2015年08月のエントリー一覧
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馬の病気:紫外皮膚炎
馬の皮膚病 - 2015/08/31紫外皮膚炎(Photodermatitis)について。紫外線暴露による光感作(Photosensitization)から皮膚炎を起こす疾患で、体内に取り込まれた光力学性物質(Photodynamic agents)が、光エネルギーを吸収または移行させることで細胞損傷に至ると仮説されています。光力学性物質への汚染源としては、毒性植物の摂食が最も多いと考えられており、原因植物としては、オトギリソウ(St. John's Wort)(光力学性物質:Hypericin)、ソバ (B...
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馬の病気:アミロイド症
馬の皮膚病 - 2015/08/31アミロイド症(Amyloidosis)について。細胞外異常アミロイド沈着(Abnormal extracellular amyloid deposition)に起因して、皮膚炎を起こす疾患です。皮膚病変を引き起こす沈着物質としては、循環血漿グロブリン(Circulating plasma globulin)に由来するアミロイドP、免疫グロブリン軽鎖(Immunoglobulin light chain)に由来するアミロイドL、血清前駆蛋白(Serum precursor protein)に由来するアミロイドA、等が知られてい...
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馬の病気:馬遺伝性局所性皮膚無力症
馬の皮膚病 - 2015/08/31馬遺伝性局所性皮膚無力症(Hereditary equine regional dermal asthenia: HERDA)について。皮膚虚弱性(Skin fragility)を示す遺伝性および先天性の結合組織疾患(Inherited and congenital connective tissue disorder)で、クォーターホースに好発します。また、ペイントホースやアパルーサ等の品種での発症も報告されており、極めて稀にアラビアン、サラブレッド、ハノーベリアン、ハーフリンガー等の混血種に起こる場合もあ...
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馬の病気:メラノーマ
馬の皮膚病 - 2015/08/30メラノーマ(Melanoma)について。メラノーマ(黒色腫)は、中~高齢馬に多く見られる皮膚腫瘍で(通常は六歳齢以上)、特に15歳齢以上の葦毛馬では、その八割が複数のメラノーマ病変を有することが知られています。メラノーマでは、メラニン異常代謝(Perturbed melanin metabolism)に起因するメラニン形成芽細胞(Melanoblast)の増殖または活動増加から、メラニン過剰生成(Melanin overproduction)を起こすことが知られてい...
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馬の病気:サルコイド
馬の皮膚病 - 2015/08/30サルコイド(Sarcoid)について。サルコイドは高悪性度を呈する線維芽細胞性の新生物(Aggressive fibroblastic neoplasia)で、馬においては最も発症率の高い皮膚腫瘍(Most common equine cutaneous tumor)であることが知られています(馬の全皮膚腫瘍の35%)。馬のサルコイドの発症には、ウシ乳頭腫ウイルス(Bovine papilloma virus)の感染が関与すると考えられており、皮膚の外傷部位にサルコイド病変が形成されることが一...
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馬の病気:皮膚馬胃虫症
馬の皮膚病 - 2015/08/30皮膚馬胃虫症(Cutaneous habronemiasis)について。馬胃虫(Habronema majus, Habronema muscae, Draschia megastoma)の幼虫寄生に起因して、顆粒性皮膚炎(Granular dermatitis)を起こす疾患で、夏創(Summer sores)、沼地癌(Swamp cancer)、Bursautee、Bursatti、Kunkurs、Esponja等の俗病名が用いられる事もあります。馬胃虫の感染に際しては、糞便中に排出された虫卵が、中間宿主(Intermediate host)である家バエ(Hou...
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馬の病気:ウシバエ幼虫症
馬の皮膚病 - 2015/08/29ウシバエ幼虫症(Hypodermiasis)について。ウシバエ(Hypoderma bovis)の幼虫感染(Larval infection)に起因して皮膚炎を起こす疾患です。ウシバエの成虫は、夏季に体毛に産卵し、孵化した幼虫は皮膚内に侵入した後、第二期幼虫(Second-stage larvae)へと成長する冬季に皮下組織(Subcutaneous tissue)まで穿孔し、その後、第三期幼虫(Third-stage larvae)へと成熟し、初春に羽化して体外に排出されます。しかし、馬体に寄...
