2022年12月のエントリー一覧
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馬の腰萎での剖検と発症素因
話題 - 2022/12/31馬の腰萎では、原因疾患を生前に確定診断できない症例も多く、剖検によって病態を精査すると共に、発症素因を解明して可能な予防対策を取ることが必要となります。下記の研究では、米国のUCデービスの獣医大学病院において、2005~2017年にかけて、剖検が実施された2,861頭の症例馬(うち腰萎馬は316頭)の医療記録の回顧的調査、および、オッズ比(OR)の算出による発症素因の解析が行なわれました。参考文献:Hales EN, Aleman M...
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姿勢動揺による馬の腰萎の診断
話題 - 2022/12/31馬の神経症状(いわゆる腰萎)は、その有無や重篤度を主観的に評価するのが難しく、神経器疾患の早期診断を困難にする場合も多いことが知られています。ここでは、姿勢動揺(Postural sway)を計測する手法を評価した知見を紹介します。この研究では、六頭の健常馬を圧迫センサー板のうえに駐立させて、重心安定性を測定することで姿勢動揺の評価が行なわれました。参考文献:Clayton HM, Bialski DE, Lanovaz JL, Mullineaux DR. ...
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歩様解析による馬の腰萎の診断
話題 - 2022/12/30馬の神経症状(いわゆる腰萎)は、その有無や重篤度を主観的に評価するのが難しく、神経器疾患の早期診断を困難にする場合も多いことが知られています。ここでは、運動学的歩様解析(Kinematic gait analysis)の手法を用いて、腰萎馬と健常馬の鑑別診断をするという知見を紹介します。この研究では、米国のミズーリ大学の馬病院において、神経症状を呈した腰萎馬12頭と健常馬12頭を歩様解析して、馬体の複数箇所の位置不確実性を...
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目隠しが馬の腰萎症状に及ぼす影響
話題 - 2022/12/30馬の神経症状(いわゆる腰萎)は、その有無や重篤度を主観的に評価するのが難しく、神経器疾患の早期診断を困難にする場合も多いことが知られています。ここでは、馬に目隠しをすることで腰萎症状を鮮明にして、主観的な歩様検査の信頼性を上げるという知見を紹介します。この研究では、英国の王立獣医大学において、軽度から中程度の腰萎症状を呈している神経器疾患の罹患馬21頭を用いて、常歩時の歩様解析で腰萎症状を定量化しな...
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馬の文献:運動誘発性肺出血(Hinchcliff et al. 2010)
文献 - 2022/12/30「サラブレッド競走馬における運動誘発性肺出血の危険因子」Hinchcliff KW, Morley PS, Jackson MA, Brown JA, Dredge AF, O'Callaghan PA, McCaffrey JP, Slocombe RF, Clarke AF. Risk factors for exercise-induced pulmonary haemorrhage in Thoroughbred racehorses. Equine Vet J Suppl. 2010; (38): 228-234.この研究では、馬の運動誘発性肺出血(Exercise-induced pulmonary hemorrhage)の危険因子(Risk factors)を検討...
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馬の衝撃波治療での創傷治癒向上
話題 - 2022/12/29体外衝撃波治療(Extracorporeal shock wave therapy)は、もともと結石などの硬い物質を破砕する目的で使用されてきましたが、近年、腱靭帯組織の除痛や組織修復の効果があると言われるようになり、馬の運動器疾患等に対しても適応されています[1-3]。さらに、馬の皮膚の創傷部に衝撃波を当てることで、創傷治癒を促進できるという報告もあり[4,5]、そのメカニズムを検討した知見も示されています。下記の研究では、14頭の健常馬...
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馬の衝撃波治療とPRP治療の併用
話題 - 2022/12/29体外衝撃波治療(Extracorporeal shock wave therapy)は、もともと結石などの硬い物質を破砕する目的で使用されてきましたが、近年、腱靭帯組織の除痛や組織修復の効果があると言われるようになり、馬の運動器疾患等に対しても適応されています[1-3]。一方、馬の腱靭帯疾患に対しては、多血小板血漿(Platelet-rich plasma: PRP)を病巣内投与して、成長因子を局所的に作用させる治療法も実施されており、衝撃波とPRPを併用した場...
