タグ:手術 のエントリー一覧
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馬の食道粘膜反転術
診療 - 2023/02/21一般的に、食道(Esophagus)という組織に対する手術では、重篤な雑菌混入(Severe bacterial contamination)が起きやすく、複数の筋層の機能回復を要するという特徴から、外科的手技の難易度が高いことが知られています。以下は、食道粘膜反転術(Esophageal mucosal inversion)についての概要解説です。馬における食道粘膜反転術は、圧出性食道憩室(Pulsion esophageal diverticula)の外科的整復のために実施されます。頚部...
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馬の食道切除術
診療 - 2023/02/20一般的に、食道(Esophagus)という組織に対する手術では、重篤な雑菌混入(Severe bacterial contamination)が起きやすく、複数の筋層の機能回復を要するという特徴から、外科的手技の難易度が高いことが知られています。以下は、食道切除および吻合術(Esophageal resection and anastomosis)についての概要解説です。馬における食道の部分切除術(Partial resection)および吻合術は、難治性の食道狭窄(Refractory esophagea...
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馬の食道筋切開術
診療 - 2023/02/19一般的に、食道(Esophagus)という組織に対する手術では、重篤な雑菌混入(Severe bacterial contamination)が起きやすく、複数の筋層の機能回復を要するという特徴から、外科的手技の難易度が高いことが知られています。以下は、食道筋切開術(Esophagomyotomy)についての概要解説です。馬における食道筋切開術は、食道狭窄(Esophageal stricture)における内腔拡張のために実施されます。しかし、食道閉塞に続発する狭窄症は...
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馬の食道切開術
診療 - 2023/02/18一般的に、食道(Esophagus)という組織に対する手術では、重篤な雑菌混入(Severe bacterial contamination)が起きやすく、複数の筋層の機能回復を要するという特徴から、外科的手技の難易度が高いことが知られています。以下は、食道切開術(Esophagotomy)についての概要解説です。馬における食道切開術は、難治性の食道閉塞(Refractory esophageal obstruction)の遊離、嚥下した異物の除去(Foreign body removal)、管腔内...
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疝痛の獣医療での地域差:デンマーク
話題 - 2023/02/10馬の疝痛では、各地域で飼養されている馬の品種や年齢、用途、飼養形態などの要因に起因して、発症状況や医療ケアの方針に関して地域差が生まれると考えられます。そして、どの要因が、どのような地域差に繋がるのかを知ることで、海外の知見を日本での馬の獣医療に応用する際に、どのエビデンスを重視するか、または、重視するべきではないのかを推測するのに役立つと言えます。ここでは、北欧のデンマークにおける、馬の疝痛の獣...
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疝痛の獣医療での地域差:イスラエル
話題 - 2023/02/09馬の疝痛では、各地域で飼養されている馬の品種や年齢、用途、飼養形態などの要因に起因して、発症状況や医療ケアの方針に関して地域差が生まれると考えられます。そして、どの要因が、どのような地域差に繋がるのかを知ることで、海外の知見を日本での馬の獣医療に応用する際に、どのエビデンスを重視するか、または、重視するべきではないのかを推測するのに役立つと言えます。ここでは、中東のイスラエルにおける、馬の疝痛の獣...
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疝痛の獣医療での地域差:カナダ
話題 - 2023/02/08馬の疝痛では、各地域で飼養されている馬の品種や年齢、用途、飼養形態などの要因に起因して、発症状況や医療ケアの方針に関して地域差が生まれると考えられます。そして、どの要因が、どのような地域差に繋がるのかを知ることで、海外の知見を日本での馬の獣医療に応用する際に、どのエビデンスを重視するか、または、重視するべきではないのかを推測するのに役立つと言えます。ここでは、カナダの大西洋側地域における、馬の疝痛...
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疝痛の開腹術での予後判定指標:スペイン
話題 - 2023/02/06馬の重度疝痛に対する開腹術では、予後不良となるケースも少なくなく、費用も高額になり易いことから、予後を的確に推測する指標が有用となります。ここでは、疝痛馬の開腹術における予後判定の指標を調査した知見を紹介します。この研究では、2006〜2011年にかけて、スペインの二箇所の獣医大学病院において、疝痛の外科治療のために実施された566頭の開腹術における医療記録の回顧的解析、および、オッズ比(OR)の算出による予後...
