タグ:子馬 のエントリー一覧
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跛行しない飛節の骨棘は競走能力に影響するのか?
話題 - 2023/08/16一般的に、遠位飛節の関節周囲での骨棘形成(Periarticular osteophytes of the distal tarsus)は、飛節内腫(飛節の変性関節疾患[DJD])の特徴的所見だと考えられています。しかし、若齢馬においては、遠位飛節の骨棘の所見は、跛行症状とは相関しないことも知られており[1]、サラブレッドのレポジトリ検査において、無跛行な馬の二割から三割で同所見を認めたという知見もあります[2,3]。ここでは、若齢で無跛行な競走馬におけ...
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カナダでの馬の流産の発生状況
話題 - 2023/07/29馬の流産は、繁殖及び生産の産業において、非常に大きな経済的損失を生み出すと同時に、母馬の健康と福祉にも多大な悪影響を及ぼします。ここでは、カナダにおける馬の流産の発生要因を調査した知見を紹介します。参考文献:Ricard RM, St-Jean G, Duizer G, Atwal H, Wobeser BK. A 13-year retrospective study of equine abortions in Canada. Can Vet J. 2022 Jul;63(7):715-721. この研究では、カナダの複数の獣医大学病院に...
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若齢馬の大腿骨内顆の透過域による長期的な影響
話題 - 2023/07/24若齢馬の病気を診療するときには、成馬になったときのパフォーマンスへの影響も考慮する必要があります。一般的に、馬の大腿骨内顆は、ボーンシストと好発部位として知られていますが、軟骨下透過域(SCLs: Subchondral lucencies)のみを生じた場合の長期的予後については様々な議論があります。そこで、下記の研究では、米国のケンタッキー州とメリーランド州でのサラブレッドのセリにおいて、2016年に競売された2,508頭の当歳馬...
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英国での馬の流産の発生状況
話題 - 2023/07/22馬の流産は、繁殖及び生産の産業において、非常に大きな経済的損失を生み出すと同時に、母馬の健康と福祉にも多大な悪影響を及ぼします。ここでは、英国における馬の流産の発生要因を調査した知見を紹介します。参考文献:Smith KC, Blunden AS, Whitwell KE, Dunn KA, Wales AD. A survey of equine abortion, stillbirth and neonatal death in the UK from 1988 to 1997. Equine Vet J. 2003 Jul;35(5):496-501. この研究では、...
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敗血症の新生子馬におけるRPR値
話題 - 2023/07/08ヒト医療に小児科があるのと同様に、子馬の病気に対する獣医療では、成馬とは異なる知識と技術が必要になります。ここでは、敗血症を起こした新生子馬における、赤血球体積分布幅(RDW: Red blood cell distribution width)と血小板数の比率(RPR: RDW to platelet ratio)について調査した知見を紹介します。この研究では、米国のカリフォルニア大学デービス校の獣医病院において、2012〜2021年にかけて診察された七日齢以下の新...
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光学屈折計を用いた母馬の初乳の品質検査
話題 - 2023/04/01一般的に、生まれたての新生子馬は、病原体への抵抗力が低いため、出産直後に母馬が分泌する初乳に含まれている移行免疫抗体を摂取することで、感染への防御能を獲得することが知られています。しかし、母馬の体調や予防接種の状態によっては、初乳に含有される免疫グロブリンG(IgG)の量が不足していて、子馬の感染症を引き起こす素因になってしまいます。このため、初乳中のIgG濃度を測定して、移行免疫抗体の指標とすることで...
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妊娠後期の牝馬での栄養管理
馬の飼養管理 - 2023/03/26春は馬の繁殖シーズンであり、ホースマンや馬の獣医師にとっては、一年で最も忙しい季節だと言えます。しかし、それ以上に大変なのは、出産を控えた母馬であり、子馬を産み落とすという命懸けの作業をサポートするため、適切な栄養管理が大切になってきます。ここでは、分娩間近の妊娠後期における、牝馬の栄養管理について解説した知見を紹介します。なお、以下の内容は、あくまで概要の解説ですので、詳細な栄養管理の手法につい...
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馬の出産についての基礎事項
馬の飼養管理 - 2023/03/20馬の出産シーズンが近づいてきましたが、新生子馬をケアするためのチェックリストは多岐にわたり、出産時やその後に注意すべき点が数多くあります。そして、出産のプロセスにおける正常と異常を理解することは重要であり、新たな生まれてくる子馬に、健康で幸せな人生を始める手助けをするためには必要不可欠であると言えます。ここでは、馬の出産や新生子馬のケアに関して、基礎的な事項をまとめた知見を紹介します。ただ、この内...
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新生子馬の疝痛での予後
話題 - 2022/12/18ヒト医療に産婦人科や小児科があるのと同様に、生まれたばかりの新生子馬の病気に対する獣医療では、成馬とは違った知識と技術が必要になります。ここでは、新生子馬の疝痛での治療成績を評価した研究を紹介します。この研究では、米国のペンシルバニア大学の馬病院において、2000~2010年にかけて、疝痛の診断や治療が行なわれた137頭の新生子馬(30日齢以下)での医療記録の回顧的解析が行なわれました。参考文献:Mackinnon MC,...
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子馬の菌血症と将来の競走能力
話題 - 2022/12/17子馬の病気を治療するときには、経済動物である馬として、将来的な運動能力に及ぼされる影響も考慮する必要があります。ここでは、子馬の菌血症(Bacteremia)が治った後、将来的に競走馬としてのレース能力に及ぼす影響を評価した知見を紹介します。この研究では、米国のフロリダ大学の大動物病院において、1982~2007年にかけて、菌血症の治療を受けた423頭の子馬を対象として、生存率に関わる因子の解析と(オッズ比[OR]の算出...