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馬の衝撃波治療での鎮痛作用
話題 - 2022/12/28体外衝撃波治療(Extracorporeal shock wave therapy)は、もともと結石などの硬い物質を破砕する目的で使用されてきましたが、近年、腱靭帯組織の除痛や組織修復の効果があると言われるようになり、馬の運動器疾患等に対しても適応されています[1-3]。一方で、衝撃波治療を施した部位では、痛みを感じる神経線維を変性させたり、痛みの伝達物質を枯渇させることで、好ましくない鎮痛作用を及ぼしてしまうという懸念もあります。こ...
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馬の文献:運動誘発性肺出血(Hinchcliff et al. 2009)
文献 - 2022/12/28「フロセマイドによるサラブレッド競走馬の運動誘発性肺出血の予防効果」Hinchcliff KW, Morley PS, Guthrie AJ. Efficacy of furosemide for prevention of exercise-induced pulmonary hemorrhage in Thoroughbred racehorses. J Am Vet Med Assoc. 2009; 235(1): 76-82.この研究では、馬の運動誘発性肺出血(Exercise-induced pulmonary hemorrhage)に有用な予防法を検討するため、167頭のサラブレッド競走馬に対して、フロセ...
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馬の滑膜感染の関節鏡での予後指標
話題 - 2022/12/27関節鏡手術は、馬の無菌手術のなかで、最も頻繁に実施されるものの一つで、OCDや小片骨折の摘出の他にも、多様な関節疾患の治療に適応されています。ここでは、滑膜感染を起こした214頭の症例(六ヶ月齢以上)での関節鏡の治療成績、および、オッズ比(OR)の算出による予後指標に関する知見を紹介します。参考文献:Milner PI, Bardell DA, Warner L, Packer MJ, Senior JM, Singer ER, Archer DC. Factors associated with survi...
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蹄骨の裏側の骨片での関節鏡
話題 - 2022/12/27関節鏡手術は、馬の無菌手術のなかで、最も頻繁に実施されるものの一つで、OCDや小片骨折の摘出の他にも、多様な関節疾患の治療に適応されています。ここでは、蹄骨の裏側(掌側または底側)に骨軟骨片を発生した四頭の跛行馬に対して、関節鏡手術を実施した知見を紹介します。参考文献:Lloyd KA, Smith MR, Whitton RC, Stent AW, Steel CM. Osteochondral fragmentation of the palmarolateral/plantarolateral aspect of the d...
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馬の蹄関節での関節鏡の長期的予後
話題 - 2022/12/26関節鏡手術は、馬の無菌手術のなかで、最も頻繁に実施されるものの一つで、OCDや小片骨折の摘出の他にも、多様な関節疾患の治療に適応されています。ここでは、馬の蹄関節での関節鏡手術における、病態の傾向と長期的予後を評価した知見を紹介します。この研究では、米国のテキサス州の馬病院にて、2012~2017年にかけて、蹄関節の変性関節疾患の治療のために、関節鏡手術が実施された10頭の跛行馬における医療記録の回顧的解析が...
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馬の脛骨の顆間隆起骨折での関節鏡
話題 - 2022/12/26関節鏡手術は、馬の無菌手術のなかで、最も頻繁に実施されるものの一つで、OCDや小片骨折の摘出の他にも、多様な関節疾患の治療に適応されています。ここでは、馬の脛骨の顆間隆起骨折での関節鏡治療を評価した知見を紹介します。この研究では、米英の九ヶ所の馬病院において、2004~2016年にかけて、脛骨の顆間隆起骨折の治療のために関節鏡が実施された21頭の跛行馬における医療記録の回顧的解析が行なわれました。参考文献:Rub...
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馬の後膝での関節鏡の長期的予後
話題 - 2022/12/25関節鏡手術は、馬の無菌手術のなかで、最も頻繁に実施されるものの一つで、OCDや小片骨折の摘出の他にも、多様な関節疾患の治療に適応されています。ここでは、馬の後膝での関節鏡手術における長期的予後を評価した知見を紹介します。この研究では、米国のペンシルバニア大学の馬病院にて、1993~2006年にかけて、膝関節の変性関節疾患、半月板損傷、関節内軟部組織の損傷を治療するため、関節鏡手術が実施された44頭の跛行馬にお...