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馬の病気:皮膚回旋糸状虫症
馬の皮膚病 - 2015/08/29皮膚回旋糸状虫症(Cutaneous onchocerciasis)について。回旋糸状虫属(Onchocerca spp)である頸部糸状虫(Onchocerca cervicalis)のミクロフィラリア感染に起因して皮膚炎を起こす疾患で、回旋糸状虫に良好な効能を示す駆虫剤の普及で、近年ではあまり見られなくなった皮膚疾患です。頸部糸状虫はヌカカまたは蚊(Gnats/Mosquitoes)が中間宿主(Intermediate hosts)となり、春~夏季に発症が多いことが知られています。頸部...
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馬の病気:ヌカカ過敏症
馬の皮膚病 - 2015/08/29ヌカカ過敏症(Culicoides hypersensitivity)について。ヌカカ属のブヨ(Gnats)の咬傷に起因して、唾液成分抗原(Salivary antigen)に対する一型および四型過敏症(Type-1/4 hypersensitivity)を起こす疾患で、馬において最も多く見られるアレルギー性皮膚疾患(Allergic skin disease)であることが知られています。ヌカカ過敏症は晩春~初秋にかけて多く見られ、アイスランディックホース、ジャーマンシャイアー、アラビアン...
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馬の病気:シラミ症
馬の皮膚病 - 2015/08/28シラミ症(Pediculosis)について。シラミ寄生(Lice infection)に起因して皮膚炎を起こす疾患で、外気温の低下と体毛伸長が素因となるため、冬季における発症率が高いことが知られています。馬におけるシラミ症の病原体としては、Biting lice(Mallophaga)に分類されるDamalinia equi、および、Sucking lice(Anoplura)に分類されるHaematopinus equiが最も多く分離されています。シラミ症の病変は、Biting liceでは体躯外背部...
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馬の病気:ショクヒヒゼンダニ症
馬の皮膚病 - 2015/08/28ショクヒヒゼンダニ症(Chorioptic mange)について。馬ショクヒヒゼンダニ(Chorioptes equi)の感染に伴って皮膚炎を起こす疾患で、馬のダニ症の中では最も多く見られる病原体です。冬季に好発することが知られており、特に重種馬(Draft horse)における発症率が高いことが報告されています。ショクヒヒゼンダニ症の病変は、通常は繋部~球節(Pastern to fetlock regions)に多く見られ、掻痒症(Pruritus)を伴う痂皮形成(Cr...
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馬の病気:スポロトリクム症
馬の皮膚病 - 2015/08/28スポロトリクム症(Sporotrichosis)について。遍在性二形性真菌(Ubiquitous dimorphic fungus)であるSporothrix schenckiiの感染に起因して皮膚炎を起こす疾患です。S.schenckiiは土壌中や有機粉塵中の雑菌(Saprophyte in soil and organic debris)として存在し、創傷汚染(Wound contamination)から発症に至ると考えられています。また、人獣共通感染症(Zoonotic disease)として猫から人間へと伝播することが知られており...
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馬の病気:皮膚糸状菌症
馬の皮膚病 - 2015/08/27皮膚糸状菌症(Dermatophytosis)について。Microsporum属やTrichophyton属などの真菌感染(Fungal infection)に起因して皮膚炎を起こす疾患で(いわゆる白癬:Ringworm)、二歳齢以下の若馬に好発することが知られています。原因菌としてはT.equinumが最も多く分離されますが、T.mentagrophytes、T.verrucosum、M.equinum、M.gypseum等による発症も報告されています。皮膚糸状菌症の症状としては、初期病態では直径2~5mmの丘疹...
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馬の病気:乳頭腫
馬の皮膚病 - 2015/08/27乳頭腫(Papillomas, Warts)について。乳頭腫ウイルス(Papilloma virus)の感染によって上皮性良性腫瘍(Epithelial benign tumor)を生じる疾患で、二歳齢以下の若馬に好発することが一般的で、また、乳頭腫ウイルスはサルコイド(Sarcoid)の発症に関与することが知られています。乳頭腫の病変は、通常は鼻先や上唇などに起こり(稀に眼瞼、生殖器、遠位肢、etc)、直径0.2~2cmの白色~灰色の突起状腫瘤(White to gray protr...
