タグ:関節炎 のエントリー一覧
-
乗馬の後膝跛行での関節鏡の有用性
話題 - 2023/09/27一般的に、乗馬の競技馬における後膝跛行は、散発的に見られる後肢の歩様以上の原因であり、比較的に重度な跛行を呈して、競技能力の低下を招くケースが多いことが知られています。しかし、後膝に発生する疾患のうち、関節軟骨や半月板、十字靭帯、側副靭帯などの損傷では、診断麻酔や画像検査による確定診断が難しい症例も多く、難治性の経過を取ることがあると言われています。下記の研究では、英国のロスデイル馬病院において、...
-
馬の関節炎での唾液バイオマーカー
話題 - 2023/08/26馬の関節炎は、最も発症率の高い運動器疾患の一つであり、再生能に乏しい軟骨に損傷をきたすと予後が芳しくないことから、早期診断と早期治療が重要な疾患であると言えます。このため、馬の体液サンプルの含有成分のなかでも、関節炎の病態と相関している様々なバイオマーカーの検出が試みられています。下記の研究では、軟骨や軟骨下骨が損傷および変性したときに遊離される、ビグリカン代謝産物(BGN262: biglycan-neo-epitope-B...
-
跛行しない飛節の骨棘は競走能力に影響するのか?
話題 - 2023/08/16一般的に、遠位飛節の関節周囲での骨棘形成(Periarticular osteophytes of the distal tarsus)は、飛節内腫(飛節の変性関節疾患[DJD])の特徴的所見だと考えられています。しかし、若齢馬においては、遠位飛節の骨棘の所見は、跛行症状とは相関しないことも知られており[1]、サラブレッドのレポジトリ検査において、無跛行な馬の二割から三割で同所見を認めたという知見もあります[2,3]。ここでは、若齢で無跛行な競走馬におけ...
-
若齢馬の大腿骨内顆の透過域による長期的な影響
話題 - 2023/07/24若齢馬の病気を診療するときには、成馬になったときのパフォーマンスへの影響も考慮する必要があります。一般的に、馬の大腿骨内顆は、ボーンシストと好発部位として知られていますが、軟骨下透過域(SCLs: Subchondral lucencies)のみを生じた場合の長期的予後については様々な議論があります。そこで、下記の研究では、米国のケンタッキー州とメリーランド州でのサラブレッドのセリにおいて、2016年に競売された2,508頭の当歳馬...
-
健康な肢でも運動後に水冷すべきか?
馬の飼養管理 - 2023/06/02乗用馬の騎乗後には、冷水を掛けたり、氷冷ブーツの装着などで肢を冷やす措置がよく行なわれています。しかし、怪我や故障をした肢を、治療する目的で冷やす以外にも、問題の起きていない健康な肢でも冷やすべきか?というのは自然な疑問だと言えます。ここでは、運動後の水冷が、怪我や故障の予防になるのかを解説した知見を紹介します。参考資料:Matt Leshaw, DVM. Can Cold Therapy Safeguard Sport Horses From Injury? Shoul...
-
馬の関節炎でのパーグ治療の実施法
馬の飼養管理 - 2023/05/22一般的に、馬の健康問題のうち、約八割を運動器疾患が占めることが知られています。そのうち、最も多いのが関節疾患であり、これには、競走馬における腕節炎や球節炎、乗用馬における飛節内腫やリングボーン、および、若齢馬でのOCDやボーンシストに併発する変性関節疾患(DJD)などが含まれます。ここでは、馬の関節疾患に対する「パーグ治療」について、その概要を解説した知見を紹介します。参考資料:Alexandra Beckstett, The...
-
血液精製物による馬の関節炎の治療
馬の飼養管理 - 2023/05/08馬の健康問題のうち、約八割を運動器疾患が占めており、そのうち、最も多いのが関節炎であると言われています。これには、競走馬の腕節炎や球節炎、乗用馬の飛節内腫やリングボーン、および、若齢馬のOCDやボーンシストに併発する変性関節疾患(DJD)から、高齢馬の顎関節炎に至るまで、多様な年代の馬において、多くの病態が起こり得ます。ここでは、馬の自己血液から精製される物質を用いた関節炎の治療に関して、その概要を解説...