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馬の文献:運動誘発性肺出血(Epp et al. 2006)
文献 - 2022/12/25「最大下運動における運動誘発性肺出血」Epp TS, McDonough P, Padilla DJ, Gentile JM, Edwards KL, Erickson HH, Poole DC. Exercise-induced pulmonary haemorrhage during submaximal exercise. Equine Vet J Suppl. 2006; (36): 502-507.この研究では、馬の運動誘発性肺出血(Exercise-induced pulmonary hemorrhage)の病因論(Etiology)を解明するため、五頭の健常なサラブレッドを用いて、最大下運動(Submaximal exercis...
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気性の難しい馬を獣医はどう御するか?
話題 - 2022/12/24馬の獣医師の仕事では、馬に対して不快感や軽度の痛みを伴う作業をすることも多いことから、気性の難しい暴れ馬をどのように制御していくかは、業務上傷害を最小限にするためにも大切です。ここでは、気性の難しい馬の御する手法や業務上傷害の状況などを調査した知見を紹介します。この研究では、英国の168人の馬獣医師に対して、気性の難しい馬の取り扱いや業務上傷害等に関する聞き取り調査が行なわれました。参考文献:Pearson...
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馬が蹴ったときの蹄鉄の有無の差
話題 - 2022/12/24蹴りグセのある気性の難しい馬では、後肢で蹴ったときのダメージを少しでも軽減するため、後肢の蹄をハダシにすることもありますが、本当にそれは効果があるのでしょうか?ここでは、蹄鉄の有無によって、馬が蹴ったときの破壊力が変化するのかを実験した知見を紹介します。この研究では、34頭の馬の屠体頭部(眼窩部)に対して、角質素材(ハダシの蹄を再現)または鋼鉄素材のインパクター(蹄鉄を着けた蹄を再現)を7~10m/秒の...
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馬同士の喧嘩を防ぐには
話題 - 2022/12/23一般的に馬は、他の家畜(牛/豚/羊など)よりも筋力が強いため、多頭での放牧時に喧騒が起こると、咬傷や蹴傷による外傷を生じる可能性が高いと言えます。ここでは、馬群内での喧嘩による外傷の発症率や、それに関わる危険因子を調査した知見を紹介します。この研究では、スイス国内の馬牧場に対して聞き取り調査が行なわれ、計2,912頭の飼養馬における、馬同士の喧嘩(咬傷や蹴傷)を含む健康問題の年間発生状況(獣医師の往診を...
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馬の文献:運動誘発性肺出血(Costa et al. 2006)
文献 - 2022/12/23「ブラジルの平地競走のサラブレッドにおいて、レース距離、馬場状態、レースの季節が、運動誘発性肺出血に与える影響の評価」Costa MF, Thomassian A. Evaluation of race distance, track surface and season of the year on exercise-induced pulmonary haemorrhage in flat racing thoroughbreds in Brazil. Equine Vet J Suppl. 2006; (36): 487-489.この研究では、馬の運動誘発性肺出血(Exercise-induced pulmonary hemorrh...
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高齢馬の疝痛での治療と予後
話題 - 2022/12/22近年、馬の寿命が延びて、高齢馬の飼養頭数が増えるに連れて、高齢期における病気の治療や健康管理が重要になってきています。ここでは、高齢馬での疝痛における治療と予後を調査した知見を紹介します。この研究では、米国のペンシルバニア大学の馬病院において、2000~2006年にかけて疝痛の診療を受けた300頭の高齢馬(16歳以上)での治療内容や生存率が、300頭の対照馬(4~15歳、疝痛馬)と比較され、更に、オッズ比(OR)の算...
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高齢馬の疝痛での臨床症状
話題 - 2022/12/22近年、馬の寿命が延びて、高齢馬の飼養頭数が増えるに連れて、高齢期における病気の治療や健康管理が重要になってきています。ここでは、高齢馬での疝痛における臨床症状を調査した知見を紹介します。この研究では、米国のペンシルバニア大学の馬病院において、2000~2006年にかけて疝痛の診療を受けた300頭の高齢馬(16歳以上)での症状や体液検査所見が、300頭の対照馬(4~15歳、疝痛馬)と比較して解析されました。参考文献:S...