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馬の病気:細菌性毛包炎
馬の皮膚病 - 2015/08/27細菌性毛包炎(Bacterial folliculitis)について。毛包(Hair follicles)への細菌感染(Bacterial infection)に起因して皮膚炎を起こす疾患で、病原菌としてはスタフィロコッカス属菌(Staphylococcus spp: S.aureus, S.intermedius, etc)が最も多く分離されます。また、毛包壁を自壊して排膿を起こした病態を癰腫症(Furunculosis)(いわゆる“Boil”)と呼び、角層下膿疱(Subcorneal pustules)を生じた病態を膿痂疹(Impeti...
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馬の病気:デルマトフィルス症
馬の皮膚病 - 2015/08/26デルマトフィルス症(Dermatophilosis)について。グラム陽性繊維状好気性菌(Gram-positive filamentous aerobic bacteria)である放線菌(Actinomycete bacterium)に属する、Dermatophilus congolensis細菌の感染によって皮膚炎を起こす疾患です。D.congolensisの伝播はハエやマダニを介して起こりますが、この細菌は湿気のある環境でのみ増殖できることから、屋外で飼養されている馬において、降雨後に皮膚表面が湿っている状...
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馬の病気:多形性紅斑
馬の皮膚病 - 2015/08/26多形性紅斑(Erythema multiforme)について。過敏性免疫反応(Hypersensitivity immunologic reaction)による角化細胞のプログラム細胞死(Keratinocyte apoptosis)に起因して発疹を生じる疾患で、薬剤、感染、腫瘍、ワクチン、飼料などが引き金因子(Triggering factor)になると考えられていますが、病因論は特定されていません。また、医学分野における重症型多形滲出性紅斑(Erythema exsudativum multiforme major)(=ス...
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馬の病気:蕁麻疹
馬の皮膚病 - 2015/08/26蕁麻疹(Urticaria, Hives)について。皮膚表面に一過性の限局性腫脹(Transient focal swelling)(=膨疹:Wheals)を生じる疾患で、馬においては、薬剤投与による発疹(Drug eruption)が最も一般的に見られます。また、環境性抗原(Environmental allergen)(=アトピー性皮膚炎:Atopic dermatitis))に起因するアレルギー性蕁麻疹(Allergic urticaria)、および、圧迫(Pressure urticaria, Dermatographism)、低温(Col...
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馬の病気:アトピー性皮膚炎
馬の皮膚病 - 2015/08/25アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis)について。環境性のアレルギー起因抗原(Environmental allergen)に対する異常免疫反応(Abnormal immunologic response)に起因して、掻痒症(Pruritus)を伴う皮膚炎を起こす疾患で、原因抗原としては、花粉(Pollen)、厩舎粉塵(Barn dust)、カビ(Molds)、ダニ(Mites)、雑草(Weeds)、牧草(Grasses)などが挙げられています。馬のアトピー性皮膚炎では、免疫グロブリンE(Immuno...
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馬の病気:水疱性類天疱瘡
馬の皮膚病 - 2015/08/25水疱性類天疱瘡(Bullous pemphigoid)について。皮膚基底膜層(Cutaneous basememnt membrane zone)に対する抗体生成(Antibodies formation)によって、小水疱性および潰瘍性皮膚病巣(Vesiculobullous/Ulcerative cutaneous lesions)を生じる自己免疫性疾患(Autoimmune disease)です。馬における発症は稀で(全皮膚病症例の0.2%)、抗体生成を起こす引き金因子(Trigger factors)は特定されていません。水疱性類天疱瘡の症...
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馬の病気:落葉状天疱瘡
馬の皮膚病 - 2015/08/25落葉状天疱瘡(Pemphigus foliaceus)について。自己免疫抗体(Autoantibodies)の生成に伴う上皮内棘融解(Intraepidermal acantholysis)、および、細胞間抗体グロブリン沈着(Intercellular immunoglobulin deposition)に起因して、全身性の鱗屑および痂皮形成(Generalized scale/crust formation)を生じる疾患です。落葉状天疱瘡の原因としては、小動物の同疾患に見られるような薬物への免疫反応や長距離輸送などのストレス...
