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タグ:跛行 のエントリー一覧

  • 乗馬の後膝跛行での関節鏡の有用性

    話題 - 2023/09/27

    一般的に、乗馬の競技馬における後膝跛行は、散発的に見られる後肢の歩様以上の原因であり、比較的に重度な跛行を呈して、競技能力の低下を招くケースが多いことが知られています。しかし、後膝に発生する疾患のうち、関節軟骨や半月板、十字靭帯、側副靭帯などの損傷では、診断麻酔や画像検査による確定診断が難しい症例も多く、難治性の経過を取ることがあると言われています。下記の研究では、英国のロスデイル馬病院において、...

  • COX-2限定阻害薬によって大腸炎が起こる?

    話題 - 2023/09/11

    これまで、馬の軟部組織の痛みには、フルニキニンメグルミン(バナミン®)が投与されることが多かったですが、近年では、副作用の少ない新しいタイプの薬剤が応用されてきています。一般的に、馬の抗炎症・鎮痛剤としては、COX-1およびCOX-2の両方の炎症介在物質を阻害する薬剤(フルニキニンメグルミン等)が使用されてきましたが、COX-1は胃腸粘膜の新陳代謝にも関わっているため、これを阻害することで、胃潰瘍や大腸炎などの副...

  • 馬の後膝をエコー検査する注意点

    馬の飼養管理 - 2023/08/23

    馬の後膝(膝関節)には、関節炎やボーンシストなどの骨の病気だけでなく、膝蓋靭帯、十字靭帯、半月板などの病気も起こります。これらの軟部組織は、X線検査では描出されないため、エコー検査による精査が必要となります。ここでは、馬の後膝をエコー検査するときの注意点を喚起した知見を紹介します。参考資料:Stacey Oke, DVM, MSc. Take Caution Using Contralateral Limbs for Patellar Ligament Exams. AAEP Convention, Ar...

  • 競走馬のプアパフォーマンスの原因疾患と運動能力指標との関連性

    話題 - 2023/08/21

    競馬のレースにおいて、人気馬が惨敗した時には、その理由がハッキリとは分からない事も多々あります。一般的に、競走馬のプアパフォーマンスの要因としては、運動器系、呼吸器系、心脈管系などの疾患が関与していると言われていますが、それらの複合性については詳細には解明されていません。ここでは、スタンダードブレッドの競走馬におけるプアパフォーマンスについて調査した知見を紹介します。参考文献:Lo Feudo CM, Stucchi...

  • 立ち腫れする馬への対策

    馬の飼養管理 - 2023/07/26

    ホースマンの中には、肢が腫れることを心配している方も多いのかもしれません。下肢の受動的な液体貯留は(所謂、立ち腫れ)、舎飼いの馬では比較的頻繁に見られますが、幸いにも、健康上の深刻な問題にならない場合も多いと言えます。ここでは、馬の立ち腫れについて総括した知見を紹介します。参考資料:Anna O’Brien, DVM. What to Know About Stocking Up. Horse Illustrated, Article, Horse Care, Horse Health: April 1st, ...

  • 電磁波馬着で馬の背筋痛を改善

    馬の飼養管理 - 2023/06/28

    近年の研究では、電磁波を出す馬着を用いることで、運動神経制御や脊椎柔軟性を向上させて、馬の背筋痛を緩和できることが示されており、炎症や硬化などの副作用も無いと言われています。参考資料:Christa Leste-Lasserre, MA. Bio-Electromagnetic Blanket Can Help Horses With Back Pain. The Horse, Article, Back and Spine, Horse Care, Pain Management, Sports Medicine, Tack: Jan 31, 2023. 先端技術を応用したこの馬着...

  • 健康な肢でも運動後に水冷すべきか?

    馬の飼養管理 - 2023/06/02

    乗用馬の騎乗後には、冷水を掛けたり、氷冷ブーツの装着などで肢を冷やす措置がよく行なわれています。しかし、怪我や故障をした肢を、治療する目的で冷やす以外にも、問題の起きていない健康な肢でも冷やすべきか?というのは自然な疑問だと言えます。ここでは、運動後の水冷が、怪我や故障の予防になるのかを解説した知見を紹介します。参考資料:Matt Leshaw, DVM. Can Cold Therapy Safeguard Sport Horses From Injury? Shoul...