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高齢馬の健康管理と好発疾患
話題 - 2022/12/21近年、馬の寿命が延びて、高齢馬の飼養頭数が増えるに連れて、高齢期における病気の治療や健康管理が重要になってきています。ここでは、高齢馬での健康管理の現状を調査した知見を紹介します。この研究では、英国の20箇所の馬病院の登録馬から無作為に抽出された高齢馬(15歳以上)の馬主や管理者に対して、手紙にて自馬の健康管理や病気に関する聞き取り調査が実施されました。参考文献:Ireland JL, Clegg PD, McGowan CM, McKa...
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馬の文献:運動誘発性肺出血(Hinchcliff et al. 2005b)
文献 - 2022/12/21「気管気管支内視鏡検査による馬の運動誘発性肺出血の評価」Hinchcliff KW, Jackson MA, Brown JA, Dredge AF, O'Callaghan PA, McCaffrey JP, Morley PS, Slocombe RE, Clarke AF. Tracheobronchoscopic assessment of exercise-induced pulmonary hemorrhage in horses. Am J Vet Res. 2005; 66(4): 596-598.この研究では、馬の運動誘発性肺出血(Exercise-induced pulmonary hemorrhage)に有用な診断法を検討するため、747頭の...
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馬の難産での組織的治療
話題 - 2022/12/20馬の難産は救急医療の一つで、短時間で適切な判断と処置を下すことで、子馬と母馬の命を救うことが可能になります。ここでは、馬の難産に対する組織的治療プロトコル(CDMP: Coordinated dystocia management protocol)の効果を検証した知見を紹介します。この研究では、米国のペンシルバニア大学の馬病院において、1991~2004年にかけて診療を受けた71頭の難産症例における医療記録の回顧的解析が行なわれました。参考文献:Nort...
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馬の難産の原因と重篤度
話題 - 2022/12/20馬の難産は救急医療の一つで、短時間で適切な判断と処置を下すことで、子馬と母馬の命を救うことが可能になります。ここでは、馬の難産の原因や重篤度によって、生存率や合併症に及ぼす影響を調査した知見を紹介します。この研究では、イタリアのボローニャ大学の獣医病院において、2004~2020年にかけて診察を受けた、222頭のスタンダードブレッドの妊娠牝馬(正常分娩165頭、難産57頭)における医療記録の回顧的解析が行なわれま...
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馬の難産の前兆
話題 - 2022/12/19馬の難産は救急医療の一つで、短時間で適切な判断と処置を下すことで、子馬と母馬の命を救うことが可能になります。ここでは、馬の難産の発生に関わる要因と影響を評価した知見を紹介します。この研究では、米国のコロラド州の繁殖牧場にて、2002~2010年における1,047件の出産での、妊娠期間、出産する時間帯、難産の発生状況などの回顧的調査が行なわれました。参考文献:McCue PM, Ferris RA. Parturition, dystocia and foal s...
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馬の難産へのアプローチ
話題 - 2022/12/19馬の難産は救急医療の一つで、短時間で適切な判断と処置を下すことで、子馬と母馬の命を救うことが可能になります。ここでは、二次診療施設での馬の難産処置に関して、アプローチ方針と治療成績を検証した知見を紹介します。この研究では、米国のケンタッキー州の馬病院にて、1986~1999年にかけて実施された247件の難産における医療記録の回顧的解析が行なわれました。参考文献:Byron CR, Embertson RM, Bernard WV, Hance SR, B...
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ミニチュアホースの疝痛での開腹術
話題 - 2022/12/18ミニチュアホースは、馬体の大きさが馬と大きく違うだけでなく、発症する病気も特徴的であることが知られており、疝痛治療においても、この品種に特有な知識と技術が必要になってきます。ここでは、ミニチュアホースの疝痛での開腹術の治療成績を調査した知見を紹介します。この研究では、米国のミシガン州立大学の大動物病院において、1993~2006年にかけて、疝痛治療のため外来して開腹術が実施された57頭のミニチュアホースでの...
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新生子馬の疝痛での予後
話題 - 2022/12/18ヒト医療に産婦人科や小児科があるのと同様に、生まれたばかりの新生子馬の病気に対する獣医療では、成馬とは違った知識と技術が必要になります。ここでは、新生子馬の疝痛での治療成績を評価した研究を紹介します。この研究では、米国のペンシルバニア大学の馬病院において、2000~2010年にかけて、疝痛の診断や治療が行なわれた137頭の新生子馬(30日齢以下)での医療記録の回顧的解析が行なわれました。参考文献:Mackinnon MC,...
