にアプローチするときに実施され、コの字形の骨切術によって開窓することから、円鋸術と比較して、より広い術野を確保し、広範な副鼻腔エリアにアクセスできるという利点があります。馬の副鼻腔への骨フラップでは、主に、上顎洞(下写真左)または前頭洞(下写真右)...
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馬の副鼻腔への円鋸術
診療 - 2022/10/06馬の副鼻腔への円鋸術についてのまとめです。あくまで概要解説ですので、詳細な手技については成書や論文を確認して下さい。円鋸術は、馬の副鼻腔にアクセスするための最も古典的な術式で、副鼻腔炎の排膿や病巣掻把、腫瘍・シスト、篩骨血腫等の摘出、上顎臼歯の抜歯処置などの目的で実施されます。円鋸術では、直径6.4mmから25.0mmまで、様々なサイズの穴が開けられますが、広範囲の副鼻腔にアプローチするためには、前頭骨にや...
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馬の鼻翼ヒダの切除術
診療 - 2022/10/06馬の鼻翼ヒダの切除術についてまとめてみます。あくまで概要解説ですので、詳細な手技については成書や論文を確認して下さい。鼻翼ヒダ(Aler folds)は、鼻腔の背吻側部に位置しており、真の鼻孔と、その内側にある憩室(いわゆる偽の鼻孔)を隔てています。また、腹鼻甲介軟骨の延長である鼻翼軟骨は、鼻翼ヒダの尾側部に付着し、横鼻筋に挙上されることで、偽の鼻孔を拡げる役目を担っています。しかし、この鼻翼ヒダが長過ぎた...
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馬の舌縛りと気道内径の関連性
話題 - 2022/09/02馬の舌縛りについて競走馬や競技馬で行なわれることのある「舌縛り(Tongue tie)」は、包帯や帯革などで舌を下顎に固定する措置のことで、ハミを越して舌を出す癖のある馬に用いられる事があります。また、舌縛りによって、舌骨を介して舌根と繋がっている喉頭軟骨を前方に牽引することが出来るため、運動中に喉頭軟骨の位置を安定化させて、軟口蓋背方変位を発症するのを予防したり、俗にいう“舌を飲み込んでしまう”という動作を...
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ハンター競走馬の鼻出血の危険因子
話題 - 2022/08/20馬の鼻出血について競走馬の鼻出血は、その多くが肺からの出血で起こり、運動中に血圧が上がることと、呼吸増加で肺胞の内圧が下がることが相まって出血に至ることから、運動誘発性肺出血(EIPH: Exercise-induced pulmonary hemorrhage)という病名で呼ばれます。競走馬におけるEIPHの発症率は、51~75%と様々です[1-4]。馬がEIPHを起こすと、肺組織の線維化および換気機能低下を続発するのみならず、長期間の出走停止となるため...
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乗馬のDDSPはクスリで治せる
馬の飼養管理 - 2022/08/17乗馬のDDSPについてDDSPとは、軟口蓋背方変位(Dorsal displacement of soft palate: DDSP)の略称で、特に、競走馬などの襲歩運動をする馬において問題となる上部気道疾患です。この病気では、本来は軟口蓋の上に乗っかっている喉頭蓋が、その下方に落ち込んでしまい、軟口蓋が気管の入り口を部分的に閉塞するため、呼吸器雑音や発咳、運動不耐性(プアパフォーマンス)を起こしてしまいます。このDDSPと、下部気道炎症とのあいだ...
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馬の息労:厩舎ダストを減らす7つの対策
馬の飼養管理 - 2022/08/08馬の息労について馬の息労は、回帰性気道閉塞(Recurrent airway obstruction)とも呼ばれ、カビや粉塵などのアレルゲンを吸い込むことで、気管支のアレルギー反応を起こして、頻呼吸や発咳を生じる病気です。一般的に、厩舎ダストに過敏体質な高齢馬に発症しますが、類似病態としては、若い馬に起こる炎症性気道疾患(Inflammatory airway disease)や、屋外のアレルゲンに起因する夏季牧草関連性閉塞性肺疾患(Summer pasture-as...
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馬のネブライザー治療の実践
診療 - 2022/07/22馬の呼吸器疾患に応用されているネブライザー治療について復習しましょう。ネブライザー治療とは、医学用語では吸入療法(Inhalation therapy)と呼ばれ、噴霧した薬剤を呼吸に併せて吸い込ませることで、上部及び下部気道組織に直接的にクスリを作用させる治療法です。適応症例としては、競走馬に見られる炎症性気道疾患(IAD)や運動誘発性肺出血(EIPH)のほか、高齢馬のアレルギー疾患である回帰性気道閉塞(RAO)や、鼻腔や咽...
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馬の蕁麻疹への対策は根気強く
馬の飼養管理 - 2022/07/20馬の体表に「点字」のように現れる蕁麻疹は、馬体からの警戒のメッセージですが、それを読み解くのは、点字を読むのと同じくらい難しいのかもしれません。蕁麻疹とは、アレルギー性過敏反応の結果として皮膚に生じた発疹のことを指し、病名としては、アトピー性皮膚炎という用語に当たります。馬に蕁麻疹を引き起こすアレルゲンとしては、乾草中のカビ、畜舎ダスト、牧草の花粉、などが知られています。また、薬品が原因となる場合...
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レース中の馬の内視鏡検査
話題 - 2015/08/09レース中の馬に対する内視鏡検査(Endoscopy)が試みられています。Priest DT, Cheetham J, Regner AL, Mitchell L, Soderholm LV, Tamzali Y, Ducharme NG. Dynamic respiratory endoscopy of Standardbred racehorses during qualifying races. Equine Vet J. 2012 Sep;44(5):529-34.馬に起こる多くの上部気道疾患(Upper airway disorder)は、安静時には認められず、高速運動時における内視鏡検査によってのみ、異常所見が認め...
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フロセマイド使用の是非
未分類 - 2015/08/08米国の競馬社会では、フロセマイド使用の是非について論議が起きています。国際競馬委員協会(Association of Racing Commissioners International)は2011年の三月、競走馬における出走日の薬物投与(Race-day medications)を五年以内に完全に無くす、という方針を打ち出しました。これを受けて米国では、サラブレッド生産馬主協会(Thoroughbred Owners and Breeders Association)および北米競馬協会(Thoroughbred Racing Ass...