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馬の敗血症とその後の骨軟骨症
話題 - 2022/12/06子馬の敗血症は、早期治療すれば予後は比較的良好ですが、長期的な影響については不明な点も多いと言えます。ここでは、子馬の敗血症と、その後の骨軟骨症の発生について調査した知見を紹介します。この研究では、ノルウェーの馬病院にて、2006~2012年にかけて、生後六ヶ月齢までに敗血症の治療を受けて治癒した28頭のスタンダードブレッドにおける、その後(7~85ヶ月齢時点)のX線検査所見の評価が行なわれました。参考文献:He...
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母馬の肥満と子馬の出生体重の関係
馬の飼養管理 - 2022/11/14近年、サラブレッドの繁殖分野では、子馬の出生体重が増加傾向にあり、生後の子馬への影響も懸念されています。ここでは、母馬の肥満や内分泌機能と、子馬の出生体重との関連性を調査した知見を紹介します。この研究では、英国のロスデール馬病院の研究者たちが、2013年の繁殖期に一つの繁殖牧場を対象として、66頭のサラブレッド繁殖牝馬における体重、体格(BCS)、子馬の出生体重、および、内分泌機能の検査を実施しています。...
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子馬の臍帯炎の予後判定指標
話題 - 2022/10/27ヒト医療に小児科があるのと同様に、子馬の病気に対する獣医療では、成馬とは異なる知識と技術が必要になります。ここでは、臍帯炎が切除された子馬における、生存を左右する因子を解析した知見を紹介します。この研究では、米国のヴァージニア大学の馬医療センターにおいて、2004~2016年にかけて、臍帯炎の外科的切除が行なわれた82頭の子馬における、医療記録の解析、および、生存率低下に繋がる危険因子のオッズ比(OR)が算出...
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子馬と成馬での小腸絞扼の違い
話題 - 2022/10/27ヒト医療に小児科があるのと同様に、子馬の病気に対する獣医療では、成馬とは異なる知識と技術が必要になります。ここでは、小腸の絞扼性閉塞における治療成績を、子馬と成馬で比較した研究を紹介します。この研究では、米国の五箇所の獣医大学病院において、2000~2020年にかけて、小腸絞扼を呈して開腹術が実施された41頭の子馬(六ヶ月齢以下)、および、105頭の成馬(2~20歳齢)における、医療記録の回顧的解析、および、生存...
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新生子馬の集中治療での予後判定指標
話題 - 2022/10/26ヒト医療に小児科があるのと同様に、子馬の病気に対する獣医療では、成馬とは異なる知識と技術が必要になります。ここでは、集中治療が必要となった新生子馬での、生存に関わる因子を解析した知見を紹介します。この研究では、米国の二箇所の獣医大学病院において、1982~2008年にかけて、集中治療室(ICU)での治療が行なわれた1,065頭の新生子馬(14日齢以下)における、医療記録の回顧的解析が行なわれました。参考文献:Giguer...
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子馬の足根骨不完全骨化による長期的な影響
話題 - 2022/10/09子馬の病気を診療するときには、成馬になったときのパフォーマンスへの影響も考慮する必要があります。足根骨の不完全骨化は、立方骨の形成不全や、軟骨内骨化の遅延によって、健常な足根骨の緻密骨形成が妨げられる疾患です。通常は、栄養管理や運動制限によって治療されますが、不完全骨化の改善が遅れると、足根骨の変形や肢勢異常(飛節の外反や内反、鎌状飛節、直飛など)を続発して、慢性跛行や運動能力の低下を引き起こすこ...
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子馬の細菌性関節炎による長期的な影響
話題 - 2022/10/09子馬の病気を診療するときには、成馬になったときのパフォーマンスへの影響も考慮する必要があります。子馬の細菌性関節炎は、全身疾患による抵抗力減退や、初乳の摂取不全による移行抗体不足が病因となる発症することが多く、抗生物質の全身的又は局所的投与、および、関節洗浄による治療が実施されることが一般的です。ここでは、子馬の細菌性関節炎が、成長後に競走馬としての能力に対して、どのような長期的な影響を与えるかを...
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子馬の支持靭帯切断術による長期的な影響
話題 - 2022/10/08子馬の病気を診療するときには、成馬になったときのパフォーマンスへの影響も考慮する必要があります。一般的に、遠位支持靭帯(深屈腱の副靭帯)の切断術は、蹄関節の屈曲性肢変形症(いわゆるクラブフット)において、深屈腱から蹄骨に掛かる緊張を緩和することで、蹄繋軸前方破折の肢勢を矯正する目的で実施されます。ここでは、支持靭帯の切断術が、スポーツ馬の競技能力に対して、どのような長期的な影響を与えるかを調査した...
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子馬をロープで眠らせる方法
馬の飼養管理 - 2022/08/26子馬に対するロープ圧迫による傾寝法参考文献:Toth B, Aleman M, Brosnan RJ, Dickinson PJ, Conley AJ, Stanley SD, Nogradi N, Williams CD, Madigan JE. Evaluation of squeeze-induced somnolence in neonatal foals. Am J Vet Res. 2012 Dec;73(12):1881-9.子馬の獣医的処置に際しては、その子馬の気性や性格が難しい場合には、保定に多くの人手を要したり、獣医師や子馬自身に怪我の危険が伴う事もあります。そのようなケー...