-
調馬索による馬の関節への影響
馬の飼養管理 - 2023/04/24馬の調馬索運動(ロンジング)は、様々な馬術競技のトレーナーや馬主によって行なわれる一般的な運動方法であり、若齢馬を鞍付けする際に使用されたり、競技馬の調教を進めるために使われたりする事があります。しかし、近年の研究では、調馬索でもたらされる効果を考慮することが重要であるという警鐘が鳴らされており、調馬索の実施者は、馬が回転運動するときの生物力学を理解し、関節組織の健康と、馬の競技キャリアを長期的に...
-
馬の仙腸関節の注射での合併症
話題 - 2023/04/22仙腸関節とは、背骨と骨盤を連結しているL字型の関節で、この部位での疼痛は、ハンター飛越や障害飛越などの競技馬に好発します。一般的に、馬の仙腸関節は、画像診断をするのが困難な箇所であるため、関節内への局所麻酔薬の注入(診断麻酔)によって、仙腸関節での疼痛の限局化が試みられる事があります。また、治療薬を局所投与する目的で、関節注射が実施されることもあります。ここでは、馬の仙腸関節注射における合併症に関...
-
馬の滑膜感染の関節鏡での予後指標
話題 - 2022/12/27関節鏡手術は、馬の無菌手術のなかで、最も頻繁に実施されるものの一つで、OCDや小片骨折の摘出の他にも、多様な関節疾患の治療に適応されています。ここでは、滑膜感染を起こした214頭の症例(六ヶ月齢以上)での関節鏡の治療成績、および、オッズ比(OR)の算出による予後指標に関する知見を紹介します。参考文献:Milner PI, Bardell DA, Warner L, Packer MJ, Senior JM, Singer ER, Archer DC. Factors associated with survi...
-
蹄骨の裏側の骨片での関節鏡
話題 - 2022/12/27関節鏡手術は、馬の無菌手術のなかで、最も頻繁に実施されるものの一つで、OCDや小片骨折の摘出の他にも、多様な関節疾患の治療に適応されています。ここでは、蹄骨の裏側(掌側または底側)に骨軟骨片を発生した四頭の跛行馬に対して、関節鏡手術を実施した知見を紹介します。参考文献:Lloyd KA, Smith MR, Whitton RC, Stent AW, Steel CM. Osteochondral fragmentation of the palmarolateral/plantarolateral aspect of the d...
-
馬の蹄関節での関節鏡の長期的予後
話題 - 2022/12/26関節鏡手術は、馬の無菌手術のなかで、最も頻繁に実施されるものの一つで、OCDや小片骨折の摘出の他にも、多様な関節疾患の治療に適応されています。ここでは、馬の蹄関節での関節鏡手術における、病態の傾向と長期的予後を評価した知見を紹介します。この研究では、米国のテキサス州の馬病院にて、2012~2017年にかけて、蹄関節の変性関節疾患の治療のために、関節鏡手術が実施された10頭の跛行馬における医療記録の回顧的解析が...
-
馬の脛骨の顆間隆起骨折での関節鏡
話題 - 2022/12/26関節鏡手術は、馬の無菌手術のなかで、最も頻繁に実施されるものの一つで、OCDや小片骨折の摘出の他にも、多様な関節疾患の治療に適応されています。ここでは、馬の脛骨の顆間隆起骨折での関節鏡治療を評価した知見を紹介します。この研究では、米英の九ヶ所の馬病院において、2004~2016年にかけて、脛骨の顆間隆起骨折の治療のために関節鏡が実施された21頭の跛行馬における医療記録の回顧的解析が行なわれました。参考文献:Rub...
-
馬の後膝での関節鏡の長期的予後
話題 - 2022/12/25関節鏡手術は、馬の無菌手術のなかで、最も頻繁に実施されるものの一つで、OCDや小片骨折の摘出の他にも、多様な関節疾患の治療に適応されています。ここでは、馬の後膝での関節鏡手術における長期的予後を評価した知見を紹介します。この研究では、米国のペンシルバニア大学の馬病院にて、1993~2006年にかけて、膝関節の変性関節疾患、半月板損傷、関節内軟部組織の損傷を治療するため、関節鏡手術が実施された44頭の跛行馬にお...
