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タグ:薬物療法 のエントリー一覧

  • 大麻の成分で馬のサク癖を治せる?

    話題 - 2023/09/13

    サク癖は、馬用語で「グイッポ」とも呼ばれ、固定された物体を前歯で咥えて、それを支点にして頭頚部を屈曲させながら空気を飲み込むような動作を指します。古典的には、馬が覚える悪癖だと片付けられてきましたが、近年の研究では、人間の精神医学でいう強迫性障害(Obsessive-compulsive disorder)によく似た「心の病気」であることが分かってきています。ここでは、大麻の成分を投与することで、馬のサク癖の治療を試みた症例...

  • COX-2限定阻害薬によって大腸炎が起こる?

    話題 - 2023/09/11

    これまで、馬の軟部組織の痛みには、フルニキニンメグルミン(バナミン®)が投与されることが多かったですが、近年では、副作用の少ない新しいタイプの薬剤が応用されてきています。一般的に、馬の抗炎症・鎮痛剤としては、COX-1およびCOX-2の両方の炎症介在物質を阻害する薬剤(フルニキニンメグルミン等)が使用されてきましたが、COX-1は胃腸粘膜の新陳代謝にも関わっているため、これを阻害することで、胃潰瘍や大腸炎などの副...

  • 馬の疝痛:持久戦がもたらす悲劇

    馬の飼養管理 - 2023/08/02

    馬の疝痛に対する開腹術では、早期に手術を決断することが、治療成功率や生存率を高めるのに重要であることが知られています。馬の疝痛治療の第一人者である、フロリダ大学のデイビッド・フリーマン博士は、2022年の全米馬臨床医協会(AAEP)の学会において、疝痛馬に対する「持久戦がもたらす悲劇」(Tragedy of the Waiting Game)について警鐘を鳴らしています。参考資料:Christa Leste-Lassiter, MA. Colic Referral: The Tra...

  • オメプラゾールの投与中止の方針

    話題 - 2023/07/31

    馬は胃潰瘍を起こし易い動物であることが知られており、近年では、プロトンポンプ抑制剤であるオメプラゾールの投与によって、良好な治療および予防効果が示されています。しかし、オメプラゾール投与を中止することで、胃潰瘍が再発することがあり、この際には、リバウンド胃酸過多症(Rebound gastric hyperacidity)の関与が懸念されています。そこで下記の研究では、14頭のサラブレッドを用いて、平地レースの調教を模した運動...

  • 麻酔中の馬での抗生物質の動態

    話題 - 2023/07/15

    一般的に、馬は細菌感染に弱い動物であることが知られており、開腹術や骨折の内固定など、侵襲性の高い外科手術においては、抗生物質の全身投与による感染予防が重要となります。ただ、全身麻酔下にある手術中の馬における、抗生物質の体内動態は明らかにされていません。それを評価するため、下記の研究では、六頭の健常馬を用いて、Kペニシリン(22,000IU/kg)とゲンタマイシン(6.6mg/kg)の静脈内投与を行なった後に全身麻酔を...

  • 馬の開腹術での抗生物質投与の傾向

    話題 - 2023/06/26

    一般的に、馬は細菌感染に弱い動物であることが知られており、疝痛の開腹術においては、術創感染や腹膜炎を抑えるため、術前および術中の抗生物質投与が重要な要素を占めています。ここでは、馬の開腹術での抗生物質投与に関して、米国の内科および外科の専門医資格を持った113名の獣医師に対して、聞き取り調査を行なった知見を紹介します。参考文献:Rockow M, Griffenhagen G, Landolt G, Hendrickson D, Pezzanite L. Current ...

  • 馬のクッシング病の薬物療法での長期的効能

    馬の飼養管理 - 2023/06/07

    馬のクッシング病は、下垂体中葉機能異常(PPID: Pituitary pars intermedia dysfunction)のことを指しています。近年、ウマの寿命の伸びに比例して、高齢馬のクッシング病も増えており、その薬物療法に関するエビデンスも示されています。ここでは、馬のクッシング病に対する治療薬の効き目を、長期的に評価した知見を紹介します。参考資料:Christa Leste-Lasserre, MA. Pergolide Study Shows Long-Term Improvement in PPID H...

