2023年08月のエントリー一覧
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馬のボディコンディション指数と体脂肪率
話題 - 2023/08/30近年では、馬においても、肥満やメタボによる健康障害が多くなっています。しかし、一般的な牧場や乗馬クラブでは、馬の体重計が無いことも多いため、肥満馬の飼養管理を行なう際には、ボディコンディションスコア(BCS)という、九段階に分けられた大まかな数値を目安にするしかない、という課題があります。このため、下記の研究では、ボディコンディション指数(BCI: Body condition index)という指標を算出して(上図参照)、...
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馬の直腸背側膿瘍による疝痛
話題 - 2023/08/28一般的に、疝痛症状を起こす馬の消化器疾患のうち、直腸に発症する病気は比較的に稀であることが知られています。ここでは、ドイツのハノーバー大学獣医病院にて、2019〜2021年に診療を受けた、直腸背側膿瘍を呈した六頭の疝痛馬の症例報告を紹介します。参考文献:Weber LA, Verhaar N, Feige K. Colic due to dorsally located perirectal abscesses: A retrospective case series of six horses. Equine Vet Edu. 13 July 2023....
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馬の関節炎での唾液バイオマーカー
話題 - 2023/08/26馬の関節炎は、最も発症率の高い運動器疾患の一つであり、再生能に乏しい軟骨に損傷をきたすと予後が芳しくないことから、早期診断と早期治療が重要な疾患であると言えます。このため、馬の体液サンプルの含有成分のなかでも、関節炎の病態と相関している様々なバイオマーカーの検出が試みられています。下記の研究では、軟骨や軟骨下骨が損傷および変性したときに遊離される、ビグリカン代謝産物(BGN262: biglycan-neo-epitope-B...
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馬の文献:屈曲性肢変形症(Wagner et al. 1985)
文献 - 2023/08/25「馬の深屈腱副靭帯(遠位支持靭帯)の切断術における長期的な治療成績」Wagner PC, Grant BD, Kaneps AJ, Watrous BJ. Long-term results of desmotomy of the accessory ligament of the deep digital flexor tendon (distal check ligament) in horses. J Am Vet Med Assoc. 1985 Dec 15;187(12):1351-3.この症例論文では、馬の蹄関節での屈曲性肢変形症(いわゆるクラブフット)に対する外科的療法の治療効果を検証するため、1...
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馬の後膝をエコー検査する注意点
馬の飼養管理 - 2023/08/23馬の後膝(膝関節)には、関節炎やボーンシストなどの骨の病気だけでなく、膝蓋靭帯、十字靭帯、半月板などの病気も起こります。これらの軟部組織は、X線検査では描出されないため、エコー検査による精査が必要となります。ここでは、馬の後膝をエコー検査するときの注意点を喚起した知見を紹介します。参考資料:Stacey Oke, DVM, MSc. Take Caution Using Contralateral Limbs for Patellar Ligament Exams. AAEP Convention, Ar...
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競走馬のプアパフォーマンスの原因疾患と運動能力指標との関連性
話題 - 2023/08/21競馬のレースにおいて、人気馬が惨敗した時には、その理由がハッキリとは分からない事も多々あります。一般的に、競走馬のプアパフォーマンスの要因としては、運動器系、呼吸器系、心脈管系などの疾患が関与していると言われていますが、それらの複合性については詳細には解明されていません。ここでは、スタンダードブレッドの競走馬におけるプアパフォーマンスについて調査した知見を紹介します。参考文献:Lo Feudo CM, Stucchi...
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馬のキャバレティ運動による関節への影響
話題 - 2023/08/19近年、馬の運動器疾患に対するリハビリ療法では、様々な手法が試みられていますが、その一つとして、地面に置いた横木を跨がせるキャバレティ運動も応用されています。ここでは、馬のキャバレティ運動による、関節への影響を評価した知見を紹介します。この研究では、41頭の健常馬を用いて、地上横木や、地面から持ち上げた横木を常歩で通過させて、その際の運動学的歩様解析が実施されました。参考文献:Walker VA, Tranquillle C...
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馬の文献:飛節内腫(Lamas et al. 2012)
文献 - 2023/08/18「エタノールを使った遠位飛節の骨関節炎の治療:24症例」Lamas LP, Edmonds J, Hodge W, Zamora-Vera L, Burford J, Coomer R, Munroe G. Use of ethanol in the treatment of distal tarsal joint osteoarthritis: 24 cases. Equine Vet J. 2012 Jul;44(4):399-403. この症例論文では、馬の飛節内腫に対する内科的療法の治療効果を検証するため、遠位飛節の骨関節炎を発症した24頭の馬に対して、エタノールの関節注射が実施され...
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跛行しない飛節の骨棘は競走能力に影響するのか?