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馬の喉頭片麻痺での外科的治療法の比較
話題 - 2023/01/08一般的に、馬の喉頭片麻痺に対する外科的治療では、治療成功率は60~80%と多様であることが知られており[1,2]、内視鏡で観察される披裂軟骨の外転や声門の断面積などで、治療効果が推測されてきました[3,4]。しかし、近年の研究では、喉頭から気管開口部までの構造を三次元的に解析することで、通気のメカニズムを評価できるようになってきました[5]。そこで、下記の研究では、馬の屠体から採取した喉頭軟骨(10個)を用いて、喉頭...
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馬の喉頭片麻痺に対する披裂角切除術
話題 - 2023/01/08一般的に、馬の喉頭片麻痺に対する外科的治療では、喉頭形成術(タイバック手術)に声嚢声帯切除術を併用する術式が選択肢の一つとされていますが、長期経過を評価した研究では、八割近い症例において、披裂軟骨炎や軟部組織虚脱などの異常所見が認められています[1,2]。このため、喉頭形成術が失敗した場合には、披裂軟骨を部分切除または亜全切除する術式が提唱されており、インプラントを使わないメリットと(感染リスクが低い...
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馬の声帯切除術による経喉頭抵抗の緩和
話題 - 2023/01/07一般的に、馬の喉頭片麻痺において、運動中に披裂軟骨の部分的外転(RakestrawグレードB)を維持する機能が残っていれば、喉頭形成術(タイバック手術)は必須ではないと考えられています。しかし、その場合でも、運動中に片側の声帯虚脱を起こす症例が散見され、22%の症例では披裂軟骨と声帯の虚脱が併発し、5%の症例では声帯虚脱だけ起こることが報告されています[1]。このような症例に対しては、喉頭形成術よりも侵襲性が低い声...
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疝痛の手術後での平地レースへの復帰率
話題 - 2023/01/04馬の疝痛治療での開腹術は、侵襲性や合併症の危険も大きく、施術を判断する際には、術後にパフォーマンスを維持できるか否かも、重要な判断要因であると言えます。ここでは、競走馬における疝痛手術と、その後のレース復帰率や競走成績を調査した知見を紹介します。この研究では、米国のカリフォルニア州の馬病院において、1996~2010年にかけて、疝痛治療のために開腹術が実施された85頭のサラブレッド競走馬における、医療記録の...
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疝痛の手術後での乗馬競技への復帰率
話題 - 2023/01/03馬の疝痛治療での開腹術は、侵襲性や合併症の危険も大きく、施術を判断する際には、術後にパフォーマンスを維持できるか否かも、重要な判断要因であると言えます。ここでは、疝痛の手術と、その後の乗馬競技への復帰率を調査した知見を紹介します。この研究では、デンマークのコペンハーゲン大学の大動物病院において、2005~2010年にかけて、疝痛の治療のために開腹術が実施された88頭の症例馬における、医療記録の回顧的解析、長...
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馬の滑膜感染の関節鏡での予後指標
話題 - 2022/12/27関節鏡手術は、馬の無菌手術のなかで、最も頻繁に実施されるものの一つで、OCDや小片骨折の摘出の他にも、多様な関節疾患の治療に適応されています。ここでは、滑膜感染を起こした214頭の症例(六ヶ月齢以上)での関節鏡の治療成績、および、オッズ比(OR)の算出による予後指標に関する知見を紹介します。参考文献:Milner PI, Bardell DA, Warner L, Packer MJ, Senior JM, Singer ER, Archer DC. Factors associated with survi...
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蹄骨の裏側の骨片での関節鏡
話題 - 2022/12/27関節鏡手術は、馬の無菌手術のなかで、最も頻繁に実施されるものの一つで、OCDや小片骨折の摘出の他にも、多様な関節疾患の治療に適応されています。ここでは、蹄骨の裏側(掌側または底側)に骨軟骨片を発生した四頭の跛行馬に対して、関節鏡手術を実施した知見を紹介します。参考文献:Lloyd KA, Smith MR, Whitton RC, Stent AW, Steel CM. Osteochondral fragmentation of the palmarolateral/plantarolateral aspect of the d...
