2022年07月のエントリー一覧
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馬のボロ食いを止めさせる7つの対策
馬の飼養管理 - 2022/07/31馬がボロ食いをしてしまって、対策に困っているホースマンもいらっしゃるかもしれません。馬のボロ食い(食糞)は、子馬では正常な行動であり、理由としては、ミルクから草へと食べ物が変わっていく時に、必要な腸内細菌叢を、母馬のボロから獲得するためと言われています。しかし、五ヶ月齢を越えた馬が、常態的にボロ食いをする場合には異常行動と見なされ、原因となる栄養問題や健康問題があると考えられます。ここでは、此処の...
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馬の文献:喉嚢蓄膿症(Hawkins et al. 2001)
文献 - 2022/07/31「慢性蓄膿症の治療のためNd:YAGレーザーによる耳管憩室(喉嚢)の瘻孔形成が行われた馬の二症例」Hawkins JF, Frank N, Sojka JE, Levy M. Fistulation of the auditory tube diverticulum (guttural pouch) with a neodymium:yttrium-aluminum-garnet laser for treatment of chronic empyema in two horses. J Am Vet Med Assoc. 2001; 218(3): 405-407.この研究論文では、慢性蓄膿症(Chronic empyema)の治療のため、Nd:YAGレ...
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ビッコ探知機
診療 - 2022/07/30米国の馬臨床の場では、金属探知機ならぬ“ビッコ探知機”が使われています。「跛行位置指定装置」(Lameness locator)と呼ばれるこの機械は、原理的には運動学的歩様解析(Kinematic gait analysis)のひとつに分類され、馬体の三箇所(頭部、臀部、右前肢)にセンサーを取り付けた状態で速歩させることで、馬体の異常な動きや非対称な動き(Abnormal/Asymmetric motion)を、ワイヤレスシステムを通して専用のコンピューター(iPa...
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馬の跛行検査15:歩様解析
診療 - 2022/07/30歩様解析(Gait analysis)について跛行診断は主観的検査(Subjective evaluation)に頼る部分が大部分を占め、観察者内変動(Intra-observer variability)および観察者間変動(Inter-observer variability)が大きいことが示されており、その信頼性(Reliability)と反復性(Repeatability)には疑問符が付けられています。また、症例報告などに際しては、病態重篤度(Disease severity)の定量的な判定(Quantitative evaluatio...
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馬の跛行検査14:後肢の滑液嚢麻酔
診療 - 2022/07/30後肢の滑液嚢麻酔(Synovial bursa block)および腱鞘麻酔(Tendon sheath block)について頭側脛骨筋内側腱の滑液嚢(Synovial bursa of the medial tendon of cranial tibial muscle)(いわゆるキュネアン滑液嚢:Cunean bursa)の診断麻酔では、中心足根骨(Central tarsal bone)および第三足根骨(Third tarsal bone)のあいだに触知されるキュネアン腱(Cunean tendon)の遠位端において、やや近位方向(Slightly proximal ...
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馬の跛行検査13:後肢の関節麻酔
診療 - 2022/07/30後肢の関節麻酔(Hindlimb joint block)について後肢の遠位部における疼痛部位の限局化に用いられる、遠位指骨間関節麻酔(Distal interphalangeal joint block)、近位指骨間関節麻酔(Proximal interphalangeal joint block)、中足指骨間関節麻酔(Metatarso-phalangeal joint block)の三種類の診断麻酔は、前肢における手技と同様に実施されます。足根中足関節(Tarsometatarsal joint)の診断麻酔では、通常は起立位におい...
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馬の跛行検査12:後肢の神経麻酔
診療 - 2022/07/30後肢の神経麻酔(Hindlimb nerve block)について後肢の遠位部における疼痛部位の限局化に用いられる、底側指神経麻酔(Plantar digital nerve block)、遠軸種子骨神経麻酔(Abaxial sesamoid nerve block)、低四点神経麻酔(Low four-point nerve block)の三種類の診断麻酔は、前肢における手技と同様に実施されます。高四点神経麻酔(High four-point nerve block)は、底側近位中足部(Plantar proximal aspect of metatarpu...