-
馬の敗血症とその後の骨軟骨症
話題 - 2022/12/06子馬の敗血症は、早期治療すれば予後は比較的良好ですが、長期的な影響については不明な点も多いと言えます。ここでは、子馬の敗血症と、その後の骨軟骨症の発生について調査した知見を紹介します。この研究では、ノルウェーの馬病院にて、2006~2012年にかけて、生後六ヶ月齢までに敗血症の治療を受けて治癒した28頭のスタンダードブレッドにおける、その後(7~85ヶ月齢時点)のX線検査所見の評価が行なわれました。参考文献:He...
-
馬の関節鏡での骨片サイズの影響
話題 - 2022/12/06馬の関節鏡は、様々な関節疾患の治療に適応されており、侵襲性が低いという利点がありますが、合併症がゼロという訳ではないことには注意する必要があります。ここでは、馬の関節鏡での術後合併症と骨片サイズについて調査した知見を紹介します。この研究では、カナダのゲルフ大学の獣医病院において、2011~2020年にかけて、飛節(脛骨足根関節)の関節鏡手術が行なわれた329頭の馬(485箇所の関節)における、医療記録の回顧的解...
-
馬の関節鏡での抗生物質
話題 - 2022/12/05馬の関節鏡は、様々な関節疾患の治療に適応されており、侵襲性が低いという利点がありますが、合併症がゼロという訳ではないことには注意する必要があります。ここでは、馬の関節鏡での術後合併症について調査した知見を紹介します。この研究では、スウェーデンの馬病院において、2008~2010年にかけて、444頭の馬に実施された636箇所の関節鏡手術における、医療記録の回顧的解析が行なわれました。参考文献:Borg H, Carmalt JL. ...
-
馬の“横風”跛行での鑑別診断
話題 - 2022/12/03馬の“横風”跛行(Sidewinder gait)とは、常歩において前肢と後肢の動きが連携せず、片方の後肢を外方に投げ出しながら、その反対側に後躯を大きく傾けながら歩く歩様を指しています。ここでは、横風跛行の診療が行なわれた24頭の馬における、鑑別診断、治療、予後について調査した知見を紹介します。参考文献:Aleman M, Berryhill E, Woolard K, Easton-Jones CA, Kozikowski-Nicholas T, Dyson S, Kilcoyne I. Sidewinder gait ...
-
馬の蹄関節の側副靭帯炎
話題 - 2022/12/02馬における蹄関節の側副靭帯炎(Collateral desmitis of the distal interphalangeal joint)は、稀に見られる跛行の原因疾患です。ここでは、英国の馬研究センターにおいて、2001~2003年にかけて、蹄関節の側副靭帯炎を呈した18頭の馬に関する症例集積研究を紹介します。参考文献:Dyson SJ, Murray R, Schramme M, Branch M. Collateral desmitis of the distal interphalangeal joint in 18 horses (2001-2002). Equine Vet J....
-
馬の軟骨下骨損傷のバイオマーカー
話題 - 2022/12/01近年、血液検査によって馬の関節疾患を診断しようとする試みが続けられてきましたが、この際には、関節軟骨のバイオマーカーに主眼が置かれてきました。ここでは、軟骨下骨のバイオマーカーによって、関節炎の病態タイプを把握するという知見を紹介します。この研究では、10頭の競走馬の調教期間を通したサンプル、69頭の関節炎の罹患馬でのサンプル、および、9頭の小片骨折の発症馬のサンプルでの、BGN(Neo-epitope for native b...
-
競走馬の関節炎でのPAAG治療
話題 - 2022/11/23馬の跛行の原因としては、最も多いのが変性関節疾患であることが知られており、その治療法として注目されるのがPAAG関節注射法になります。ここでは、競走馬の関節炎に対するPAAG治療を、従来の関節注射療法と比較した知見を紹介します。この研究では、手根関節炎を呈した31頭のサラブレッド競走馬に対して、PAAG関節注射、トリアムシノロン(HA)、または、ヒアルロン酸(HA)の関節注射を無作為に実施して、その後の12週間にわた...
