タグ:疝痛 のエントリー一覧
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馬の食道粘膜反転術
診療 - 2023/02/21一般的に、食道(Esophagus)という組織に対する手術では、重篤な雑菌混入(Severe bacterial contamination)が起きやすく、複数の筋層の機能回復を要するという特徴から、外科的手技の難易度が高いことが知られています。以下は、食道粘膜反転術(Esophageal mucosal inversion)についての概要解説です。馬における食道粘膜反転術は、圧出性食道憩室(Pulsion esophageal diverticula)の外科的整復のために実施されます。頚部...
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馬の食道切除術
診療 - 2023/02/20一般的に、食道(Esophagus)という組織に対する手術では、重篤な雑菌混入(Severe bacterial contamination)が起きやすく、複数の筋層の機能回復を要するという特徴から、外科的手技の難易度が高いことが知られています。以下は、食道切除および吻合術(Esophageal resection and anastomosis)についての概要解説です。馬における食道の部分切除術(Partial resection)および吻合術は、難治性の食道狭窄(Refractory esophagea...
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馬の食道筋切開術
診療 - 2023/02/19一般的に、食道(Esophagus)という組織に対する手術では、重篤な雑菌混入(Severe bacterial contamination)が起きやすく、複数の筋層の機能回復を要するという特徴から、外科的手技の難易度が高いことが知られています。以下は、食道筋切開術(Esophagomyotomy)についての概要解説です。馬における食道筋切開術は、食道狭窄(Esophageal stricture)における内腔拡張のために実施されます。しかし、食道閉塞に続発する狭窄症は...
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馬の食道切開術
診療 - 2023/02/18一般的に、食道(Esophagus)という組織に対する手術では、重篤な雑菌混入(Severe bacterial contamination)が起きやすく、複数の筋層の機能回復を要するという特徴から、外科的手技の難易度が高いことが知られています。以下は、食道切開術(Esophagotomy)についての概要解説です。馬における食道切開術は、難治性の食道閉塞(Refractory esophageal obstruction)の遊離、嚥下した異物の除去(Foreign body removal)、管腔内...
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疝痛の獣医療での地域差:ケニア
話題 - 2023/02/11馬の疝痛では、各地域で飼養されている馬の品種や年齢、用途、飼養形態などの要因に起因して、発症状況や医療ケアの方針に関して地域差が生まれると考えられます。そして、どの要因が、どのような地域差に繋がるのかを知ることで、海外の知見を日本での馬の獣医療に応用する際に、どのエビデンスを重視するか、または、重視するべきではないのかを推測するのに役立つと言えます。ここでは、アフリカのケニアにおける、馬の疝痛の獣...
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疝痛の獣医療での地域差:デンマーク
話題 - 2023/02/10馬の疝痛では、各地域で飼養されている馬の品種や年齢、用途、飼養形態などの要因に起因して、発症状況や医療ケアの方針に関して地域差が生まれると考えられます。そして、どの要因が、どのような地域差に繋がるのかを知ることで、海外の知見を日本での馬の獣医療に応用する際に、どのエビデンスを重視するか、または、重視するべきではないのかを推測するのに役立つと言えます。ここでは、北欧のデンマークにおける、馬の疝痛の獣...
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疝痛の獣医療での地域差:イスラエル
話題 - 2023/02/09馬の疝痛では、各地域で飼養されている馬の品種や年齢、用途、飼養形態などの要因に起因して、発症状況や医療ケアの方針に関して地域差が生まれると考えられます。そして、どの要因が、どのような地域差に繋がるのかを知ることで、海外の知見を日本での馬の獣医療に応用する際に、どのエビデンスを重視するか、または、重視するべきではないのかを推測するのに役立つと言えます。ここでは、中東のイスラエルにおける、馬の疝痛の獣...
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疝痛の獣医療での地域差:カナダ
話題 - 2023/02/08馬の疝痛では、各地域で飼養されている馬の品種や年齢、用途、飼養形態などの要因に起因して、発症状況や医療ケアの方針に関して地域差が生まれると考えられます。そして、どの要因が、どのような地域差に繋がるのかを知ることで、海外の知見を日本での馬の獣医療に応用する際に、どのエビデンスを重視するか、または、重視するべきではないのかを推測するのに役立つと言えます。ここでは、カナダの大西洋側地域における、馬の疝痛...