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馬の跛行検査11:前肢の滑液嚢麻酔
診療 - 2022/07/30前肢の滑液嚢麻酔(Synovial bursa block)および腱鞘麻酔(Tendon sheath block)について舟嚢(Navicular bursa)(=肢滑車滑液嚢:Podotrochlear bursa)の診断麻酔では、掌側軸中アプローチが用いられる事が一般的です(上図)。この手法では、起立位または楔型ブロックに蹄を保定した状態で、内外側の蹄球(Lateral and medial heel bulb)のあいだを局所麻酔してから、軸中線上の体毛の生え際のすぐ上部から、蹄底面に平行...
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馬の跛行検査10:前肢の関節麻酔
診療 - 2022/07/30前肢の関節麻酔(Forelimb joint block)について遠位指骨間関節(Distal interphalangeal joint)(=蹄関節:Coffin joint)の診断麻酔では、背側アプローチもしくは外側アプローチが用いられる事が一般的です(上図)。背側アプローチでは、通常は起立位において、末節骨伸筋突起(Extensor process of distal phalanx)のすぐ上部の軸中線上(Limb axis line)において、総指伸筋腱(Common digital extensor tendon)を貫通さ...
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馬の跛行検査9:前肢の神経麻酔
診療 - 2022/07/30前肢の神経麻酔(Forelimb nerve block)について掌側指神経麻酔(Palmar digital nerve block)は、遠位掌側繋部(Palmar distal region of pastern)において内外側の両方(または一方)の掌側指神経(Palmar digital nerve)を局所麻酔することで、蹄部の蹄踵側三分の一(Palmar one third of hoof)を無痛化する診断麻酔法です(上図a)(蹄部の70~80%が無痛化されるという見解もあります)。この手法では、肢を挙上させ球節...
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馬の跛行検査8:診断麻酔指針
診療 - 2022/07/30診断麻酔(Forelimb diagnostic anesthesia)について診断麻酔(Diagnostic anesthesia)は、感覚神経の周囲、関節内部、滑液嚢内部などに局所麻酔薬を注射して、患肢を限局的に無痛化(Local analgesia)することで、基線グレード(Baseline grade)と比較して跛行が改善または消失(Lameness improvement/elimination)する所見を観察する検査法で、馬の跛行診断に際しては最も有用な手法であることが提唱されています。また、触...
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馬の跛行検査7:後肢の屈曲試験
診療 - 2022/07/30後肢の屈曲試験(Hindlimb flexion test)について屈曲試験は、患肢のある部位を一定時間強く屈曲させた後、すぐさま直線上を速歩させて(12~15m)、基線グレードからの一時的な跛行の悪化(Temporary lameness exacerbation from baseline grade)を観察する跛行検査法です。屈曲後に跛行が悪化した場合には、屈曲部位に疼痛の原因となる一次性疾患(Primary disorder)が存在する可能性が示唆されます。屈曲試験は侵襲性が少な...
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馬の跛行検査6:前肢の屈曲試験
診療 - 2022/07/30前肢の屈曲試験(Forelimb flexion test)について屈曲試験は、患肢のある部位を一定時間強く屈曲させた後、すぐさま直線上を速歩させて(12~15m)、基線グレードからの一時的な跛行の悪化(Temporary lameness exacerbation from baseline grade)を観察する跛行検査法です。屈曲後に跛行が悪化した場合には、屈曲部位に疼痛の原因となる一次性疾患(Primary disorder)が存在する可能性が示唆されます。屈曲試験は侵襲性が少な...
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馬の跛行検査5:近位肢の触診
診療 - 2022/07/30近位肢の触診(Proximal limb palpation)について肢を挙上させた状態での背側部手根関節(Dorsal aspect of carpal joint)の触診では、総指伸筋腱(Common digital extensor tendon)と橈側手根伸筋腱(Extensor carpi radialis tendon)のあいだから、中間手根関節(Mid-carpal joint)および前腕手根関節(Antebrachial-carpal joint)にアプローチしながら、各手根骨の腫脹や圧痛が検査され(上図)、手根骨破片骨折(Carpal ...
