カテゴリ:馬の消化器病のエントリー一覧
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馬の病気:直腸脱
馬の消化器病 - 2013/05/07直腸脱(Rectal prolapse)について。 直腸が肛門から逸脱を起こす疾患で、雄馬よりも牝馬に好発し、下痢(Diarrhea)、難産(Dystocia)、腸内寄生虫(Intestinal parasitism)、直腸炎(Proctitis)、直腸腫瘍(Rectal tumor)などの、裏急後重(Tenesmus)や腹圧上昇(Elevated intraabdominal pressure)を起こす病態、もしくは呼吸器疾患に起因する慢性咳嗽(Chronic coughing)などが素因として挙げられています。 直腸脱の...
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馬の病気:直腸裂傷
馬の消化器病 - 2013/05/06直腸裂傷(Rectal tear)について。 馬の直腸裂傷は、不適切な直腸検査(Inadequate rectal examination)に起因して発症することが最も多く、馬臨床医における医療過誤訴訟(Malpractice suits)の主要原因の一つとなっています。また、難産(Dystocia)、直腸血栓症(Rectal thrombosis)、砂疝(Sand impaction)等も病因として挙げられており、浣腸(Enema)による過度の内圧上昇(Excessive luminal pressure)や、鉗子を用い...
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馬の病気:腹膜炎
馬の消化器病 - 2013/05/05腹膜炎(Peritonitis)について。 馬における腹膜炎は、重篤な消化器疾患から二次性に発症することが一般的で、腸捻転、絞扼、重積、逸脱(Intestinal volvulus, strangulation, intussusception, or prolapse)などに伴う腸管虚血(Intestinal ischemia)、胃および腸管穿孔(Gastric/Intestinal perforation)、十二指腸近位空腸炎(Duodenitis-proximal jejunitis)などに続発する病態が知られています。また、分娩時の子宮外傷...
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馬の病気:胎便貯留
馬の消化器病 - 2013/05/04胎便貯留(Meconium retention)について。 新生児の腸管内に存在する胎便(Meconium)は、胎児期の腺性分泌物(Glandular secretion)、脱落細胞(Sloughed cells)、嚥下された羊水(Swallowed amniotic fluid)などから構成され、正常個体では生後48時間以内に排出されることが一般的です。胎便貯留の病因としては、初乳摂取不全(Failure to ingest colostrum)や発育不足(Dysmaturity)などが挙げられ、雌の新生児(Fillies...
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馬の病気:糞石症
馬の消化器病 - 2013/05/03糞石症(Fecalithiasis)について。 濃縮した糞塊(Inspissated feces)によって生じた糞石(Fecaliths)に起因して、小結腸の通過障害(Small colon obstruction)を起こす疾患で、ポニーやミニチュアホースに好発することが知られています。糞石症の病因としては、粗飼料の品質低下(Poor-quality roughage)、歯科疾患による咀嚼不全(Poor mastication due to dental diseases)、飲水量の減少(Reduced water intake)などが...
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馬の病気:小結腸便秘
馬の消化器病 - 2013/05/02小結腸便秘(Small colon impaction)について。 硬化した糞便によって小結腸の通過障害(Small colon obstruction)を生じる疾患で、サルモネラ感染に起因する大腸炎(Enteritis)、咀嚼不全(Poor mastication)、飲水不足(Decreased water intake)、腸内寄生虫(Intestinal parasite)、運動不足などが病因として挙げられています。また、有茎性脂肪腫(Pedunculated lipoma)による小結腸絞扼(Small colon strangulation)...
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馬の病気:腸結石症
馬の消化器病 - 2013/05/01腸結石症(Enterolithiasis)について。 結腸内に形成された結石(Enteroliths)に伴って、腸管の通過障害(Intestinal obstruction)を起こす疾患で、殆どの症例において、結石はストルバイト(Magnesium ammonium phospate)で構成されます。馬の腸結石症は、アラビアン、モルガン、サドルブレッドなどの品種に好発し、四歳以上の馬(特に十五歳以上の高齢馬)に発症が多いことが知られています。米国では、マグネシウム含量の高...