  • 馬の「ハミ跛行」の原因はアゴの痛み?

    馬の飼養管理 - 2023/05/24

    一般的に、馬の「ハミ跛行」とは、馬が頭絡や鞍などを装着して騎乗運動している時だけ見られる歩様の異常を指しています。このため、口内でのハミ位置の問題や、歯科疾患の存在、鞍の装着の不備、屈頭姿勢を取らせることによる頭頚部の疼痛などが原因となり得ます。参考資料:Alexandra Beckstett, The Horse Managing Editor. Rein-Lameness Associated With TMJ Pain in Horses: Temporomandibular joint inflammation might be ...

  • 馬の仙腸関節の注射での合併症

    話題 - 2023/04/22

    仙腸関節とは、背骨と骨盤を連結しているL字型の関節で、この部位での疼痛は、ハンター飛越や障害飛越などの競技馬に好発します。一般的に、馬の仙腸関節は、画像診断をするのが困難な箇所であるため、関節内への局所麻酔薬の注入(診断麻酔)によって、仙腸関節での疼痛の限局化が試みられる事があります。また、治療薬を局所投与する目的で、関節注射が実施されることもあります。ここでは、馬の仙腸関節注射における合併症に関...

  • 馬の理学療法での指針と手法

    馬の飼養管理 - 2023/04/17

    馬の健康問題のうち、実に八割を占めているのが運動器疾患であり、その治療のためには、クスリの投与や手術など、様々な内科的および外科的療法が適応されています。一方で、運動器機能の回復や維持を目的として、物理的手段を用いる手法もあり、一般的に「理学療法(Physical Therapy)」と呼ばれています。ここでは、馬の運動器疾患に対する理学療法に関して、その基本的な指針や手法を解説した記事を紹介します。参考資料:Shel...

  • 舟状骨のX線では蹄尖挙上より後踏肢勢

    話題 - 2023/04/15

    乗用馬に好発するナビキュラー症候群では、舟状骨のX線検査が有用です。特に、蹄の後ろ側から舟状骨を見下ろすように撮影する方法(PPPDO: Palmaroproximal-palmarodistal oblique)では、舟状骨と蹄骨が重なってしまうのを避けられるため、骨髄の硬化症、矢状綾の扁平化、屈腱面の不整などが評価できるという利点があります。ここでは、馬の前肢の舟状骨におけるPPPDO撮影の手法を検討した知見を紹介します。この研究では、馬の屠...

  • 馬の蹄踵痛における診断麻酔の複雑さ

    話題 - 2023/04/06

    馬の蹄踵痛は、舟状骨症候群などによって引き起こされ、乗用馬の前肢における慢性跛行のうち、約1/3を占めるとも言われています。しかし、蹄踵に痛みがあることを確定するために実施される診断麻酔では、神経ブロックと滑膜ブロックへの反応性が多様であることから、この部位の疼痛を限局化するのは難易度が高いことが知られています。ここでは、馬の蹄踵痛に対する複数の診断麻酔における、反応性や関連性を評価した知見を紹介し...

  • 馬の跛行を傾斜地で見る

    馬の飼養管理 - 2023/04/03

    跛行(Lameness)は、最も頻繁に起こる馬の健康問題であることが知られています。しかし、馬の歩様をチェックするときには、地面の平坦さを考慮することが大切です。なぜなら、ほんの僅かな傾斜があっただけでも、馬体の動き方や、跛行の見え方が変化してしまうからです。参考資料:Christa Leste-Lassiter, MA. Study: Even Slight Slopes Can Affect Lameness Exams in Horses. The Horse, Topics, Diagnosing Lameness, Injurie...

  • 馬のフレグモーネに対する空気圧縮療法

    話題 - 2023/04/02

    馬は細菌感染に弱い動物であるため、四肢にフレグモーネ(蜂窩織炎)を発症すると、治癒した後にも、四肢の皮下組織に浮腫や線維化が慢性的に残ってしまい(=慢性進行性リンパ浮腫:Chronic progressive lymphedema)、持続的な歩様不整や易感染性が続くことが知られています。ここでは、空気圧縮療法によって、リンパ循環の向上を試みた知見を紹介します。参考文献:Koch DW, Schnabel LV, Reynolds J, Berry CR. Pneumatic comp...