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馬の跛行検査4:遠位肢の触診
診療 - 2022/07/30遠位肢の触診(Distal limb palpation)について蹄部の触診では、背側部蹄冠(Dorsal coronary band)の熱感(Heat)、腫脹(Swelling)、圧痛(Pain on pressure)等の検査が行われ(上図)、蹄葉炎(Laminitis)では背側部蹄冠の温度上昇が触知され、特にシンカー型蹄葉炎の場合には、蹄冠の陥没(Depression)が認められる場合もあります。また、蹄関節炎(Coffin joint arthritis)では背側部蹄冠の軟性膨満と深部圧痛(Pain o...
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馬の跛行検査3:蹄鉗子検査
診療 - 2022/07/30蹄鉗子検査(Hoof tester examination)について蹄鉗子による蹄部の圧痛試験は、蹄疾患の診断のために重要な検査で、基線歩様検査(Baseline visual gait examination)で跛行のグレードを決定した後に行われます。実施に際して術者は、蹄を堅固に保持し過ぎて疼痛反応(Pain response)による肢の動きを妨げないように注意し、突然の圧迫で馬を驚かせないように、同一部位に弱→中→強のように数回にわたって圧迫を掛けることが大切...
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馬の跛行検査2:肢勢検査
診療 - 2022/07/30肢勢検査(Conformation examination)について一般的な正常前肢の肢勢では、正面から見た場合に、肩部の隆起点(Point of shoulder)から垂直に下ろした線が、手根(Carpus)、球節(Fetlock)、蹄(Foot)の軸中を通過して、前肢を内外側にほぼ二分し(上図A)、側面から見た場合には、肘関節(Elbow joint)の中心点から垂直に下ろした線が、手根関節(Carpal joint)と球節関節(Fetlock joint)のほぼ中心を通過して、蹄球(H...
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馬の跛行検査1:歩様検査
診療 - 2022/07/30歩様検査(Visual gait examination)について跛行診断における歩様検査では、速歩(Trot)が最も有用な歩様として用いられ、助手は速度を一定に保つこと(Constant gait velocity)と、曳き手綱に充分な弛みを持たせて患馬の頭部の動きを妨げないこと(Free head movement)に注意する事が重要です。歩様検査は一般的に、舗装された硬い地面(Paved hard surface)で行われますが、跛行の度合いを硬い地面と砂地などの軟らかい地...
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片足だけワンコを着けてみよう
馬の飼養管理 - 2022/07/29ワンコを馬の片足だけに着けると、意外な効能があるようです。馬の歩様が、左右非対称であることは多いですが、動きの悪いほうに後肢にワンコを取り付けることで、馬にその肢の存在を意識させることになり、踏み込みを向上させられることがあります。そうすると、その肢を動かす筋力が強化され、歩様の対称性を改善させる効果が得られると言われています。また、怪我や故障によって片方の後肢の動きが悪くなった場合には、その肢に...
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牝馬のフケ対策
馬の飼養管理 - 2022/07/29牝馬のフケには、頭を悩ませているホースマンも多いようです。馬用語で言うところの「フケ」とは、発情が来ているメス馬が、アグレッシブな異常行動を取ることを指します。具体的には、不機嫌で怒りっぽくなる、他の馬に向かって大声でいななく、激しく尻尾を振り回す、ヒトの扶助に従わない、壁を蹴とばす、後肢の挙上を嫌がる、突発的に予測不能な行動を取る、などが挙げられます。このため、ホースマンにとっては、馬の扱いや管...
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馬の開腹術の後はいつまで絶食?
話題 - 2022/07/28馬の開腹術をした後、いつまで絶食させるかは、臨床医にとって迷い処かもしれません。馬の疝痛のなかでも、開腹術を要するほど重篤な消化器疾患では、術後しばらくは絶食させることが一般的です。その理由としては、腸蠕動が低下した箇所が通過障害を再発するリスクがあることや、腸管の切開や吻合した箇所から腸内容物が漏出して、癒着や腹膜炎を続発するのを抑えるため、等が挙げられています。しかし、そのような術後の絶食を、...
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馬の文献:喉嚢蓄膿症(Smyth et al. 1999)
文献 - 2022/07/28「蓄膿症から続発した喉嚢外側区画の原発性膨満」Smyth DA, Baptiste KE, Cruz AM, Naylor JM. Primary distension of the guttural pouch lateral compartment secondary to empyema. Can Vet J. 1999; 40(11): 802-804.この研究論文では、喉嚢蓄膿症(Guttural pouch empyema)に起因して、喉嚢外側区画(Lateral compartment of guttural pouch)の原発性膨満(Primary distension)を呈した馬の一症例が報告されています。患馬...
