2023年09月のエントリー一覧
-
馬の開腹術の縫合におけるセルフロック結び
話題 - 2023/09/30一般的に、外科手術における連続縫合では、その開始と終了の箇所を、外科結び(Surgeon's knot)を使って留める方法(S-S法)を用いることが多いですが、近年では、セルフロック結び(Self-locking knot)というタイプの糸の結び方が提唱されてきています。そこで、下記の研究では、馬の開腹術における腹壁(白帯)の閉鎖法として、連続縫合をフォワーダー結び(Forwarder knot)で開始して、アバディーン結び(Aberdeen knot)で...
-
馬の文献:屈曲性肢変形症(Walmsley et al. 2011)
文献 - 2023/09/29「サラブレッドの一型クラブフットに対する深屈腱副靭帯の切断術後の回顧的調査」Walmsley EA, Anderson GA, Adkins AR. Retrospective study of outcome following desmotomy of the accessory ligament of the deep digital flexor tendon for type 1 flexural deformity in Thoroughbreds. Aust Vet J. 2011 Jul;89(7):265-8. この症例論文では、馬の蹄関節での屈曲性肢変形症(いわゆるクラブフット)に対する外科的療法の治療...
-
乗馬の後膝跛行での関節鏡の有用性
話題 - 2023/09/27一般的に、乗馬の競技馬における後膝跛行は、散発的に見られる後肢の歩様以上の原因であり、比較的に重度な跛行を呈して、競技能力の低下を招くケースが多いことが知られています。しかし、後膝に発生する疾患のうち、関節軟骨や半月板、十字靭帯、側副靭帯などの損傷では、診断麻酔や画像検査による確定診断が難しい症例も多く、難治性の経過を取ることがあると言われています。下記の研究では、英国のロスデイル馬病院において、...
-
内視鏡誘導による馬の鼻中隔の切除術
話題 - 2023/09/25一般的に、馬の鼻中隔の疾患は稀ですが、シスト変性、過誤腫、膿瘍、外傷性肥厚、骨折性壊死、長軸性変形、腫瘍、真菌性鼻炎などによって、鼻中隔の肥厚や変形を生じて、通気障害や気道閉塞、呼吸雑音、鼻汁排出、顔面変形等の症状を呈することがあります。そのような症例では、鼻中隔を切除することで症状改善が見られることがあります。そこで、下記の研究では、13頭の鼻中隔疾患の罹患馬に対して、内視鏡誘導を介した鼻中隔の3...
-
馬の開腹術の縫合での糸とステープルの違い
話題 - 2023/09/23馬は、他の動物と異なり、開腹術の術創における合併症を起こし易いことが知られており、その発生率は四割以上に上ることが報告されています。そこで、下記の研究では、エルサレム大学の獣医病院にて、2012〜2014年にかけて、開腹術が適応された123頭の疝痛馬に対して、ナイロン製の縫合糸(No.0、連続かがり縫合)または金属製のステープル(6.5x4.7mm)を用いた皮膚縫合が実施され、医療記録の解析が行なわれました。参考文献:Ha...
-
馬の文献:屈曲性肢変形症(Yiannikouris et al. 2011)
文献 - 2023/09/22「馬の前肢での深屈腱副靭帯切断術:二歳以上の24症例」Yiannikouris S, Schneider RK, Sampson SN, Roberts G. Desmotomy of the accessory ligament of the deep digital flexor tendon in the forelimb of 24 horses 2 years and older. Vet Surg. 2011 Apr;40(3):272-6. この症例論文では、子馬以外の馬における、蹄関節での屈曲性肢変形症(いわゆるクラブフット)に対する外科的療法の治療効果を検証するため、深屈腱副靭帯...
-
新型コロナは馬には感染しないが変異はする?
未分類 - 2023/09/20ヒト社会では、コロナ禍がようやく収まりつつありますが、今後も、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)がヒトや動物の体内で変異して、強毒株が生まれてしまうことが懸念されています。そこで、下記の研究では、馬の気管上皮細胞を培養して、新型コロナウイルスの疑似ウイルスを感染させた後、96時間にわたって、標識蛋白質(eGFP)の発現や、定量的PCR検査によるウイルス増幅の度合いが評価されました。参考文献:Legere RM, Allegr...
-
競走馬の脚部繋靭帯炎に対する幹細胞治療
話題 - 2023/09/18一般的に、靭帯は治癒スピードの遅い組織であることが知られており、馬に発症する繋靭帯炎においても、骨折や屈腱炎よりも長期間の休養を要することが多いと言えます。一方、近年の獣医学では、運動器疾患に対する再生医療の臨床応用が進んでおり、間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cells)の局所投与を介して、組織の再生過程を促進する療法が試みられています。そこで、下記の研究では、米国の三箇所の馬病院において、2010〜2019...
-
馬の円鋸術における立位CTの有用性
話題 - 2023/09/16馬の副鼻腔炎において、抗生剤投与でも蓄膿が治癒しない場合には、立位での円鋸術(Standing sinus trephination)によって副鼻腔の洗浄、病巣掻爬、排液路形成、コンドロイド除去などが行なわれる事もあります。一方、近年では、立位でCT検査する技術も発達してきており、X線では分かりにくい副鼻腔の三次元構造を、CT画像で評価しながら円鋸術を実施することが可能になっています。そこで、下記の研究では、馬の円鋸術における立...