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子馬の菌血症と将来の競走能力
話題 - 2022/12/17子馬の病気を治療するときには、経済動物である馬として、将来的な運動能力に及ぼされる影響も考慮する必要があります。ここでは、子馬の菌血症(Bacteremia)が治った後、将来的に競走馬としてのレース能力に及ぼす影響を評価した知見を紹介します。この研究では、米国のフロリダ大学の大動物病院において、1982~2007年にかけて、菌血症の治療を受けた423頭の子馬を対象として、生存率に関わる因子の解析と(オッズ比[OR]の算出...
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馬の文献:運動誘発性肺出血(Hinchcliff et al. 2005a)
文献 - 2022/12/17「サラブレッド競走馬における運動誘発性肺出血と競走能力の関係」Hinchcliff KW, Jackson MA, Morley PS, Brown JA, Dredge AE, O'Callaghan PA, McCaffrey JP, Slocombe RE, Clarke AE. Association between exercise-induced pulmonary hemorrhage and performance in Thoroughbred racehorses. J Am Vet Med Assoc. 2005; 227(5): 768-774.この研究では、馬の運動誘発性肺出血(Exercise-induced pulmonary hemorrhage)と競走...
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馬の腰仙椎での内視鏡検査
話題 - 2022/12/16馬の神経器疾患の診断においては、X線検査や脊髄造影検査が実施されますが、ヒトや犬猫と異なり、MRI検査による脊髄自体の評価は困難であることから、補助的な診断手法として、脊髄の内視鏡検査が試みられています。ここでは、米国のノースカロライナ州立大学において、7頭の健常馬を用いて、腰仙椎の内視鏡検査を実施した知見を紹介します。参考文献:Shrauner B, Blikslager A, Davis J, Campbell N, Law M, Lustgarten M, Pran...
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馬の頚椎での内視鏡検査
話題 - 2022/12/16馬の神経器疾患の診断においては、X線検査や脊髄造影検査が実施されますが、ヒトや犬猫と異なり、MRI検査による脊髄自体の評価は困難であることから、補助的な診断手法として、脊髄の内視鏡検査が試みられています。ここでは、米国のミシガン州立大学において、馬の頚椎狭窄性脊髄症(いわゆるウォブラー症候群)に対して、頚椎の内視鏡検査を実施した症例報告を紹介します。参考文献:Prange T, Carr EA, Stick JA, Garcia-Perei...
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馬の脳脊髄液検査での採取方法の影響
話題 - 2022/12/15脳脊髄液は、脳や神経の保護、栄養補給、老廃物排出の役目を担っており、神経器の病気で変化することから診断に有用であることが知られています。特に、馬ではMRI検査が困難であるため、神経器疾患の診断のためには脳脊髄検査の重要性が高いと言えます。ここでは、馬の脳脊髄液の採取箇所と、その検査値との関連性について調査した知見を紹介します。この研究では、米国のジョージア大学において、15頭の健常馬と9頭の神経器疾患の...
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エコー誘導での馬の脳脊髄液の採取法
話題 - 2022/12/15馬における新しい脳脊髄液の採取法が試みられています。Pease A, Behan A, Bohart G. Ultrasound-guided cervical centesis to obtain cerebrospinal fluid in the standing horse. Vet Radiol Ultrasound. 2012 Jan-Feb;53(1):92-5.脳脊髄液は、脳や神経の保護、栄養補給、老廃物排出の役目を担っており、神経器の病気で変化することから診断に有用であることが知られています。特に、馬ではMRI検査が困難であるため、神経器疾患...
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疝痛馬での開腹術の適応における“決定木”
話題 - 2022/12/14疝痛馬を診察する獣医師にとって、いつ開腹術が必要だと判断するかは迷い処かもしれません。ここでは、疝痛馬の症状や検査所見に基づいて、開腹術の適応を判断するための決定木(ディシジョンツリー)の作成を試みた知見を紹介します。この研究では、デンマークのコペンハーゲン大学において、1994~1997年にかけて、490頭の疝痛馬の症状や検査所見に基づいて、重症化に関与する危険因子のオッズ比(OR)算出、および、開腹術の判...