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馬の病気:顆粒膜細胞腫
馬の生殖器病 - 2015/08/24顆粒膜細胞腫(Granulosa-theca cell tumor)について。馬において最も多く見られる卵巣腫瘍で、通常は成長の遅い片側性の良性腫瘍(Slow growing unilateral benign tumor)の病態を示します。顆粒膜細胞腫は、卵胞のステロイド産生細胞(Follicular steroidogenic cells)の異常に起因し、InhibinとTestosteroneの分泌が見られます。顆粒膜細胞腫の症状としては、無発情(Anestrus)、持続性発情(Constant estrus)、不規則な発...
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馬の病気:黄体遺残
馬の生殖器病 - 2015/08/24黄体遺残(Persistent corpus luteum)について。正常時には排卵(Ovulation)から14~15日後において、子宮内膜(Endometrium)から分泌されるPGF2-alpha(Prostaglandin F2alpha)によって退行する黄体(Corpus luteum)が、その後も卵巣内に遺残する疾患です。馬における妊娠維持は、妊娠0~45日目では主に一次黄体(Primary corpus luteum)から分泌されるProgesterone、妊娠45~150日目では主に二次黄体(Secondary corpus lu...
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馬の病気:胎仔膜遺残
馬の生殖器病 - 2015/08/24胎仔膜遺残(Retained fetal membranes)について。分娩後に子宮からの胎仔膜の排出が滞ることで、重篤な子宮炎(Severe metritis)や内毒素血症(Endotoxemia)を引き起こす疾患です。正常な妊娠牝馬では、出産後に胎盤脈管(Placental vessels)の循環低下が起こり、胎盤微絨毛(Placental microvilli)が退縮して、子宮内膜陰窩(Endometrial crypts)との嵌合構造(Interdigitation structure)が遊離することで、分娩後の三時...
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馬の病気:細菌性子宮内膜炎
馬の生殖器病 - 2015/08/24細菌性子宮内膜炎(Bacterial endometritis)について。細菌感染(Bacterial infection)(稀に真菌感染:Fungal infection)に起因して、子宮の炎症を起こす疾患です。細菌性子宮内膜炎の病因としては、加齢や会陰裂傷(Perineal laceration)による、外陰(Vulva)、膣前提(Vestibule)、子宮頚管(Cervix)などの物理的遮断機能(Physical barrier function)の低下や、尿膣症(Urovagina)および気膣症(Pneumovagina)などに...
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馬の病気:交配誘導性子宮内膜炎
馬の生殖器病 - 2015/08/24交配誘導性子宮内膜炎(Breeding-induced endometritis)について。交配時に起こる精子への暴露(Spermatozoa exposure)に起因して、子宮の炎症を生じる疾患です。正常牝馬においては、子宮内に到達した精子は、子宮筋収縮(Myometrial contruction)による子宮頚管からの物理的排出(Physical clearance from cervix)、および、多形核好中球(Polymorphonuclear neutrophils: PMN)による食作用(Phagocytosis)を介して速やか...
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馬の病気:子宮蓄膿症
馬の生殖器病 - 2015/08/22子宮蓄膿症(Pyometra)について。子宮内腔に膿性浸出物の貯留(Purulent exudates accumulation in uterus lumen)を生じる疾患で、子宮頚管線維化症(Cervical fibrosis)による子宮流出の物理的阻害(Obstructed mechanical uterine outflow)が病因となると考えられています。また、細菌性子宮内膜炎(Bacterial endometritis)や交配誘導性子宮内膜炎(Breeding-induced endometritis)などが素因となる場合もありますが、黄...
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馬の病気:子宮内膜嚢胞
馬の生殖器病 - 2015/08/22子宮内膜嚢胞(Endometrial cyst)について。子宮内膜(Endometrium)における嚢胞形成は、11歳齢以上の高齢牝馬に好発することが知られており、子宮内膜腺(Endometrial gland)やリンパ管閉塞(Lymphatic obstruction)に起因すると考えられています。子宮内膜嚢胞は、経直腸超音波検査(Transrectal ultrasonography)もしくは子宮鏡検査(Hysteroscopy)によって確認され、最大では内径が数cmに達することから胚芽小胞(Embryo...