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馬の蹄関節での関節鏡の長期的予後
話題 - 2022/12/26関節鏡手術は、馬の無菌手術のなかで、最も頻繁に実施されるものの一つで、OCDや小片骨折の摘出の他にも、多様な関節疾患の治療に適応されています。ここでは、馬の蹄関節での関節鏡手術における、病態の傾向と長期的予後を評価した知見を紹介します。この研究では、米国のテキサス州の馬病院にて、2012~2017年にかけて、蹄関節の変性関節疾患の治療のために、関節鏡手術が実施された10頭の跛行馬における医療記録の回顧的解析が...
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馬の脛骨の顆間隆起骨折での関節鏡
話題 - 2022/12/26関節鏡手術は、馬の無菌手術のなかで、最も頻繁に実施されるものの一つで、OCDや小片骨折の摘出の他にも、多様な関節疾患の治療に適応されています。ここでは、馬の脛骨の顆間隆起骨折での関節鏡治療を評価した知見を紹介します。この研究では、米英の九ヶ所の馬病院において、2004~2016年にかけて、脛骨の顆間隆起骨折の治療のために関節鏡が実施された21頭の跛行馬における医療記録の回顧的解析が行なわれました。参考文献:Rub...
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馬の後膝での関節鏡の長期的予後
話題 - 2022/12/25関節鏡手術は、馬の無菌手術のなかで、最も頻繁に実施されるものの一つで、OCDや小片骨折の摘出の他にも、多様な関節疾患の治療に適応されています。ここでは、馬の後膝での関節鏡手術における長期的予後を評価した知見を紹介します。この研究では、米国のペンシルバニア大学の馬病院にて、1993~2006年にかけて、膝関節の変性関節疾患、半月板損傷、関節内軟部組織の損傷を治療するため、関節鏡手術が実施された44頭の跛行馬にお...
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高齢馬の疝痛での治療と予後
話題 - 2022/12/22近年、馬の寿命が延びて、高齢馬の飼養頭数が増えるに連れて、高齢期における病気の治療や健康管理が重要になってきています。ここでは、高齢馬での疝痛における治療と予後を調査した知見を紹介します。この研究では、米国のペンシルバニア大学の馬病院において、2000~2006年にかけて疝痛の診療を受けた300頭の高齢馬(16歳以上)での治療内容や生存率が、300頭の対照馬(4~15歳、疝痛馬)と比較され、更に、オッズ比(OR)の算...
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馬の難産での組織的治療
話題 - 2022/12/20馬の難産は救急医療の一つで、短時間で適切な判断と処置を下すことで、子馬と母馬の命を救うことが可能になります。ここでは、馬の難産に対する組織的治療プロトコル(CDMP: Coordinated dystocia management protocol)の効果を検証した知見を紹介します。この研究では、米国のペンシルバニア大学の馬病院において、1991~2004年にかけて診療を受けた71頭の難産症例における医療記録の回顧的解析が行なわれました。参考文献:Nort...
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馬の難産へのアプローチ
話題 - 2022/12/19馬の難産は救急医療の一つで、短時間で適切な判断と処置を下すことで、子馬と母馬の命を救うことが可能になります。ここでは、二次診療施設での馬の難産処置に関して、アプローチ方針と治療成績を検証した知見を紹介します。この研究では、米国のケンタッキー州の馬病院にて、1986~1999年にかけて実施された247件の難産における医療記録の回顧的解析が行なわれました。参考文献:Byron CR, Embertson RM, Bernard WV, Hance SR, B...
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ミニチュアホースの疝痛での開腹術
話題 - 2022/12/18ミニチュアホースは、馬体の大きさが馬と大きく違うだけでなく、発症する病気も特徴的であることが知られており、疝痛治療においても、この品種に特有な知識と技術が必要になってきます。ここでは、ミニチュアホースの疝痛での開腹術の治療成績を調査した知見を紹介します。この研究では、米国のミシガン州立大学の大動物病院において、1993~2006年にかけて、疝痛治療のため外来して開腹術が実施された57頭のミニチュアホースでの...