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馬の外科的疝痛におけるPCV値と心拍数
話題 - 2023/02/07馬の疝痛においては、その多くが内科的治療によって回復しますが、開腹術などの外科的治療を要するような重度の症例では、手術適応を早期判断したり、手術が選択肢で無いときには、アグレッシブな保存療法を初期段階で開始することが重要となります。このため、外科的疝痛の診断指標を確立させることが、馬の疝痛を診察する際に有益であると言えます。ここでは、疝痛馬のPCV値と心拍数によって、内科的および外科的疝痛の鑑別と、...
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疝痛の開腹術での予後判定指標:スペイン
話題 - 2023/02/06馬の重度疝痛に対する開腹術では、予後不良となるケースも少なくなく、費用も高額になり易いことから、予後を的確に推測する指標が有用となります。ここでは、疝痛馬の開腹術における予後判定の指標を調査した知見を紹介します。この研究では、2006〜2011年にかけて、スペインの二箇所の獣医大学病院において、疝痛の外科治療のために実施された566頭の開腹術における医療記録の回顧的解析、および、オッズ比(OR)の算出による予後...
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馬の虚血再灌流障害でのポストコンディショニング
話題 - 2023/01/20馬の小腸の絞扼性疾患(空腸捻転や有茎性脂肪腫、網嚢孔捕捉など)では、絞扼を整復して虚血していた箇所に血流を回復させると、その再灌流が原因で組織損傷が起こってしまうという現象が知られており、また、その際に流出する炎症性物質によって、他の部位の腸管が通過障害(術後イレウス)を続発したり、全身の多臓器が損傷を受けるという危険性が指摘されています。ここでは、そのような虚血再灌流障害(Ischemia-reperfusion i...
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馬の虚血再灌流でのリドカイン投与
話題 - 2023/01/19馬の小腸の絞扼性疾患(空腸捻転や有茎性脂肪腫、網嚢孔捕捉など)では、絞扼を整復して虚血していた箇所に血流を回復させると、その再灌流が原因で組織損傷が起こってしまうという現象が知られており、また、その際に流出する炎症性物質によって、他の部位の腸管が通過障害(術後イレウス)を続発したり、全身の多臓器が損傷を受けるという危険性が指摘されています。ここでは、そのような虚血再灌流障害(Ischemia-reperfusion i...
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馬の虚血再灌流障害における空腸の虚弱性
話題 - 2023/01/18馬の小腸の絞扼性疾患(空腸捻転や有茎性脂肪腫、網嚢孔捕捉など)では、絞扼を整復して虚血していた箇所に血流を回復させると、その再灌流が原因で組織損傷が起こってしまうという現象が知られており、また、その際に流出する炎症性物質によって、他の部位の腸管が通過障害(術後イレウス)を続発したり、全身の多臓器が損傷を受けるという危険性が指摘されています。ここでは、そのような虚血再灌流障害(Ischemia-reperfusion i...
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サク癖する馬は疝痛になり易い?
話題 - 2023/01/16サク癖は、馬用語で「グイッポ」とも呼ばれ、固定された物体を前歯で咥えて、それを支点にして頭頚部を屈曲させながら空気を飲み込むような動作を指します。ここでは、サク癖をする馬としない馬で、疝痛の発生状況の違いを比較した知見を紹介します。この研究では、米国のUCデービスの獣医大学病院にて、2006~2008年に診察を受けた227頭の疝痛馬および347頭の対照馬において、馬主への聞き取り調査および疝痛病態に関する医療記録...
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馬の腹水採取のためのエコー検査
話題 - 2023/01/12腹水検査は、疝痛などの馬の腸管疾患での診断法の一つとして実施されており、罹患臓器のすぐ傍にある体液の性状を評価できる点で、多様な腹腔内病態の有無や重篤度を診断する一助になると言われています。ここでは、腹水採取のための腹部エコー検査所見について調査した知見を紹介します。この研究では、イタリアのペルージャ大学の獣医病院において、腹部エコー検査の実施と腹水検査が試みられた109頭の症例馬における医療記録の...
