2015年07月のエントリー一覧
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馬の病気:炎症性気道疾患
馬の呼吸器病 - 2015/07/31炎症性気道疾患(Inflammatory airway disease: IAD)について。軽度~中程度の気道炎症(Airway inflammation)と粘液貯留(Mucus accumulation)を起こす疾患のうち、若馬に起こる病態をIADと定義することが提唱されており、壮齢馬に起こる回帰性気道閉塞(Recurrent airway obstruction: RAO)(いわゆる息労:Heaves)とは区別されています。病因としては、有機物粉塵(Organic dusts)の吸引、非症候性のウイルスまたは細菌感...
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馬の病気:肋骨骨折
馬の呼吸器病 - 2015/07/31肋骨骨折(Rib fracture)について。肋骨の骨折は、成馬においては主に外傷性(転倒、衝突、蹴傷、etc)に起こるのに比べ、子馬においては主に出産時の胸郭圧迫によって起こり、初産牝馬(Primiparous mare)または難産(Dystocia)の症例において多く発症します。殆どの肋骨骨折は無症候性(Asymptomatic)で、自然治癒する場合が多いですが、骨折鋭端による体腔穿孔を引き起こすこともあります。この場合、頭側胸部での肋骨骨折...
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馬の病気:横隔膜ヘルニア
馬の呼吸器病 - 2015/07/31横隔膜ヘルニア(Diaphragmatic hernia)について。成馬の後天性(Acquired)の横隔膜ヘルニアは、外傷性(転倒、蹴傷、強運動、骨折肋骨端による穿孔、etc)もしくは腹圧の急激な上昇(種付け、出産、難産、etc)によって起こり、また子馬では、胚性横隔膜コンパートメント(Embryonic diaphragm components)の癒合不全による先天性(Congenital)横隔膜ヘルニアも報告されています。先天性横隔膜ヘルニアが最腹側部(Most ventr...
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馬の病気:腺疫
馬の呼吸器病 - 2015/07/31腺疫(Strangles)について。グラム陽性ベータ溶血性菌であるストレプトコッカス・エクイ(Streptococcus equi)によって起こる伝染性疾患で、頚部のリンパ節腫脹(Lymphadenopathy)を起こしますが、血行性(Hematogenous)またはリンパ管経由(Via lymphatic channels)で全身へ波及することもあります(いわゆるBastard strangles)。腺疫の罹患率(Morbidity)は100%近くに達するものの、75%の個体は免疫獲得し(約四年間)、...
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馬の病気:間質性肺炎
馬の呼吸器病 - 2015/07/31間質性肺炎(Interstitial pneumonia)について。間質性肺炎は、慢性進行性(Chronic progressive)の経過をとる肺線維症(Pulmonary fibrosis)を指し、主に感染性または毒物誘発性に発症する疾患ですが、診断上、原因菌または原因物質が確定できないことも多々あります。感染性の間質性肺炎の原因としては、五型馬ヘルペスウイルス(Equine herpesvirus type 5: EHV-5)(いわゆる馬多発結節性肺線維症:Equine multinodular pul...
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馬の病気:気胸
馬の呼吸器病 - 2015/07/31気胸(Pneumothorax)について。胸腔内の気体貯留(Air accumulation in thoracic cavity)によって肺の拡張障害を呈する疾患で、気管穿孔(Tracheal puncture)、食道破裂(Esophagus rupture)、胸腔内への穿孔性外傷(Penetrating trauma to thoracic cavity)、ガス産生菌による胸膜肺炎(Pleuropneumonia)などが原因として挙げられます。気胸はその病態によって、閉鎖性気胸(Closed pneumothorax:胸腔と体外が連絡していな...
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馬の病気:運動誘発性肺出血
馬の呼吸器病 - 2015/07/31運動誘発性肺出血(Exercise-induced pulmonary hemorrhage: EIPH)について。強度運動(Pervasive exercise)に起因する肺出血は、平地レースのサラブレッド、ハーネスレースのスタンダードブレッド、バレルレースのクォーターホース、ポロ競技のポニーなどに好発します。肺胞毛細血管(Alveolar capillary)の破裂は壁内圧上昇(Increased transmural pressure)によって起こると考えられており、心拍出量亢進に伴う毛細血管内圧...