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馬の関節炎のサプリメント(2022年版)
馬の飼養管理 - 2022/07/27ホースマンの中には、慢性の関節炎(飛節内腫やリングボーン等)を患っている自馬のケアに悩んでいらっしゃる方も多いのかもしれません。ここでは、関節炎への効能が謳われたサプリメントをまとめました。馬の関節炎に対するサプリメントとしては、コンドロイチン、グルコサミン、および、メチルスルフォニルメタン(MSM)の3つの成分が有効であることが知られています。特に、馬の関節炎では、コンドロイチンとグルコサミンの2...
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背弯した高齢馬は乗っても大丈夫?
馬の飼養管理 - 2022/07/27背弯姿勢になった高齢の馬は、騎乗しても問題ないのでしょうか。背弯とは、胸椎から腰椎までの背骨が下方に沈み、馬の背中がUの字に弯曲した馬体の状態を指します。英語では、スウェイバックまたはロードシスと呼ばれ、通常、高齢馬によく見られますが、若齢馬に起こることもあり、発生率は約1%になることが知られています。ホースマンにとっては、自らが座る位置である背中が凹んでいるため、騎乗することへの不安を持つことが多...
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馬の肢の冷やし方
馬の飼養管理 - 2022/07/26馬の肢はどうやって冷やすのが一番良いのか?という質問は、多くのホースマンが持たれているようです。馬の運動器疾患には、多種類の組織の損傷が含まれますが(筋肉、骨、関節、腱、靭帯、蹄など)、急性期には冷却療法、慢性期には温熱療法を行なうことが基本となります。このうち冷却療法は、特に損傷発生後の24~72時間では重要であり、罹患部を冷やして血流を減らすことで、痛みや腫れを抑えると同時に、炎症メディエイターの...
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ブラシ掛けが嫌いな馬
馬の飼養管理 - 2022/07/26ブラシ掛けが嫌いな馬に、どう対処すべきかと悩んでいるホースマンもいらっしゃるかもしれません。馬はブラシ掛けによる皮膚のケアが重要な動物です。馬は他の家畜と異なり、騎乗運動することで発汗をする上、体毛が短い状態で飼養されることが多いという特徴があります。このため、皮膚や体毛を清潔に保つことは、馬の飼養管理にとって大事な一要素であると言えます。しかし、馬によっては、体をブラシ掛けされるのを顕著に嫌がる...
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馬の文献:喉嚢蓄膿症(Judy et al. 1999)
文献 - 2022/07/25「馬の喉嚢(耳管憩室)の蓄膿症:1977~1997年の91症例」Judy CE, Chaffin MK, Cohen ND. Empyema of the guttural pouch (auditory tube diverticulum) in horses: 91 cases (1977-1997). J Am Vet Med Assoc. 1999; 215(11): 1666-1670.この研究論文では、馬の喉嚢蓄膿症(Guttural pouch empyema)に対する有用な治療法を検討するため、1977~1997年にかけて、喉嚢蓄膿症の診断が下された91頭の患馬の、医療記録(Medical reco...
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胃潰瘍の予防には運動前の軽食
馬の飼養管理 - 2022/07/25馬の胃潰瘍の予防対策としては、運動前の軽食が有効だと言われています。胃潰瘍とは、胃粘膜が胃酸によって炎症を起こして、胃壁の糜爛や潰瘍に進行してしまう疾患であり、競走馬では発症率が八割以上とも言われています。馬の胃潰瘍は、間欠性疝痛を起こしたり、コンディション不良から競技能力の低下にも繋がるという困った病気です。馬の胃潰瘍には、胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ抑制薬(オメプラゾール)というクスリが投...
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ヘンダーソン去勢の利点と欠点
診療 - 2022/07/24ヘンダーソン去勢にも利点と欠点がありますので、その両方を理解しておきましょう。馬の去勢の方法には、大きく分けて挫滅法と捻転法の2種類があり、古典的には、挫滅法が一般的に実施されてきました(結紮法を併用する場合もあり)。一方、近年では、成牛の去勢で多く実施されてきたヘンダーソン式の捻転法が、器具を少し改良(組織把持する部分の幅を長めにした器具)することで、馬の去勢にも応用されるようになっています。こ...