  • 馬肉への残留薬物の懸念(米国)

    話題 - 2023/05/06

    いま、米国では、食用に転用される馬に関して、残留薬物によって馬肉が汚染されてしまうという懸念が深まっています。北米で生産されている馬肉に起こっているこの問題は、日本を始め、馬肉を食する文化のある多くの国では、常に注視しておく必要があると言えそうです。ここでは、米国での馬肉の残留薬物について解説した論文を紹介します。参考文献:Weber K, Kearley ME, Marini AM, Pressman P, Hayes AW. A review of horses s...

  • 馬に対するセフチオフルの使い方

    話題 - 2023/04/29

    セファロスポリン系の抗生物質は、1964年に初めて市販されるようになって以降、ヒト医療と獣医療の両方でポピュラーになってきました。世界的に見ても、その使用は2000~2015年にかけて著しく増加し、発展途上国でのセファロスポリンの使用量が399%も増加したことが知られています。セフチオフルは、第三世代のセフェロスポリンであり、多くのグラム陰性菌および陽性菌に効くことから、全身投与薬として馬の治療にも一般的に使用さ...

  • 馬のクッシング病の経過評価について

    馬の飼養管理 - 2023/02/27

    馬のクッシング病は、正式には下垂体中葉機能異常(PPID: Pituitary pars intermedia dysfunction)のことを指しており、ヒトや犬のクッシング病とは、発症機構が異なることが知られています。そして、近年では、獣医療の進歩に伴いウマの寿命も伸びていることから、高齢馬のクッシング病の診断、および、多毛症や慢性蹄葉炎への対処を要する事例も増えていると言われています。ここでは、馬のクッシング病に対する治療薬の効き目...

  • 馬の関節鏡での抗生物質

    話題 - 2022/12/05

    馬の関節鏡は、様々な関節疾患の治療に適応されており、侵襲性が低いという利点がありますが、合併症がゼロという訳ではないことには注意する必要があります。ここでは、馬の関節鏡での術後合併症について調査した知見を紹介します。この研究では、スウェーデンの馬病院において、2008~2010年にかけて、444頭の馬に実施された636箇所の関節鏡手術における、医療記録の回顧的解析が行なわれました。参考文献:Borg H, Carmalt JL. ...

  • COX-2限定阻害薬:馬の小腸絞扼での効能

    話題 - 2022/10/15

    これまで、馬の軟部組織の痛みには、フルニキニンメグルミン(バナミン®)が投与されることが多かったですが、近年では、副作用の少ない新しいタイプの薬剤が応用されてきています。一般的に、馬の抗炎症・鎮痛剤としては、COX-1およびCOX-2の両方の炎症介在物質を阻害する薬剤(フルニキニンメグルミン等)が使用されてきましたが、COX-1は胃腸粘膜の新陳代謝にも関わっているため、これを阻害することで、胃潰瘍や大腸炎などの副...

  • COX-2限定阻害薬:馬の内臓疼痛での効能

    話題 - 2022/10/15

    これまで、馬の軟部組織の痛みには、フルニキニンメグルミン(バナミン®)が投与されることが多かったですが、近年では、副作用の少ない新しいタイプの薬剤が応用されてきています。一般的に、馬の抗炎症・鎮痛剤としては、COX-1およびCOX-2の両方の炎症介在物質を阻害する薬剤(フルニキニンメグルミン等)が使用されてきましたが、COX-1は胃腸粘膜の新陳代謝にも関わっているため、これを阻害することで、胃潰瘍や大腸炎などの副...

  • COX-2限定阻害薬:馬の去勢手術での効能

    話題 - 2022/10/14

    これまで、馬の軟部組織の痛みには、フルニキニンメグルミン(バナミン®)が投与されることが多かったですが、近年では、副作用の少ない新しいタイプの薬剤が応用されてきています。一般的に、馬の抗炎症・鎮痛剤としては、COX-1およびCOX-2の両方の炎症介在物質を阻害する薬剤(フルニキニンメグルミン等)が使用されてきましたが、COX-1は胃腸粘膜の新陳代謝にも関わっているため、これを阻害することで、胃潰瘍や大腸炎などの副...