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疝痛馬での開腹術の適応における“決定木”
話題 - 2022/12/14疝痛馬を診察する獣医師にとって、いつ開腹術が必要だと判断するかは迷い処かもしれません。ここでは、疝痛馬の症状や検査所見に基づいて、開腹術の適応を判断するための決定木(ディシジョンツリー)の作成を試みた知見を紹介します。この研究では、デンマークのコペンハーゲン大学において、1994~1997年にかけて、490頭の疝痛馬の症状や検査所見に基づいて、重症化に関与する危険因子のオッズ比(OR)算出、および、開腹術の判...
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疝痛馬の痛がり方による手術適応の判断
話題 - 2022/12/13疝痛馬を診察する獣医師にとって、いつ開腹術が必要だと判断するかは迷い処かもしれません。ここでは、疝痛馬への鎮痛剤投与と、開腹術に踏み切るという判断との関連性を評価した知見を紹介します。この研究では、米国のヴァージニア州の馬病院において、米国馬臨床医協会の会員などへの聞き取りを行ない、疝痛馬の診療における鎮痛剤の投与、疼痛症状の度合い、および、開腹術を要したかの判断についての関連性が調査され、オッズ...
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アルファキサロンでの馬の点滴麻酔
話題 - 2022/12/12点滴麻酔は、全静脈麻酔(Total intravenous anesthesia)とも呼ばれ、麻酔薬を持続的に点滴で投与することで全身麻酔を維持する手法で、往診現場でも短時間の手術を実施することが可能となります。ここでは、アルファキサロンを用いた点滴麻酔に関する知見を紹介します。参考文献:Aoki M, Wakuno A, Kushiro A, Mae N, Kakizaki M, Nagata SI, Ohta M. Evaluation of total intravenous anesthesia with propofol-guaifenesin-me...
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プロポフォールでの馬の点滴麻酔
話題 - 2022/12/12点滴麻酔は、全静脈麻酔(Total intravenous anesthesia)とも呼ばれ、麻酔薬を持続的に点滴で投与することで全身麻酔を維持する手法で、往診現場でも短時間の手術を実施することが可能となります。ここでは、プロポフォールを用いた点滴麻酔に関する知見を紹介します。参考文献:Ishizuka T, Itami T, Tamura J, Saitoh Y, Saitoh M, Umar MA, Miyoshi K, Yamashita K, Muir WW. Anesthetic and cardiorespiratory effects of pro...
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ケタミンでの馬の点滴麻酔
話題 - 2022/12/11点滴麻酔は、全静脈麻酔(Total intravenous anesthesia)とも呼ばれ、麻酔薬を持続的に点滴で投与することで全身麻酔を維持する手法で、往診現場でも短時間の手術を実施することが可能となります。ここでは、ケタミンを用いた点滴麻酔に関する知見を紹介します。参考文献:Hubbell JA, Aarnes TK, Lerche P, Bednarski RM. Evaluation of a midazolam-ketamine-xylazine infusion for total intravenous anesthesia in horses. Am...
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馬でのHA塗装ピンキャスト固定法
話題 - 2022/12/10ピンキャスト(Transfixation pin cast)とは、馬の骨折の治療法の一つで、長骨を貫通させたピンを、キャスト壁内に埋め込むことで、骨折部への荷重を迂回させて治癒を促すという外固定法になります。ここでは、骨増勢を促進するハイドロキシアパタイト(HA)で塗装したピンを用いて、14頭の馬へのピンキャスト固定を実施した知見を紹介します。参考文献:Lescun TB, Baird DK, Oliver LJ, Adams SB, Hawkins JF, Moore GE. Compar...
