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2022年09月のエントリー一覧

  • 馬における破骨細胞抑制剤の安全性

    話題 - 2022/09/30

    近年、馬に対して頻繁に用いられるようになってきた薬剤として、破骨細胞の抑制剤であるビスホスホネート(Bisphosphonates)があります。ここでは、このビスホスホネートの安全性に関する知見を紹介します。参考文献:Vergara-Hernandez FB, Nielsen BD, Colbath AC. Is the Use of Bisphosphonates Putting Horses at Risk? An Osteoclast Perspective. Animals (Basel). 2022 Jul 3;12(13):1722.破骨細胞とは、単球系の前駆細胞...

  • 馬の文献:息労(Camargo et al. 2007)

    文献 - 2022/09/30

    「トリメトキノール:回帰性気道閉塞の罹患馬における噴霧化投与および経口投与後の気管支拡張作用」Camargo FC, Robinson NE, Berney C, Eberhart S, Baker S, Detolve P, Derksen FJ, Lehner AF, Hughes C, Tobin T. Trimetoquinol: bronchodilator effects in horses with heaves following aerosolised and oral administration. Equine Vet J. 2007; 39(3): 215-220.この研究では、馬の回帰性気道閉塞(Recurrent airway obst...

  • 牝馬の帝王切開後の繁殖能力

    話題 - 2022/09/29

    繁殖牝馬における帝王切開の後の繁殖能力が調査されています。参考文献:Abernathy-Young KK, LeBlanc MM, Embertson RM, Pierce SW, Stromberg AJ. Survival rates of mares and foals and postoperative complications and fertility of mares after cesarean section: 95 cases (1986-2000). J Am Vet Med Assoc. 2012 Oct 1;241(7):927-34.一般的に、馬の難産の症例では、15~25%に対して帝王切開が適応され、母体の生存率は81...

  • 手術スキルは覚えにくく忘れやすい

    話題 - 2022/09/29

    海外では、獣医師の手術スキルに関して、どのような手法で学んでいくのが良いのか、という研究が行なわれています。米国のアーバン大学の研究[1]では、獣医学生に手術の縫合方法(外科結び、締め結び、ミラー結び)を習得させるため、二週間にわたる集中的講習、または、八週間にわたる持続的講習を実施して、その直後、その翌月、および、三ヶ月後における縫合手技の正確さが評価されました。その結果、集中的講習を受けた場合よ...

  • 紛らわしい馬の英単語(10選)

    未分類 - 2022/09/29

    紛らわしい馬の英単語をまとめてみます。(解答は青字をクリックして下さい)Frog (カエル) → ウマ用語ではどんな意味?(解答はこちら)Dam (ダム) → ウマ用語ではどんな意味?(解答はこちら)Irons (アイロン) → ウマ用語ではどんな意味?(解答はこちら)Chestnut (栗) → ウマ用語ではどんな意味?(解答はこちら)Pen (筆、ペン) → ウマ用語ではどんな意味?(解答はこちら)Corn (トウモロコシ) → ...

  • 厩舎に音楽を流すことの効能

    馬の飼養管理 - 2022/09/28

    馬が飼養されている厩舎では、BGMとしてクラシック音楽を流されている事がありますが、実際に馬に対してどのような効果がもたらされているのか、という研究も実施されています。参考資料:Classical Music Could Help Your Horse De-stress. Horse Illustrated: Nov7, 20116.Why You Should Play Music for Your Horse. I love horses: Aug28, 2020.Barn Beat: What Music Style is Best for Horses? EquiNews: May13, 2013.タイ国...

  • 馬の文献:息労(Couetil et al. 2005)

    文献 - 2022/09/28

    「回帰性気道閉塞の罹患馬に対するフルチカゾンプロピオン酸エステル吸引投与、プレドニゾンの経口投与、および、飼養環境改善による無作為対照試験」Couetil LL, Chilcoat CD, DeNicola DB, Clark SP, Glickman NW, Glickman LT. Randomized, controlled study of inhaled fluticasone propionate, oral administration of prednisone, and environmental management of horses with recurrent airway obstruction. Am J Vet Res....