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腹水検査での馬の肝疾患の診断
話題 - 2023/01/12腹水検査は、疝痛などの馬の腸管疾患での診断法の一つとして実施されており、罹患臓器のすぐ傍にある体液の性状を評価できる点で、多様な腹腔内病態の有無や重篤度を診断する一助になると言われています。ここでは、成馬の肝疾患における腹水検査の所見と、胃腸疾患との鑑別能について調査した知見を紹介します。この研究では、スペインのバルセロナ大学の獣医病院において、2010~2014年にかけて、疝痛または肝疾患の疑いで診察を...
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腹水検査での産後牝馬の診断
話題 - 2023/01/11腹水検査は、疝痛などの馬の腸管疾患での診断法の一つとして実施されており、罹患臓器のすぐ傍にある体液の性状を評価できる点で、多様な腹腔内病態の有無や重篤度を診断する一助になると言われています。ここでは、出産後の牝馬における腹水検査の所見について調査した知見を紹介します。この研究では、英国とオーストラリアの二箇所の馬病院において、出産後の救急医療診察を受けた110頭の牝馬における腹水検査の所見と、医療記...
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エンデュランス競技の直後に起こる疝痛
話題 - 2023/01/04エンデュランスの競技馬では、競技を棄権する理由の一つとして疝痛が挙げられており、発症率も高いことが報告されています[1]。ここでは、エンデュランスの競技馬における疝痛の傾向を調査した知見を紹介します。この研究では、米国のカリフォルニア州の二箇所の馬病院において、2000~2010年にかけて、エンデュランス競技のあとの48時間以内に疝痛を発症した36頭の馬における、医療記録の回顧的解析が行なわれました。参考文献:F...
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疝痛の手術後での平地レースへの復帰率
話題 - 2023/01/04馬の疝痛治療での開腹術は、侵襲性や合併症の危険も大きく、施術を判断する際には、術後にパフォーマンスを維持できるか否かも、重要な判断要因であると言えます。ここでは、競走馬における疝痛手術と、その後のレース復帰率や競走成績を調査した知見を紹介します。この研究では、米国のカリフォルニア州の馬病院において、1996~2010年にかけて、疝痛治療のために開腹術が実施された85頭のサラブレッド競走馬における、医療記録の...
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疝痛の手術後での乗馬競技への復帰率
話題 - 2023/01/03馬の疝痛治療での開腹術は、侵襲性や合併症の危険も大きく、施術を判断する際には、術後にパフォーマンスを維持できるか否かも、重要な判断要因であると言えます。ここでは、疝痛の手術と、その後の乗馬競技への復帰率を調査した知見を紹介します。この研究では、デンマークのコペンハーゲン大学の大動物病院において、2005~2010年にかけて、疝痛の治療のために開腹術が実施された88頭の症例馬における、医療記録の回顧的解析、長...
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高齢馬の疝痛での治療と予後
話題 - 2022/12/22近年、馬の寿命が延びて、高齢馬の飼養頭数が増えるに連れて、高齢期における病気の治療や健康管理が重要になってきています。ここでは、高齢馬での疝痛における治療と予後を調査した知見を紹介します。この研究では、米国のペンシルバニア大学の馬病院において、2000~2006年にかけて疝痛の診療を受けた300頭の高齢馬(16歳以上)での治療内容や生存率が、300頭の対照馬(4~15歳、疝痛馬)と比較され、更に、オッズ比(OR)の算...
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高齢馬の疝痛での臨床症状
話題 - 2022/12/22近年、馬の寿命が延びて、高齢馬の飼養頭数が増えるに連れて、高齢期における病気の治療や健康管理が重要になってきています。ここでは、高齢馬での疝痛における臨床症状を調査した知見を紹介します。この研究では、米国のペンシルバニア大学の馬病院において、2000~2006年にかけて疝痛の診療を受けた300頭の高齢馬(16歳以上)での症状や体液検査所見が、300頭の対照馬(4~15歳、疝痛馬)と比較して解析されました。参考文献:S...
