2023年07月のエントリー一覧
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オメプラゾールの投与中止の方針
話題 - 2023/07/31馬は胃潰瘍を起こし易い動物であることが知られており、近年では、プロトンポンプ抑制剤であるオメプラゾールの投与によって、良好な治療および予防効果が示されています。しかし、オメプラゾール投与を中止することで、胃潰瘍が再発することがあり、この際には、リバウンド胃酸過多症(Rebound gastric hyperacidity)の関与が懸念されています。そこで下記の研究では、14頭のサラブレッドを用いて、平地レースの調教を模した運動...
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カナダでの馬の流産の発生状況
話題 - 2023/07/29馬の流産は、繁殖及び生産の産業において、非常に大きな経済的損失を生み出すと同時に、母馬の健康と福祉にも多大な悪影響を及ぼします。ここでは、カナダにおける馬の流産の発生要因を調査した知見を紹介します。参考文献:Ricard RM, St-Jean G, Duizer G, Atwal H, Wobeser BK. A 13-year retrospective study of equine abortions in Canada. Can Vet J. 2022 Jul;63(7):715-721. この研究では、カナダの複数の獣医大学病院に...
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馬の文献:飛節内腫(Shoemaker et al. 2006)
文献 - 2023/07/28「健常馬の足根中足関節へのエチルアルコール注射による関節固定術」Shoemaker RW, Allen AL, Richardson CE, Wilson DG. Use of intra-articular administration of ethyl alcohol for arthrodesis of the tarsometatarsal joint in healthy horses. Am J Vet Res. 2006 May;67(5):850-7. この研究論文では、馬の飛節内腫に対する内科的治療法の効能を評価するため、八頭の健常な実験馬を用いて、70%または95%のエチルアルコール...
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立ち腫れする馬への対策
馬の飼養管理 - 2023/07/26ホースマンの中には、肢が腫れることを心配している方も多いのかもしれません。下肢の受動的な液体貯留は(所謂、立ち腫れ)、舎飼いの馬では比較的頻繁に見られますが、幸いにも、健康上の深刻な問題にならない場合も多いと言えます。ここでは、馬の立ち腫れについて総括した知見を紹介します。参考資料:Anna O’Brien, DVM. What to Know About Stocking Up. Horse Illustrated, Article, Horse Care, Horse Health: April 1st, ...
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若齢馬の大腿骨内顆の透過域による長期的な影響
話題 - 2023/07/24若齢馬の病気を診療するときには、成馬になったときのパフォーマンスへの影響も考慮する必要があります。一般的に、馬の大腿骨内顆は、ボーンシストと好発部位として知られていますが、軟骨下透過域(SCLs: Subchondral lucencies)のみを生じた場合の長期的予後については様々な議論があります。そこで、下記の研究では、米国のケンタッキー州とメリーランド州でのサラブレッドのセリにおいて、2016年に競売された2,508頭の当歳馬...
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英国での馬の流産の発生状況
話題 - 2023/07/22馬の流産は、繁殖及び生産の産業において、非常に大きな経済的損失を生み出すと同時に、母馬の健康と福祉にも多大な悪影響を及ぼします。ここでは、英国における馬の流産の発生要因を調査した知見を紹介します。参考文献:Smith KC, Blunden AS, Whitwell KE, Dunn KA, Wales AD. A survey of equine abortion, stillbirth and neonatal death in the UK from 1988 to 1997. Equine Vet J. 2003 Jul;35(5):496-501. この研究では、...
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馬の文献:飛節内腫(Zubrod et al. 2005)
文献 - 2023/07/21「馬の遠位足根骨間関節および足根中足関節の固定術のための三手法の比較」Zubrod CJ, Schneider RK, Hague BA, Ragle CA, Gavin PR, Kawcak CE. Comparison of three methods for arthrodesis of the distal intertarsal and tarsometatarsal joints in horses. Vet Surg. 2005 Jul-Aug;34(4):372-82. この研究論文では、馬の飛節内腫の外科的治療の手法を確立させるため、15頭の実験馬を用いて、遠位足根骨間関節および足根中足...
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ブランマッシュの利点と欠点
馬の飼養管理 - 2023/07/19ホースマンの中には、温かいブランマッシュを準備して、愛馬に与えるのを楽しみにしている方もいらっしゃるかもしれません。また、競技会に参加して疲れていたり、体調を崩した馬に対しても、お粥状に調理したブランマッシュが給餌されることもあります。ここでは、ブランマッシュを馬に給餌することの利点と欠点を解説した知見を紹介します。参考資料:Clair Thunes, PhD. Risks Associated With Feeding Horses Traditional Bran...
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馬の経鼻チューブ処置による副鼻腔炎
話題 - 2023/07/17一般的に馬は、嘔吐が殆ど出来ない動物であるため、経鼻チューブで胃へとアクセスすることは、馬の消化器疾患の診察において非常に重要になります。一方で、馬の獣医師は、経鼻チューブ処置を介して起こり得る合併症についても知っておく必要があります。下記の研究では、米国のカリフォルニア大学デービス校の獣医病院で診察した馬のなかで、経鼻チューブに起因して副鼻腔炎を発症した三頭の症例について報告されています。参考文...