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馬の疝痛症状での重要性の違い
話題 - 2022/12/14疝痛馬を診察する獣医師にとって、どの疝痛症状を重要視するかは意見の分かれるところかもしれません。ここでは、前掻きなどの馬の疝痛症状のうち、どれが疝痛の重症化と関連が深いかを検証した知見を紹介します。この研究では、英国の獣医大学病院において、2012~2013年にかけて診察された1,016頭の疝痛馬において、前掻きなどの諸症状と、重症化(開腹術や安楽殺になった場合)との関連性について、オッズ比(OR)の算出による...
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疝痛馬の痛がり方による手術適応の判断
話題 - 2022/12/13疝痛馬を診察する獣医師にとって、いつ開腹術が必要だと判断するかは迷い処かもしれません。ここでは、疝痛馬への鎮痛剤投与と、開腹術に踏み切るという判断との関連性を評価した知見を紹介します。この研究では、米国のヴァージニア州の馬病院において、米国馬臨床医協会の会員などへの聞き取りを行ない、疝痛馬の診療における鎮痛剤の投与、疼痛症状の度合い、および、開腹術を要したかの判断についての関連性が調査され、オッズ...
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馬の文献:運動誘発性肺出血(Newton et al. 2005)
文献 - 2022/12/13「英国の競走馬における鼻出血の危険因子:運動衝撃誘発性の外傷が運動誘発性肺出血の病因に関わっているという証拠」Newton JR, Rogers K, Marlin DJ, Wood JL, Williams RB. Risk factors for epistaxis on British racecourses: evidence for locomotory impact-induced trauma contributing to the aetiology of exercise-induced pulmonary haemorrhage. Equine Vet J. 2005; 37(5): 402-411.この研究では、馬の運動誘発性肺...
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アルファキサロンでの馬の点滴麻酔
話題 - 2022/12/12点滴麻酔は、全静脈麻酔(Total intravenous anesthesia)とも呼ばれ、麻酔薬を持続的に点滴で投与することで全身麻酔を維持する手法で、往診現場でも短時間の手術を実施することが可能となります。ここでは、アルファキサロンを用いた点滴麻酔に関する知見を紹介します。参考文献:Aoki M, Wakuno A, Kushiro A, Mae N, Kakizaki M, Nagata SI, Ohta M. Evaluation of total intravenous anesthesia with propofol-guaifenesin-me...
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プロポフォールでの馬の点滴麻酔
話題 - 2022/12/12点滴麻酔は、全静脈麻酔(Total intravenous anesthesia)とも呼ばれ、麻酔薬を持続的に点滴で投与することで全身麻酔を維持する手法で、往診現場でも短時間の手術を実施することが可能となります。ここでは、プロポフォールを用いた点滴麻酔に関する知見を紹介します。参考文献:Ishizuka T, Itami T, Tamura J, Saitoh Y, Saitoh M, Umar MA, Miyoshi K, Yamashita K, Muir WW. Anesthetic and cardiorespiratory effects of pro...
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ケタミンでの馬の点滴麻酔
話題 - 2022/12/11点滴麻酔は、全静脈麻酔(Total intravenous anesthesia)とも呼ばれ、麻酔薬を持続的に点滴で投与することで全身麻酔を維持する手法で、往診現場でも短時間の手術を実施することが可能となります。ここでは、ケタミンを用いた点滴麻酔に関する知見を紹介します。参考文献:Hubbell JA, Aarnes TK, Lerche P, Bednarski RM. Evaluation of a midazolam-ketamine-xylazine infusion for total intravenous anesthesia in horses. Am...
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馬の文献:運動誘発性肺出血(Kindig et al. 2003)
文献 - 2022/12/11「坂路走行はサラブレッドの肺出血を増加させる」Kindig CA, Ramsel C, McDonough P, Poole DC, Erickson HH. Inclined running increases pulmonary haemorrhage in the Thoroughbred horse. Equine Vet J. 2003; 35(6): 581-585.この研究では、馬の運動誘発性肺出血(Exercise-induced pulmonary hemorrhage)の病因論(Etiology)を検証するため、六頭の健常なサラブレッドを用いて、平坦もしくは傾斜を付けたトレッドミル運動...
