2023年04月のエントリー一覧
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馬着の金具には注意しよう
馬の飼養管理 - 2023/04/30馬着は、気温の変動や害虫、物理的な侵襲などから、愛馬の体を守ってくれますが、それが正しく機能するよう、常に注意を払うことも大切です。ここでは、馬着を小まめにチェックすることの重要性を解説した知見を紹介します。参考資料:Stephanie L. Church, Editorial Director. Be Sure To Check (and Fix) This Common Horse Blanket Issue. Commentary, Farm and Barn, Horse Care, Seasonal Care, Tack, Equipment & Products,...
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馬に対するセフチオフルの使い方
話題 - 2023/04/29セファロスポリン系の抗生物質は、1964年に初めて市販されるようになって以降、ヒト医療と獣医療の両方でポピュラーになってきました。世界的に見ても、その使用は2000~2015年にかけて著しく増加し、発展途上国でのセファロスポリンの使用量が399%も増加したことが知られています。セフチオフルは、第三世代のセフェロスポリンであり、多くのグラム陰性菌および陽性菌に効くことから、全身投与薬として馬の治療にも一般的に使用さ...
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馬の文献:離断性骨軟骨炎(Relave et al. 2009)
文献 - 2023/04/28「下腿足根関節の骨軟骨症の診断におけるX線検査とエコー検査の比較:前向き研究」Relave F, Meulyzer M, Alexander K, Beauchamp G, Marcoux M. Comparison of radiography and ultrasonography to detect osteochondrosis lesions in the tarsocrural joint: a prospective study. Equine Vet J. 2009 Jan;41(1):34-40. この症例論文では、馬の飛節の離断性骨軟骨炎(OCD)の診断法を確立させるため、2006〜2007年にかけて、カナ...
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調馬索による馬の関節への影響
馬の飼養管理 - 2023/04/24馬の調馬索運動(ロンジング)は、様々な馬術競技のトレーナーや馬主によって行なわれる一般的な運動方法であり、若齢馬を鞍付けする際に使用されたり、競技馬の調教を進めるために使われたりする事があります。しかし、近年の研究では、調馬索でもたらされる効果を考慮することが重要であるという警鐘が鳴らされており、調馬索の実施者は、馬が回転運動するときの生物力学を理解し、関節組織の健康と、馬の競技キャリアを長期的に...
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乗馬に役立つスマホアプリ
馬の飼養管理 - 2023/04/23近年のスマートフォンは、単に携帯電話機としての機能だけでなく、情報端末として私達の生活の多くの場面で役立っています。ここでは、乗馬スポーツに役立つスマホアプリについての記事を紹介します。参考資料:Laura Boynton. Apps for Equestrians. Horse Illustrated, Equestrian Lifestyle, Horse Entertainment, Tack and Equipment, Horse and Rider Equipment, Horse Care, Horse Ownership: Feb7, 2023.アプリ1:Equilab:...
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馬の仙腸関節の注射での合併症
話題 - 2023/04/22仙腸関節とは、背骨と骨盤を連結しているL字型の関節で、この部位での疼痛は、ハンター飛越や障害飛越などの競技馬に好発します。一般的に、馬の仙腸関節は、画像診断をするのが困難な箇所であるため、関節内への局所麻酔薬の注入(診断麻酔)によって、仙腸関節での疼痛の限局化が試みられる事があります。また、治療薬を局所投与する目的で、関節注射が実施されることもあります。ここでは、馬の仙腸関節注射における合併症に関...
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馬の文献:離断性骨軟骨炎(Simon et al. 2004)
文献 - 2023/04/21「23頭のスタンダードブレッド競走馬の基節骨近位底軸側に生じた骨軟骨片に対する電気焼烙を用いた関節鏡的摘出術」Simon O, Laverty S, Boure L, Marcoux M, O Szoke M. Arthroscopic removal of axial osteochondral fragments of the proximoplantar aspect of the proximal phalanx using electrocautery probes in 23 standardbred racehorses. Vet Surg. 2004 Jul-Aug;33(4):422-7. この症例論文では、馬の離断性骨軟骨炎(O...
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馬の理学療法での指針と手法
馬の飼養管理 - 2023/04/17馬の健康問題のうち、実に八割を占めているのが運動器疾患であり、その治療のためには、クスリの投与や手術など、様々な内科的および外科的療法が適応されています。一方で、運動器機能の回復や維持を目的として、物理的手段を用いる手法もあり、一般的に「理学療法(Physical Therapy)」と呼ばれています。ここでは、馬の運動器疾患に対する理学療法に関して、その基本的な指針や手法を解説した記事を紹介します。参考資料:Shel...
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馬の胃潰瘍に対する筋注薬の作用
話題 - 2023/04/16馬は、胃潰瘍を起こし易い動物であることが知られており、その治療や予防のために、胃酸を抑える作用を持つオメプラゾール(プロトンポンプ抑制剤)の投与が行なわれています。通常、オメプラゾールは、毎日の経口投与を要することになりますが、近年の研究では、徐放性に遊離するオメプラゾール製剤が開発され、これを週に一回だけ筋肉内投与することで、経口薬と同等な効能が得られることが分かってきています[1,2]。ここでは、...