-
馬のPAAG注射の滑膜への影響
話題 - 2022/11/23馬の跛行の原因としては、最も多いのが変性関節疾患であることが知られており、その治療法として注目されるのがPAAG関節注射法になります。ここでは、馬の関節に注射されたPAAGが、滑膜にどのように作用しているかを評価した知見を紹介します。この研究では、まず10匹のウサギを用いて、PAAGまたはヒアルロン酸ゲル(HAG、対照群)の関節注射の一年後までの滑膜組織の組織学的評価を行ない、次に、関節炎を呈した14頭の馬に対して...
-
馬のPAAG治療での長期経過
話題 - 2022/11/22馬の跛行の原因としては、最も多いのが変性関節疾患であることが知られており、その治療法として注目されるのがPAAG関節注射法になります。ここでは、馬の関節炎に対するPAAG治療法の長期経過を評価した知見を紹介します。この研究では、ドイツとデンマークの獣医大学病院において、2010~2014年にかけて、変性関節疾患の確定診断を受けて、PAAG関節注射(2mL、球節または手根関節)による治療が行なわれた43頭の馬における、治療...
-
馬の球節骨片でのエコー検査
話題 - 2022/11/19近年、馬の小片骨折の診断において、X線では見逃してしまう骨片でも、エコー検査で発見できることが分かってきました。ここでは、競走馬に好発する球節の小片骨折での、エコー検査の診断能を評価した知見を紹介します。この研究では、米国フロリダ州の馬病院において、2016~2020年にかけて、前肢基節骨の近位背側部に小片骨折を発症して、関節鏡による確定診断と治療が実施された56頭(99箇所の病変)のサラブレッド競走馬におけ...
-
SAAによる馬の滑膜感染の診断
話題 - 2022/10/31血清アミロイドエー(SAA: Serum amyloid A)は、急性期蛋白の一つで、炎症発生から36~48時間で血中に増加することから、炎症病態の早期診断に有用であると言われており、馬においても、呼吸器疾患を探知する目的などで臨床応用されています。ここでは、滑膜組織の感染を早期診断する目的で、SAA測定の有用性を評価した知見を紹介します。この研究では、ドイツのギーセン大学の馬病院において、四肢の外傷の治療を受けた55頭の馬...
-
馬の球節固定術
診療 - 2022/10/17馬の球節(中手指骨間関節または中足指骨間関節)の固定術についてまとめてみます。あくまで概要解説ですので、詳細な手技については成書や論文を確認して下さい。馬に対する球節固定術は、懸垂装置の破損によって球節の掌側支持機能が失われた場合や、球節の重篤な関節疾患などによって疼痛管理が困難な場合に適応されます。このうち、前者では懸垂装置の機能を回復させる外科的措置(テンションバンドワイヤーの設置)が必要にな...
-
競走馬の関節注射と骨折の関連性
話題 - 2022/10/12馬の健康問題の八割は運動器疾患であり、そのうち最も多いのは関節疾患であることが知られています。そのような関節疾患の内科的治療としては、抗炎症剤やヒアルロン酸の関節注射が実施されることがありますが、疼痛を緩和するメリットに併せて、一次病態を悪化させたり、軟骨変性を進行させるなどのデメリットも指摘されています。ここでは、競走馬の関節注射と骨折との関連性について調査した知見を紹介します。この研究では、英...
-
エコーでの馬の肩関節注射
話題 - 2022/10/10エコーを使った馬の肩跛行の診断麻酔が試みられています。参考文献:Schneeweiss W, Puggioni A, David F. Comparison of ultrasound-guided vs. 'blind' techniques for intra-synovial injections of the shoulder area in horses: scapulohumeral joint, bicipital and infraspinatus bursae. Equine Vet J. 2012 Nov;44(6):674-8.この研究では、超音波誘導または盲目的注射法を介して、造影剤と染色剤(メチレンブルー)の混合...
-
膝関節の診断麻酔で蹄跛行が消える?
話題 - 2022/10/10馬の跛行検査において、疼痛箇所を限局するための診断麻酔は重要な手技であり、原因病態を確定診断するには必須であると言われています。しかし、馬の後肢の解剖学では、遠位肢の疼痛を支配する神経は、その近位部では膝関節包の尾側を走行しているため、局所麻酔薬の浸潤度合いによっては、疼痛緩和の領域が混同されて、原因疾患を誤診してしまう危険性が指摘されています。この現象を評価するため、下記の研究では、蹄部クランプ...
