2023年10月のエントリー一覧
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競走馬の心房細動とプアパフォーマンスの関連性
話題 - 2023/10/30一般的に、馬のプアパフォーマンスでは、運動器系および呼吸器系に次いで、心脈管系の疾患が、三番目に多い原因であることが知られていますが、その発生による影響や、他病態との相互作用については不明な点が多いと言えます。ここでは、競走馬のプアパフォーマンスと心房細動(Atrial fibrillation)の関連性を調査した知見を紹介します。この研究では、香港と豪州での2009〜2021年の平地レースにおいて、プアパフォーマンスと競...
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馬の昆虫刺咬性過敏症:抗原免疫療法
話題 - 2023/10/28馬の病気のなかでも、皮膚病は、目に付きやすい事もあり、ホースマンからの相談が多いものの一つです。このうち、馬のアレルギー性皮膚炎は、体躯や四肢に発疹や脱毛、掻痒感による自傷を起こして、ホースマンを悩ませる病気ですが、その原因として多いのが、吸血昆虫などの唾液成分がアレルゲンとなって発症する、昆虫刺咬性過敏症(IBH: Insect bite hypersensitivity)であると言われています。ここでは、サシバエ抗原を用いた...
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馬の文献:繋靭帯炎(Crowe et al. 2004)
文献 - 2023/10/27「馬の慢性/回帰性の近位繋靭帯炎に対する拡散型圧力波療法」Crowe OM, Dyson SJ, Wright IM, Schramme MC, Smith RK. Treatment of chronic or recurrent proximal suspensory desmitis using radial pressure wave therapy in the horse. Equine Vet J. 2004 May;36(4):313-6.この症例論文では、馬の繋靭帯炎に対する保存療法の治療効果を検証するため、英国の三ヶ所の馬病院において、近位繋靭帯炎の診断が下された65頭の症例馬...
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馬の関節注射による蹄葉炎のリスク
話題 - 2023/10/25一般的に、馬の関節炎の治療では、コルチコステロイドの関節注射が行なわれていますが、その結果、血中のインスリン濃度が上昇して、蹄葉炎を発症するリスクに繋がるという懸念があります。そこで下記の研究では、インスリン調節能が正常(経口糖質投与試験で診断)であることが確認された10頭の実験馬を用いて、片方の中間手根関節に対してトリアムシノロンが関節注射され、その後の72時間にわたって、インスリンとグルコースの血...
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腹腔鏡と自動ロックループを用いた馬の陰睾の手術
話題 - 2023/10/23一般的に、停留精巣(いわゆる陰睾)とは、オス馬の精巣が、正常位置まで下降していない発生学的な病態を指します。馬の陰睾は、幾つかの病態に分類され、① 精巣が鼠径管の内部に位置している病態を鼠径停留精巣(いわゆるハイフランカー)、② 精巣が腹腔内に存在して精巣上体のみが内鼠径輪を通過している病態を不完全腹腔停留精巣、③ 精巣と精巣上体の両方が腹腔内に存在する病態を完全腹腔停留精巣と呼びます。近年では、馬の陰...
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馬の昆虫刺咬性過敏症:精油スプレー療法
話題 - 2023/10/21馬の病気のなかでも、皮膚病は、目に付きやすい事もあり、ホースマンからの相談が多いものの一つです。このうち、馬のアレルギー性皮膚炎は、体躯や四肢に発疹や脱毛、掻痒感による自傷を起こして、ホースマンを悩ませる病気ですが、その原因として多いのが、吸血昆虫などの唾液成分がアレルゲンとなって発症する、昆虫刺咬性過敏症(IBH: Insect bite hypersensitivity)であると言われています。ここでは、精油スプレー(Essenti...
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馬の文献:繋骨瘤(Arndt et al. 2022)
文献 - 2023/10/20「冠関節固定術のためのエタノール注射の後に起こった中節骨の致死的骨折」Arndt S, Katzman SA, LaPorte AD, Spriet M, Maglaty MA. Catastrophic fracture of the middle phalanx following intra-articular ethanol injection for facilitated proximal interphalangeal joint ankylosis. Equine Vet Edu. 2022; 35(5): e352-7.この症例論文では、馬の繋骨瘤(リングボーン、近位指骨間関節[=冠関節]の変性関節疾患)に対する内...
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馬の鼠径ヘルニアでの予後不良の因子
話題 - 2023/10/18後天性の鼠径ヘルニア(Acquired inguinal hernia)は、内鼠径輪から鼠径管に入り込んだ消化管が絞扼を起こす疾患です。馬においては、最も発生率の高い外ヘルニアであることが知られていますが、小腸絞扼が重篤になると、予後不良になることもあり、意外に怖い病気であると言えます。下記の研究では、馬の鼠径ヘルニアにおける、予後を悪化させる因子を解明するため、ベルギーとフランスの二つの獣医大学病院において、2005〜2020...
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馬の“ヘルペス禍”では濡れオガで感染拡大する?