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ミニチュアホースの疝痛での開腹術
話題 - 2022/12/18ミニチュアホースは、馬体の大きさが馬と大きく違うだけでなく、発症する病気も特徴的であることが知られており、疝痛治療においても、この品種に特有な知識と技術が必要になってきます。ここでは、ミニチュアホースの疝痛での開腹術の治療成績を調査した知見を紹介します。この研究では、米国のミシガン州立大学の大動物病院において、1993~2006年にかけて、疝痛治療のため外来して開腹術が実施された57頭のミニチュアホースでの...
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新生子馬の疝痛での予後
話題 - 2022/12/18ヒト医療に産婦人科や小児科があるのと同様に、生まれたばかりの新生子馬の病気に対する獣医療では、成馬とは違った知識と技術が必要になります。ここでは、新生子馬の疝痛での治療成績を評価した研究を紹介します。この研究では、米国のペンシルバニア大学の馬病院において、2000~2010年にかけて、疝痛の診断や治療が行なわれた137頭の新生子馬(30日齢以下)での医療記録の回顧的解析が行なわれました。参考文献:Mackinnon MC,...
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疝痛馬での開腹術の適応における“決定木”
話題 - 2022/12/14疝痛馬を診察する獣医師にとって、いつ開腹術が必要だと判断するかは迷い処かもしれません。ここでは、疝痛馬の症状や検査所見に基づいて、開腹術の適応を判断するための決定木(ディシジョンツリー)の作成を試みた知見を紹介します。この研究では、デンマークのコペンハーゲン大学において、1994~1997年にかけて、490頭の疝痛馬の症状や検査所見に基づいて、重症化に関与する危険因子のオッズ比(OR)算出、および、開腹術の判...
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馬の疝痛症状での重要性の違い
話題 - 2022/12/14疝痛馬を診察する獣医師にとって、どの疝痛症状を重要視するかは意見の分かれるところかもしれません。ここでは、前掻きなどの馬の疝痛症状のうち、どれが疝痛の重症化と関連が深いかを検証した知見を紹介します。この研究では、英国の獣医大学病院において、2012~2013年にかけて診察された1,016頭の疝痛馬において、前掻きなどの諸症状と、重症化(開腹術や安楽殺になった場合)との関連性について、オッズ比(OR)の算出による...
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疝痛馬の痛がり方による手術適応の判断
話題 - 2022/12/13疝痛馬を診察する獣医師にとって、いつ開腹術が必要だと判断するかは迷い処かもしれません。ここでは、疝痛馬への鎮痛剤投与と、開腹術に踏み切るという判断との関連性を評価した知見を紹介します。この研究では、米国のヴァージニア州の馬病院において、米国馬臨床医協会の会員などへの聞き取りを行ない、疝痛馬の診療における鎮痛剤の投与、疼痛症状の度合い、および、開腹術を要したかの判断についての関連性が調査され、オッズ...
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馬の敗血症での多臓器不全バイオマーカー
話題 - 2022/12/01馬の疝痛では、内毒素血症の進行によって予後が悪化することが知られており、敗血症(SIRS)から播種性血管内凝固(DIC)、そして、多臓器不全(MOF)へと病態悪化していくことが知られています。ここでは、多臓器不全のバイオマーカーと言われているシンデカン1(Syndecan-1)の血中濃度を、疝痛馬の敗血症にて評価した知見を紹介します。この研究では、米国のミズーリ大学の獣医病院において、健常馬(66頭)、敗血症でない患馬...
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馬の疝痛での膵臓バイオマーカー
話題 - 2022/11/30ヒト医療で用いられる膵臓バイオマーカーのうち、特に膵炎の特異的診断能が高いものとして、DGGRリパーゼ活性(1,2-o-dilauryl-rac-glycero-3-glutaric acid-[6’-methylresorufin] ester lipase activity)の測定が挙げられています。ここでは、馬の疝痛における膵臓バイオマーカーの有用性を評価した知見を紹介します。この研究では、スイスのベルン大学において、2015~2016年にかけて、疝痛の診断や治療が行なわれた192頭の馬の...