  • 調馬索での馬の診断麻酔の判定

    話題 - 2023/01/10

    一般的に、馬の歩様検査では、跛行が軽度で評価が困難な場合には、調馬索運動で歩様異常を明瞭化させることがあります。しかし、回転運動では、頭部や骨盤の上下動に左右差が生じるだけでなく、内側または外側への馬体の傾斜という新たな要素が加わるため、歩様評価を複雑にしてしまう懸念があります。この問題を検証するため、下記の研究では、後肢跛行を呈した13頭の症例馬を用いて、診断麻酔の実施前と実施後における仙骨部の動...

  • 調馬索と直線での馬の歩様対称性の変化

    話題 - 2023/01/10

    一般的に、馬の歩様検査では、軽度な跛行ほど評価が難しいことが知られており、被験馬に調馬索運動をさせることで、跛行症状を明瞭化させる手法が用いられています。しかし、回転運動における馬体動作の非対称性が、歩様評価の正確性を下げてしまう懸念もあります。この問題を検証するため、下記の研究では、201頭の健常馬を用いて、直線運動および調馬索運動における頭頂部/仙骨部の動きを加速度センサーで計測して、直線と左右の...

  • 調馬索での馬の歩様検査の正確性

    話題 - 2023/01/09

    一般的に、馬の歩様検査では、軽度な跛行ほど評価が難しいことが知られており、評価者同士で跛行の有無を合意できる確率は、跛行グレードが1.5以上では93%なのに対して、1.5未満では62%に過ぎないことが報告されています[1]。このため、被験馬に調馬索運動をさせることで、跛行症状を明瞭化させる手法が頻繁に用いられていますが、回転運動における馬体動作の非対称性が評価の正確性を下げてしまう懸念もあります。この問題を検証...

  • 馬の“横風”跛行での鑑別診断

    話題 - 2022/12/03

    馬の“横風”跛行(Sidewinder gait)とは、常歩において前肢と後肢の動きが連携せず、片方の後肢を外方に投げ出しながら、その反対側に後躯を大きく傾けながら歩く歩様を指しています。ここでは、横風跛行の診療が行なわれた24頭の馬における、鑑別診断、治療、予後について調査した知見を紹介します。参考文献:Aleman M, Berryhill E, Woolard K, Easton-Jones CA, Kozikowski-Nicholas T, Dyson S, Kilcoyne I. Sidewinder gait ...

  • 馬の遠位種子骨靭帯炎

    話題 - 2022/12/03

    馬における遠位種子骨靭帯炎(Distal sesamoidean ligament desmitis)は、稀に見られる跛行の原因疾患です。ここでは、英国の王立獣医大学において、2002~2018年にかけて、遠位種子骨靭帯炎を呈した51頭の馬に関する症例集積研究を紹介します。参考文献:Hawkins A, O'Leary L, Bolt D, Fiske-Jackson A, Berner D, Smith R. Retrospective analysis of oblique and straight distal sesamoidean ligament desmitis in 52 horses...

  • 馬のPAAG治療での長期経過

    話題 - 2022/11/22

    馬の跛行の原因としては、最も多いのが変性関節疾患であることが知られており、その治療法として注目されるのがPAAG関節注射法になります。ここでは、馬の関節炎に対するPAAG治療法の長期経過を評価した知見を紹介します。この研究では、ドイツとデンマークの獣医大学病院において、2010~2014年にかけて、変性関節疾患の確定診断を受けて、PAAG関節注射(2mL、球節または手根関節)による治療が行なわれた43頭の馬における、治療...

  • 馬の球節骨片でのエコー検査

    話題 - 2022/11/19

    近年、馬の小片骨折の診断において、X線では見逃してしまう骨片でも、エコー検査で発見できることが分かってきました。ここでは、競走馬に好発する球節の小片骨折での、エコー検査の診断能を評価した知見を紹介します。この研究では、米国フロリダ州の馬病院において、2016~2020年にかけて、前肢基節骨の近位背側部に小片骨折を発症して、関節鏡による確定診断と治療が実施された56頭(99箇所の病変)のサラブレッド競走馬におけ...