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馬の病気:ロドコッカスエクイ肺炎
馬の呼吸器病 - 2015/07/31ロドコッカス・エクイ(Rhodococcus equi)感染による肺炎(Pneumonia)について。R. equiはグラム陽性通性(Gram-positive facultative)の細胞内病原菌(Intracellular pathogen)で、毒性関連蛋白(Virulence-associated protein: VapA, VapC, VapD, etc)を保有する強毒株の存在が確認されています。R. equi感染は生後数日~二週間以内に起こりますが、それに起因する肺炎症状は三週間齢~五ヶ月齢の子馬に好発します。R. equi...
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馬の病気:胸膜肺炎
馬の呼吸器病 - 2015/07/31胸膜肺炎(Pleuropneumonia)について。細菌感染が肺実質(Pulmonary parenchyma)から胸腔(Pleural space)に波及して、化膿性の胸水貯留(Pleural effusion)を呈する疾患で、原因菌としては、ストレプトコッカス属菌(Streptococcus zooepidemicus)が最も頻繁に分離されます。胸膜肺炎の危険因子(Risk factor)としては、長距離輸送(Long-distance transportation)、多量の細菌曝露(Massive bacterial exposure)、高強度...
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馬の病気:息労
馬の呼吸器病 - 2015/07/31息労(Heaves)について。下部気道の過剰粘液分泌(Excessive mucus production)、好中球集積(Neutrophil accumulation)、気管支過敏症(Bronchial hyperreactivity)、気管支痙攣(Bronchospasm)に起因して、慢性呼吸困難(Chronic respiratory distress)を呈する疾患で、回帰性気道閉塞(Recurrent airway obstruction)とも呼ばれます。人間に見られる慢性閉塞性肺疾患(Chronic obstructive pulmonary disease: COPD)と...
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馬の病気:真菌性肺炎
馬の呼吸器病 - 2015/07/30真菌性肺炎(Fungal pneumonia)について。馬の真菌性肺炎の原因菌としては、ブラストマイセス菌(Blastomyces dermatitidis)、コクシディオイデス菌(Coccidioides immitis)、クリプトコッカス菌(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマ菌(Histoplasma capsulatum)、アスペルギルス菌(Aspergillus fumigatus)、カンディダ菌(Candida albicans)等が分離されます。肺組織が原発性真菌感染(Primary fungal infection)...
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馬の病気:細菌性肺炎
馬の呼吸器病 - 2015/07/30細菌性肺炎(Bacterial pneumonia)について。成馬の細菌性肺炎の原因菌としては、ストレプトコッカス属菌(Streptococcus zooepidemicus)が最も頻繁に分離され、パスツレラ属菌(Pasteurella spp)、アクチノバシラス属菌(Actinobacillus spp)、クレブシェラ属菌(Klebsiella spp)、大腸菌(Escherichia coli)などが続きます。また、嫌気性菌(Anaerobic bacteria)である、バクテロイデス属菌(Bacteroides spp)、クロスト...
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馬の病気:喉嚢鼓張症
馬の呼吸器病 - 2015/07/30喉嚢鼓張症(Guttural pouch tympany)について。喉嚢内に空気が溜まる疾患で、新生児~当歳齢までの子馬に発症し、オスよりもメスに好発することが知られています。先天性もしくは、上部気道炎症(Upper airway inflammation)や筋肉機能不全などに起因して形成された喉嚢開口部粘膜フラップが、一方通行弁(One way valve)の働きをすることで発病すると考えられています。重篤な鼓張を生じた症例では、呼吸困難(Dyspnea)、嚥...