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ポニーの結腸でのエコー所見
話題 - 2022/11/29馬の腹部エコー検査は、非侵襲性で簡易に実施できる消化管の画像診断法ですが、ポニーやミニチュアホースにおけるエコー所見については、あまり詳しく調査されていません。ここでは、小型馬の右背側結腸のエコー所見を調査した知見を紹介します。この研究では、ポニー13頭とミニチュアホース10頭における、右腹壁のエコー検査において、右背側結腸の厚み測定が行なわれました。参考文献: Siwinska N, Zak A, Baron M, Cylna M, Bo...
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新生子馬のステルス腸重責
話題 - 2022/11/29馬の腹部エコー検査は、非侵襲性で簡易に実施できる消化管の画像診断法ですが、新生子馬におけるエコー所見については、あまり詳しく調査されていません。ここでは、新生子馬における腹部エコー検査について調査した知見を紹介します。この研究では、ペンシルバニア大学のニューボルトンセンターにおいて、2012年の繁殖シーズンに診療した、18頭のスタンダードブレッド新生子馬(五日齢以下)に対して実施された腹部エコー検査の所...
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馬の疝痛スコアによる予後判定
話題 - 2022/11/28馬の疝痛では、心拍数や血中乳酸値など、病気の重さを示す重要な検査項目が幾つかあるため、それらを総括的に読み取って、全身状態の重篤度や予後の悪さを判断する必要があります。ここでは、そのような多数の項目をまとめて、一つの数字に変換して予後判定するという「疝痛スコアシステム」(Colic scoring system)について検討した知見を紹介します。この研究では、米国の複数の馬病院において、2014~2019年にかけて、疝痛の診...
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馬の補液10:補液計算の例題3
診療 - 2022/11/27馬の補液療法(Fluid therapy)の例題3。患馬は、急性発現性(Acute onset)の軽度疝痛症状(Mild colic)、発熱(Fever)、頻脈(Tachycardia)、頻呼吸(Tachypnea)などの症状を示し、経鼻カテーテルによってオレンジ色~茶色で腐敗臭(Fetid odor)を示す多量の胃逆流液(Gastric reflux)の排出が認められ、胃除圧(Gastric decompression)によって疼痛症状の顕著な改善と、その後の沈鬱症状(Depression)が見られました。...
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馬の補液9:補液計算の例題2
診療 - 2022/11/27馬の補液療法(Fluid therapy)の例題2。患馬は、48時間にわたる漸進発現性(Gradual onset)の中程度下痢症(Moderate diarrhea)、発熱(Fever)、抑欝(Depression)、食欲不振(Anorexia)などの症状を呈し、風土性(川沿いでの飼養)とサルモネラ症(Salmonellosis)の陰性反応から、ポトマック熱(Potomac horse fever)であるという推定診断が下されました。入院時の脱水重篤度は、臨床症状と血液検査結果から10%と推測さ...
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馬の補液8:補液計算の例題1
診療 - 2022/11/27馬の補液療法(Fluid therapy)の例題1。患馬は、16時間にわたる漸進発現性(Gradual onset)の中程度疝痛(Moderate colic)を呈し、直腸検査(Rectal examination)において摂食物を充填して硬化した骨盤曲(Firm ingesta-filled pelvic flexure)が触知され、大結腸便秘(Large colon impaction)の推定診断が下されました。入院時の脱水重篤度は、臨床症状と血液検査結果から5%と推測されました。(1)体液量、細胞外液量(E...
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馬の補液7:栄養輸液
診療 - 2022/11/26馬の疝痛治療における補液療法(Fluid therapy)について。疝痛馬の治療に際しては、胃液逆流(Gastric reflux)、小腸閉塞(Small intestinal ileus)、食道通過障害(Esophageal obstruction)などの罹患馬において、摂食停止が三日間以上に及ぶ場合には、補液療法を介しての栄養補助(Nutritional support)が必要になります。成馬における安静時必要栄養量は、正常時体重×21+975(kcal)で計算されますが、補液中へのブドウ糖...