  • 馬の屈曲試験での影響範囲

    話題 - 2022/11/19

    馬の跛行検査における屈曲試験は、非侵襲性で簡易かつ、迅速、安価に実施できて、疼痛箇所を大まかに限局する手法として有用ですが、実際に、屈曲した影響がどの程度の範囲に及んでいるかは不明瞭です。ここでは、健常馬を用いて、遠位肢の屈曲試験と神経ブロックとの関連性を評価した知見を紹介します。参考文献:Kearney CM, van Weeren PR, Cornelissen BP, den Boon P, Brama PA. Which anatomical region determines a positi...

  • 馬獣医による蹄鉗子の使い方

    話題 - 2022/11/18

    馬の跛行検査では、蹄鉗子を用いて蹄底や蹄叉の圧痛反応を確かめる検査法が有用です。しかし、蹄鉗子の使い方は、検査者によって多様であると予測されます。ここでは、蹄鉗子の使い方を、異なる検査者で比較した知見を紹介します。この研究では、先端にセンサーを取り付けた専用の蹄鉗子を用いて、学生、獣医師、獣医師による、蹄底の四箇所への圧迫を10回ずつ実施して、検査者による圧迫力の差異、および、合意限界の幅を算出する...

  • 馬のストリートネイル手術

    診療 - 2022/11/13

    馬のストリートネイル手術についてまとめてみます。あくまで概要解説ですので、詳細な手技については成書や論文を確認して下さい。馬のストリートネイル手術(Street nail procedure)は、釘傷などによる感染性舟嚢炎の治療法になります。舟嚢のような滑膜組織では、その内腔に血管が無く、滑液を通して酸素や栄養を届けています。このため、もし釘傷によって雑菌が入ってしまうと、それを貪食する白血球も少数しか動員されないた...

  • 馬の半腱様筋腱切断術

    診療 - 2022/11/13

    馬の半腱様筋腱の切断術についてまとめてみます。あくまで概要解説ですので、詳細な手技については成書や論文を確認して下さい。馬の後肢に発症する機械性跛行として半腱様筋の線維化筋症(Fibrotic myopathy)があり、歩幅の頭側相で後肢が急激に尾側引張されることで、特徴的な雁様踏着という歩様を示します。この疾患の治療法としては、線維化組織の切除や筋切除術も可能ですが、より侵襲性の少ない術式として、線維化している...

  • 馬の外側指伸筋腱切除術

    診療 - 2022/11/12

    馬の外側指伸筋腱の切除術についてまとめてみます。あくまで概要解説ですので、詳細な手技については成書や論文を確認して下さい。馬の後肢に発症する機械性跛行として鶏跛(Stringhalt)があり、飛節と膝関節の不随意性過剰屈曲を示す疾患で、球節を高く挙上しながら歩く歩様が見られます(通常は、常歩においてのみ)。そして、鶏跛に対する外科的治療では、外側指伸筋腱の切除術が試みられることがありますが、鶏跛歩様の改善度...

  • 馬の仙腸関節のエコー検査

    話題 - 2022/11/10

    馬の仙腸関節部の疼痛は、後躯跛行の原因になることが知られており、原因疾患としては、仙腸関節の不安定症、仙腸靭帯炎、背最長筋腱炎、骨盤の疲労骨折などが含まれます。馬の仙腸関節は、X線検査での評価が難しいため(全身麻酔下での背臥位であれば撮影可能)、診断麻酔による疼痛限局を除けば、エコー検査が数少ない診断方法になります(海外ではシンチグラフィー検査が有用)。ここでは、馬の仙腸関節部の解剖学的構造とエコ...

  • 老齢馬に起こる病気の傾向

    話題 - 2022/11/03

    近年では、獣医療の進歩に伴って、馬の寿命も延びてきており、老齢馬の病気や医療ケアにおける重要性も高まってきていると言えます。ここでは、老齢馬に起こる病気の傾向を、総括的に調査した知見を紹介します。この研究では、米国のヴァージニア大学の馬医療センターにおいて、2006~2010年にかけて、病気の診断および治療のために来院した345頭の老齢馬(20歳以上)、および、345頭の若齢馬(20歳未満)における医療記録の回顧的...

  • SAAによる馬の滑膜感染の診断

    話題 - 2022/10/31

    血清アミロイドエー(SAA: Serum amyloid A)は、急性期蛋白の一つで、炎症発生から36~48時間で血中に増加することから、炎症病態の早期診断に有用であると言われており、馬においても、呼吸器疾患を探知する目的などで臨床応用されています。ここでは、滑膜組織の感染を早期診断する目的で、SAA測定の有用性を評価した知見を紹介します。この研究では、ドイツのギーセン大学の馬病院において、四肢の外傷の治療を受けた55頭の馬...