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「馬に乗るなら痩せなさい」は本当か?
馬の飼養管理 - 2022/07/24馬に乗るのであれば、中年太りは禁物で、馬のためにもダイエットするべきだ!とも言われますが、これは科学的にも裏付けられている話なのでしょうか?近年、海外の乗馬関係のメディアやフォーラムでは、騎乗者の体の大きさや重さが、馬のウェルフェアやパフォーマンスに悪影響を与えているのか?についての議論が起きています。一般論としては、騎乗者の体重は、馬の体重の20%を越えるべきではないとも言われますが、現時点では、...
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馬の文献:喉嚢蓄膿症(Adkins et al. 1997)
文献 - 2022/07/23「喉嚢蓄膿症による類軟骨の非外科的治療が行われた馬の一症例」Adkins AR, Yovich JV, Colbourne CM. Nonsurgical treatment of chondroids of the guttural pouch in a horse. Aust Vet J. 1997; 75(5): 332-333.この研究論文では、喉嚢蓄膿症(Guttural pouch empyema)に起因して、喉嚢内に形成された類軟骨(Chondroids)の、非外科的治療(Nonsurgical treatment)が試みられた馬の一症例が報告されています。患馬は、二歳齢...
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馬の夏バテのサプリメント(2022年版)
馬の飼養管理 - 2022/07/23夏バテへの効能が謳われたサプリメントをまとめました。夏バテの馬に対しては、電解質の補給を目的としたサプリメントが有用であると言われており、その中でも特に、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムが重要になります。また、ビタミン類も疲労回復に役立つと言われています。塩辛さで嗜好性が落ちないよう、果物フレーバーの製品もあります。なお、下記の製品については、成分や価格が変更される事もありますので、...
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馬のネブライザー治療の実践
診療 - 2022/07/22馬の呼吸器疾患に応用されているネブライザー治療について復習しましょう。ネブライザー治療とは、医学用語では吸入療法(Inhalation therapy)と呼ばれ、噴霧した薬剤を呼吸に併せて吸い込ませることで、上部及び下部気道組織に直接的にクスリを作用させる治療法です。適応症例としては、競走馬に見られる炎症性気道疾患(IAD)や運動誘発性肺出血(EIPH)のほか、高齢馬のアレルギー疾患である回帰性気道閉塞(RAO)や、鼻腔や咽...
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馬の駆虫に関する7つの間違い
馬の飼養管理 - 2022/07/22馬の駆虫についての固定観念や俗説のなかには、色々と間違いがあるようです。寄生虫による馬の病気は、過去も現在も散発的に起こっており、適切な駆虫を行なうことは、馬の飼養管理の大事な一要素であると言えます。日本で馬に起こる寄生虫病としては、馬回虫(Parascaris equorum)によって起こる空腸閉塞、普通円虫(Strongylus vulgaris)によって起こる腸間膜動脈血栓症、馬糸状虫(Setaria equina)によって起こる混晴虫症、...
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鼻ネジは諸刃の剣
馬の飼養管理 - 2022/07/21馬に対する鼻ネジの使い方や注意点についてシッカリ理解しておきましょう。鼻ネジ(鼻捻棒とも言う)とは、馬の物理的保定に用いられる器具で、通常は、木製の棒の先端に金属チェーン又はロープがループ状に取り付けられており、このループを馬の上唇に巻き付けて締めるように使用します。鼻ネジは、痛みや不快感を伴う獣医療行為を実施するときによく使用され、また、毛刈りや交配などの場面で、馬を安全に制御するために用いられ...
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馬の文献:喉嚢蓄膿症(Newton et al. 1997)
文献 - 2022/07/21「馬の喉嚢における自然発生的なストレプトコッカス・エクイの持続性および不症候性感染」Newton JR, Wood JL, Dunn KA, DeBrauwere MN, Chanter N. Naturally occurring persistent and asymptomatic infection of the guttural pouches of horses with Streptococcus equi. Vet Rec. 1997; 140(4): 84-90.この研究論文では、約1500頭に起こった腺疫(Strangles)の流行(Outbreak)において、連続的な鼻腔咽頭の拭き取り検査(Re...