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馬の補液6:酸塩基平衡
診療 - 2022/11/26馬の疝痛治療における補液療法(Fluid therapy)について。代謝性アシドーシス(Metabolic acidosis)は、疝痛の罹患馬に最も多く見られる酸塩基不均衡(Acid-base imbalance)で、血液pHおよび重炭酸イオン(Bicarbonate ion: HCO3)の下降を特徴とし、ナトリウム損失を伴う血液量減少症(Hypovolemia)、下痢症(Diarrhea)による消化管からの重炭酸損失、食道閉塞(Esophageal obstruction)の初期病態における過剰な流涎中への...
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馬の補液5:カルシウム補正
診療 - 2022/11/26馬の疝痛治療における補液療法(Fluid therapy)について。低カルシウム血症(Hypocalcemia)は、多くの疝痛症例において見られ、乳酸アシドーシス(Lactic acidosis)、内毒素誘発性のカルシウム恒常性変動(Endotoxin-induced changes in calcium homeostasis)、小腸からのカルシウム吸収不全(Small intestinal calcium malabsorption)などに起因すると考えられています。しかし、血中のカルシウムの大部分はアルブミンと結合...
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馬の補液4:電解質の補正
診療 - 2022/11/25馬の疝痛治療における補液療法(Fluid therapy)について。ナトリウムは細胞外液(Extracellular fluid: ECF)の主成分で、カリウムは細胞内液(Intracelullar fluid: ICF)の主成分であるため、血清カリウム濃度は全身のカリウム損失量の目安としての信頼性は低いことが知られています。しかし、ナトリウムとカリウムは常に細胞膜チャンネルを介しての交換が行われているため、血清ナトリウム濃度はECFのナトリウム量のみならず、...
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馬の補液3:電解質不均衡
診療 - 2022/11/25馬の疝痛治療における補液療法(Fluid therapy)について。低ナトリウム血症(Hyponatremia)は、急性大腸炎(Acute colitis)や下痢症(Diarrhea)を起こすサルモネラ症(Salmonellosis)、ポトマック熱(Potomac horse fever)、クロストリディウム症(Clostridiosis)などにおいて好発し、腹腔や腸管内腔へのナトリウム漏出を起こす腹膜炎(Peritonitis)や大結腸捻転(Large colon torsion)、および過剰な流涎中へのナトリウ...
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馬の補液2:補液剤の量と種類
診療 - 2022/11/24馬の疝痛治療における補液療法(Fluid therapy)について。馬の補液療法の実施に際して、合計補液量の計算は、損失水分量(Water deficit)、維持水分量(Maintenance)、持続損失量(Ongoing losses)、追加水分量(Additional fluid requirement)の合計によって算出され、脱水症の治療に際しては12時間にわたる補液後、血液検査で経過をモニタリングして次の12時間の補液量を再計算する指針が一般的です。つまり、損失水分量+...
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馬の補液1:脱水症の診断
診療 - 2022/11/24馬の疝痛治療における補液療法(Fluid therapy)について。体重500kgの馬体の総水分量は約300L(体重の60%)で、このうち細胞内液(Intracellular fluid: ICF)が約200L、細胞外液(Extracellular fluid: ECF)が約100Lを占めます。細胞外液の内訳は、血液およびリンパ液中の血漿(Plasma)が25~30L、間質液(Interstitial fluid)が40~45Lとなり、残りの約30Lを経細胞液(Transcellular fluid)が占め、これには消化管内腔液(G...
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馬の敗血症での腹水MMP9濃度
話題 - 2022/11/21馬の腹水検査は、腹腔臓器の病態を反映することが多いため、疝痛などの消化器疾患の診断に応用されています。マトリックスメタロプロテアーゼ九型(MMP-9: Matrix metalloproteinases-9)は、敗血症での内毒素血症において、好中球が活性化されることで生成され、敗血症の重篤度を反映すると言われています。ここでは、敗血症(内毒素血症)を呈した疝痛馬における、腹水MMP-9濃度の有用性を評価した知見を紹介します。この研究で...