-
馬の買い手のための購入前検査
馬の飼養管理 - 2022/10/03ホースマンにとって、馬を購入することは、新たなライフパートナーに出会う楽しみの瞬間であると同時に、その後の飼養管理にコミットしていく意味では、慎重を期さなければいけないタイミングでもあります。このため、その馬の健康状態を適正にチェックするため、獣医師による購入前検査が実施されることが一般的です。ここでは、馬の買い手の立場から見た、購入前検査のポイントについて紹介します。参考資料:Joan Norton, VMD, ...
-
馬の疼痛エソグラムの有用性
話題 - 2022/09/23馬の健康問題で最も多く見られるのが運動器疾患であり、運動器の疼痛によって歩様の左右対称性が失われた状態を、一般的には「跛行」と呼んでおり、点頭運動やヒップボブ動作によって跛行の存在が視認されてきました。しかし、近年では、騎乗時の馬の行動様式から、運動器の疼痛を検知しようという試みがあり、幾つかの馬の行動パターンが、疼痛の存在と相関することが分かってきました。もし、馬が疼痛を感じているか否かを、微妙...
-
馬のリハビリ療法:10個の重要事項
馬の飼養管理 - 2022/09/22馬の運動器疾患のなかでも、腱や靭帯、関節組織の損傷は、治癒に長期間を要することが多く、その治療期間中には、筋委縮によるパフォーマンスの低下を起こすことが一般的です。近年、馬の獣医療においては、ヒト医療におけるリハビリ療法と同様に、長期間の病気療養で下がってしまった馬の競技能力を、如何に短期間かつ有効に回復させていくか、という理念が生まれ、その技術や知見が深まってきています。ここでは、そのような馬の...
-
馬のボーンシストの螺子はラグ固定しなくても良い?
話題 - 2022/09/16馬のボーンシストの螺子固定術馬のボーンシスト(軟骨下骨嚢胞)は、大腿骨の内顆に好発し、関節鏡での掻把術や抗炎症剤のシスト内投与等で治療されますが、近年では、シストを貫通するように螺子固定する外科的療法が行なわれています。螺子固定によってボーンシストが治癒する理由としては、螺子が嚢胞内腔に圧迫負荷を加えることで、骨造成を刺激することが挙げられており、このため、ボーンシストの螺子固定術では、ラグスクリ...
-
馬における針関節鏡の将来性
話題 - 2022/09/15馬の健康問題の八割は運動器疾患であり、そのうち最も多いのは関節疾患であることが知られています。馬の関節疾患の診断では、歩様検査(視診や屈曲試験)や診断麻酔(神経ブロックや関節ブロック)のほか、画像診断としては、X線検査やエコー検査が有用で、近年では、CTやMRI等の先端診断技術も応用されています。しかし、これらの検査法では、初期病態の発見が難しく、汎用性の低い手法も多いという問題点があります。関節鏡は...
-
馬の関節鏡でも局所麻酔を
話題 - 2022/09/13馬の手根関節の関節鏡手術は、小片骨折片の摘出、および、変性関節疾患のクリーニング手術(軟骨病巣掻把や滑膜切除術)などの目的で実施されることが多く、競走馬の臨床において、最も頻繁に行なわれる手術の一つです。今回は、局所麻酔薬の関節内投与によって、関節鏡手術中の疼痛管理を行なった知見を紹介します。参考文献:Gaesser AM, Varner KM, Douglas HF, Barr CA, Hopster K, Levine DG. The effect of intra-articular ...
-
馬の幹細胞治療は本当に効くのか?
話題 - 2022/09/09馬の運動器疾患には、屈腱炎や繋靭帯炎、関節炎などの難治性の病気も多く、抗炎症剤やヒアルロン酸の全身又は局所投与、ショックウェーブ治療、多血小板血漿の局所投与などの治療法が実施されています。また、近年では、間葉系間質細胞(Mesenchymal stromal cells)などの幹細胞を局所投与する再生医療も、様々な疾患に応用されて、良好な治療成績も報告されています。その一方で、幹細胞治療における有効投与量(注射する細胞数...