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馬の病気:大結腸捻転
馬の消化器病 - 2013/04/30大結腸捻転(Large colon volvulus)について。 大結腸が、その胸骨曲(Sternal flexure)または左側結腸部で捻れを生じる疾患で、腹側大結腸へのガス停滞(Gas accumulation)が病因となると考えられています。また、出産後の繁殖牝馬(Post-parturient broodmare)に発症が多いことが報告されており、腹腔内に占める子宮の容積が急激に変化することで、大結腸の可動域が増加することが素因として挙げられていますが、その発症機...
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馬の病気:大結腸右背方変位
馬の消化器病 - 2013/04/28大結腸右背方変位(Large colon right dorsal displacement)について。 大結腸が盲腸と右腹壁の間に迷入(Large colon migration between cecum and right abdominal wall)を起こす疾患で、骨盤曲(Pelvic flexure)の移動方向によって、時計回り変位(Clockwise displacement)および反時計回り変位(Counterclockwise displacement)という病態の表現法が用いられる場合もあります(反時計回り変位の方が一般的)。大結腸右背...
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馬の病気:大結腸左背方変位
馬の消化器病 - 2013/04/27大結腸左背方変位(Large colon left dorsal displacement)について。 大結腸が脾臓(Spleen)と左側腹壁(Left abdominal wall)の間に変位する疾患で、左側大結腸が脾臓と腎臓の隙間に引っ掛かる事が多く、その状態を腎脾間捕捉(Nephrosplenic entrapment)と呼びます。大結腸左背方変位の病因としては、左腹側大結腸(Left ventral colon)にガスが停滞(Gas accumulation)して左側大結腸が反転する過程で、脾臓と左腹壁の隙...
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馬の病気:大腸重積
馬の消化器病 - 2013/04/26大腸重積(Large intestinal intussusception)について。 大腸におこる重積症は、盲腸尖部(Cecal apex)が盲腸体部に内反する盲腸盲腸重積(Cecocecal intussusception)、または、盲腸尖部が盲腸結腸開口部(Cecocolic orifice)を通過して右腹側大結腸(Right ventralcolon)の内部まで達する盲腸結腸重積(Cecocolic intussusception)の病態を示し、2~3歳齢の若馬に発症が多いことが報告されています。大腸重積の病因として...
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馬の病気:砂疝
馬の消化器病 - 2013/04/25砂疝(Sand enteropathy)について。 大結腸への砂の貯留(Sand accumulation in large colon)に起因して疝痛を起こす疾患で、放牧地において地面からの給餌が行われている馬に好発します。一般的に、右背側結腸(Right dorsal colon)または骨盤曲(Pelvic flexure)に砂の貯留が起こり、腸内容物の通過障害(Ingesta obstruction)から大結腸の便秘(Large colon impaction)を引き起こしたり、結腸粘膜刺激(Colon mucosal irr...
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馬の病気:盲腸便秘
馬の消化器病 - 2013/04/24盲腸便秘(Cecal impaction)について。 盲腸における便秘症は、盲腸内に圧縮および硬化された糞便が詰まるタイプ1病態(一次性便秘:Primary impaction)、もしくは、腸壁肥厚化(Intestinal wall thickening)を起こした盲腸内に液体と非硬化性の糞便が貯留するタイプ2病態(二次性便秘:Secondary impaction)に分類されます。タイプ1盲腸便秘は、単純性の力学的閉塞(Simple mechanical obstruction)が病因であると考えら...
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馬の病気:大結腸便秘
馬の消化器病 - 2013/04/23大結腸便秘(Large colon impaction)について。 大結腸の便秘症は、最も頻繁に見られる馬の疝痛の原因の一つで、発症部位の頻度は、骨盤曲(Pelvic flexure)>右背側結腸(Transverse colon)>回腸盲腸移行部(Ileocecal junction)の順に高いことが報告されています。馬の大結腸便秘の危険因子(Risk factors)としては、サク癖(Crib-biting)、馬房で過ごす時間が長い飼養法、運動プログラムの急激な変化、一日二回の給餌方...
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馬の病気:NSAID下痢症
馬の消化器病 - 2013/04/21非ステロイド系抗炎症剤誘発性の下痢症(Non-steroidal anti-inflammatory drugs [NSAID]-induced diarrhea)について。 非ステロイド系抗炎症剤(フェニルブタゾン、フルニキシン・メグルミン、ケトプロフェン)は、COX-1抑制を介して、粘膜治癒の促進物質であるプロスタグランディンEを拮抗する副作用があるため、過度のNSAID投与によって、右背方大結腸炎(Right dorsal colitis)、広範囲な消化管の潰瘍(Extensive alimentary...