-
馬の文献:屈曲性肢変形症(Charman et al. 2008)
文献 - 2023/09/15「72頭の馬の屈曲性手根変形症に対する外科的治療」Charman RE, Vasey JR. Surgical treatment of carpal flexural deformity in 72 horses. Aust Vet J. 2008 May;86(5):195-9. この症例論文では、馬の手根関節での屈曲性肢変形症に対する外科的療法の長期的な影響を検証するため、豪州のゴールバーンバレー馬病院にて、1999〜2006年にかけて、屈曲性手根変形症の治療のため、外側尺骨筋腱および尺側手根屈筋腱の切断術(副手根骨...
-
大麻の成分で馬のサク癖を治せる?
話題 - 2023/09/13サク癖は、馬用語で「グイッポ」とも呼ばれ、固定された物体を前歯で咥えて、それを支点にして頭頚部を屈曲させながら空気を飲み込むような動作を指します。古典的には、馬が覚える悪癖だと片付けられてきましたが、近年の研究では、人間の精神医学でいう強迫性障害(Obsessive-compulsive disorder)によく似た「心の病気」であることが分かってきています。ここでは、大麻の成分を投与することで、馬のサク癖の治療を試みた症例...
-
COX-2限定阻害薬によって大腸炎が起こる?
話題 - 2023/09/11これまで、馬の軟部組織の痛みには、フルニキニンメグルミン(バナミン®)が投与されることが多かったですが、近年では、副作用の少ない新しいタイプの薬剤が応用されてきています。一般的に、馬の抗炎症・鎮痛剤としては、COX-1およびCOX-2の両方の炎症介在物質を阻害する薬剤(フルニキニンメグルミン等)が使用されてきましたが、COX-1は胃腸粘膜の新陳代謝にも関わっているため、これを阻害することで、胃潰瘍や大腸炎などの副...
-
馬での鼻道壁補強テープによる体温調節
話題 - 2023/09/09一般的に、競走馬に発症する上部気道の閉塞性疾患では、咽喉頭の陰圧が上昇するため、鼻孔が小さかったり鼻道の天井部分の軟部組織が虚弱な個体では、鼻道壁の虚脱を起こしてしまい、通気を妨げるというリスクがあります。このため、近年では、鼻孔の上部の背側部にテープを貼り付けて、鼻道壁を補強することで、通気機能を維持する方法が試みられることもあります。ただ、その効能には、相反する多様なデータがあり、不確定な要素...
-
馬の文献:屈曲性肢変形症(Madison et al. 1994)
文献 - 2023/09/08「オキシテトラサイクリンが新生子馬の球節と蹄関節の角度に及ぼす効果」Madison JB, Garber JL, Rice B, Stumf AJ, Zimmer AE, Ott EA. Effect of oxytetracycline on metacarpophalangeal and distal interphalangeal joint angles in newborn foals. J Am Vet Med Assoc. 1994 Jan 15;204(2):246-9. この研究論文では、馬の屈曲性肢変形症に対する内科的療法の治療効果を検証するため、米国のフロリダ大学の獣医病院において、1...
-
馬の腸捻転における乳酸値の有用性
話題 - 2023/09/06馬の疝痛のなかでも、腸捻転などの絞扼性疾患は、迅速な開腹術による外科的整復を要するため、早期診断が重要となります。この際、虚血性病態において乳酸値が上昇することを鑑みて、これを腸捻転の診断指標として活用されることもあります。そこで、下記の研究では、米国のペンシルバニア大学の獣医病院(ニューボルトンセンター)にて、2016~2019年にかけて、入院時に乳酸値測定(血液と腹水)が行なわれた197頭の症例を、腸捻...
-
乗馬での怪我とヘルメット着用の関連性
話題 - 2023/09/04乗馬スポーツでは、落馬などの事故によるライダーの怪我を防ぐため、ヘルメットの着用は非常に重要であると言えます。このため、乗馬でのライダーの怪我において、ヘルメット着用と怪我の発生率や重篤度の関連性を解明するため、様々な調査が行なわれています。下記の研究では、米国のモンタナ州のある救急病院にて、2011~2020年にかけて、乗馬関連の怪我で搬送された患者の医療記録が解析されました。参考文献:Carter BT, Richa...
-
馬の皮膚での新しい減張縫合法
話題 - 2023/09/02一般的に、馬は他の動物に比べて、競走や競技などの強運動に用いられるという特性から、皮膚の外傷を起こし易いことが知られています。一方で、馬の皮膚は、体格の割には薄く、強いテンションが掛かると裂けたり、血流が阻害され易いという特徴があります。このため、馬の外傷を外科的に縫合する際に、皮膚が広範に欠損した場合や、もともと皮膚の緊張度が強い箇所においては、糸や皮膚に掛かる緊張を緩和させるための減張縫合法が...
-
馬の文献:屈曲性肢変形症(Stick et al. 1992)
文献 - 2023/09/01「23頭のスタンダードブレッドに対する深屈腱副靭帯の切断術での長期的影響」Stick JA, Nickels FA, Williams MA. Long-term effects of desmotomy of the accessory ligament of the deep digital flexor muscle in standardbreds: 23 cases (1979-1989). J Am Vet Med Assoc. 1992 Apr 15;200(8):1131-2.この症例論文では、馬の蹄関節での屈曲性肢変形症(いわゆるクラブフット)に対する外科的療法の長期的な影響を検証するため...