-
馬のアイラップ治療と運動の関連性
話題 - 2022/09/03馬のアイラップ治療と運動の関連性について検証が行なわれています。馬の運動器疾患のうち、最も発症率が高いのは関節炎であると言われており、抗炎症剤の関節内投与が行なわれていますが、副作用の懸念があることに加えて、禁止薬物であるため競走馬に使用できないという制約があります。その代わりとして、近年では、馬自身の血液を処理した自己調整血清(ACS: Autologous conditioned serum)を関節内に注射する療法が応用され...
-
突然の重度跛行での見分け方
馬の飼養管理 - 2022/09/02馬が突発的に重度の跛行を示したときには、どんな病気が疑われるのでしょうか。馬の健康問題で一番多いのは跛行ですが、通常では、軽度な歩様異常が徐々に悪化したり、人馬転などの事故の後に跛行を呈します。しかし、時には、まったく荷重できないような非常に重篤な跛行(不負重性跛行)が、前兆も無く、急性発現性に見られることがあります。そのような馬では、速やかに原因を突き止めて、適切な処置を施すことが重要になります...
-
つまずく馬は要注意
馬の飼養管理 - 2022/09/01ホースマンの中には、自馬が頻繁につまづく事を心配されている方もいらっしゃるようです。つまずきは、トレーニングの妨げになったり、パフォーマンス低下になる以外にも、人馬転のリスクが増えることで、ヒトと馬の両方の健康と福祉に有害と言えます。ここでは、つまずく馬における発生要因や対策について紹介します。参考資料:Rachel Gottlieb, DVM. Why Does My Horse Stumble After Jumping? The Horse, Topics, Arthritis & ...
-
釘を踏んでも抜かないで!
馬の飼養管理 - 2022/08/22馬を裏掘りしようと肢を上げさせたとき、もし、蹄底に釘が刺さっているのを見つけたら、どう対処するのが正しいでしょうか?正解は、「釘を抜かずに獣医師を呼ぶ」です。ホースマンの直感としては、速やかに釘を抜去して、消毒処置などを施したくなると思います。しかし、一番大切なことは、釘の先端がどこまで深く刺さっていて、蹄内部のどの構造物に達しているかを見極めることになります。何故なら、釘の刺さり方によっては、か...
-
裏にある骨片は腱鞘越しに摘出
話題 - 2022/08/21中間手根骨の掌側部骨折について馬の手根骨の骨折は、その殆どが背側面に生じますが、稀に掌側面にも起こることがあります。このうち、橈側手根骨や第三手根骨の掌側部骨折では、前腕手根関節または中間手根関節の掌側関節包に関節鏡でアプローチすることで、外科的摘出が可能であることが知られています。一方、中間手根骨の掌側部骨折は、関節鏡でアプローチするのが困難であると言われており、保存療法(骨片摘出せず休養させる...
-
馬の顎関節炎を診療する難しさ
話題 - 2022/08/21馬の顎関節炎を診療するときの留意点について専門家が警鐘を鳴らしています。顎関節は、下顎骨と側頭骨のあいだに形成され、口を開閉させる機能を担っている関節です。草食獣である馬にとって、顎関節は、一生のあいだに最も頻繁に動かす関節であり、顎関節に炎症を起こすと、咀嚼しながらエサをこぼす仕草(=Quidding)や食欲低下を呈します。また、ハミ付けを嫌悪したり、頭を挙上して激しく左右に振る動作(=ヘッドシェイキン...
-
馬の軟腫:放置か治療かの見分け方
馬の飼養管理 - 2022/08/20馬の軟腫について、放っておいても大丈夫なのか、それとも治療すべきか、という判断にお困りのホースマンも多いようです。一般的に、“軟腫”(英語名:Windpuffs)と呼ばれるのは、後肢の球節の後ろに、柔らかく盛り上がった腫れが生じている状態を指します。球節の後面には、2つの腱(深屈腱と浅屈腱)が走行しており、この部位では、腱が摩擦なく滑走できるように、潤滑液(腱鞘液)を含んだ袋(腱鞘包)に包まれています。軟腫...