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ピンキャストでの馬の管骨骨折の治療
話題 - 2022/12/10ピンキャスト(Transfixation pin cast)とは、馬の骨折の治療法の一つで、橈骨または管骨を貫通させたピンを、全肢または半肢キャストに埋め込むことで、骨折部への荷重を迂回させて治癒を促すという外固定法になります。ここでは、米国のパデュー大学の大動物病院にて、管骨又は指骨骨折を呈した37頭の馬に対して、ピンキャスト治療を実施した症例報告を紹介します。参考文献:Lescun TB, McClure SR, Ward MP, Downs C, Wilson ...
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ピンキャストでの馬の指骨粉砕骨折の治療
話題 - 2022/12/09ピンキャスト(Transfixation pin cast)とは、馬の骨折の治療法の一つで、管骨を貫通させたピンを、半肢キャストに埋め込むことで、骨折部への荷重を迂回させて治癒を促すという外固定法になります。ここでは、コロラド州立大学の大動物病院にて、指骨の粉砕骨折を呈した20頭の馬に対して、ピンキャスト治療を実施した症例報告を紹介します。参考文献:Joyce J, Baxter GM, Sarrafian TL, Stashak TS, Trotter G, Frisbie D. Use ...
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馬の日帰り手術のリスク
話題 - 2022/12/08馬という動物にとって、馬運車での輸送は、肉体的負担やストレスの多い行為であるため、馬体への影響を考慮してあげることが大切です。ここでは、馬の日帰り手術で起こるような、輸送、絶食、全身麻酔などの負荷が、馬体に与える影響について調査した知見を紹介します。この研究では、8頭の健常馬を用いて、安静時、輸送後、絶食後、全身麻酔の24,48,72時間後における、糞便内の細菌組成の遺伝子学的解析が行なわれました。参考文...
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馬の関節鏡での骨片サイズの影響
話題 - 2022/12/06馬の関節鏡は、様々な関節疾患の治療に適応されており、侵襲性が低いという利点がありますが、合併症がゼロという訳ではないことには注意する必要があります。ここでは、馬の関節鏡での術後合併症と骨片サイズについて調査した知見を紹介します。この研究では、カナダのゲルフ大学の獣医病院において、2011~2020年にかけて、飛節(脛骨足根関節)の関節鏡手術が行なわれた329頭の馬(485箇所の関節)における、医療記録の回顧的解...
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馬の関節鏡での抗生物質
話題 - 2022/12/05馬の関節鏡は、様々な関節疾患の治療に適応されており、侵襲性が低いという利点がありますが、合併症がゼロという訳ではないことには注意する必要があります。ここでは、馬の関節鏡での術後合併症について調査した知見を紹介します。この研究では、スウェーデンの馬病院において、2008~2010年にかけて、444頭の馬に実施された636箇所の関節鏡手術における、医療記録の回顧的解析が行なわれました。参考文献:Borg H, Carmalt JL. ...
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馬のストリートネイル手術
診療 - 2022/11/13馬のストリートネイル手術についてまとめてみます。あくまで概要解説ですので、詳細な手技については成書や論文を確認して下さい。馬のストリートネイル手術(Street nail procedure)は、釘傷などによる感染性舟嚢炎の治療法になります。舟嚢のような滑膜組織では、その内腔に血管が無く、滑液を通して酸素や栄養を届けています。このため、もし釘傷によって雑菌が入ってしまうと、それを貪食する白血球も少数しか動員されないた...
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馬の半腱様筋腱切断術
診療 - 2022/11/13馬の半腱様筋腱の切断術についてまとめてみます。あくまで概要解説ですので、詳細な手技については成書や論文を確認して下さい。馬の後肢に発症する機械性跛行として半腱様筋の線維化筋症(Fibrotic myopathy)があり、歩幅の頭側相で後肢が急激に尾側引張されることで、特徴的な雁様踏着という歩様を示します。この疾患の治療法としては、線維化組織の切除や筋切除術も可能ですが、より侵襲性の少ない術式として、線維化している...
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馬の外側指伸筋腱切除術
診療 - 2022/11/12馬の外側指伸筋腱の切除術についてまとめてみます。あくまで概要解説ですので、詳細な手技については成書や論文を確認して下さい。馬の後肢に発症する機械性跛行として鶏跛(Stringhalt)があり、飛節と膝関節の不随意性過剰屈曲を示す疾患で、球節を高く挙上しながら歩く歩様が見られます(通常は、常歩においてのみ)。そして、鶏跛に対する外科的治療では、外側指伸筋腱の切除術が試みられることがありますが、鶏跛歩様の改善度...