  • 馬の抗真菌剤の局所灌流

    話題 - 2022/10/03

    抗真菌剤の局所灌流によるカビ症の治療例が報告されています。参考文献:Doria RG, Freitas SH, Linardi RL, Mendonça Fde S, Arruda LP, Boabaid FM, Valadao CA. Treatment of pythiosis in equine limbs using intravenous regional perfusion of amphotericin B. Vet Surg. 2012 Aug;41(6):759-65.この研究では、遠位肢のPythium insidiosum感染によるフハイカビ症の診断が下された12頭の患馬に対して、抗真菌剤(=アンフォテ...

  • 抗生物質による馬の下痢症

    話題 - 2022/10/01

    馬の抗生物質に起因する下痢症の実態が調査されています。参考文献:Barr BS, Waldridge BM, Morresey PR, Reed SM, Clark C, Belgrave R, Donecker JM, Weigel DJ. Antimicrobial-associated diarrhoea in three equine referral practices. Equine Vet J. 2013 Mar;45(2):154-8.この研究では、米国の三つの州の馬の紹介診療施設における、5,251頭の馬症例の医療記録が解析され、抗生物質の投与に起因する下痢症を発症したのは32...

  • 馬における破骨細胞抑制剤の安全性

    話題 - 2022/09/30

    近年、馬に対して頻繁に用いられるようになってきた薬剤として、破骨細胞の抑制剤であるビスホスホネート(Bisphosphonates)があります。ここでは、このビスホスホネートの安全性に関する知見を紹介します。参考文献:Vergara-Hernandez FB, Nielsen BD, Colbath AC. Is the Use of Bisphosphonates Putting Horses at Risk? An Osteoclast Perspective. Animals (Basel). 2022 Jul 3;12(13):1722.破骨細胞とは、単球系の前駆細胞...

  • 安全な馬の筋注方法

    馬の飼養管理 - 2022/09/25

    ホースマンの中には、馬に筋肉注射するときの手法について不安を持っている方もいらっしゃるかもしれません。一般的に、馬に対する薬剤の筋肉内投与は、抗生物質等の投与経路として用いられ、原則として、獣医師に投薬処置を実施してもらうことが推奨されます。しかし、通常の抗生物質は、五日間の連続投与を要することから(場合によっては七日間や十日間投与することもある)、往診料が高騰するのを避けるため、獣医師の指導に則...

  • 馬の経口投与の方法

    馬の飼養管理 - 2022/09/25

    一般的に、馬に治療薬を投与する場合には、数日間にわたる投薬を要することが多いため、獣医師の往診料の高騰を避けるため、クライアント自身が投与することが多いですが、この際には、筋内投与や静脈内投与に比較して、馬主や飼養管理者が内服薬を経口投与させる方法がより安全になります。例として、フレグモーネや輸送熱に対する抗生物質投与では、通常は、五日間または十日間にわたる投与となるため、注射針の穿刺を要する筋注...

  • 安全な馬の点眼方法

    馬の飼養管理 - 2022/09/24

    ホースマンの中には、馬の目薬がうまく差せずに苦労されている方もいらっしゃるようです。一般的に、馬の眼病を治療するためのクスリは、筋注ではなく局所的に投与する場合が多いですが、点眼したクスリは、すぐに涙で流れてしまうため、一日に3回以上の点眼を要することが殆どです。このため、眼病の治療に際しては、獣医師が処方した目薬を、馬主や飼養管理者が自ら点眼しなくてはいけない事が多いと言えます。その際、点眼処置...

  • 馬の便秘疝の治療によって腸捻転が起きる?

    話題 - 2022/09/18

    馬の結腸食滞(いわゆる便秘疝)は、最も発症率の高い消化器疾患の一つであることが知られています。便秘疝の治療では、経静脈補液によって脱水を改善しながら、経鼻チューブを通して、下剤(硫酸マグネシウム)や流動パラフィンを投与する方針が古典的ですが、近年では、経鼻チューブを通して多量(8~10L)の電解質液を投与するという経腸補液療法が実施されています。この手法では、食滞物を直接的に軟化および遊離させることか...