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馬の病気:クロストリディウム下痢症
馬の消化器病 - 2013/04/21クロストリディウム下痢症(Clostridial diarrhea)について。 嫌気性細菌(Anaerobic organism)である、Clostridium perfringensもしくはClostridium difficileの感染に伴うタイプAおよびBの外毒素(Exotoxin)の産生によって、急性下痢症(Acute diarrhea)を起こす疾患です。クロストリディウムは馬の正常腸内細菌であるため、給餌内容の急激な変化(Sudden change in feeding)や経口抗生物質(Oral antibiotic administratio...
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馬の病気:円虫症
馬の消化器病 - 2013/04/21円虫症(Strongylosis)について。 急性感染(Acute infection)を起こした普通円虫(Strongylus vulgaris)の第四期幼虫(Fourth-stage larvae)による粘膜移入(Mucosal migration)に起因して、腸壁の浮腫と炎症(Intestinal wall edema and inflammation)を生じ、急性または慢性下痢症(Acute/Chronic diarrhea)を起こす疾患です。一方で、慢性感染(Chronic infection)を呈した症例においては、寄生性動脈炎(Verminous ar...
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馬の病気:ポトマック熱
馬の消化器病 - 2013/04/20ポトマック熱(Potomac horse fever)について。 ネオリケッチア菌(Neorickettsia risticii)(旧名:Ehrlichia risticii)の感染によって、急性下痢症(Acute diarrhea)を起こす疾患で、川沿いの飼養環境において特に多く発症が見られることが報告されています。馬におけるポトマック熱の伝播では、中間宿主である水生カタツムリ(Aquatic snail)もしくはトビケラ(Caddis flies)から排泄された、有尾幼虫(Cercaria)に汚染...
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馬の病気:ロタウイルス下痢症
馬の消化器病 - 2013/04/20ロタウイルス下痢症(Rotaviral diarrhea)について。 ロタウイルス(特にA型のG3血清型)の感染によって急性下痢症(Acute diarrhea)を起こす疾患で、60日齢以下の幼馬(特に3~35日齢)に好発します。ロタウイルスの感染から下痢を生じる機序としては、乳糖分解酵素の分泌減退(Reduction of lactase production)によって増加した不消化乳糖(Undigested lactose)に起因する腸管内浸透圧の上昇、ウイルス感染後の代償性腺窩細...
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馬の病気:サルモネラ症
馬の消化器病 - 2013/04/20サルモネラ症(Salmonellosis)について。 サルモネラ菌血清B型に属する、S.enterica typhimuriumおよびS. enterica agonaの感染に起因して、急性の下痢症(Acute diarrhea)を起こす疾患で、原因菌としてはS. enterica typhimuriumが最も頻繁に分離されることが報告されています。馬におけるサルモネラ症は、外気温の上昇(High ambient temperature)や輸送などのストレスで、飼養環境に常在しているサルモネラ菌に対する耐性低...
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馬の病気:術後腸閉塞
馬の消化器病 - 2013/04/18術後腸閉塞(Post-operative ileus)について。 術後腸閉塞は、小腸の切除や吻合術(Small intestinal resection/anastomosis)などの消化器系手術の術後に、腸蠕動の減退(Decreased bowel peristalsis)および通過障害(Obstruction)を起こす病態を指します。術後腸閉塞の病因としては、腸管筋層の炎症(Inflammation in intestinal muscularis)に起因する腸内神経系抑制(Inhibition of enteric nerve system)が挙げられてお...
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馬の病気:鼠径ヘルニア
馬の消化器病 - 2013/04/18鼠径ヘルニア(Inguinal hernia)について。 内鼠径輪(Vaginal ring、Internal inguinal ring)から鼠径管(Inguinal canal)に入り込んだ消化管が絞扼(Strangulation)を起こす疾患で、一般的に牡馬(Stallion)に発症しますが、去勢馬(Gelding)や牝馬(Mare)にも稀に見られます。遺伝的に太い鼠径管を持つと言われている、スタンダードブレッドおよびテネシーウォーキングホースでの発症率(Incidence)が高いことが知られ...