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馬の病気:側頭舌骨変形性関節症
馬の呼吸器病 - 2015/07/29側頭舌骨変形性関節症(Temporohyoid osteoarthropathy)について。血行性(Hematogenous)もしくは中耳(Middle ear)からの感染によって、側頭舌骨関節(Temporohyoid joint)が融合を起こす疾患です。その結果、舌や咽頭からの圧力や負荷によって斜体側頭骨(Petrous temporal bone)が骨折して、顔面神経(Facial nerve)、内耳神経(Vestibulocochlear nerve)、舌咽神経(Glossopharyngeal nerve)、迷走神経(Vagus nerve)...
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馬の病気:喉嚢蓄膿症
馬の呼吸器病 - 2015/07/29喉嚢蓄膿症(Guttural pouch empyema)について。喉嚢内に化膿性滲出物(Purulent exudate)と類軟骨(Chondroids)が貯留する疾患で、多くの場合ストレプトコッカス菌の感染(腺疫:Strangles)に起因する咽頭リンパ節膿瘍(Retropharyngeal lymph node abscess)が、喉嚢内へ破裂することによって発症します。また、茎突舌骨骨折(Stylohyoid bone fracture)、咽頭開口部狭窄(Pharyngeal orifice stenosis)、経鼻カテーテルに...
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馬の病気:喉嚢真菌症
馬の呼吸器病 - 2015/07/29喉嚢真菌症(Guttural pouch mycosis)について。喉嚢の内側区画天井部(Medial compartment roof)に感染した真菌によって、内頚動脈(Internal carotid artery)と外頚動脈(External carotid artery)が糜爛(Erosion)して、中程度~重度の鼻出血(Epistaxis)を生じる疾患で、最終的に致死的な動脈破裂(Arterial rupture)を引き起こします。他の症状としては、迷走神経および舌咽神経(Vagus and glossopharyngeal nerve)...
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馬の病気:披裂喉頭蓋ヒダ軸側偏位
馬の呼吸器病 - 2015/07/27披裂喉頭蓋ヒダ軸側偏位(Axial deviation of aryepiglottic folds)について。披裂軟骨(Arytenoid cartilage)の外側ヒダが両側性に気道中心側へ逸脱する疾患で、殆どが両側性(Bilateral)に発症します。罹患馬は、上部気道の動的部分閉塞(Dynamic partial upper respiratory tract obstruction)を引き起こして、運動不耐性(Exercise intolerance)や呼吸雑音(Respiratory noise)などの症状を呈します。通常、安静時には観...
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馬の病気:第四鰓弓欠損症候群
馬の呼吸器病 - 2015/07/26第四鰓弓欠損症候群(Fourth branchial arch defect syndrome: “4-BAD syndrome”)について。馬の喉頭組織のうち、甲状軟骨外側翼(Lateral wings of the thyroid cartilage)、輪状披裂関節(Cricoarytenoid articulation)、輪状甲状筋(Cricothyroid muscle)、甲状咽頭筋(Thyropharyngeus muscle)、輪状咽頭筋(Cricopharyngeus muscle)は、発生学的に第四鰓弓(Embryological fourth branchial arch)に由来することが知ら...
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馬の病気:披裂軟骨疾患
馬の呼吸器病 - 2015/07/26披裂軟骨疾患(Arytenoid chondropathy)について。披裂軟骨(Arytenoid cartilage)の異常な肥大(Abnormal enlargement)を呈する疾患で、その病態には軟骨炎(Chondritis)、軟骨症(Chondrosis)、軟骨腫形成(Chondroma formation)、異形成(Dysplasia)、壊死(Necrosis)、軟骨周囲炎(Peri-chondritis)、肉芽腫性喉頭炎(Granulating laryngitis)、膿瘍形成(Abscessation)などが含まれます。披裂軟骨疾患の病因として...
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馬の病気:喉頭蓋下嚢胞
馬の呼吸器病 - 2015/07/25喉頭蓋下嚢胞(Subepiglottic cyst)について。喉頭蓋(Epiglottis)の腹側軟部組織に嚢胞形成(Cyst formation)が見られる疾患で、若齢馬の好発することから、先天性病態(Congenital lesion)である可能性が示唆されています。嚢胞の肥大に伴って、発咳(Coughing)、嚥下障害(Dysphagia)、誤嚥性肺炎(Aspiration pneumonia)などの症状が見られます。内視鏡検査(Endoscopic examination)では、通常は球状の嚢胞が喉頭蓋下...