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馬の病気:気膣症
馬の生殖器病 - 2015/08/22気膣症(Pneumovagina)について。膣内部に空気が貯留する疾患で、慢性の炎症や感染(Chronic inflammation/infection)を続発して受精不能(Infertility)を起こす症例もあるため、繁殖牝馬にとっては臨床的に深刻な病態と言えます。気膣症の病因としては、加齢、分娩(Parturition)、会陰裂傷(Perineal laceration)による外陰支持靭帯の牽引(Stretching of vulva support ligament)に起因して、会陰形状悪化(Poor perineal...
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馬の病気:尿膣症
馬の生殖器病 - 2015/08/22尿膣症(Urovagina)について。膀胱膣逆流(Vesicovaginal reflux)によって、膣内に尿の貯留(Urine accumulation)を生じる疾患で、持続的な生殖器官の汚染を引き起こし、膣炎(Vaginitis)、子宮頚管炎(Cervicitis)、子宮内膜炎(Endometritis)などに起因する妊娠機能の減退を生じるため、繁殖牝馬にとって臨床上極めて深刻な病態であると言えます。尿膣症の病因としては、多胎雌馬(Multiparous mare)における尿生殖管支持...
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馬の病気:馬媾疹
馬の生殖器病 - 2015/08/22馬媾疹(Equine coital exanthema)について。三型馬ヘルペスウイルス(Equine herpes virus type-3: EHV-3)の感染に起因して、陰部における性交伝搬性皮膚炎(Venereally transmitted dermatitis of genital region)を起こす疾患です。馬媾疹の症状としては、雌馬では会陰部(Perineum)と外陰部(Vulva)、雄馬では包皮(Prepuce)と陰茎(Penis)において、初期病態では丘疹形成(Papules)が認められ、その後に膿疱(Pustule...
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馬の病気:双胎妊娠
馬の生殖器病 - 2015/08/22双胎妊娠(Twin pregnancy)について。馬における双子の胎児の妊娠は、その多くが二重排卵(Double ovulation)によって発生することが知られており、二重排卵を起こし易いサラブレッドとスタンダードブレッドに好発することが報告されています。馬の双胎妊娠は、非感染性流産(Non-infectious abortion)の最も重要な原因の一つで、片方の胎児が成長不全から斃死に至る場合が多く、両方の胎児が難産を示さず健康に分娩される確率...
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馬の病気:臍帯捻転
馬の生殖器病 - 2015/08/21臍帯捻転(Umbilical cord torsion)について。臍帯が縦軸方向に捻れたり(Longitudinal twisting)、胎児の肢や腹部に巻き付いて絞扼(Strangulation)を起こすことで流産(Abortion)に至る疾患で、胎児に関わる入院症例の約6%を占めることが報告されています。反芻類と異なり、馬の胎児は尿膜液(Allantoic fluid)の内部において、堅固に固定されることなく浮遊しているため、羊膜腔内での胎児回転(Fetal rotation within the...
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馬の病気:胎盤炎
馬の生殖器病 - 2015/08/21胎盤炎(Placentitis)について。細菌および真菌感染に起因する胎盤の炎症から流産(Abortion)に至る疾患で、原因菌としてはStreptococcus属菌、大腸菌、Pseudomonas属菌、Klebsiella属菌、Staphylococcus 属菌、Leptospira属菌、Aspergillus属菌、Mucor属菌などが挙げられ、Nocardioform actinomycetes菌(Amycolatopsis, Crossiella, etc)による胎盤炎の症例も報告されています。感染経路としては、子宮頚管を介しての上行感染...
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馬の病気:馬ヘルペス流産
馬の生殖器病 - 2015/08/21馬ヘルペス流産(Equine herpesvirus abortion)について。一型馬ヘルペスウイルス(Equine herpes virus type-1: EHV-1)の感染に起因して流産を起こす疾患ですが、稀に四型馬ヘルペスウイルス感染(EHV-4)も流産の原因となることが示唆されています。殆どの馬は、生後一年以内に呼吸器経路によってEHV-1に暴露され、長期間にわたる潜伏感染(Latent infection)を起こすことが知られています。EHV-1感染による流産は、全身性疾...
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馬の病気:会陰裂傷
馬の生殖器病 - 2015/08/20会陰裂傷(Perineal laceration)について。分娩時に起こる会陰裂傷は初産の牝馬(Primiparous mare)に好発し、膣前庭括約筋の突出部(Vestibulovaginal sphincter prominence)に胎児の前肢蹄が引っ掛かることが病因であると考えられています。また、興奮し易い牝馬の気質(Excitable temperament of mare)、胎児の姿勢異常(Fetal malposition)、サイズの大きい胎児、などが発症素因(Predisposing factors)として挙げられて...