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馬の病気:臍帯ヘルニア
馬の消化器病 - 2013/04/17臍帯ヘルニア(Umbilical hernia)について。 臍帯腹膜欠損部に小腸が迷入する疾患で、多くの新生馬に見られますが、小腸絞扼(Small intestinal strangulation)を起こすのはその数%に過ぎないことが知られており、また、稀に膀胱が迷入(Urinary bladder migration)する症例も報告されています。臍帯ヘルニアの病因としては、出産時の臍帯損傷(Umbilical cord trauma)、臍帯の過剰捻転(Excessive straining)、臍帯感染(Um...
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馬の病気:小腸重積
馬の消化器病 - 2013/04/17小腸重積(Small intestinal intussusception)について。 小腸が小腸の中に入り込んでしまう疾患で、内側の腸を嵌入部(Intussusceptum)、外側の腸を外鞘部(Intussuscipiens)と呼びます。三歳以下の若馬に好発し、給餌内容の変化(ding change)、条虫(Tapeworm)の寄生、腸内異物(Intraluminal foreign body)、腸壁ポリープなどによって、隣接する腸と腸のあいだで運動性に差異が生じることで発症すると考えられています。...
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馬の病気:小腸捻転
馬の消化器病 - 2013/04/16小腸捻転(Small intestinal volvulus)について。 小腸の捻転は、腸間膜軸に沿って小腸がねじれる状態(Twist along mesentery axis)を指し、遠位空腸~結腸(Distal jejunum and ileum)に好発して、腸管の通過障害(Intestinal obstruction)および絞扼(Strangulation)を引き起こす疾患です。この際、結腸と空腸が360度以上に捻転することで嚢形成(Pouch formation)して、その中に他の箇所の空腸が捕捉した病態を“巻貝状捻...
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馬の病気:有茎性脂肪腫
馬の消化器病 - 2013/04/16有茎性脂肪腫(Pedunculated lipoma)について。 有茎性脂肪腫は、腸間膜根部(Mesenteric root)に起始する良性の脂肪性腫瘍(Benign fat tumor)で、この脂肪腫の茎部が腸管に巻きつくことで小腸絞扼(Small intestinal strangulation)を引き起こします。つまり、茎部分が長い脂肪腫のほうが、腫瘤部分が大きいものより、絞扼を起こしやすいと考えられています。有茎性脂肪腫は、15歳以上の高齢馬、去勢馬(Gelding)、ポニーに...
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馬の病気:網嚢孔捕捉
馬の消化器病 - 2013/04/16網嚢孔捕捉(Epiploic foramen entrapment)について。 網嚢孔(Epiploic foramen)は、右背側腹腔から網嚢(Omental bursa)への連絡孔で、肝臓尾状突起(Caudate process of liver)および尾側大静脈(Caudal vena cava)が背側境界を成し、肝十二指腸靭帯(Hepatoduodenal ligament)および門脈(Portal vein)が腹側境界を成しています。網嚢は通常は閉鎖されていますが、加齢による肝臓萎縮(Hepatic atrophy)によって、網嚢...
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馬の病気:メッケル憩室
馬の消化器病 - 2013/04/15メッケル憩室(Meckel’s diverticulum)について。 メッケル憩室は、卵黄臍管(Vitelloumbilical duct)の不完全萎縮(Incomplete atrophy)に起因する胚性残遺物(Embryonic remnant)で、回腸の抗腸間膜側縁(Antimesenteric border of ileum)に盲嚢(Blind pouch)を生じるため、この中に腸内容物が詰まることで小腸閉塞(Small intestinal obstruction)を引き起こします。また、憩室部に付着している憩室間膜帯(Mesodiverti...
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馬の病気:回腸便秘
馬の消化器病 - 2013/04/15回腸便秘(Ileal impaction)について。 馬における小腸便秘(Small intestinal impaction)は、回腸(Ileum)に最も多く見られ、粗繊維(Crude fiber)およびリグニンの含有量の多い、沿岸性バミューダ乾草(Coastal Bermuda hay)の摂食が病因となることが知られており、米国では特に南東州において高い発症率(Incidence)が報告されています。また、歯科疾患(Dental disorders)による咀嚼不全(Poor mastication)、条虫感染...