  • 馬の開腹術の術創感染はナゼ起こるのか?

    話題 - 2022/09/17

    馬の疝痛の外科的治療で実施される開腹術では、その10~37%で術創感染が起こることが知られています。その結果、創傷ヘルニアを続発するリスクが4~9倍高くなり、治療費の増加に繋がるのみならず、術創感染を起こした馬の生存率は有意に低下することも報告されています。このため、馬の開腹術の術創感染を予防する方策を検討するため、下記の研究では、2014~2015年にかけて、開腹術が適応された31頭の疝痛馬において、術創部サン...

  • 頚動脈への注射事故を防ぐには

    話題 - 2022/09/05

    馬の頚動脈への注射事故について馬に対して薬剤を静脈内投与するときには、頚静脈が使われることが一般的ですが、この際には、誤って頚動脈に注射してしまうリスクがあります。馬の頚動脈は、気管の背側および頚静脈のすぐ裏側を走行して、注射針を穿刺する位置や深さを間違えると、針先が動脈内に達してしまう事が起こりえます。馬の頚動脈に薬剤を注入してしまうと、脳神経組織に高濃度の薬剤が作用して、馬が昏睡してしまうこと...

  • 突然の重度跛行での見分け方

    馬の飼養管理 - 2022/09/02

    馬が突発的に重度の跛行を示したときには、どんな病気が疑われるのでしょうか。馬の健康問題で一番多いのは跛行ですが、通常では、軽度な歩様異常が徐々に悪化したり、人馬転などの事故の後に跛行を呈します。しかし、時には、まったく荷重できないような非常に重篤な跛行(不負重性跛行)が、前兆も無く、急性発現性に見られることがあります。そのような馬では、速やかに原因を突き止めて、適切な処置を施すことが重要になります...

  • 馬の開腹術にはハチミツで感染予防

    話題 - 2022/08/23

    馬の開腹術における創口感染率は、2.7~39%と様々で、縫合箇所に抗生物質を用いることで創口感染を抑えることもあります。近年、ハチミツの持つ高浸透圧と低pHが、細菌増殖を抑えることが判明し、ガンマ線滅菌された医療グレード蜂蜜(MGH: Medical grade honey)を局所的に使用することで感染制御できることが、ヒト医療の領域で示されています。また、馬の外傷縫合の部位においても、MGHを外科的整復箇所に用いることで、細菌感...

  • 釘を踏んでも抜かないで!

    馬の飼養管理 - 2022/08/22

    馬を裏掘りしようと肢を上げさせたとき、もし、蹄底に釘が刺さっているのを見つけたら、どう対処するのが正しいでしょうか?正解は、「釘を抜かずに獣医師を呼ぶ」です。ホースマンの直感としては、速やかに釘を抜去して、消毒処置などを施したくなると思います。しかし、一番大切なことは、釘の先端がどこまで深く刺さっていて、蹄内部のどの構造物に達しているかを見極めることになります。何故なら、釘の刺さり方によっては、か...

  • 馬の鎮痛剤は毎日飲ませても安全?

    馬の飼養管理 - 2022/08/19

    ホースマンのなかには、馬に鎮痛剤を毎日飲ませ続けても大丈夫なのか?という疑問をお持ちの方もいらっしゃるようです。一般的に、馬の健康問題の八割は運動器疾患であり、そのうち、関節炎が占める割合が最も多いと言われています(飛節内腫、ナビキュラー病、リングボーン、膝関節炎、球節炎など)。このため、15歳以上の乗馬の競技馬において、慢性的な関節痛による跛行やプアパフォーマンスを呈する個体も多く、そのような関節...