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馬の蕁麻疹への対策は根気強く
馬の飼養管理 - 2022/07/20馬の体表に「点字」のように現れる蕁麻疹は、馬体からの警戒のメッセージですが、それを読み解くのは、点字を読むのと同じくらい難しいのかもしれません。蕁麻疹とは、アレルギー性過敏反応の結果として皮膚に生じた発疹のことを指し、病名としては、アトピー性皮膚炎という用語に当たります。馬に蕁麻疹を引き起こすアレルゲンとしては、乾草中のカビ、畜舎ダスト、牧草の花粉、などが知られています。また、薬品が原因となる場合...
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効き目が丸一日も続く局所麻酔薬
話題 - 2022/07/20効き目が24時間も続く局所麻酔薬が、馬の遠位肢に応用されています。通常、局所麻酔薬を馬の神経周囲浸潤麻酔として使った場合、感覚神経の刺激伝導を一時的に遮断して、30分~1時間のあいだ、注射箇所より遠位側の痛覚を取り除くことが出来ます。馬の遠位肢に対しても、跛行検査での診断麻酔として用いられ、疼痛の発生箇所をピンポイントで特定したり、全身麻酔下での骨折手術に併用することで、手術中および麻酔覚醒中の疼痛を...
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馬の軟便:実は怖い病気の前兆かも
馬の飼養管理 - 2022/07/19馬の軟便については、軽く考えてしまうことは禁物です。軟便や下痢症とは、糞便に含まれる水分量が正常よりも多い状態を指し、消化管での水分吸収が減っている場合と、分泌が増えている場合とがあります。幸いにも、馬の軟便は、深刻ではないケースが殆どです。しかし、軟便の原因によっては、命に関わることもあり、油断のできない病気です。また、深刻でない軟便であっても、それが長引いてしまうことで、命取りの下痢症へと進行...
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馬の文献:喉嚢蓄膿症(Seahorn et al. 1991)
文献 - 2022/07/19「二頭の馬に生じた喉嚢の類軟骨腫瘤の非外科的除去」Seahorn TL, Schumacher J. Nonsurgical removal of chondroid masses from the guttural pouches of two horses. J Am Vet Med Assoc. 1991; 199(3): 368-369.この研究論文では、喉嚢蓄膿症(Guttural pouch empyema)に起因する喉嚢の類軟骨腫瘤(Chondroid masses)に対して、非外科的除去(Non-surgical removal)が試みられた二頭の馬の症例が報告されています。この研究...
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蹄葉炎と上手に付き合っていく方法
馬の飼養管理 - 2022/07/18蹄葉炎になった馬にとって、病気とうまく付き合っていく事はとても重要です。蹄葉炎とは、蹄葉状層が剥離して、蹄骨が変位してしまう病気であり、「不治の病」とも呼ばれます。しかしこれは、この病気に罹ったら命が助からないという意味ではありません。現在では、蹄葉炎に関する知見が深まってきており、馬の蹄葉炎は、単に完治するのが難しいだけで、蹄葉炎と上手に付き合っていくことで、その馬が幸せな余生を送っていくことは...
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馬が排尿したらアブミに立つべきか?
馬の飼養管理 - 2022/07/18もし、自分が乗っている馬がオシッコをし始めたら、私たちは鐙に立ってあげるべきなのでしょうか?思い返してみると、私たちが馬に乗り始めたばかりのビギナーの頃、インストラクターから言われたのは、馬がレッスン中に排尿を始めたら、鐙に立ち上がって、鬣を掴んで、ツーポイントの姿勢を取り、馬の背中を圧迫しないようにしましょう、という指導でした。その理由としては、鞍の下の位置には馬の腎臓があるので、馬が排尿する時...
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馬の夏バテ予防対策
馬の飼養管理 - 2022/07/17本格的な夏の訪れを前に、馬の夏バテを予防する対策を再確認してみましょう。一般的に、馬は寒さには強いものの、暑熱には大変弱く、ヒトよりも低い気温でも夏バテを起こしてしまうことが知られています。その要因としては、馬には草食動物として特有な消化管の構造として、繊維質の発酵タンクである大腸からの熱発生が大きいため、高体温状態に陥りやすいことが挙げられます。また、馬は体重に占める筋肉量が多いため、基礎代謝エ...