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馬の病気:馬回虫便秘症
馬の消化器病 - 2013/04/15馬回虫便秘症(Ascarid impaction)について。 駆虫剤(Anthelmintics)の投与後に、死滅した馬回虫(Parascaris equorum)の虫体によって小腸便秘(Small intestinal impaction)を生じる疾患で、一歳齢以下の子馬に好発します。急激な馬回虫の殺傷を起こす薬剤としては、Piperazine、Organophosphates、Pyrantel pamoate等が挙げられています。 馬回虫便秘症の羅患馬では、駆虫剤投与の1~5日後における疝痛症状(Colic after an...
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馬の病気:浸潤性腸疾患
馬の消化器病 - 2013/04/14浸潤性腸疾患(Infiltrative bowel disease)について。 浸潤性腸疾患は、腸管粘膜および粘膜下組織における、好酸球(Eosinophils)、リンパ球(Lymphocytes)、大食細胞(Macrophage)、形質細胞(Plasma cells)、好塩基球(Basophils)などの浸潤に起因して、蛋白漏出性腸症(Protein-losing enteropathy)や栄養吸収不全(Nutrients malabsorption)を起こす疾患郡を指します。病因が特定されない場合も多いことから、慢性特...
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馬の病気:ロドコッカスエクイ腸炎
馬の消化器病 - 2013/04/14ロドコッカスエクイ腸炎(Rhodococcus equi enteritis)について。 ロドコッカスエクイはグラム陽性通性(Gram-positive facultative)の細胞内病原菌(Intracellular pathogen)で、化膿性肉芽腫性肺炎(Pyogranulomatous pneumonia)を起こす病原菌として知られていますが、糞便を介しての経口感染もしくは膿性浸出物を嚥下することで、小腸炎(Enteritis)や盲腸炎(Typhlitis)などの病態を取る症例も見られます。 ロドコッカ...
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馬の病気:増殖性腸疾患
馬の消化器病 - 2013/04/14増殖性腸疾患(Proliferative enteropathy)について。 ローソニア属菌(Lawsonia intracellularis)の感染に起因して、回腸の腺窩細胞(Ileal crypt cells)の増殖と腸壁の肥厚化(Intestinal wall hyperplasia)を生じる疾患で、三~八ヶ月齢の子馬に好発します。増殖性回腸炎(Proliferative ileitis)、または、腸管腺腫症(Intestinal adenomatosis)と呼ばれることもあります。腺窩細胞増殖によって肥厚した粘膜層では、成熟...
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馬の病気:十二指腸近位空腸炎
馬の消化器病 - 2013/04/13十二指腸近位空腸炎(Duodenitis-proximal jejunitis)について。 十二指腸および近位空腸の炎症(Inflammation)と浮腫(Edema)によって、腸管から胃へ大量の消化液の逆流(Enterogastric reflux)を生じる疾患で、上位小腸炎(Anterior enteritis)または近位小腸炎(Proximal enteritis)と呼ばれることもあります。大量の消化液の原因としては、粘膜および粘膜下組織の炎症(Mucosal/Submucosal inflammation)から二次性にお...
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馬の病気:潰瘍性十二指腸炎
馬の消化器病 - 2013/04/13潰瘍性十二指腸炎(Ulcerative duodenitis)について。 近位十二指腸(Proximal duodenum)の糜爛(Erosion)、限局性潰瘍(Focal ulceration)、広汎性炎症(Diffuse inflammation)などを生じる疾患で、子馬または当歳馬に好発することが知られています。潰瘍性十二指腸炎は重度の胃潰瘍症候群(Gastric ulcer syndrome)や胃排出障害(Gastric emptying disorder)に併発する場合が多いことから、十二指腸粘膜が塩酸(Hydrochlo...
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馬の病気:内毒素血症
馬の消化器病 - 2013/04/13内毒素血症(Endotoxemia)について。 内毒素血症は、血中に内毒素(Endotoxin)(=リポ多糖類:Lipopolysaccharide [LPS])が存在する状態を指しますが、臨床上は内毒素が引き金となって始まる全身性炎症反応症候群(Systemic inflammatory response syndrome: SIRS)や多臓器機能不全症候群(Multiple organ dysfunction syndrome: MODS)等の一連の病態によって起こる、敗血症症候群(Sepsis syndrome)を指すことが一般的です...