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馬の深屈腱の“半切断術”
話題 - 2022/11/08馬の蹄葉炎の外科的治療では、深屈腱の切断術(切腱術)が行なわれますが、腱の機能が完全に損失することで、運動能力低下や蹄関節不安定性などの副作用があります。ここでは、切腱術の変法として、深屈腱の“半切断術”(Hemitenotomy)をしたときの効果を評価した知見を紹介します。この研究では、屠体肢を用いた実験によって(15対の深屈腱、16対の前肢)、深屈腱を二箇所で半切断(背側半分と掌側半分を切断、3cm間隔)または完...
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馬の切腱術の予後
診療 - 2022/11/08馬の慢性蹄葉炎に対する外科的治療としては、深屈腱の切断術(切腱術)が挙げられますが、ここでは、切腱術のあとの予後に関する知見を紹介します。参考文献:Bras RJ. Life After Deep Digital Flexor Tenotomies: How to manage hoof lameness II. Proc AAEP, 2020(66), 398-403.一般的に、馬の慢性蹄葉炎において、蹄骨の変位が進行してしまい、適切な装蹄療法を施しているにも関わらず、十分な蹄壁伸長が認められない症例に対...
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馬の切腱術の術式
診療 - 2022/11/07馬の深屈腱の切断術(切腱術)についてまとめてみます。あくまで概要解説ですので、詳細な手技については成書や論文を確認して下さい。馬の切腱術は、管部中央部または繋部での施術が可能で、どちらの手法でも、深屈腱から蹄骨に掛かる緊張力を緩和する効果が期待されます。しかし、通常は、管部中央部での切腱術が選択される場合が多く、その要因としては、手技が簡易であること、立位での施術が可能であること、腱鞘組織への侵襲...
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馬の切腱術のタイミング
診療 - 2022/11/07蹄葉炎の馬において、いつ切腱術を実施するかは迷い処なのかもしれません。ここでは、馬の切腱術を実施するタイミングについての知見を紹介します。参考資料:Christa Leste-Lasserre, MA. Well-Timed Tenotomy Can Save Laminitic Horses’ Lives. The Horse, Topics, AAEP Convention 2020, Article, Hoof Care, Hoof Problems, Horse Care, Lameness, Laminitis (Founder), Lower Limb, Vet and Professional: Jan13, 2021.馬の...
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老齢馬の疝痛手術での生存率
話題 - 2022/11/02近年では、獣医療の進歩に伴って、馬の寿命も延びてきており、老齢馬の病気や医療ケアにおける重要性も高まってきていると言えます。ここでは、老齢馬の疝痛に対する開腹術における、生存率やそれに関わる因子を調査した知見を紹介します。この研究では、米国のフロリダ州の二次診療病院において、1997~2007年にかけて、疝痛の治療のために開腹術が行なわれた56頭の老齢馬(20歳以上)、および、487頭の対照馬における医療記録の...
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去勢してもオスっ気が取れない馬
診療 - 2022/10/25一般的に、牡馬を去勢した後には、テストステロン濃度は六時間後には基底値まで低下しており、牡馬様の行動は、去勢の8週間後までには徐々に消失することが知られています。しかし、この期間を過ぎても、オスっ気が取れない馬に対しては、原因および対処を検討する必要が出てきます。まず原則として、精巣を切除したオス馬(騙馬)においても、春季や初夏の時期に牡馬用行動を示すことは、一定数の個体において認められることが知...
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馬の陰睾と単精巣症の見分け方
診療 - 2022/10/25牡馬における停留精巣の治療を行なうときには、単精巣症との鑑別を要する症例もあります。一般的に、停留精巣(いわゆる陰睾)とは、一ヶ月齢以降になっても、精巣が陰嚢内まで下降していない病態を指しています。この場合、精巣が鼠経管の内部や内鼠経輪の内側、もしくは、腹腔の深部に位置している事から、これを摘出するために、通常の去勢とは異なる処置が必要になります。一方で、もともと精巣が一個しか無いという牡馬もおり...
