2023年05月のエントリー一覧
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ニュージーランドの競走馬での突然死の危険因子
話題 - 2023/05/31一般的に、突然死(サドンデス)とは、健康な生活を営んでいた個体が急に死亡する現象を指します。幸いにも、ヒトでも動物でも、極めて稀な事象ではありますが、治療は間に合わないため、如何に未然に防ぐかが鍵となります。このため、馬の突然死においても、その病因の特定、および、発生に寄与する危険因子を解明して、突然死の予防を図ることが重要になってきます。ここでは、ニュージーランドのサラブレッド競走馬における、平...
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熱融着を用いた馬の空腸盲腸吻合術
話題 - 2023/05/29一般的に、馬の空腸を盲腸に吻合する治療法は、空腸・回腸・盲腸などが絞扼壊死または機能不全を呈したときに、健常な部位同士を吻合して、空腸または盲腸の異常個所を迂回させる目的で実施されます。この際には、用手縫合または腸管ステープルを用いて、側々で吻合することで、十分に広い開口部を形成する術式が選択されることが多いと言えます(空腸と盲腸では内径が大きく違うため)。ここでは、この空腸盲腸吻合術において、高...
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陰圧療法での馬の外傷治療
話題 - 2023/05/27一般的に、馬は細菌感染に弱い動物であることが知られています。このため、重度の外傷を起こした場合、抗生物質の全身投与では感染制御が難しくなり、創傷治癒の遅延や癒合不全を続発したり、広範な蜂窩織炎を併発して、敗血症や蹄葉炎などの合併症を引き起こすこともあります。ここでは、陰圧創傷療法(Negative pressure wound therapy)を適応して、馬の重度外傷の治療を試みた知見を紹介します。この研究では、2016〜2020年に...
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馬の文献:離断性骨軟骨炎(UpRichard et al. 2013)
文献 - 2023/05/26「競技馬の大腿骨外側滑車の骨軟骨症状に対する関節鏡治療の結果」UpRichard K, Elce YA, Piat P, Beauchamp G, Laverty S. Outcome after arthroscopic treatment of lateral femoral trochlear ridge osteochondrosis in sport horses. A retrospective study of 37 horses. Vet Comp Orthop Traumatol. 2013;26(2):105-9. この症例論文では、馬の骨軟骨症(OC)での外科的治療の効能を評価するため、2000〜2010年にかけて、カナ...
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馬の「ハミ跛行」の原因はアゴの痛み?
馬の飼養管理 - 2023/05/24一般的に、馬の「ハミ跛行」とは、馬が頭絡や鞍などを装着して騎乗運動している時だけ見られる歩様の異常を指しています。このため、口内でのハミ位置の問題や、歯科疾患の存在、鞍の装着の不備、屈頭姿勢を取らせることによる頭頚部の疼痛などが原因となり得ます。参考資料:Alexandra Beckstett, The Horse Managing Editor. Rein-Lameness Associated With TMJ Pain in Horses: Temporomandibular joint inflammation might be ...
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馬の関節炎でのパーグ治療の実施法
馬の飼養管理 - 2023/05/22一般的に、馬の健康問題のうち、約八割を運動器疾患が占めることが知られています。そのうち、最も多いのが関節疾患であり、これには、競走馬における腕節炎や球節炎、乗用馬における飛節内腫やリングボーン、および、若齢馬でのOCDやボーンシストに併発する変性関節疾患(DJD)などが含まれます。ここでは、馬の関節疾患に対する「パーグ治療」について、その概要を解説した知見を紹介します。参考資料:Alexandra Beckstett, The...
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馬の脳脊髄液による神経疾患の鑑別
話題 - 2023/05/20一般的に、馬の神経器疾患は、鑑別診断が難しいことが知られています。何故なら、ヒトや犬猫と異なり、脳や脊髄をMRI撮影することが困難であり、また、脊髄造影や頚部屈曲X線なども、全身麻酔を要するというデメリットがあるからです(腰萎症状の馬では麻酔覚醒の事故リスクが大きい)。なお、馬に多く見られる神経器疾患には、原虫性脊髄脳炎(EPM)、頚椎圧迫性脊髄症(CVCM)、変性脊髄脳炎(EDM)などが含まれます(日本にはEP...
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馬の文献:離断性骨軟骨炎(Verwilghen et al. 2013)
文献 - 2023/05/19「成長期整形疾患は温血馬の障害飛越能力に影響するか?」Verwilghen DR, Janssens S, Busoni V, Pille F, Johnston C, Serteyn D. Do developmental orthopaedic disorders influence future jumping performances in Warmblood stallions? Equine Vet J. 2013 Sep;45(5):578-81. この症例論文では、離断性骨軟骨炎(OCD)や骨軟骨症(OC)などの、馬の成長期整形疾患(DOD)の長期的な予後を評価するため、2001~2008年にかけて...