  • 障害飛越の反抗や落下を科学する

    話題 - 2022/09/27

    乗馬における障害飛越競技は、馬術競技の一つで、障害物が設置されたコースを、乗馬して通過する技術を競う競技です。障害飛越の採点は、基本的に減点方式で行なわれ、障害物を逃避したり拒止した場合を反抗、バーを落下させたり障害を壊した場合を落下として、いずれも減点行為となりますが、反抗を二回繰り返したり、落馬や経路違反した場合などでは失権となります。今回は、障害飛越における減点(主に反抗や落下)が起こる要因...

  • 馬の行動と腸内細菌叢の関連性

    話題 - 2022/09/27

    馬の行動と腸内細菌叢の関連性について、徐々に新たな知見が示されています。参考資料:Stacey Oke, DVM, MSc. Horse Behavior and the Microbiome: What’s the Connection? The Horse, Topics, Behavior, Digestive System, Digestive Tract Problems, Horse Care, Nutrition, Vet and Professional: Nov27, 2021.近年、ヒト医療の分野において、脳の状態が腸に影響を及ぼし、逆に、腸の状態も脳に影響を及ぼす現象が研究されてお...

  • 馬の鞍傷への対処法

    馬の飼養管理 - 2022/09/26

    鞍(Saddle)は、ヒトが馬に騎乗するときに使用する馬具の一つで、腹帯で馬の背中に固定されることで、騎乗者の体を馬上で安定して支持する場所を提供することに加えて、馬の背中を保護する機能を担っています。もともと馬の骨格は、物を運ぶための進化をしていないため、馬の背中の形状は、ヒトの下半身の形状とは大きく異なります。このため、鞍は人馬の接点をもたらし、騎座での扶助を介したコミュニケーション経路となり、さら...

  • 馬の文献:息労(Cornelisse et al. 2004)

    文献 - 2022/09/26

    「回帰性気道閉塞の罹患馬に対するデキサメサゾンの経口投与および経静脈投与による治療効果」Cornelisse CJ, Robinson NE, Berney CE, Kobe CA, Boruta DT, Derksen FJ. Efficacy of oral and intravenous dexamethasone in horses with recurrent airway obstruction. Equine Vet J. 2004; 36(5): 426-430.この研究では、馬の回帰性気道閉塞(Recurrent airway obstruction)(息労:Heaves)に対する有用な治療法を検討するため...

  • 安全な馬の筋注方法

    馬の飼養管理 - 2022/09/25

    ホースマンの中には、馬に筋肉注射するときの手法について不安を持っている方もいらっしゃるかもしれません。一般的に、馬に対する薬剤の筋肉内投与は、抗生物質等の投与経路として用いられ、原則として、獣医師に投薬処置を実施してもらうことが推奨されます。しかし、通常の抗生物質は、五日間の連続投与を要することから(場合によっては七日間や十日間投与することもある)、往診料が高騰するのを避けるため、獣医師の指導に則...

  • 馬の経口投与の方法

    馬の飼養管理 - 2022/09/25

    一般的に、馬に治療薬を投与する場合には、数日間にわたる投薬を要することが多いため、獣医師の往診料の高騰を避けるため、クライアント自身が投与することが多いですが、この際には、筋内投与や静脈内投与に比較して、馬主や飼養管理者が内服薬を経口投与させる方法がより安全になります。例として、フレグモーネや輸送熱に対する抗生物質投与では、通常は、五日間または十日間にわたる投与となるため、注射針の穿刺を要する筋注...

  • 安全な馬の点眼方法

    馬の飼養管理 - 2022/09/24

    ホースマンの中には、馬の目薬がうまく差せずに苦労されている方もいらっしゃるようです。一般的に、馬の眼病を治療するためのクスリは、筋注ではなく局所的に投与する場合が多いですが、点眼したクスリは、すぐに涙で流れてしまうため、一日に3回以上の点眼を要することが殆どです。このため、眼病の治療に際しては、獣医師が処方した目薬を、馬主や飼養管理者が自ら点眼しなくてはいけない事が多いと言えます。その際、点眼処置...

  • 馬の文献:息労(Picandet et al. 2003)

    文献 - 2022/09/24

    「回帰性気道閉塞(息労)の罹患馬に対するイソフルプレドンおよびデキサメサゾンによる治療効果および許容性の比較」Picandet V, Leguillette R, Lavoie JP. Comparison of efficacy and tolerability of isoflupredone and dexamethasone in the treatment of horses affected with recurrent airway obstruction ('heaves'). Equine Vet J. 2003; 35(4): 419-424.この研究では、馬の回帰性気道閉塞(Recurrent airway obstructi...