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馬の寄生疝における腹水NGAL濃度
話題 - 2022/11/21馬の腹水検査は、腹腔臓器の病態を反映することが多いため、疝痛などの消化器疾患の診断に応用されています。一方、“NGAL”(エヌガル)とは、好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン(Neutrophil gelatinase-associated lipocalin)の略号で、腎臓前駆細胞の分化誘導因子として同定された蛋白質であり、急性腎不全において尿中および血中での濃度上昇を呈することから、腎疾患の早期診断に応用されています。そして、近年では、腎臓以...
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馬の腹水検査での急性期蛋白
話題 - 2022/11/20馬の腹水検査は、腹腔臓器の病態を反映することが多いため、疝痛などの消化器疾患の診断に応用されています。ここでは、疝痛馬の腹水検査における、急性期蛋白濃度の有用性を評価した知見を紹介します。この研究では、デンマークと南アフリカの獣医大学病院において、2008~2011年にかけて、疝痛の診断や治療のために来院した367頭の馬における、血液中および腹水中の急性期蛋白(血清アミロイドエー[SAA]、ハプトグロブリン[Hp])...
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唾液検査による馬の胃潰瘍の診断
話題 - 2022/11/15馬の胃潰瘍は、有病率の高い消化器疾患であることが知られていますが、特異的な臨床症状に乏しいことから、確定診断のためには内視鏡検査を要します。しかし、胃の内視鏡では、長時間の絶食を要するなど、煩雑さと馬体の負担が大きいという問題があります。一般的には、馬の胃潰瘍には、ウマ扁平胃疾患(ESGD: Equine squamous gastric disease)とウマ腺胃疾患(EGGD: Equine glandular gastric disease)の二種類があり、特に後...
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唾液検査による馬の疝痛の予後判定
話題 - 2022/11/15唾液液中に含まれるアルファアミラーゼ(sAA: Salivary alpha-amylase)は、心理的ストレスの指標とされていますが、全身の健康状態が悪化した場合にも増加することが知られています。ここでは、馬のsAA測定値と急性腹症(疝痛)との関連性を調査した知見を紹介します。この研究では、スペインのエストレマドゥーラ大学の大動物病院において、急性腹症のため来院した疝痛馬33頭と、対照馬22頭における、唾液検査(sAAの濃度と活性...
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直腸壁を介した馬の大結腸の減圧術
話題 - 2022/11/11直腸壁を介した馬の大結腸の減圧術が試みられています。一般的に、馬の盲腸鼓脹症に対しては、経皮的な減圧術の応用が可能で、また、大結腸左方変位による腎脾間捕捉においても、経皮的に大結腸を穿刺およびガス吸引する治療法が報告されています。そして、今回の研究では、大結腸の鼓脹症に対する潜在的治療法として、直腸壁を介した減圧術が試みられています。この研究では、直腸内で安全に穿刺針を操作するため、針の出し入れが...
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凝血弾性解析法の馬への臨床応用
話題 - 2022/11/11馬に対する凝血弾性解析法の応用について一般的に、疝痛馬における血液凝固障害は、播種性血管内凝固(DIC)、蹄葉炎、血栓性静脈炎などの合併症につながり、予後を悪化させる要因になることが知られています。そして、馬の止血機能の評価では、血小板数、線維素原濃度、プロトロンビン時間、抗トロンビン活性、線維素原分解産物濃度、等の指標が測定されます。しかし、これらの血漿成分を基調とした凝集分析では、血液凝固の過程...
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馬の腸間膜脈管のエコー検査
話題 - 2022/11/09馬の獣医療におけるエコー検査は、非侵襲性で、迅速かつ簡易に実施できる画像診断法として、多様な疾患での病態精査のために有用であると言えます。ここでは、馬の消化器疾患の診断法として、腸間膜の脈管組織のエコー検査を評価した知見を紹介します。この研究では、英国とスペインの馬病院において、2013~2017年にかけて、大腸または小腸の疾患を呈した疝痛馬54頭における、エコー検査所見の回顧的調査が行なわれました。参考文...