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馬の病気:子宮捻転
馬の生殖器病 - 2015/08/20子宮捻転(Uterine torsion)について。馬における子宮の捻転は、産科疾患(Obstetric disorders)の5~10%を占め、過剰な胎児の動き(Vigorous fetal movement)や正向反射(Fetal righting reflux)が病因として挙げられています。子宮捻転の症状としては、急性発現性(Acute onset)の軽度~中程度疝痛(Mild to moderate colic)、発汗(Sweating)、食欲不振(Anorexia)、膁部を顧みる仕草(Frank looking)、頻繁な排尿姿勢...
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馬の病気:前恥骨靭帯断裂
馬の生殖器病 - 2015/08/20前恥骨靭帯断裂(Prepubic tendon rupture)について。前恥骨靭帯(Prepubic tendon)の断裂は、出産直前の牝馬に発症し、腹横筋(Transverse abdomis)、腹斜筋(Oblique abdomis)、腹直筋(Rectus abdomis)などの損傷を併発することが一般的です。前恥骨靭帯断裂の病因としては、転倒などによる腹底部緊張の上昇や、胎児水腫(Hydrops fetalis)による子宮重量の増加などが挙げられており、重種馬や高齢牝馬において好発する可...
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馬の病気:精嚢炎
馬の生殖器病 - 2015/08/19精嚢炎(Seminal vesiculitis)について。精嚢(Vesicular glands, Seminal vesicules)の炎症は、尿道炎(Urethritis)の波及や上行性細菌感染(Ascending bacterial infection)に起因することが一般的で、尿道球腺(Bulbourethral glands)の炎症を併発する場合もあります。精嚢炎の罹患馬では、精液中に多量の好中球と赤血球の混入(Neutrophils and red blood cell contamination)が起こり、受精能低下(Reduced fertility)...
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馬の病気:精巣上体炎
馬の生殖器病 - 2015/08/19精巣上体炎(Epididymitis)について。精巣上体(Epididymis)の炎症は、精巣炎(Orchitis)や副生殖腺の感染(Accessory sex gland infection)から二次性に発症することが一般的ですが、蹴傷や転倒などの外傷性に起こる場合もあります。細菌感染の経路は精巣炎に類似し、血行性(Hematogenous)や尿生殖器関門(Genitourinary passage)を介しての上行性細菌侵入(Ascending bacterial invasion)に起因すると考えられ、精巣上体...
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馬の病気:精巣捻転
馬の生殖器病 - 2015/08/19精巣捻転(Spermatic cord torsion)について。馬の精巣は陰嚢(Scrotum)の内部で水平方向に位置(Horizontal position)しているため、他の動物種よりも精巣捻転を起こし易いことが知られています。精巣捻転の病因および素因としては、精巣上体尾側靭帯(Caudal ligament of epididymis)(=陰嚢靭帯:Scrotal ligament)および精巣間膜(Mesorchium)の伸長化(Elongation)が挙げられています。精巣捻転の臨床症状は、捻転度...
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馬の病気:精巣炎
馬の生殖器病 - 2015/08/18精巣炎(Orchitis)について。馬における精巣の炎症は、蹴傷や転倒によって生じる外傷性精巣炎(Traumatic orchitis)や、血行性感染(Hematogenous infection)や副生殖腺(Accesory sex glands)からの逆行性流入(Retrograde fluid movement)に起因する感染性精巣炎(Infectious orchitis)などの病態を呈し、精巣上体炎(Epididymitis)や精巣周囲炎(Periorchitis)等を併発する症例もあります。精巣炎の症状としては、陰能...
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馬の病気:精巣変性
馬の生殖器病 - 2015/08/18精巣変性(Testicular degeneration)について。精巣が後天性に退行性変化(Acquired degenerative change)を起こす病態を指し、精巣萎縮(Testicular atrophy)に伴う生殖機能の減退を引き起こす疾患です。精巣変性の病因としては、高温の気候(Increased ambient temprerature)や全身性感染症(Systemic infection)に起因する持続性の高体温(Prolonged hyperthermia)、感染性および外傷性の精巣炎(Infectious/Traumatic or...