  • 馬の疼痛エソグラムの有用性

    話題 - 2022/09/23

    馬の健康問題で最も多く見られるのが運動器疾患であり、運動器の疼痛によって歩様の左右対称性が失われた状態を、一般的には「跛行」と呼んでおり、点頭運動やヒップボブ動作によって跛行の存在が視認されてきました。しかし、近年では、騎乗時の馬の行動様式から、運動器の疼痛を検知しようという試みがあり、幾つかの馬の行動パターンが、疼痛の存在と相関することが分かってきました。もし、馬が疼痛を感じているか否かを、微妙...

  • 馬の5つの自由

    馬の飼養管理 - 2022/09/23

    馬をはじめとする飼育動物たちは、本来の自然界での生活を送ることはできず、制限された環境で飼養されています。このため、私たち人間には、飼育動物が可能な限り快適で、可能な限り苦痛を受けずに暮らしていけるようにする義務と責任があります。そこで、1960年代の英国では、飼育動物の管理方法を改善し、動物の福祉を確保することを目的として、「動物の5つの自由」(The Five Freedoms for Animal)という下記の理念が定めら...

  • 馬のリハビリ療法:10個の重要事項

    馬の飼養管理 - 2022/09/22

    馬の運動器疾患のなかでも、腱や靭帯、関節組織の損傷は、治癒に長期間を要することが多く、その治療期間中には、筋委縮によるパフォーマンスの低下を起こすことが一般的です。近年、馬の獣医療においては、ヒト医療におけるリハビリ療法と同様に、長期間の病気療養で下がってしまった馬の競技能力を、如何に短期間かつ有効に回復させていくか、という理念が生まれ、その技術や知見が深まってきています。ここでは、そのような馬の...

  • 馬の跛行をスマホで見つける?

    話題 - 2022/09/22

    馬に起こる健康問題で最も多いのは、運動器疾患に起因する跛行であることが知られています。その中でも、特に後肢の軽度跛行は、前肢の跛行に比べて、ホースマン自身で気付くのが難しいことがあるため、獣医師への相談が遅れるケースもあると考えられます。一方、近年は、スマホ機器の発達によって、様々な測定機能が付与された結果、垂直または水平方向への加速度をスマホで計測できるようになってきました。ここでは、スマホ機器...

  • 馬の旋回癖への対処法

    馬の飼養管理 - 2022/09/21

    馬の旋回癖とは、馬房の中で、円を描くように歩き回る動作を持続的に繰り返す異常行動を指し、サク癖や熊癖と並んで、馬の悪癖の一つに挙げられています。馬によっては、旋回するだけでなく、壁を蹴ったり前掻きする行動を伴うこともあり、また、パドック放牧に出したときにも旋回を繰り返す個体も見られます。ここでは、馬の旋回癖への対処法について紹介します。参考資料:Khawaja AA. Horse Stall Anxiety: All You Need to kno...

  • 馬の整体は背筋痛に効く?

    話題 - 2022/09/21

    馬の整体(Chiropractic)の効き目について疑問を持たれているホースマンの方もいらっしゃるようです。ここでは、馬の背筋痛に対する整体の効能を評価した知見を紹介します。オランダのユトレヒト大学の研究[1]では、背部に問題があると診断された10頭の温血馬に対して、整体処置(背部、頚部、骨盤領域の用手操作)が施され、処置前、処置一時間後、および、処置三週間後における運動学的歩様解析が実施されました。その結果、処...

  • 馬の拍車キズの対処法

    馬の飼養管理 - 2022/09/20

    ホースマンの皆様から、拍車キズ(Spur marks)への対処法について質問を頂くことがあります。ここでは、馬の拍車キズの病因や予防法などに関する知見を紹介します。英国のハートプリー大学の研究[1]では、馬の拍車キズと騎乗者の拍車タイプについて、ホースマンへの聞き取り調査が行なわれました。その結果、拍車の長さが32mm以上の場合、拍車キズを起こす危険性が有意に高かったことが示唆されており、また、拍車の先端構造が回...