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馬の病気:高脂血症
馬の消化器病 - 2013/04/12高脂血症(Hyperlipidemia)について。肝性の脂質代謝異常(Hepatic lipidosis)によって、血中の脂質濃度(Lipid concentration)の異常上昇(中性脂肪の血清濃度が500mg/dL以上)を起こす疾患です。高齢のポニーに好発することが知られており、また、晩冬~初春に比較的多く発症が見られることも報告されています。高脂血症の病因としては、飼料品質の低下、泌乳(Lactation)、胎児成長(Fetal growth)、重度の調教や運動、他...
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馬の病気:胆石症
馬の消化器病 - 2013/04/12胆石症(Cholelithiasis)について。胆石症は、胆管(Bile duct)および胆嚢(Gallbladder:馬には無い)に生じた結石によって胆汁うっ滞(Cholestasis)を起こす疾患を指し、総胆管(Common bile duct)に結石を生じる総胆管結石症(Choledocholithiasis)と、左右肝管(Left/Right hepatic duct)よりも上流の肝内胆管(Intrahepatic bile duct)に結石を生じる肝結石症(Hepatolithiasis)に分類されます。馬においては総胆管結...
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馬の病気:ピロリジンアルカロイド中毒
馬の消化器病 - 2013/04/11ピロリジンアルカロイド中毒(Pyrrolizidine alkaloid toxicity)について。肝毒性(Hepatotoxic)のあるピロリジンアルカロイドを含む植物の摂食によって、進行性の慢性肝炎(Chronic progressive hepatitis)を起こす疾患です。ピロリジンアルカロイド中毒を起こす可能性のある植物としては、ラグワート(Tansy ragwort: Senecio jacobaea)、ノボロギク(Common groundsel: Senecio vulgaris)、ワルタビラコ(Tarweed: Senecio...
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馬の病気:ティザー病
馬の消化器病 - 2013/04/11ティザー病(Tyzzer’s disease)について。クロストリディウム菌(Clostridium piliformis)の感染によって、急性の壊死性肝炎(Acute necrotizing hepatitis)を起こす疾患で、六週齢以下の新生児においてのみ発症が見られます。クロストリディウム菌への暴露は、母馬の糞便もしくは汚染された土壌に触れることで起こり(クロストリディウム菌は土壌中で、少なくとも一年間は生存できる)、流行性(Outbreak)に多数の子馬に感染...
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馬の病気:タイラー病
馬の消化器病 - 2013/04/11タイラー病(Theiler’s disease)について。特発性の急性肝臓病(Idiopathic acute hepatic disease)を生じる疾患で、未だに病因論(Etiology)は確立されていませんが、アフリカ馬疫(African horse sickness)の免疫抗体血清(Hyperimmune serum)や破傷風の抗毒素(Tetanus antitoxin)などの投与に続発して発症することが報告されているため、人間のB型肝炎に類似するウイルス感染症である可能性や、肝毒性物質への暴露(Expo...
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馬の病気:馬蝿幼虫症
馬の消化器病 - 2013/04/11馬蝿幼虫症(“Bots”)について。ウマバエ(Gastrophilus intestinalis)は遠位肢(Distal limb)に産卵し、患馬が肢を掻く際に、孵化した第一期幼虫(First-stage larvae: L1)が口腔内に侵入し、舌深部を経て歯肉に寄生します。その後、第二期幼虫(L2)が嚥下されることで胃内に到達し、第三期幼虫(L3)の段階で、襞状縁(Margo plicatus)の周辺部の扁平上皮粘膜(Squamous mucosa)に付着および寄生します。馬蝿の成虫は晩春...
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馬の病気:幽門狭窄
馬の消化器病 - 2013/04/09幽門狭窄(Pyloric stenosis)について。胃幽門部の繊維化(Pyloric stenosis)および筋肥厚(Muscular hypertrophy)から、幽門の閉塞と通過障害を起こす疾患で、多くの症例において慢性の胃潰瘍(Chronic gastric ulceration)や逆流性胃炎(Reflux gastritis)に起因して発症することが知られています。幽門狭窄の羅患馬では、一次性疾患(Primary disease)である胃潰瘍、および胃排出障害(Gastric emptying disorder)に続発...