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馬の病気:停留精巣
馬の生殖器病 - 2015/08/18停留精巣(Cryptorchidism)について。停留精巣は、精巣が正常位置まで下降していない発生的な異常病態(Developmental abnormality)を指し、精巣(Testis)と精巣上体(Epididymis)の両方が腹腔内に存在する病態を完全腹腔停留精巣(Complete abdominal cryptorchid)、精巣が腹腔内に存在して精巣上体のみが内鼠径輪(Vaginal ring)を通過している病態を不完全腹腔停留精巣(Incomplete abdominal cryptorchid)、精巣が鼠径...
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馬の病気:陰嚢水腫
馬の生殖器病 - 2015/08/17陰嚢水腫(Hydrocele)について。精巣鞘膜(Vaginal tunic)の内部に漿液貯留(Serous fluid accumulation)を生じる疾患で、鞘膜内への血液貯留を起こした病態は陰嚢血腫(Hematocele)と呼ばれます。陰嚢水腫は、外傷性の陰嚢浮腫(Traumatic scrotal edema)に起因することが一般的ですが、腹水症(Ascites)、全身浮腫(Anasarca)、局所性のリンパ性浮腫(Local lymphedema)に続発する病態も知られています。陰嚢水腫の症状...
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馬の病気:尿道炎
馬の生殖器病 - 2015/08/17尿道炎(Urethritis)について。牡馬における尿道炎は、膀胱結石症(Cystolithiasis)、尿道結石症(Urolithiasis)、尿道閉塞(Urinary obstruction)、馬胃虫症(Habronemiasis)に起因する包皮浮腫(Preputial edema)および尿路失調(Urinary incontinence)、陰茎損傷(Penile injury)や薬物誘導性の陰茎麻痺(Drug-induced penile paralysis)などに起因する遷延性陰茎逸脱(Prolonged penile prolapse)等が病因として挙げ...
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馬の病気:陰茎損傷
馬の生殖器病 - 2015/08/17陰茎損傷(Penile injury)について。陰茎の損傷は、交配時の蹴傷に起因することが一般的ですが、人工授精のための精液採取時の事故として発症することもあります。また、アルファアドレナリン遮断薬(Alpha-adrenergic blocking drugs)の投与に起因して発生する病態(Priapism)も知られています。陰茎損傷の臨床症状としては、皮膚擦過創(Skin abrasion)、裂傷(Laceration)、出血(Hemorrhage)、血腫(Hematoma)などを呈...
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馬の病気:上皮小体機能亢進症
馬の内分泌病 - 2015/08/16上皮小体機能亢進症(Hyperparathyroidism)について。馬においては低カルシウムおよび高リン酸含有の飼料(CaとPの比が>3:1)に起因する、栄養性二次性上皮小体機能亢進症(Nutritional secondary hyperparathyroidism)が最も頻繁に発症し、フスマ病(Ban disease)、ミラー病(Miller’s disease)、巨頭病(Big head disease)などとも呼ばれます。病因としては、リン酸過剰摂取による消化器でのカルシウム吸収の減少(Reduced ...
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馬の病気:無汗症
馬の内分泌病 - 2015/08/16無汗症(Anhidrosis)および発汗減少症(Hypohidrosis)について。発汗機能に異常をきたす疾患で、夏季に高温多湿な気候を呈する地方において好発します。羅患馬の温度調節系(Thermoregulatory system)は正常である事が示されているため、発汗刺激の伝達を司るベータ2アドレナリン受容体(Beta-2 adrenoreceptors)が下方制御(Downregulation)または減感作(Desensitization)を起こすことが病因であると考えられています。ま...
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馬の病気:代謝性症候群
馬の内分泌病 - 2015/08/16馬の代謝性症候群(Equine metabolic syndrome)について。インシュリン耐性(Insulin resistance)に起因して、肥満症(Obesity)や局所性脂肪蓄積(Regional adiposity)を生じる疾患です。馬の代謝性症候群では、蹄葉炎(Laminitis)を続発する危険が高いことが知られており、末梢性クッシング様疾患(Peripheral Cushingoid disease)と呼ばれることもあります。馬の代謝性症候群における病態は、ブドウ糖処理組織(Glucose di...