  • 外傷の滑膜侵襲での造影検査

    話題 - 2022/10/20

    一般的に、馬が四肢に外傷を負ったときに、滑膜組織(関節、腱鞘、滑液嚢など)に侵襲が及んでしまうと、難治性の細菌性滑膜炎を続発して、予後不良になる危険性が高いことが知られています。このため、特に関節や腱鞘に近い箇所に切り傷を負った馬においては、その外傷が滑膜侵襲を伴っているか否かを、初診の段階で確定診断しておくのが極めて重要となります。たとえ、見た目が小さなキズでも、それが深部に及んで、関節腔や腱鞘...

  • 競走馬の故障と落馬との関連性

    話題 - 2022/10/13

    一般的に、競走馬がレース中に重篤な故障を発生した場合、乗っている騎手にも危険が及ぶと推測されます。ここでは、競走馬の致死的故障(安楽殺となるような重度骨折や心臓疾患による突然死など)の発生が、騎手の落馬や怪我にどの程度影響しているのかを調査した研究を紹介します。この研究では、米国のカリフォルニア州の競馬場において、2007~2012年に起こった競走馬の致死的故障、および、騎手の落馬や怪我のデータが収集され...

  • 馬の管部への診断麻酔の手法

    話題 - 2022/10/11

    馬の跛行検査における神経ブロックは、疼痛の限局化および原因疾患の確定診断のために必須の手法ですが、前肢の近位管部における診断麻酔では、その反応性や検査結果の解釈の難易度が高いと言われています。その要因としては、高四点神経ブロックで麻酔される掌側神経と掌側中手神経が、軟部組織の深部を走行しており、注射した局所麻酔薬が近位または遠位に浸潤して、無痛化される領域が紛らわしくなること、管骨の近位掌側部(繋...

  • 馬の圧迫バンによる神経ブロックへの影響

    話題 - 2022/10/11

    馬の跛行検査における神経ブロックは、疼痛を限局化するのに有用であり、原因疾患の確定診断には必須の手順であると言われています。しかし、神経ブロックで投与された局所麻酔薬は、時間が経つと注射箇所よりも近位側に浸潤されることから、無痛化領域が予測以上に拡大してしまい、診断麻酔に対する反応性の解釈が難しくなり、疼痛箇所を誤診するリスクが指摘されています(上図の青色領域が予測される無痛化領域です)。ここでは...

  • 膝関節の診断麻酔で蹄跛行が消える?

    話題 - 2022/10/10

    馬の跛行検査において、疼痛箇所を限局するための診断麻酔は重要な手技であり、原因病態を確定診断するには必須であると言われています。しかし、馬の後肢の解剖学では、遠位肢の疼痛を支配する神経は、その近位部では膝関節包の尾側を走行しているため、局所麻酔薬の浸潤度合いによっては、疼痛緩和の領域が混同されて、原因疾患を誤診してしまう危険性が指摘されています。この現象を評価するため、下記の研究では、蹄部クランプ...

  • 子馬の足根骨不完全骨化による長期的な影響

    話題 - 2022/10/09

    子馬の病気を診療するときには、成馬になったときのパフォーマンスへの影響も考慮する必要があります。足根骨の不完全骨化は、立方骨の形成不全や、軟骨内骨化の遅延によって、健常な足根骨の緻密骨形成が妨げられる疾患です。通常は、栄養管理や運動制限によって治療されますが、不完全骨化の改善が遅れると、足根骨の変形や肢勢異常(飛節の外反や内反、鎌状飛節、直飛など)を続発して、慢性跛行や運動能力の低下を引き起こすこ...

  • 子馬の細菌性関節炎による長期的な影響

    話題 - 2022/10/09

    子馬の病気を診療するときには、成馬になったときのパフォーマンスへの影響も考慮する必要があります。子馬の細菌性関節炎は、全身疾患による抵抗力減退や、初乳の摂取不全による移行抗体不足が病因となる発症することが多く、抗生物質の全身的又は局所的投与、および、関節洗浄による治療が実施されることが一般的です。ここでは、子馬の細菌性関節炎が、成長後に競走馬としての能力に対して、どのような長期的な影響を与えるかを...