  • 馬の文献:息労(Couetil et al. 2003)

    文献 - 2022/09/20

    「北米における馬の回帰性気道閉塞の危険因子の解析:1990~1999年の1444症例」Couetil LL, Ward MP. Analysis of risk factors for recurrent airway obstruction in North American horses: 1,444 cases (1990-1999). J Am Vet Med Assoc. 2003; 223(11): 1645-1650.この研究では、馬の回帰性気道閉塞(Recurrent airway obstruction)(息労:Heaves)の病因論(Etiology)を検討するため、1990~1999年に回帰性気道閉塞の診断...

  • 馬の寝起きを制限する飼養法

    馬の飼養管理 - 2022/09/19

    馬の寝起きを制限することのメリット馬は他の家畜と異なり、起立装置という解剖学的な特異性があるため、長期間に渡って駐立したまま生活できるという動物学的な特徴があります。このため、馬が馬房内で寝起きするのを制限して、駐立させたまま繋留する管理方法が実施可能となり、幾つかのメリットがあります。馬の年齢や体力にもよりますが、通常、一ヶ月程度であれば、馬は寝起きせずに生活することが出来ます。馬の寝起き制限が...

  • 馬のメラノーマは予防接種で防げるのか?

    話題 - 2022/09/19

    馬のメラノーマ(別名:黒色腫)は、最も多く見られる皮膚の腫瘍の一つで、15歳以上の芦毛馬における有望率は八割にのぼると言われています。幸いにも、悪性の病態を示すものは少ないものの、肛門やノドの周りにできると、排便障害や呼吸困難を呈することもあります。ここでは、馬のメラノーマの予防接種に関する現状を紹介します。参考資料:Nancy S Loving. Equine Melanoma Vaccines. The Horse, Topics: jan19, 2018.New Treat...

  • 馬装で不機嫌になる馬

    馬の飼養管理 - 2022/09/18

    馬が馬装されるときに不機嫌になるのは、一般的なことだと思われているかもしれません。しかし、英国の跛行研究者であるスー・ダイソン博士によると、馬の疼痛を上手に管理してあげることで、そのような行動が改善されることも多いと言います。参考資料:Betsy Lynch. Grumpy Horse While Tacking and Mounting? That’s Not Normal. The Horse, Topics, Behavior, Pain Managemen: Jan 29, 2022.Millares-Ramirez EM, Le Jeune SS....

  • 馬の便秘疝の治療によって腸捻転が起きる?

    話題 - 2022/09/18

    馬の結腸食滞(いわゆる便秘疝)は、最も発症率の高い消化器疾患の一つであることが知られています。便秘疝の治療では、経静脈補液によって脱水を改善しながら、経鼻チューブを通して、下剤(硫酸マグネシウム)や流動パラフィンを投与する方針が古典的ですが、近年では、経鼻チューブを通して多量(8~10L)の電解質液を投与するという経腸補液療法が実施されています。この手法では、食滞物を直接的に軟化および遊離させることか...

  • 馬の開腹術の術創感染はナゼ起こるのか?

    話題 - 2022/09/17

    馬の疝痛の外科的治療で実施される開腹術では、その10~37%で術創感染が起こることが知られています。その結果、創傷ヘルニアを続発するリスクが4~9倍高くなり、治療費の増加に繋がるのみならず、術創感染を起こした馬の生存率は有意に低下することも報告されています。このため、馬の開腹術の術創感染を予防する方策を検討するため、下記の研究では、2014~2015年にかけて、開腹術が適応された31頭の疝痛馬において、術創部サン...

  • アルファルファに関する4つの誤解

    馬の飼養管理 - 2022/09/17

    馬の飼料としてのアルファルファには、栄養学的なメリットが多いのですが、一方で、幾つかの誤解も持たれているようです。ここでは、アルファルファ乾草に関して、よく耳にする4つの誤解を紹介します。参考資料:Heather Smith Thomas. Four Misconceptions About Alfalfa. The Horse, Topics, Article, COPD, Heaves & RAO, Cushing's Disease, Hay, Kidney Problems, Laminitis (Founder), Metabolic Syndrome, Nutrition, Nutr...