話題 - 2023/10/16ご存じのように、ヒト社会が“コロナ禍”に見舞われてから三年以上が経ち、ワクチンの普及に伴って、ようやく事態の沈静化に向かいつつあります。一方、欧州のウマ社会における“ヘルペス禍”は、二年半が経った現在も、未だにエピデミック(地域的大流行)が完全には終息していません。通常、馬ヘルペスウイルス1型(EHV-1)は、肺炎・流産・神経症状などを起こし、日本では馬鼻肺炎の病原体として繁殖地でのワクチン接種が実施され...
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双方向の有棘縫合糸による馬の開腹術の縫合
話題 - 2023/10/14馬は、他の動物と異なり、開腹術の術創における合併症を起こし易いことが知られており、その発生率は四割に上ることが報告されています。そこで、下記の研究では、縫合糸の緩みによる術創裂開を抑える手法を検証するため、24頭の馬の屠体に正中切開術(25cm長)を施して、それを、双方向の有棘縫合糸(Bidirectional barbed suture)、または、通常の吸収糸で閉鎖した後(単純連続縫合、糸の太さはUSP2/EP5)、腹腔内部に入れた風...
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馬の文献:繋骨瘤(Caston et al. 2013)
文献 - 2023/10/13「エタノール関節注射を利用した冠関節固定術における回顧的評価:2006~2012年の34症例」Caston S, McClure S, Beug J, Kersh K, Reinertson E, Wang C. Retrospective evaluation of facilitated pastern ankylosis using intra-articular ethanol injections: 34 cases (2006-2012). Equine Vet J. 2013 Jul;45(4):442-7.この症例論文では、馬の繋骨瘤(リングボーン、近位指骨間関節[=冠関節]の変性関節疾患)に対する内科的療...
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米国の獣医師でのコロナワクチンの接種率
未分類 - 2023/10/11新型コロナ(COVID-19)の地球規模での感染拡大に伴い、2020年の三月に、世界保健機関(WHO)はパンデミックを宣言し、その直後、米国でも緊急事態宣言が出されました。その結果、米国の多くの州では、外出禁止令が出ましたが、多くの獣医師は、公衆衛生を維持するという仕事の特性もあって、出勤や往診により業務を継続するという割合が高くなったと言われています。一方、新型コロナへの対策として開発されたワクチンは、遺伝子...
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馬の球節の骨片は無跛行でも摘出すべきか?
話題 - 2023/10/09一般的に、馬の球節(中手/中足指節間関節)に生じる骨片は、骨折または骨軟骨症に起因しており、関節鏡による外科的摘出が行なわれます。しかし、跛行や屈曲痛などの臨床症状を伴っていない場合、骨片をそのまま残しておいても良いかどうかは、賛否両論があります。そこで、下記の研究では、球節の骨片による弊害を検証するため、ドイツの二箇所の馬病院において、球節の骨片摘出のために実施された823箇所(640頭)の関節鏡手術...
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馬の開腹術の縫合における非侵襲性の閉創装置
話題 - 2023/10/07馬は、他の動物と異なり、開腹術の術創における合併症を起こし易いことが知られており、その発生率は四割に上ることが報告されています。そこで、下記の研究では、ジップ皮膚閉鎖システム(ZSCS: Zip skin closure system)という新しい閉創デバイスの有用性が、八頭の実験馬に作成した開腹術の模倣術創を用いて試験されました。参考文献:Klein CE, Engiles JB, Roessner HA, Hopster K, Hurcombe SD. Comparison of the zip skin...
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馬の文献:繋骨瘤(Penraat et al. 2000)
文献 - 2023/10/06「モノヨード酢酸塩ナトリウムによる馬の近位指骨間関節の化学固定術の評価」Penraat JH, Allen AL, Fretz PB, Bailey JV. An evaluation of chemical arthrodesis of the proximal interphalangeal joint in the horse by using monoiodoacetate. Can J Vet Res. 2000 Oct;64(4):212-21.この症例論文では、馬の繋骨瘤(リングボーン、近位指骨間関節[=冠関節]の変性関節疾患)に対する内科的療法の治療効果を検証するため、八頭の...
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馬の蹄を固くする4つのコツ
馬の飼養管理 - 2023/10/04ホースマンの中には、愛馬が頻繁に裂蹄してしまい、跛行することを繰り返してしまうので、蹄を固くする方法が無いか?という疑問を持たれている方もいらっしゃるかもしれません。ここでは、馬の蹄を固くする4つのコツを解説した知見を紹介します。参考資料:Katie Navarra. 4 Horse Hoof Hardening Tips. The Horse, Topics, Hoof Care, Hoof Cracks, Hoof Problems, Horse Care, Lameness: April 29th, 2020. コツ1:飼養環境を...
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エソメプラゾールによる馬の胃潰瘍の治療
話題 - 2023/10/02馬は胃潰瘍を起こし易い動物であることが知られており、近年では、プロトンポンプ抑制剤であるオメプラゾールの投与によって、良好な治療および予防効果が示されています。一方、ヒト医療では、エソメプラゾールという、異性体のプロトンポンプ抑制剤が一般的に用いられており、オメプラゾールに比較して、薬物動態でのAUC(血中濃度-時間曲線下面積)が有意に広いことから、胃酸分泌を抑える効能も、エソメプラゾールのほうが優れ...