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麻酔中の馬での抗生物質の動態
話題 - 2023/07/15一般的に、馬は細菌感染に弱い動物であることが知られており、開腹術や骨折の内固定など、侵襲性の高い外科手術においては、抗生物質の全身投与による感染予防が重要となります。ただ、全身麻酔下にある手術中の馬における、抗生物質の体内動態は明らかにされていません。それを評価するため、下記の研究では、六頭の健常馬を用いて、Kペニシリン(22,000IU/kg)とゲンタマイシン(6.6mg/kg)の静脈内投与を行なった後に全身麻酔を...
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馬の文献:飛節内腫(Scruton et al. 2005)
文献 - 2023/07/14「健常馬の遠位足根関節固定術のためのドリル穿孔とレーザー処置の比較」Scruton C, Baxter GM, Cross MW, Frisbie DD. Comparison of intra-articular drilling and diode laser treatment for arthrodesis of the distal tarsal joints in normal horses. Equine Vet J. 2005 Jan;37(1):81-6. この研究では、飛節内腫の外科的治療法を確立させるため、六頭の実験馬の遠位足根関節に対して、関節内へのドリル穿孔またはレーザー照...
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馬の退屈さを無くす6つの対策
馬の飼養管理 - 2023/07/12一般的に馬は、退屈になると、好ましくない行動を取ることが多くなります。多くの場合、退屈さにかまけた馬たちは、馬房の壁や水桶、放牧柵、馬着などを咬んで破壊してしまいます。また、サク癖や熊癖、旋回癖などの悪癖を覚えてしまう馬もいます。このような行動への対策としては、退屈さを無くしてあげることが、最も根本的な解決策であると言えます。馬という動物は、自然な生活環境の中では、一日のうちの多くの時間を、牧草を...
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経鼻チューブの太さと胃液逆流の関係性
話題 - 2023/07/10一般的に、馬は、嘔吐が殆どできない動物であるため、重度な胃拡張を起こすと、胃破裂を続発して予後不良になることが知られています。このため、空腸絞扼や近位小腸炎などの症例では、小腸から胃へと逆流してくる消化液を持続的に排出させるため、経鼻チューブを留置する必要があります。しかし、経鼻チューブが留置されていると、胃液が、噴門→食道→喉頭へと逆流して、それを気管内に誤嚥することで、下部気道炎を起こす危険性が...
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敗血症の新生子馬におけるRPR値
話題 - 2023/07/08ヒト医療に小児科があるのと同様に、子馬の病気に対する獣医療では、成馬とは異なる知識と技術が必要になります。ここでは、敗血症を起こした新生子馬における、赤血球体積分布幅(RDW: Red blood cell distribution width)と血小板数の比率(RPR: RDW to platelet ratio)について調査した知見を紹介します。この研究では、米国のカリフォルニア大学デービス校の獣医病院において、2012〜2021年にかけて診察された七日齢以下の新...
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馬の文献:飛節内腫(Dowling et al. 2004)
文献 - 2023/07/07「104頭の馬に実施されたモノヨード酢酸塩ナトリウムを用いた遠位飛節の関節固定術」Dowling BA, Dart AJ, Matthews SM. Chemical arthrodesis of the distal tarsal joints using sodium monoiodoacetate in 104 horses. Aust Vet J. 2004 Jan-Feb;82(1-2):38-42. この研究では、馬の飛節内腫に対する内科的療法の治療効果を評価するため、遠位飛節の変性関節疾患を発症した104頭の症例馬に対して、モノヨード酢酸塩ナトリウム(M...
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馬の胃潰瘍にはアルファルファ給餌
馬の飼養管理 - 2023/07/05胃潰瘍の罹患馬に対しては、アルファルファを給餌することにメリットがあると言われています。米国のテキサス農工大学の研究によれば、バミューダ乾草が給餌された馬に比べて、アルファルファ乾草が給餌された馬では、胃潰瘍の重篤度スコアが有意に低かったことが分かりました。参考資料:Clair Thunes, PhD. Alfalfa for Ulcer Prevention in Horses: When fed correctly, alfalfa might help prevent gastric ulcer development....
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馬の経鼻チューブ処置による獣医師の安全性
話題 - 2023/07/03馬は嘔吐が殆どできない動物であり、胃拡張から胃破裂を起こすと助からないため、疝痛の診断においては、経鼻チューブを胃袋まで挿入して、胃内容物を排出することが極めて重要です。しかし、多くの馬の獣医師は、この経鼻チューブを、口に咥えながら操作するため、馬の胃内容に含まれる食渣や病原体が、獣医師の口内に入ってしまう危険性があります。ここでは、経鼻チューブの操作に関連した馬の獣医師の健康への弊害、および、操...
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馬の骨折整復におけるインターロッキングスレッド螺子の効能
話題 - 2023/07/01近年、ヒト医療の整形外科分野では、インターロッキング・スレッド・スクリュー(ITS: Interlocking thread screw)というインプラントが開発されて、従来の螺子に比較して、強度の高い骨折の内固定が実施できることが示されています。ここでは、馬の骨に対するITS螺子の作用を評価した知見を紹介します。参考文献:Pye JL, Garcia TC, Kapatkin AS, Samol MA, Stover S. Biomechanical comparison of compact versus standard flu...