話題 - 2023/08/16一般的に、遠位飛節の関節周囲での骨棘形成(Periarticular osteophytes of the distal tarsus)は、飛節内腫(飛節の変性関節疾患[DJD])の特徴的所見だと考えられています。しかし、若齢馬においては、遠位飛節の骨棘の所見は、跛行症状とは相関しないことも知られており[1]、サラブレッドのレポジトリ検査において、無跛行な馬の二割から三割で同所見を認めたという知見もあります[2,3]。ここでは、若齢で無跛行な競走馬におけ...
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馬の息労では口蓋病が続発する?
話題 - 2023/08/14近年、馬の呼吸器疾患に関する獣医学領域では、「統合気道疾患(Unified airway disease)」という理論が提唱されています。これは、上部気道と下部気道は、生理学的および機能的に同じユニットを形成しているのだから、上下気道の病気も一緒に発症するものである、という仮説に基づいています。ここでは、下部気道疾患である息労(喘息)と、上部気道疾患である口蓋病の関連性について調査した知見を紹介します。この研究では、ポ...
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馬の流産における切胎術の影響
話題 - 2023/08/12馬の流産は、繁殖及び生産の産業において、非常に大きな経済的損失を生み出すと同時に、母馬の健康と福祉にも多大な悪影響を及ぼします。ここでは、胎児が死亡していた場合に適応される切胎術(Fetotomy)における、母馬の生存率に関して調査した知見を紹介します。この研究では、イタリアの二箇所の獣医病院において、1991〜2005年にかけて、流産の治療として切胎術が実施された72頭の牝馬における医療記録の回顧的調査が行なわれ...
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馬の文献:飛節内腫(Carmalt et al. 2012)
文献 - 2023/08/11「馬の遠位足根骨間関節及び足根中足関節の骨関節炎に対するアルコール促進関節強直術」Carmalt JL, Bell CD, Panizzi L, Wolker RR, Lanovaz JL, Bracamonte JL, Wilson DG. Alcohol-facilitated ankylosis of the distal intertarsal and tarsometatarsal joints in horses with osteoarthritis. J Am Vet Med Assoc. 2012 Jan 15;240(2):199-204.この症例論文では、馬の飛節内腫に対する非外科的療法の治療効果を評価するため、...
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馬の腺胃部での胃潰瘍と飼料の関係性
話題 - 2023/08/09一般的に、馬は胃潰瘍を起こしやすい動物であり、その潰瘍病変は、扁平上皮に覆われた無腺胃の箇所(噴門側)に好発することが知られています。一方、近年では、幽門側の腺胃部に起こる胃潰瘍も、半数近い競走馬や乗馬競技馬に発症することが判明しており、プアパフォーマンスや疝痛症状に関連することが分かってきています。ここでは、競走馬の腺胃部での胃潰瘍と、飼料の関連性を調査した知見を紹介します。この研究では、フラン...
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高齢馬での眼科疾患の発症傾向
話題 - 2023/08/07近年、馬の寿命が延びて、高齢馬の飼養頭数が増えるに連れて、高齢期における病気の治療や健康管理が重要になってきています。ここでは、高齢馬の眼科疾患の発生状況を調査した知見を紹介します。この研究では、英国のエジンバーグ大学において、15〜33歳の高齢馬50頭に対する眼科検査が実施され、検査結果の解析が行なわれました。参考文献:Chalder R, Housby-Skeggs N, Clark C, Pollard D, Hartley C, Blacklock B. Ocular fin...
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馬の難産手術での予後に関する危険因子
話題 - 2023/08/05馬の流産は、繁殖及び生産の産業において、非常に大きな経済的損失を生み出すと同時に、母馬の健康と福祉にも多大な悪影響を及ぼします。ここでは、難産の外科的手術における、予後に関わる因子を解析した知見を紹介します。参考文献:Rioja E, Cernicchiaro N, Costa MC, Valverde A. Perioperative risk factors for mortality and length of hospitalization in mares with dystocia undergoing general anesthesia: a retrospe...
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馬の文献:飛節内腫(Gough et al. 2010)
文献 - 2023/08/04「ティルドロネイト灌流による飛節内腫の治療:偽薬比較と二重盲検による試験」Gough MR, Thibaud D, Smith RK. Tiludronate infusion in the treatment of bone spavin: a double blind placebo-controlled trial. Equine Vet J. 2010 Jul;42(5):381-7. この研究論文では、馬の飛節内腫に対する内科治療の効果を評価するため、108頭の臨床症例に対する偽薬比較・二重盲検による試験を介して、ティルドロネイトの静脈内投与による...
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馬の疝痛:持久戦がもたらす悲劇
馬の飼養管理 - 2023/08/02馬の疝痛に対する開腹術では、早期に手術を決断することが、治療成功率や生存率を高めるのに重要であることが知られています。馬の疝痛治療の第一人者である、フロリダ大学のデイビッド・フリーマン博士は、2022年の全米馬臨床医協会(AAEP)の学会において、疝痛馬に対する「持久戦がもたらす悲劇」(Tragedy of the Waiting Game)について警鐘を鳴らしています。参考資料:Christa Leste-Lassiter, MA. Colic Referral: The Tra...