-
馬の鎮痛剤は毎日飲ませても安全?
馬の飼養管理 - 2022/08/19ホースマンのなかには、馬に鎮痛剤を毎日飲ませ続けても大丈夫なのか?という疑問をお持ちの方もいらっしゃるようです。一般的に、馬の健康問題の八割は運動器疾患であり、そのうち、関節炎が占める割合が最も多いと言われています(飛節内腫、ナビキュラー病、リングボーン、膝関節炎、球節炎など)。このため、15歳以上の乗馬の競技馬において、慢性的な関節痛による跛行やプアパフォーマンスを呈する個体も多く、そのような関節...
-
ビッコ探知機
診療 - 2022/07/30米国の馬臨床の場では、金属探知機ならぬ“ビッコ探知機”が使われています。「跛行位置指定装置」(Lameness locator)と呼ばれるこの機械は、原理的には運動学的歩様解析(Kinematic gait analysis)のひとつに分類され、馬体の三箇所(頭部、臀部、右前肢)にセンサーを取り付けた状態で速歩させることで、馬体の異常な動きや非対称な動き(Abnormal/Asymmetric motion)を、ワイヤレスシステムを通して専用のコンピューター(iPa...
-
馬の関節炎のサプリメント(2022年版)
馬の飼養管理 - 2022/07/27ホースマンの中には、慢性の関節炎(飛節内腫やリングボーン等)を患っている自馬のケアに悩んでいらっしゃる方も多いのかもしれません。ここでは、関節炎への効能が謳われたサプリメントをまとめました。馬の関節炎に対するサプリメントとしては、コンドロイチン、グルコサミン、および、メチルスルフォニルメタン(MSM)の3つの成分が有効であることが知られています。特に、馬の関節炎では、コンドロイチンとグルコサミンの2...
-
背弯した高齢馬は乗っても大丈夫?
馬の飼養管理 - 2022/07/27背弯姿勢になった高齢の馬は、騎乗しても問題ないのでしょうか。背弯とは、胸椎から腰椎までの背骨が下方に沈み、馬の背中がUの字に弯曲した馬体の状態を指します。英語では、スウェイバックまたはロードシスと呼ばれ、通常、高齢馬によく見られますが、若齢馬に起こることもあり、発生率は約1%になることが知られています。ホースマンにとっては、自らが座る位置である背中が凹んでいるため、騎乗することへの不安を持つことが多...
-
馬の肢の冷やし方
馬の飼養管理 - 2022/07/26馬の肢はどうやって冷やすのが一番良いのか?という質問は、多くのホースマンが持たれているようです。馬の運動器疾患には、多種類の組織の損傷が含まれますが(筋肉、骨、関節、腱、靭帯、蹄など)、急性期には冷却療法、慢性期には温熱療法を行なうことが基本となります。このうち冷却療法は、特に損傷発生後の24~72時間では重要であり、罹患部を冷やして血流を減らすことで、痛みや腫れを抑えると同時に、炎症メディエイターの...
-
馬の軟便:実は怖い病気の前兆かも
馬の飼養管理 - 2022/07/19馬の軟便については、軽く考えてしまうことは禁物です。軟便や下痢症とは、糞便に含まれる水分量が正常よりも多い状態を指し、消化管での水分吸収が減っている場合と、分泌が増えている場合とがあります。幸いにも、馬の軟便は、深刻ではないケースが殆どです。しかし、軟便の原因によっては、命に関わることもあり、油断のできない病気です。また、深刻でない軟便であっても、それが長引いてしまうことで、命取りの下痢症へと進行...
-
関節注射のリスクを知っていますか?
馬の飼養管理 - 2022/07/16関節注射の安全性について何が分かっているのでしょうか?馬に起こる健康問題の八割は跛行であり、そのうち最も多い原因は関節炎であることが報告されています。そして、馬の関節炎の治療としては、関節内に抗炎症および軟骨保護作用のあるクスリを直接的に注入する関節注射(Joint injection)が選択されることがあります。特に、15歳以上の競技馬では、慢性的な関節痛を制御するため、年に何回か関節注射療法を繰り返しながら、...