  • 乗馬のDDSPはクスリで治せる

    馬の飼養管理 - 2022/08/17

    乗馬のDDSPについてDDSPとは、軟口蓋背方変位(Dorsal displacement of soft palate: DDSP)の略称で、特に、競走馬などの襲歩運動をする馬において問題となる上部気道疾患です。この病気では、本来は軟口蓋の上に乗っかっている喉頭蓋が、その下方に落ち込んでしまい、軟口蓋が気管の入り口を部分的に閉塞するため、呼吸器雑音や発咳、運動不耐性(プアパフォーマンス)を起こしてしまいます。このDDSPと、下部気道炎症とのあいだ...

  • 馬の繋皹での常在菌の役割

    馬の飼養管理 - 2022/08/13

    馬の繋皹がなかなか治らず苦労しているというホースマンの声を頂きました。繋皹は、馬の繋部の後面に起こる多因子性皮膚炎で、正角化過角化症(Orthokeratotic hyperkeratosis)の病態を取ることが知られています[1]。罹患部位は、肉芽腫性から葡萄状の病変となり、抗生物質や医療用シャンプーによる治療が行なわれますが、病変が難治性であったり、再発しやすいなど、飼養管理者を悩ませる病気です。ここでは、馬の繋皹における皮...

  • 馬のフレグモーネ治療:8つの秘訣

    馬の飼養管理 - 2022/08/11

    馬のフレグモーネについてフレグモーネとは、蜂窩織炎とも呼ばれ、皮下組織に広汎な細菌感染と腫脹を起こす疾患です。ホースマンが頻繁に目にする病気の一つで、平均では年間5頭以上も遭遇するという報告もあります。通常は見た目で診断がつき、治療としては、抗生剤(筋注または経口)および抗炎症剤(NSAID)の投与、水冷療法、曳き馬運動(腫れを減退させる)などが行なわれます。一般的に、抗生剤投与は五日間程で、腫れや跛行...

  • 馬の気性を落ち着かせるサプリ(2022年版)

    馬の飼養管理 - 2022/08/10

    馬の気性を落ち着かせるサプリメントに関して疑問を持たれているホースマンも多いのかもしれません。ここでは、そのようなサプリメントを比較して紹介します。馬の気性を落ち着かせ、性格を温和にする成分としては、マグネシウム、L-トリプトファン、ビタミンB1の3つが重要だと言われています。マグネシウムは神経伝達物質であるため、不足すると馬の性格が神経質で短気になると言われており、飼料中の含有量が低い場合も多いこと...

  • 馬の息労:厩舎ダストを減らす7つの対策

    馬の飼養管理 - 2022/08/08

    馬の息労について馬の息労は、回帰性気道閉塞(Recurrent airway obstruction)とも呼ばれ、カビや粉塵などのアレルゲンを吸い込むことで、気管支のアレルギー反応を起こして、頻呼吸や発咳を生じる病気です。一般的に、厩舎ダストに過敏体質な高齢馬に発症しますが、類似病態としては、若い馬に起こる炎症性気道疾患(Inflammatory airway disease)や、屋外のアレルゲンに起因する夏季牧草関連性閉塞性肺疾患(Summer pasture-as...

  • 馬の開放骨折における抗生物質治療

    診療 - 2022/08/05

    開放骨折の治療法について馬の遠位肢は周囲を囲む筋肉が限られている領域が多いため、重篤な骨折症例では皮膚穿孔(Skin penetration)から開放骨折(Open fracture)を起こし、骨折病巣の細菌感染(Bacterial infection)を引きこす事も多いため、内固定法(Internal fixation)などの外科的療法に併行して、感染部位へ高濃度の抗生物質を作用させる治療法が実施されています。抗生物質を含有させたポリメタクリル酸メチル(Antim...

  • 馬の浸潤性腸疾患での鑑別診断

    診療 - 2022/08/04

    浸潤性腸疾患(Infiltrative bowel disease)の鑑別診断について。浸潤性腸疾患は、腸管粘膜および粘膜下組織における細胞浸潤(Cell infiltration)を起こす疾患を指し、肉芽腫性腸炎(Granulomatous enteritis: GE)、リンパ性形質細胞性腸炎(Lymphocytic-plasmacytic enterocolitis: LPE)、全身多発性上皮系組織親和性好酸球症(Multisystemic eosinophilic epitheliotropic disease: MEED)、特発性限局性好酸球性腸炎(Idio...