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馬でのHA塗装ピンキャスト固定法
話題 - 2022/12/10ピンキャスト(Transfixation pin cast)とは、馬の骨折の治療法の一つで、長骨を貫通させたピンを、キャスト壁内に埋め込むことで、骨折部への荷重を迂回させて治癒を促すという外固定法になります。ここでは、骨増勢を促進するハイドロキシアパタイト(HA)で塗装したピンを用いて、14頭の馬へのピンキャスト固定を実施した知見を紹介します。参考文献:Lescun TB, Baird DK, Oliver LJ, Adams SB, Hawkins JF, Moore GE. Compar...
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ピンキャストでの馬の管骨骨折の治療
話題 - 2022/12/10ピンキャスト(Transfixation pin cast)とは、馬の骨折の治療法の一つで、橈骨または管骨を貫通させたピンを、全肢または半肢キャストに埋め込むことで、骨折部への荷重を迂回させて治癒を促すという外固定法になります。ここでは、米国のパデュー大学の大動物病院にて、管骨又は指骨骨折を呈した37頭の馬に対して、ピンキャスト治療を実施した症例報告を紹介します。参考文献:Lescun TB, McClure SR, Ward MP, Downs C, Wilson ...
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ピンキャストでの馬の指骨粉砕骨折の治療
話題 - 2022/12/09ピンキャスト(Transfixation pin cast)とは、馬の骨折の治療法の一つで、管骨を貫通させたピンを、半肢キャストに埋め込むことで、骨折部への荷重を迂回させて治癒を促すという外固定法になります。ここでは、コロラド州立大学の大動物病院にて、指骨の粉砕骨折を呈した20頭の馬に対して、ピンキャスト治療を実施した症例報告を紹介します。参考文献:Joyce J, Baxter GM, Sarrafian TL, Stashak TS, Trotter G, Frisbie D. Use ...
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馬の文献:運動誘発性肺出血(Newton et al. 2002)
文献 - 2022/12/09「調教期の若齢サラブレッドにおける運動誘発性肺出血と炎症性気道疾患の関連性の証拠」Newton JR, Wood JL. Evidence of an association between inflammatory airway disease and EIPH in young Thoroughbreds during training. Equine Vet J Suppl. 2002; (34): 417-424.この研究では、馬の運動誘発性肺出血(Exercise-induced pulmonary hemorrhage)の病因論(Etiology)および危険因子(Risk factor)を検証するため、英国の...
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馬の日帰り手術のリスク
話題 - 2022/12/08馬という動物にとって、馬運車での輸送は、肉体的負担やストレスの多い行為であるため、馬体への影響を考慮してあげることが大切です。ここでは、馬の日帰り手術で起こるような、輸送、絶食、全身麻酔などの負荷が、馬体に与える影響について調査した知見を紹介します。この研究では、8頭の健常馬を用いて、安静時、輸送後、絶食後、全身麻酔の24,48,72時間後における、糞便内の細菌組成の遺伝子学的解析が行なわれました。参考文...
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競技馬の当日輸送のリスク
話題 - 2022/12/08馬という動物にとって、馬運車での輸送は、肉体的負担やストレスの多い行為であるため、馬体への影響を考慮してあげることが大切です。ここでは、馬が競技会やレースの当日に輸送される状況のように、輸送と運動の複合作用について調査した知見を紹介します。この研究では、8頭の健常馬を用いて、一時間の輸送の直後に30分間の運動負荷を掛けて(4頭)、輸送前、輸送後、運動直後、および、運動の1,2,4,8時間後における、血液検査...
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馬運車での繋留法の影響
話題 - 2022/12/07馬という動物にとって、馬運車での輸送は、肉体的負担やストレスの多い行為であるため、馬体への影響を考慮してあげることが大切です。ここでは、馬運車の内部での繋留法が、馬の健康状態に及ぼす影響ついて調査した知見を紹介します。この研究では、10頭の健常馬を用いて、24時間の輸送中に、頭絡を左右の曳き縄で張り馬にした状態、もしくは、広い区画に自由起立させた状態にして、輸送前と輸送後における身体検査や血液検査が実...