  • 馬のボーンシストの螺子はラグ固定しなくても良い?

    話題 - 2022/09/16

    馬のボーンシストの螺子固定術馬のボーンシスト(軟骨下骨嚢胞)は、大腿骨の内顆に好発し、関節鏡での掻把術や抗炎症剤のシスト内投与等で治療されますが、近年では、シストを貫通するように螺子固定する外科的療法が行なわれています。螺子固定によってボーンシストが治癒する理由としては、螺子が嚢胞内腔に圧迫負荷を加えることで、骨造成を刺激することが挙げられており、このため、ボーンシストの螺子固定術では、ラグスクリ...

  • 馬の文献:息労(Leguillette et al. 2002)

    文献 - 2022/09/16

    「回帰性気道閉塞の罹患馬における肺機能と気管支肺胞洗浄液の細胞学的検査結果に対するペントキシフェリンの効果」Leguillette R, Desevaux C, Lavoie JP. Effects of pentoxifylline on pulmonary function and results of cytologic examination of bronchoalveolar lavage fluid in horses with recurrent airway obstruction. Am J Vet Res. 2002; 63(3): 459-463.この研究では、馬の回帰性気道閉塞(Recurrent airway obstru...

  • 馬における針関節鏡の将来性

    話題 - 2022/09/15

    馬の健康問題の八割は運動器疾患であり、そのうち最も多いのは関節疾患であることが知られています。馬の関節疾患の診断では、歩様検査(視診や屈曲試験)や診断麻酔(神経ブロックや関節ブロック)のほか、画像診断としては、X線検査やエコー検査が有用で、近年では、CTやMRI等の先端診断技術も応用されています。しかし、これらの検査法では、初期病態の発見が難しく、汎用性の低い手法も多いという問題点があります。関節鏡は...

  • 運動と飼料の管理で馬のコズミ予防を

    馬の飼養管理 - 2022/09/15

    ホースマンの中には、コズミをよく起こす馬の管理に苦労されている方もいらっしゃるようです。コズミとは、競走や競技のあとの数時間で、筋炎による痛みなどで強直性の歩様を示している症状を指すことが一般的です。馬のコズミは、単なる筋肉痛によるものが殆どですが、重度や頻発する場合には、強度運動によって骨格筋が融解する病気を起こしているケースもあり、これを労作性の横紋筋融解症と呼んでいます。ここでは、この横紋筋...

  • 馬の麻酔覚醒の手法

    診療 - 2022/09/14

    馬の麻酔覚醒の手法について総括です。あくまで概要解説ですので、詳細は成書や論文をご確認ください。馬は、獣医師が取り扱う家畜のなかでも、麻酔を掛けるのが最も難しい動物であることが知られており、その大きな要因の一つが、麻酔覚醒の難しさにあります。過去の知見を見ると、馬の全身麻酔では、覚醒時の事故率が1~2%に上ると言われており、犬のそれより数十倍も高いことが知られております。このため、麻酔下から安全に馬...

  • 手術手袋は二重に着けよう

    話題 - 2022/09/14

    近年のヒトの医療では、外科医が手術手袋を二重に装着することはスタンダードとなっており、その理由は、手術手袋の穿孔が意外に頻繁に起こっているエビデンスが示されてきたからです。馬の手術では、ヒトの手術と異なって、患者の血液に触れることでエイズやB型肝炎などが伝搬するリスクは無いものの、一方で、馬はヒトよりも感染に弱いため、外科医の手指に存在する細菌を術創に移してしまわないように(いくら手指をスクラブし...

  • 馬の寝違えの対処法

    馬の飼養管理 - 2022/09/13

    ホースマンの皆様は、寝違えた馬を助け起こした経験が少なからずあると思いますが、ひとつやり方を間違えると、ヒトも馬も深刻なケガをする危険があります。ここでは、馬の寝違えに対する正しい対処法についてまとめてみます。参考資料:Morgan KD. What is Stall Casting? Sports N’ Hobbies: Aug30, 2022.Summer W. Why Horses Cast and Ways to Help. ILoveHorses: Oct16, 2020.Steffanus D. Cast Horses: What To Do. Paulick ...