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舟状骨のX線では蹄尖挙上より後踏肢勢
話題 - 2023/04/15乗用馬に好発するナビキュラー症候群では、舟状骨のX線検査が有用です。特に、蹄の後ろ側から舟状骨を見下ろすように撮影する方法(PPPDO: Palmaroproximal-palmarodistal oblique)では、舟状骨と蹄骨が重なってしまうのを避けられるため、骨髄の硬化症、矢状綾の扁平化、屈腱面の不整などが評価できるという利点があります。ここでは、馬の前肢の舟状骨におけるPPPDO撮影の手法を検討した知見を紹介します。この研究では、馬の屠...
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馬の文献:離断性骨軟骨炎(Nixon et al. 2004)
文献 - 2023/04/14「ポリジオキサノン製の吸収性ピンを用いた離断性骨軟骨炎の病変の関節鏡的再固定法」Nixon AJ, Fortier LA, Goodrich LR, Ducharme NG. Arthroscopic reattachment of osteochondritis dissecans lesions using resorbable polydioxanone pins. Equine Vet J. 2004 Jul;36(5):376-83.この症例論文では、馬の離断性骨軟骨炎(OCD)に対する外科的治療の効能を評価するため、1985〜2002年にかけて、米国のコーネル大学の獣医病院に...
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高齢馬の春の安全管理6選
馬の飼養管理 - 2023/04/10春の兆しが跳んでいる(Spring has sprung)という季節ですが、高齢馬が健康で幸せな一年を送るためには、春はとても大事なシーズンだと言えます。ここでは、そのような高齢馬における春季の安全管理(Spring Safeguards)に関して、重要な事項6選を解説した記事を紹介します。参考資料:University of Kentucky College of Agriculture, Food, and Environment. Six Simple Spring Safeguards for Senior Horses: Ensure your se...
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馬の息労でのBAL液中のエヌガル濃度
話題 - 2023/04/09一般的に、気管支肺胞洗浄(BAL: Broncho-alveolar lavage)で採取した体液は、下部気道の病態を反映することから、息労(回帰性気道閉塞)などの呼吸器疾患の診断に応用されています。一方で、エヌガル(NGAL)とは、好中球ゼラチナーゼ結合性リポカリン(Neutrophil gelatinase-associated lipocalin)の略号で、腎臓前駆細胞の分化誘導因子として同定された蛋白質であり、急性腎不全において尿中および血中での濃度上昇を呈する...
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馬の蹄踵痛における診断麻酔の複雑さ
話題 - 2023/04/06馬の蹄踵痛は、舟状骨症候群などによって引き起こされ、乗用馬の前肢における慢性跛行のうち、約1/3を占めるとも言われています。しかし、蹄踵に痛みがあることを確定するために実施される診断麻酔では、神経ブロックと滑膜ブロックへの反応性が多様であることから、この部位の疼痛を限局化するのは難易度が高いことが知られています。ここでは、馬の蹄踵痛に対する複数の診断麻酔における、反応性や関連性を評価した知見を紹介し...
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馬の文献:離断性骨軟骨炎(Scott et al. 2004)
文献 - 2023/04/05「僅かなX線所見しかない馬の大腿骨内顆の骨軟骨症病巣における関節鏡所見:1995〜2002年の15症例」Scott GS, Crawford WH, Colahan PT. Arthroscopic findings in horses with subtle radiographic evidence of osteochondral lesions of the medial femoral condyle: 15 cases (1995-2002). J Am Vet Med Assoc. 2004 Jun 1;224(11):1821-6.この症例論文では、馬の膝関節の骨軟骨症における診断法を確立させるため、1995〜2002年...
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馬の跛行を傾斜地で見る
馬の飼養管理 - 2023/04/03跛行(Lameness)は、最も頻繁に起こる馬の健康問題であることが知られています。しかし、馬の歩様をチェックするときには、地面の平坦さを考慮することが大切です。なぜなら、ほんの僅かな傾斜があっただけでも、馬体の動き方や、跛行の見え方が変化してしまうからです。参考資料:Christa Leste-Lassiter, MA. Study: Even Slight Slopes Can Affect Lameness Exams in Horses. The Horse, Topics, Diagnosing Lameness, Injurie...
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馬のフレグモーネに対する空気圧縮療法
話題 - 2023/04/02馬は細菌感染に弱い動物であるため、四肢にフレグモーネ(蜂窩織炎)を発症すると、治癒した後にも、四肢の皮下組織に浮腫や線維化が慢性的に残ってしまい(=慢性進行性リンパ浮腫:Chronic progressive lymphedema)、持続的な歩様不整や易感染性が続くことが知られています。ここでは、空気圧縮療法によって、リンパ循環の向上を試みた知見を紹介します。参考文献:Koch DW, Schnabel LV, Reynolds J, Berry CR. Pneumatic comp...
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光学屈折計を用いた母馬の初乳の品質検査
話題 - 2023/04/01一般的に、生まれたての新生子馬は、病原体への抵抗力が低いため、出産直後に母馬が分泌する初乳に含まれている移行免疫抗体を摂取することで、感染への防御能を獲得することが知られています。しかし、母馬の体調や予防接種の状態によっては、初乳に含有される免疫グロブリンG(IgG)の量が不足していて、子馬の感染症を引き起こす素因になってしまいます。このため、初乳中のIgG濃度を測定して、移行免疫抗体の指標とすることで...