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馬の病気:喉頭蓋捕捉
馬の呼吸器病 - 2015/07/25喉頭蓋捕捉(Epiglottic entrapment)について。喉頭蓋(Epiglottis)の辺縁に、弛緩した周囲軟部組織(披裂喉頭蓋ヒダ:Aryepiglottic fold)が引っ掛かることによって起こる疾患です。喉頭蓋捕捉の罹患馬では、呼気性もしくは吸気性呼吸困難(Expiratory or Inspiratory dyspnea)を呈しますが、運動不耐性(Exercise intolerance)は必ずしも明瞭でない場合もあります。また、運動初期もしくは飲水直後の発咳(Coughing)が見ら...
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馬の病気:喉頭片麻痺
馬の呼吸器病 - 2015/07/25喉頭片麻痺(Laryngeal hemiplegia)について。反回神経(Recurrent laryngeal nerve)の異常に起因して、披裂軟骨を外転(Abduction)および内転(Adduction)させる機能を担う背側輪状披裂筋(Criocoarytenoideus dorsalis)が麻痺することによって、気道狭窄と呼吸障害を起こす疾患で、九割以上が左側に発症します。病因としては、特発性の軸索変性(Axonal degeneration)、外傷性損傷、静脈注射による医原性損傷、喉嚢真菌症...
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馬の病気:口蓋裂
馬の呼吸器病 - 2015/07/25口蓋裂(Cleft palate, palatoshisis)について。先天性に軟口蓋(Soft palate)もしくは硬口蓋(Hard palate)の正中部欠損(Midline defect)を呈する疾患です。口蓋襞(Palatal folds)の発生学的閉鎖妨害(Embryologic palatal interruption)に起因しますが、馬では人間や他の動物に見られる口唇および上顎の欠損は報告されていません。遺伝性(Genetic)、栄養性(Nutritional)、機械性(Mechanical)、催奇形物質(Teratog...
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馬の病気:軟口蓋背方変位
馬の呼吸器病 - 2015/07/24軟口蓋背方変位(Dorsal displacement of soft palate: DDSP)について。喉頭蓋(Epiglottis)が軟口蓋(Soft palate)の下部に変位して気道が妨げられる疾患です。胸骨甲状舌骨筋(Sternothyrohyoid muscle)と肩甲舌骨筋(Omohyoid muscle)の過張力によって、喉頭(Larynx)が尾方に牽引されて喉頭蓋が軟口蓋下に落ち込むことで発症すると考えられていますが、興奮時に舌根が尾側に牽引されること(Caudal retraction)(=俗に...
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馬の病気:篩骨血腫
馬の呼吸器病 - 2015/07/23篩骨血腫(Ethmoid hematoma)について。楔形口蓋副鼻腔(Sphenoparatine sinus)の上方に位置する篩骨(Ethmoid bone)に血腫を生じる疾患で、10歳齢前後の成馬に多く発症します。特徴的な臨床所見は、軽度の間欠性鼻出血(Intermittent epistaxis )で、病態進行に伴って呼吸雑音(Respiratory noise)、顔面腫脹(Facial swelling)、発咳(Coughing)、頭部振戦(Head shaking)なども見られます。楔形口蓋副鼻腔は鼻中隔(Nas...
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馬の病気:副鼻腔炎
馬の呼吸器病 - 2015/07/23副鼻腔炎(Sinusitis)について。副鼻腔の炎症と蓄膿(Empyema)を起こす疾患で、一次性副鼻腔炎(Primary sinusitis)は直接的な副鼻腔の細菌感染に起因します。一方で、二次性副鼻腔炎(Secondary sinusitis)は、歯骨折(Fractured teeth)、卵管漏斗開存(Patent infundibula)、歯槽骨膜炎(Alveolar periostitis)などの歯科疾患に続発しますが、顔面骨骨折(Facial fracture)、副鼻腔嚢胞(Paranasal cyst)、副鼻腔内の腫...