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馬の病気:逆流性胃炎
馬の消化器病 - 2013/04/09逆流性胃炎(Reflux gastritis)について。近位部小腸(Proximal small intestine)からの消化液が、胃内腔へと逆流して胃の炎症を生じる疾患で、小腸閉塞(Small intestinal ileus)、十二指腸近位空腸炎(Duodenitis-proximal jejunitis)、小腸便秘(Small intestinal impaction)などに起因して発症することが一般的です。逆流性胃炎の症状は胃潰瘍症候群(Gastric ulceration syndrome)に類似し、食欲不振(Anorexia)、間欠...
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馬の病気:胃破裂
馬の消化器病 - 2013/04/09胃破裂(Gastric rupture)について。馬における胃破裂は、過剰な摂食物、胃液、気体などの蓄積による胃膨満(Gastric distension)の合併症として発症することが一般的ですが、小腸通過障害(Small intestinal obstruction)やイレウスから二次的に胃膨満を起こしたり、特定の原因が分からない特発性病態(Idiopathic condition)によって発症に至る場合もあります。また、慢性の胃潰瘍(Gastric ulceration)によって限局的な粘...
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馬の病気:胃食滞
馬の消化器病 - 2013/04/09胃食滞(Gastric impaction)について。胃の内部において摂食物が圧縮および硬化(Feed compaction/consolidation)を起こして、消化障害を呈する疾患です。胃食滞を生じ易い飼料としては、砂糖大根(Beet pulp)、フスマ(Bran)、ワラ(Straw)、小麦(Wheat)、大麦(Barley)などが挙げられていますが、過食(Overeating)、急激な摂食(Rapid ingestion)、乾燥した飼料(Dry food)、咀嚼不全(Poor mastication)、胃の排出...
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馬の病気:胃潰瘍
馬の消化器病 - 2013/04/08胃潰瘍(Gastric ulceration)について。胃粘膜の炎症(Inflammation)から、糜爛(Erosion)、潰瘍(Ulcer)へと進行する疾患で、逆流性食道炎(Reflux esophagitis)、食道閉塞(Esophageal obstruction)、胃排出障害(Gastric emptying disorder)などの他の病態を併発する症例も多いことから、馬胃潰瘍症候群(Equine gastric ulcer syndrome)という病名が用いられる場合もあります。馬における胃潰瘍は特に競走馬に多く発症...
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馬の病気:食道憩室
馬の消化器病 - 2013/04/08食道憩室(Esophageal diverticula)について。食道内腔に袋状の拡張部を生じる疾患で、壁外からの張力に起因する牽引性憩室(Traction diverticula)(=真性憩室:True diverticula)と、内腔圧の上昇に起因する圧出性憩室(Pulsion diverticula)(=偽憩室:False diverticula)の二つの病態に分類されます。牽引性憩室が食道周囲組織の損傷とその後に起こる収縮(Periesophageal tissue wound and subsequent contraction)に...
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馬の病気:食道狭窄
馬の消化器病 - 2013/04/07食道狭窄(Esophageal stricture)について。馬における食道狭窄は、食道閉塞(Esophageal obstruction)による粘膜面(Mucosal surface)の周回性糜爛や潰瘍(Circumferential erosion/ulceration)を呈した際の、合併症(Sequelae)として最も多く発症し、その病態を食道輪形成(Esophageal ring formation)と呼びます。また、筋層(Muscular layer)の損傷に起因する壁在性狭窄(Mural stricture)、食道全層の異常に起因する...
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馬の病気:食道穿孔
馬の消化器病 - 2013/04/07食道穿孔(Esophageal perforation)について。馬における食道穿孔は、主に頚部食道(Cervical esophagus)に見られ、頚部外傷(Cervical trauma)、食道憩室の破裂(Rupture of esophageal diverticulum)、異物の嚥下(Swallowing foreign body)などによって発症しますが、胃カテーテルの挿入時に医原性穿孔(Iatrogenic perforation)を起こす場合もあります。食道穿孔の症状としては、頚部の軟部組織腫脹(Soft tissue swelli...