  • 子馬の支持靭帯切断術による長期的な影響

    話題 - 2022/10/08

    子馬の病気を診療するときには、成馬になったときのパフォーマンスへの影響も考慮する必要があります。一般的に、遠位支持靭帯(深屈腱の副靭帯)の切断術は、蹄関節の屈曲性肢変形症(いわゆるクラブフット)において、深屈腱から蹄骨に掛かる緊張を緩和することで、蹄繋軸前方破折の肢勢を矯正する目的で実施されます。ここでは、支持靭帯の切断術が、スポーツ馬の競技能力に対して、どのような長期的な影響を与えるかを調査した...

  • 馬の肢巻きの圧はどれくらい持続する?

    馬の飼養管理 - 2022/10/05

    馬の四肢に巻かれるバンテージについて、皮膚に対する圧迫力がどれくらい持続するのかを検証した研究を紹介します。参考文献:[1] Canada NC, Beard WL, Guyan ME, White BJ. Measurement of distal limb sub-bandage pressure over 96 hours in horses. Equine Vet J. 2017 May;49(3):329-333.[2] Canada NC, Beard WL, Guyan ME, White BJ. Effect of bandaging techniques on sub-bandage pressures in the equine distal limb,...

  • 馬の大腿骨骨折のエコー検査

    話題 - 2022/10/04

    大腿骨骨折は、馬の長骨骨折のうち16.5%を占めることが知られており、大型機器を使用しなければX線画像での確定診断が難しいことが知られています(特に近位部の骨折において)。ここでは、エコー検査を用いた馬の大腿骨骨折の診断についての知見を紹介します。参考文献:Jones SA, Whitcomb MB, Vaughan B, Goorchenko G, Busch R, Kilcoyne I, Spriet M. Ultrasonographic diagnosis of femoral fractures in large animals. J A...

  • 馬の買い手のための購入前検査

    馬の飼養管理 - 2022/10/03

    ホースマンにとって、馬を購入することは、新たなライフパートナーに出会う楽しみの瞬間であると同時に、その後の飼養管理にコミットしていく意味では、慎重を期さなければいけないタイミングでもあります。このため、その馬の健康状態を適正にチェックするため、獣医師による購入前検査が実施されることが一般的です。ここでは、馬の買い手の立場から見た、購入前検査のポイントについて紹介します。参考資料:Joan Norton, VMD, ...

  • 馬の抗真菌剤の局所灌流

    話題 - 2022/10/03

    抗真菌剤の局所灌流によるカビ症の治療例が報告されています。参考文献:Doria RG, Freitas SH, Linardi RL, Mendonça Fde S, Arruda LP, Boabaid FM, Valadao CA. Treatment of pythiosis in equine limbs using intravenous regional perfusion of amphotericin B. Vet Surg. 2012 Aug;41(6):759-65.この研究では、遠位肢のPythium insidiosum感染によるフハイカビ症の診断が下された12頭の患馬に対して、抗真菌剤(=アンフォテ...

  • 馬の疼痛エソグラムの有用性

    話題 - 2022/09/23

    馬の健康問題で最も多く見られるのが運動器疾患であり、運動器の疼痛によって歩様の左右対称性が失われた状態を、一般的には「跛行」と呼んでおり、点頭運動やヒップボブ動作によって跛行の存在が視認されてきました。しかし、近年では、騎乗時の馬の行動様式から、運動器の疼痛を検知しようという試みがあり、幾つかの馬の行動パターンが、疼痛の存在と相関することが分かってきました。もし、馬が疼痛を感じているか否かを、微妙...

  • 馬のリハビリ療法:10個の重要事項

    馬の飼養管理 - 2022/09/22

    馬の運動器疾患のなかでも、腱や靭帯、関節組織の損傷は、治癒に長期間を要することが多く、その治療期間中には、筋委縮によるパフォーマンスの低下を起こすことが一般的です。近年、馬の獣医療においては、ヒト医療におけるリハビリ療法と同様に、長期間の病気療養で下がってしまった馬の競技能力を、如何に短期間かつ有効に回復させていくか、という理念が生まれ、その技術や知見が深まってきています。ここでは、そのような馬の...

  • 馬の跛行をスマホで見つける?