  • 馬の関節鏡でも局所麻酔を

    話題 - 2022/09/13

    馬の手根関節の関節鏡手術は、小片骨折片の摘出、および、変性関節疾患のクリーニング手術(軟骨病巣掻把や滑膜切除術)などの目的で実施されることが多く、競走馬の臨床において、最も頻繁に行なわれる手術の一つです。今回は、局所麻酔薬の関節内投与によって、関節鏡手術中の疼痛管理を行なった知見を紹介します。参考文献:Gaesser AM, Varner KM, Douglas HF, Barr CA, Hopster K, Levine DG. The effect of intra-articular ...

  • オス馬のシースの洗浄

    馬の飼養管理 - 2022/09/12

    オス馬のシースの解剖学ホースマンにとって、洗体やブラシ掛けなどの手入れは、楽しい仕事だと思いますが、シース(陰茎鞘)の洗浄となると、少し躊躇してしまうのかもしれません。しかし、オス馬のシースを定期的に洗浄することは、陰部の痛みや不快感を抑えるだけでなく、下部尿路の感染予防にもつながる非常に重要な作業になります。オス馬のシースは、馬の外陰部の構造物を指し、外鞘、包皮、陰茎の3つから成っています。通常...

  • 馬の文献:息労(Robinson et al. 2002)

    文献 - 2022/09/12

    「息労の治療のための三種類のコルチコステロイドの効能」Robinson NE, Jackson C, Jefcoat A, Berney C, Peroni D, Derksen FJ. Efficacy of three corticosteroids for the treatment of heaves. Equine Vet J. 2002; 34(1): 17-22.この研究では、馬の回帰性気道閉塞(Recurrent airway obstruction)(息労:Heaves)に対する有用な治療法を検討するため、九頭の回帰性気道閉塞の罹患馬を用いて、乾草給餌および藁飼料に曝露す...

  • 秋の疝痛を防ぐ7つの対策

    馬の飼養管理 - 2022/09/11

    馬における秋の疝痛馬の疝痛のなかでも、便秘疝などの一部の病気は、晩夏から初冬にかけて増加する傾向にあることが知られています。それには、数多くの因子が関与しており、①気温低下に伴って馬の飲水欲が下がること、②馬の食欲が増して早食いをしやすくなること、③牧場等では給餌内容が生草から乾草に変わっていく時期であること、などが含まれます。ここでは、これらの諸要因を踏まえて、秋季に馬が疝痛を発症するのを未然に防...

  • 馬の月盲をスマホアプリで診断?

    話題 - 2022/09/11

    馬の月盲とは、ブドウ膜炎が一定期間おきに繰り返し発症する疾患で、馬回帰性ブドウ膜炎とも呼ばれます。この病気は、慢性になると難治性で、馬の失明の最も多い原因となっており、早期診断と早期治療が重要であると言われています。このため、獣医師の眼科検査に依存しなくても、馬主や飼養管理者が、馬の眼をカメラで撮影して、人工知能が画像解析することで月盲の診断を自動で下せる、というシステムが検討されています。参考文...

  • 蹄葉炎の馬における飼養管理

    馬の飼養管理 - 2022/09/10

    蹄葉炎になった馬に対する飼養管理で悩んでいるホースマンも多いのかもしれません。蹄葉炎の馬において、体重を少し絞って、罹患蹄への負荷を軽減するのが良い場合があります(理想体重の約一割減)。その場合でも、急激にエサの量を減らすのではなく、給餌量は体重の1.5%を維持するようにします。なお、ボディコンディションスコアは、9段階中の5を維持するように努め、体重計のない牧場等では、胸囲と体長から体重を計算するこ...

  • キネシオテープは馬の腹筋に効く?

    話題 - 2022/09/10

    キネシオテープとは、正式名をキネシオロジーテープ(Kinesiology taping)と言い、伸縮性のある綿やアクリル製のテープに接着剤がついているもので、筋肉と同じ伸縮率を持ったテープだと言われています。このテープを筋肉の走行に沿って、緊張を掛けるように皮膚に貼り付けることで、体内に隙間が出来てリンパ液の流れが良くなり、新陳代謝の改善および自然治癒力の向上を誘導して、筋肉の痛みを取り除くと言われています。キネシ...