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馬場馬に野外騎乗をさせることの利点
馬の飼養管理 - 2023/05/17乗馬の競技馬をトレーニングするときには、特定の専門種目に特化させるという課題が生まれてきます(馬場馬、障害馬、ハンター障害馬、総合馬、ウェスタン競技馬など)。しかし、専門種目に熟練した馬をトレーニングする際に、その種目だけに集中して練習すべきでしょうか?それとも、野外騎乗などの他の運動様式も実施させて、専門種目以外の調教ツールを応用することで、何らかの利益を得ることが出来るのでしょうか?参考資料:...
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馬のタイバック手術での二重ループ法
話題 - 2023/05/15一般的に、競走馬の喉頭片麻痺(反回神経麻痺)に対する外科的治療としては、披裂軟骨を外方へと糸で引っ張ることで、通気に必要な広さの声門域(気道内径)を維持するという喉頭形成術(タイバック手術)が行なわれます。しかし、この手術の成功率は、50〜70%に過ぎないことが報告されており、その理由は多様ではあるものの、設置した糸が緩んでしまうことが一因であると考えられています。このため、馬の喉頭形成術では、糸を2本...
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馬の麻酔後肺水腫の危険因子
話題 - 2023/05/13一般的に、馬という動物は、全身麻酔による合併症を起こし易く、獣医師が取り扱う動物種のなかでも、最も麻酔を掛けるのが難しい動物の一つだと言われています。ここでは、そのような合併症の中で、発生率こそ低いものの、致死率が高いと言われている、麻酔後の肺水腫(Post-anesthetic pulmonary edema)に関する知見を紹介します。参考文献:Shnaiderman-Torban A, Steinman A, Ahmad WA, Kushnir Y, Sutton GA, Epstein A, Kelm...
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馬の文献:離断性骨軟骨炎(Sparks et al. 2011)
文献 - 2023/05/12「大腿膝蓋関節の離断性骨軟骨炎の軟骨フラップに対する関節鏡的な再固定術:長期的な治療成績」Sparks HD, Nixon AJ, Fortier LA, Mohammed HO. Arthroscopic reattachment of osteochondritis dissecans cartilage flaps of the femoropatellar joint: long-term results. Equine Vet J. 2011 Nov;43(6):650-9. この症例論文では、馬の後膝の離断性骨軟骨炎(OCD)に対する外科的治療の効能を評価するため、1996〜2010年にかけて...
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血液精製物による馬の関節炎の治療
馬の飼養管理 - 2023/05/08馬の健康問題のうち、約八割を運動器疾患が占めており、そのうち、最も多いのが関節炎であると言われています。これには、競走馬の腕節炎や球節炎、乗用馬の飛節内腫やリングボーン、および、若齢馬のOCDやボーンシストに併発する変性関節疾患(DJD)から、高齢馬の顎関節炎に至るまで、多様な年代の馬において、多くの病態が起こり得ます。ここでは、馬の自己血液から精製される物質を用いた関節炎の治療に関して、その概要を解説...
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馬肉への残留薬物の懸念(米国)
話題 - 2023/05/06いま、米国では、食用に転用される馬に関して、残留薬物によって馬肉が汚染されてしまうという懸念が深まっています。北米で生産されている馬肉に起こっているこの問題は、日本を始め、馬肉を食する文化のある多くの国では、常に注視しておく必要があると言えそうです。ここでは、米国での馬肉の残留薬物について解説した論文を紹介します。参考文献:Weber K, Kearley ME, Marini AM, Pressman P, Hayes AW. A review of horses s...
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馬の文献:離断性骨軟骨炎(Brink et al. 2009)
文献 - 2023/05/05「馬の下腿足根関節の離断性骨軟骨炎における滑膜の病理組織変化と臨床症状の関係」Brink P, Skydsgaard M, Teige J, Tverdal A, Dolvik NI. Association between clinical signs and histopathologic changes in the synovium of the tarsocrural joint of horses with osteochondritis dissecans of the tibia. Am J Vet Res. 2010 Jan;71(1):47-54. この症例論文では、馬の離断性骨軟骨炎(OCD)における病態解明と診断法確立の...
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乾草を浸して食べる馬
馬の飼養管理 - 2023/05/01ホースマンの中には、愛馬が乾草を食べるときに、水桶に浸してから摂食することに悩んでいる方もいるかもしれません。夏場には、乾草の細片が水桶のなかで腐敗して、ハエが舞ってしまうこともあります。こんな時に、どう対処すれば良いのかを解説した知見を紹介します。参考資料:Clair Thunes, PhD. Why Does My Horse Dunk His Hay? Find out why your horse might benefit from a “dunk bucket.” The Horse, Behavior, Commenta...