  • 牝馬のフケ対策

    馬の飼養管理 - 2022/07/29

    牝馬のフケには、頭を悩ませているホースマンも多いようです。馬用語で言うところの「フケ」とは、発情が来ているメス馬が、アグレッシブな異常行動を取ることを指します。具体的には、不機嫌で怒りっぽくなる、他の馬に向かって大声でいななく、激しく尻尾を振り回す、ヒトの扶助に従わない、壁を蹴とばす、後肢の挙上を嫌がる、突発的に予測不能な行動を取る、などが挙げられます。このため、ホースマンにとっては、馬の扱いや管...

  • 馬の関節炎のサプリメント(2022年版)

    馬の飼養管理 - 2022/07/27

    ホースマンの中には、慢性の関節炎(飛節内腫やリングボーン等)を患っている自馬のケアに悩んでいらっしゃる方も多いのかもしれません。ここでは、関節炎への効能が謳われたサプリメントをまとめました。馬の関節炎に対するサプリメントとしては、コンドロイチン、グルコサミン、および、メチルスルフォニルメタン(MSM)の3つの成分が有効であることが知られています。特に、馬の関節炎では、コンドロイチンとグルコサミンの2...

  • 馬のネブライザー治療の実践

    診療 - 2022/07/22

    馬の呼吸器疾患に応用されているネブライザー治療について復習しましょう。ネブライザー治療とは、医学用語では吸入療法(Inhalation therapy)と呼ばれ、噴霧した薬剤を呼吸に併せて吸い込ませることで、上部及び下部気道組織に直接的にクスリを作用させる治療法です。適応症例としては、競走馬に見られる炎症性気道疾患(IAD)や運動誘発性肺出血(EIPH)のほか、高齢馬のアレルギー疾患である回帰性気道閉塞(RAO)や、鼻腔や咽...

  • 馬の駆虫に関する7つの間違い

    馬の飼養管理 - 2022/07/22

    馬の駆虫についての固定観念や俗説のなかには、色々と間違いがあるようです。寄生虫による馬の病気は、過去も現在も散発的に起こっており、適切な駆虫を行なうことは、馬の飼養管理の大事な一要素であると言えます。日本で馬に起こる寄生虫病としては、馬回虫(Parascaris equorum)によって起こる空腸閉塞、普通円虫(Strongylus vulgaris)によって起こる腸間膜動脈血栓症、馬糸状虫(Setaria equina)によって起こる混晴虫症、...

  • 馬の蕁麻疹への対策は根気強く

    馬の飼養管理 - 2022/07/20

    馬の体表に「点字」のように現れる蕁麻疹は、馬体からの警戒のメッセージですが、それを読み解くのは、点字を読むのと同じくらい難しいのかもしれません。蕁麻疹とは、アレルギー性過敏反応の結果として皮膚に生じた発疹のことを指し、病名としては、アトピー性皮膚炎という用語に当たります。馬に蕁麻疹を引き起こすアレルゲンとしては、乾草中のカビ、畜舎ダスト、牧草の花粉、などが知られています。また、薬品が原因となる場合...

  • 効き目が丸一日も続く局所麻酔薬

    話題 - 2022/07/20

    効き目が24時間も続く局所麻酔薬が、馬の遠位肢に応用されています。通常、局所麻酔薬を馬の神経周囲浸潤麻酔として使った場合、感覚神経の刺激伝導を一時的に遮断して、30分~1時間のあいだ、注射箇所より遠位側の痛覚を取り除くことが出来ます。馬の遠位肢に対しても、跛行検査での診断麻酔として用いられ、疼痛の発生箇所をピンポイントで特定したり、全身麻酔下での骨折手術に併用することで、手術中および麻酔覚醒中の疼痛を...

  • 馬の軟便:実は怖い病気の前兆かも

    馬の飼養管理 - 2022/07/19

    馬の軟便については、軽く考えてしまうことは禁物です。軟便や下痢症とは、糞便に含まれる水分量が正常よりも多い状態を指し、消化管での水分吸収が減っている場合と、分泌が増えている場合とがあります。幸いにも、馬の軟便は、深刻ではないケースが殆どです。しかし、軟便の原因によっては、命に関わることもあり、油断のできない病気です。また、深刻でない軟便であっても、それが長引いてしまうことで、命取りの下痢症へと進行...