    話題 - 2022/09/22

    馬に起こる健康問題で最も多いのは、運動器疾患に起因する跛行であることが知られています。その中でも、特に後肢の軽度跛行は、前肢の跛行に比べて、ホースマン自身で気付くのが難しいことがあるため、獣医師への相談が遅れるケースもあると考えられます。一方、近年は、スマホ機器の発達によって、様々な測定機能が付与された結果、垂直または水平方向への加速度をスマホで計測できるようになってきました。ここでは、スマホ機器...

  • 馬の整体は背筋痛に効く?

    話題 - 2022/09/21

    馬の整体(Chiropractic)の効き目について疑問を持たれているホースマンの方もいらっしゃるようです。ここでは、馬の背筋痛に対する整体の効能を評価した知見を紹介します。オランダのユトレヒト大学の研究[1]では、背部に問題があると診断された10頭の温血馬に対して、整体処置(背部、頚部、骨盤領域の用手操作)が施され、処置前、処置一時間後、および、処置三週間後における運動学的歩様解析が実施されました。その結果、処...

  • 馬装で不機嫌になる馬

    馬の飼養管理 - 2022/09/18

    馬が馬装されるときに不機嫌になるのは、一般的なことだと思われているかもしれません。しかし、英国の跛行研究者であるスー・ダイソン博士によると、馬の疼痛を上手に管理してあげることで、そのような行動が改善されることも多いと言います。参考資料:Betsy Lynch. Grumpy Horse While Tacking and Mounting? That’s Not Normal. The Horse, Topics, Behavior, Pain Managemen: Jan 29, 2022.Millares-Ramirez EM, Le Jeune SS....

  • 馬における針関節鏡の将来性

    話題 - 2022/09/15

    馬の健康問題の八割は運動器疾患であり、そのうち最も多いのは関節疾患であることが知られています。馬の関節疾患の診断では、歩様検査(視診や屈曲試験)や診断麻酔(神経ブロックや関節ブロック)のほか、画像診断としては、X線検査やエコー検査が有用で、近年では、CTやMRI等の先端診断技術も応用されています。しかし、これらの検査法では、初期病態の発見が難しく、汎用性の低い手法も多いという問題点があります。関節鏡は...

  • 膝蓋骨が上方固定したときの対処法

    馬の飼養管理 - 2022/09/09

    馬の膝蓋骨上方固定について時々、ホースマンの方々から、「馬の後膝が脱臼した!」という緊急電話を頂くことがあります。そのような場合、馬が後肢を伸ばした状態で突っ張ってしまい、飛節や膝関節を曲げられなくなった状態を指しています(球節は少し曲げ伸ばし可)。解剖学的には、馬の膝蓋骨の下方に付いている内側膝蓋靭帯が、大腿骨の内側滑車の上端に引っ掛かっることによって発症し、膝蓋骨の上方固定というのが病名になり...

  • 馬の幹細胞治療は本当に効くのか?

    話題 - 2022/09/09

    馬の運動器疾患には、屈腱炎や繋靭帯炎、関節炎などの難治性の病気も多く、抗炎症剤やヒアルロン酸の全身又は局所投与、ショックウェーブ治療、多血小板血漿の局所投与などの治療法が実施されています。また、近年では、間葉系間質細胞(Mesenchymal stromal cells)などの幹細胞を局所投与する再生医療も、様々な疾患に応用されて、良好な治療成績も報告されています。その一方で、幹細胞治療における有効投与量(注射する細胞数...

  • 馬の繋靭帯損傷への装蹄療法

    馬の飼養管理 - 2022/09/05

    馬の繋靭帯損傷について繋靭帯は、馬の肢端にある結合組織の一つで、球節の支持機能を担う重要な構造物になります。馬の繋靭帯は、管骨近位部に起始し、管部中央で内外脚に分岐したあと、内側の種子骨に付着しています。この種子骨の遠位端には、繋骨後面に繋がっている種子骨靭帯があり、この3つの構造物(繋靭帯、種子骨、種子骨靭帯)が懸垂装置というユニットとして、球節をハンモックのように後ろから支える役目を果たしてい...

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Author:Rowdy Pony
名前: 石原章和
性別: 男性
年齢: アラフィフ
住所: 北関東
職業: 獣医師・獣医学博士
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