  • 膝蓋骨が上方固定したときの対処法

    馬の飼養管理 - 2022/09/09

    馬の膝蓋骨上方固定について時々、ホースマンの方々から、「馬の後膝が脱臼した!」という緊急電話を頂くことがあります。そのような場合、馬が後肢を伸ばした状態で突っ張ってしまい、飛節や膝関節を曲げられなくなった状態を指しています(球節は少し曲げ伸ばし可)。解剖学的には、馬の膝蓋骨の下方に付いている内側膝蓋靭帯が、大腿骨の内側滑車の上端に引っ掛かっることによって発症し、膝蓋骨の上方固定というのが病名になり...

  • 馬の幹細胞治療は本当に効くのか?

    話題 - 2022/09/09

    馬の運動器疾患には、屈腱炎や繋靭帯炎、関節炎などの難治性の病気も多く、抗炎症剤やヒアルロン酸の全身又は局所投与、ショックウェーブ治療、多血小板血漿の局所投与などの治療法が実施されています。また、近年では、間葉系間質細胞(Mesenchymal stromal cells)などの幹細胞を局所投与する再生医療も、様々な疾患に応用されて、良好な治療成績も報告されています。その一方で、幹細胞治療における有効投与量(注射する細胞数...

  • 競走馬は故障前に歩幅が狭くなる?

    話題 - 2022/09/08

    一般的に、競走馬の故障(運動器疾患)は、突発的に発生するのではなく、骨や腱、関節などへの微細損傷が蓄積することによって発症に至ることが知られています。つまり、強度運動による組織損傷の度合いが、組織修復の度合いを上回ってしまうと、故障を起こし易い肢の状態になると考えられています。このため、そのような微細損傷が蓄積している状態を未然に検知して、故障の前兆として認識することが出来れば、レース前の運動強度...

  • 馬の文献:息労(Jackson et al. 2000)

    文献 - 2022/09/08

    「回帰性気道閉塞(息労)の治療における環境とプレドニゾンの相互作用」Jackson CA, Berney C, Jefcoat AM, Robinson NE. Environment and prednisone interactions in the treatment of recurrent airway obstruction (heaves). Equine Vet J. 2000; 32(5): 432-438.この研究では、馬の回帰性気道閉塞(Recurrent airway obstruction)(息労:Heaves)に対する有用な治療法を検討するため、十二頭の回帰性気道閉塞の罹患馬を用...

  • 「青い光」で馬のクッシング病対策

    話題 - 2022/09/07

    馬のブルーライトマスクとクッシング病についてブルーライトマスクとは、馬に装着させる面子(マスク)の眼の部分に、青い光を発する電球が取り付けられている馬具を指します。これまで繁殖馬においては、夜間に馬房の証明を灯すことで概日リズムを調整して、繁殖期の初回排卵を早めるというライトコントロールという管理法が実践されてきましたが、ブルーライトマスクを装着させることで、屋内照明を同じように作用して、放牧場で...

  • マイクロチップで馬の検温

    話題 - 2022/09/07

    馬の体温を測るために、体内に埋め込んだマイクロチップを使う方法が検討されています。馬の体温は、様々な病気で上がり、その診断や経過観察に必要であるのみならず、暑熱環境での運動後のクールダウンの目安としたり(熱射病予防のため)、妊娠牝馬の分娩タイミングを事前に知るためにも応用されています(分娩の数時間前から体温低下するため)。一般的に、馬の体温は直腸で測られますが、手間が掛かったり、馬に蹴られるリスク...

  • 馬の喉詰まりを予防する10個の対策

    馬の飼養管理 - 2022/09/06

    ホースマンの中には、頻繁に喉詰まりを起こす馬に苦労されている方もいらっしゃるのかもしれません。喉詰まりとは、食道梗塞のことを指し、食道に飼料が詰まって通過障害を起こす病気です。また、喉詰まりが悪化すると、誤嚥性肺炎を続発して命に関わることもあるので、シッカリとした予防対策を取ることが大切です。喉詰まりは高齢馬に好発することが知られており、15歳以上の馬では、食道梗塞を起こすリスクが3.1倍も高いことが...

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プロフィール

Rowdy Pony

Author:Rowdy Pony
名前: 石原章和
性別: 男性
年齢: 40代
住所: 茨城県
職業: 獣医師・獣医学博士
叩けよ、さらば開かれん!

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