  • 蹄葉炎と上手に付き合っていく方法

    馬の飼養管理 - 2022/07/18

    蹄葉炎になった馬にとって、病気とうまく付き合っていく事はとても重要です。蹄葉炎とは、蹄葉状層が剥離して、蹄骨が変位してしまう病気であり、「不治の病」とも呼ばれます。しかしこれは、この病気に罹ったら命が助からないという意味ではありません。現在では、蹄葉炎に関する知見が深まってきており、馬の蹄葉炎は、単に完治するのが難しいだけで、蹄葉炎と上手に付き合っていくことで、その馬が幸せな余生を送っていくことは...

  • 関節注射のリスクを知っていますか?

    馬の飼養管理 - 2022/07/16

    関節注射の安全性について何が分かっているのでしょうか?馬に起こる健康問題の八割は跛行であり、そのうち最も多い原因は関節炎であることが報告されています。そして、馬の関節炎の治療としては、関節内に抗炎症および軟骨保護作用のあるクスリを直接的に注入する関節注射(Joint injection)が選択されることがあります。特に、15歳以上の競技馬では、慢性的な関節痛を制御するため、年に何回か関節注射療法を繰り返しながら、...

  • 疝痛の治療や予防に関する33個の注意事項

    馬の飼養管理 - 2022/07/15

    馬の疝痛を治療および予防するときに注意すべき事項をおさらいしましょう。疝痛とは、消化器疾患などにより馬が腹部疼痛を示している様子を指しますが、馬の消化器疾患の総称としても使われる用語です。馬の疝痛は、現在でも一番多い死因であり、早期診断と早期治療が重要であるにも関わらず、正確な診断が下せないまま治療方針を判断しなくてはいけないシチュエーションも多いという、ホースマンにとって大変に厄介な病気であると...

  • 育成期サラブレッドの胃潰瘍

    話題 - 2015/08/09

    日本の育成期サラブレッドに対するオメプラゾールの効果が報告されています。この研究では、騎乗開始から三ヵ月前後の育成期のサラブレッド(平均21ヶ月齢)のうち、健常な62頭を、オメプラゾール投与郡と、偽薬投与郡に分けて、投与開始から四週間後の胃内視鏡検査によって、胃潰瘍の発症率を比較したところ、オメプラゾール投与郡では4%(1/28頭)に留まったのに対して、偽薬投与郡では39%(12/31頭)に及んでいました。このため...

  • フロセマイド使用の是非

    未分類 - 2015/08/08

    米国の競馬社会では、フロセマイド使用の是非について論議が起きています。国際競馬委員協会(Association of Racing Commissioners International)は2011年の三月、競走馬における出走日の薬物投与(Race-day medications)を五年以内に完全に無くす、という方針を打ち出しました。これを受けて米国では、サラブレッド生産馬主協会(Thoroughbred Owners and Breeders Association)および北米競馬協会(Thoroughbred Racing Ass...

  • ポロ競技馬に発生した中毒死

    未分類 - 2015/08/07

    ビタミン剤に起因すると思われる中毒症によって、21頭もの馬の命が失われるという悲しい事件が起きました。2009年にフロリダ州で開催されたポロ競技のチャンピオンシップにおいて、ベネズエラポロチームの所属馬たちは、競技場に輸送された直後、運動失調、痙攣、発汗、呼吸困難などの重篤な中毒症状を示し、次々と地面に倒れ込みました。駆けつけた十数名の獣医師たちの懸命の治療にも関わらず、馬たちは一頭また一頭と息を引き取...

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プロフィール

Rowdy Pony

Author:Rowdy Pony
名前: 石原章和
性別: 男性
年齢: アラフィフ
住所: 北関東
職業: 獣医師・獣医学博士
叩けよ、さらば開かれん!

質問、御意見、記事の要望等は下記まで
E-mail: rowdyponies@gmail.com

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