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馬の会陰尿道切開術
診療 - 2022/10/24馬の会陰尿道切開術についてまとめてみます。あくまで概要解説ですので、詳細な手技については成書や論文を確認して下さい。オス馬における、尿道の坐骨湾曲部の会陰尿道切開術は、膀胱結石の摘出、血尿症の治療、および、尿道結石や陰茎腫瘍による尿路閉塞の整復のために実施されます。通常は、起立位で施術され、鎮静と硬膜外麻酔(会陰皮膚の浸潤麻酔を要することも)のあと、術部の剃毛と消毒を実施します。そして、会陰縫線上...
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馬の鼠径停留精巣の切除術
診療 - 2022/10/24馬の鼠径停留精巣の切除術についてまとめてみます。あくまで概要解説ですので、詳細な手技については成書や論文を確認して下さい。停留精巣(いわゆる陰睾)は、生後一ヶ月を過ぎても、精巣が陰嚢内まで下降していない発生学的な病態を指し(上図のCryptorchid testicle)、発生率は左側精巣のほうが高いことが知られています。停留した精巣には、精子の生成能は無いものの、テストステロン分泌は見られるため、発情行動や気性の荒...
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馬の去勢での合併症の発生状況
話題 - 2022/10/22去勢手術は、馬において最も多く実施される外科的処置であり、リスクの少ない手術ではあるものの、合併症も一定確率で発生することが知られています。ここでは、馬の去勢における術後合併症の発生状況や、その発症素因に関する知見を紹介します。この研究では、1998~2008年にかけて、去勢手術が実施された324頭の馬属動物(ラバ10頭とロバ3頭を含む)における医療記録の回顧的解析が行なわれました。参考文献:Kilcoyne I, Watson...
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馬の小腸絞扼は切除しなくても治る?
話題 - 2022/10/19一般的に、馬の疝痛の原因となる小腸疾患は、絞扼性の病態を呈することが多く、開腹術による外科的療法を要することが殆どですが、虚血性損傷を起こしている小腸を、切除・吻合するか、それとも、そのまま閉腹して自然治癒を待つかは、執刀医にとって迷い処だと言えます。虚血性損傷を起こした小腸を、体内に残したままにしておくと、癒着、再灌流障害、術後イレウス、蹄葉炎などを続発する危険性があり、2回目の開腹術を要するケ...
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肥満の馬での術創感染のリスク
話題 - 2022/10/19馬の疝痛治療のための開腹術において、肥満であることの危険性が調査されています。参考文献:Hill JA, Tyma JF, Hayes GM, Radcliffe R, Fubini SL. Higher body mass index may increase the risk for the development of incisional complications in horses following emergency ventral midline celiotomy. Equine Vet J. 2020 Nov;52(6):799-804.ヒト医療では、肥満体型であることが手術後の死亡率や合併症の発症率の高さに...
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2回目の疝痛手術のリスクは?
話題 - 2022/10/18馬の開腹術のあとに疝痛症状が再発した場合、もう一度、お腹を開けるか否かは、ホースマンにとっても獣医師にとっても、かなりの迷い処かもしれません。ここでは、疝痛馬での2回目の開腹術において、生存率に関わる因子を調査した論文を紹介します。この研究では、英国のリバプール大学の獣医病院において、2002~2012年にかけて、疝痛治療のための開腹術のあとに、八週間以内に“再開腹術”(Relaparotomy)が実施された症例馬にお...
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馬の球節固定術
診療 - 2022/10/17馬の球節(中手指骨間関節または中足指骨間関節)の固定術についてまとめてみます。あくまで概要解説ですので、詳細な手技については成書や論文を確認して下さい。馬に対する球節固定術は、懸垂装置の破損によって球節の掌側支持機能が失われた場合や、球節の重篤な関節疾患などによって疼痛管理が困難な場合に適応されます。このうち、前者では懸垂装置の機能を回復させる外科的措置(テンションバンドワイヤーの設置)が必要にな...