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馬の文献:喉嚢蓄膿症(Sweeney et al. 1987)
文献 - 2022/07/17「馬の牧場におけるストレプトコッカス・エクイ感染の合併症」Sweeney CR, Whitlock RH, Meirs DA, Whitehead SC, Barningham SO. Complications associated with Streptococcus equi infection on a horse farm. J Am Vet Med Assoc. 1987; 191(11): 1446-1448.この研究論文では、馬の牧場におけるストレプトコッカス・エクイ感染(Streptococcus equi infection)(いわゆる腺疫:Strangles)に起因する合併症(Complications)...
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割れにくい蹄をつくろう
馬の飼養管理 - 2022/07/16割れにくい蹄をつくる方法はあるのでしょうか?馬に起こる裂蹄という病気は、蹄壁が割れたり、裂け目を生じてしまった状態を指し、亀裂が深部まで達してしまうと強い痛みを呈して、その馬を騎乗することが出来なくなるため、乗馬や競馬において大変重大な問題となります。裂蹄を起こした蹄に対しては、装蹄師や獣医師が、割れた箇所の蹄壁を、固定したり修復させる措置を講じます。この際、蹄壁のどの部分を裂傷しているかによって...
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関節注射のリスクを知っていますか?
馬の飼養管理 - 2022/07/16関節注射の安全性について何が分かっているのでしょうか?馬に起こる健康問題の八割は跛行であり、そのうち最も多い原因は関節炎であることが報告されています。そして、馬の関節炎の治療としては、関節内に抗炎症および軟骨保護作用のあるクスリを直接的に注入する関節注射(Joint injection)が選択されることがあります。特に、15歳以上の競技馬では、慢性的な関節痛を制御するため、年に何回か関節注射療法を繰り返しながら、...
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疝痛の治療や予防に関する33個の注意事項
馬の飼養管理 - 2022/07/15馬の疝痛を治療および予防するときに注意すべき事項をおさらいしましょう。疝痛とは、消化器疾患などにより馬が腹部疼痛を示している様子を指しますが、馬の消化器疾患の総称としても使われる用語です。馬の疝痛は、現在でも一番多い死因であり、早期診断と早期治療が重要であるにも関わらず、正確な診断が下せないまま治療方針を判断しなくてはいけないシチュエーションも多いという、ホースマンにとって大変に厄介な病気であると...
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馬の文献:喉嚢真菌症(Khairuddin et al. 2015)
文献 - 2022/07/15「馬の内頚動脈とその分枝における血管造影的な多様性」Nurul H Khairuddin, Martin Sullivan, Patrick J Pollock. Angiographic Variation of the Internal Carotid Artery and its Branches in Horses. Vet Surg. 2015; 44(6): 784-789.この研究論文では、馬の喉嚢真菌症(Guttural pouch mycosis)の診断および外科的療法の際に重要な血管造影的解剖学(Angiographic anatomy)を解明するため、50頭の馬の屠体頭頚部を用いて、...
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乗馬に転用される競走馬に気をつけること
馬の飼養管理 - 2022/07/14引退した競走馬が、乗馬として活躍していくためには、様々な点に気をつけることが大切です。引退した競走馬を、乗馬にうまく転用していくことは、日本の馬社会においても重要です。日本は欧米諸国と異なり、国内で飼養されている馬に占める競走馬の割合が、六割以上と非常に多く(欧米では1~2割程度)、引退競走馬の受け皿の一つとなる乗馬という産業の規模が、相対的に低くなりがちだと言えます。近年、引退馬のリトレーニング活...
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乾草の高騰で代わりのエサは?
馬の飼養管理 - 2022/07/14馬に給餌する乾草が手に入りにくい場合、その代わりに給餌する粗飼料は何が良いのでしょうか?ここ数年、コロナ禍や欧州での戦争の影響で、日本に輸入される乾草の価格が高騰しています。このため、乗馬倶楽部や牧場によっては、馬のエサ代を抑えるため、乾草の給餌量を減らして、他のエサに代替する必要が出てきている状況もあるようです。そのような場合には、どのような代替粗飼料を選択するのか、という事だけでなく、給餌の際...