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馬の空回腸と盲結腸の吻合術

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馬における空回腸と盲結腸の吻合術のまとめです。あくまで概要解説ですので、詳細な手技は成書や論文をご確認ください。

馬の空回腸を盲腸または結腸に吻合する治療法は、空腸、回腸、盲腸の何れか(または複数)が、絞扼による壊死、または機能不全を呈した場合に、正常な部位同士を吻合して、空腸または盲腸の異常部位を切除もしくは迂回する目的で実施されます。具体的な術式としては、①空腸盲腸吻合、②回腸盲腸吻合、③回腸結腸吻合、④空腸結腸吻合、などに分類されます。

このうち、術式①は、空腸の絞扼性疾患によって虚血性壊死を生じて、遠位側に十分な長さの空回腸が残されていない場合(壊死部との境界から30cm以内の正常部は切除するため)に使用され、空腸を盲腸に吻合して回盲部を迂回させます。また、回腸が肥厚と機能不全を起こして食滞した場合、および、回腸盲腸重責を起こした場合にも、回腸を切除して、空腸を盲腸に吻合するため、術式①が選択されることが一般的です。一方、術式②は、回腸食滞の症例において、機能不全が回盲連絡部に限局していると推測された場合に使用され、正常部の回腸と盲腸を吻合します。

術式③は、盲腸が肥厚や機能不全を起こして食滞した場合(いわゆるタイプ2盲腸便秘症)に使用され、回腸を結腸(右腹側大結腸)に吻合することで盲腸を迂回させます。一方、盲腸食滞において、回腸の機能不全も併発していると懸念される場合には(両疾患とも鞭虫寄生などの同一の病因を持つため)、回腸を切除して、空腸を結腸(右腹側大結腸)に吻合することで盲腸を迂回させます(術式④)。上記以外の治療法としては、盲腸食滞に対しては、盲腸と結腸を吻合する方法や、盲腸結腸開口部を広げる術式もありますが、治療成績の悪さから、現在では推奨されていません。

なお、回腸盲腸重責が引き抜けない場合には、吻合術を行なう前に、盲腸内に入り込んだ回腸を、盲腸の内腔にて切除する必要があります。その際には、盲腸を切開した後、盲腸内の空腸壁も切開して、その切開創から重責していた空腸組織を引き出してから、腸管ステープラーを用いて、回盲開口部にて回腸を切除する手法が有用です(下図))。

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空回腸と盲腸の端側吻合術

空腸または回腸を盲腸に吻合させる際には(下図)、回盲部側の回腸は切除および断端縫合(パーカーカー縫合)して盲端としておきます。この盲端は、徐々に盲腸内へと反転していくため、出来るだけ短くしておかないと、盲腸結腸開口部を塞いでしまう危険があります。なお、この盲端は、腸間膜からの血流が途絶えることで虚血壊死および膿瘍化していくため、対策としては、腸管ステープラー(TAタイプ)を使って回盲部ギリギリで切除すること(腸間膜の裂孔を生じて腸管迷入するリスクあり)、盲端に大網を縫い付けて血流維持すること、盲端を盲腸内に反転させるように押し込むこと、などが挙げられます。

空回腸と盲腸の端側吻合術においては、盲腸に吻合させる近位側の空回腸は、60度の角度で斜めに切り落とすか(腸間膜側が鋭角となる)、S字状に切開して、吻合部の孔を出来るだけ幅広くします。吻合箇所は、出来るだけ盲腸基底部に近い部位で(盲腸内容が空回腸に逆流するのを抑えるため)、盲腸の背側ヒモと内側ヒモの中間点になり、空回腸の走行が盲腸基底部に向かうようにします。

盲腸ヒモをバブコック鉗子で掴んで持ち上げながら、空回腸の腸間膜側および対側の二箇所を盲腸に単純結節縫合で縫い付け、空回腸の奥側1/2の漿膜面も、盲腸漿膜面に連続レンベルト縫合(またはカッシング縫合)で縫い合わせます(一層目)。その後、一層目の縫合線の5mm内側で盲腸壁を切開して、空回腸と奥側1/2の切除縁と、盲腸の奥側1/2の切開縁を連続全層縫合で縫い合わせ(二層目)、同様に、空回腸と手前側1/2の切除縁と、盲腸の手前側1/2の切開縁も連続全層縫合で縫い合わせます(三層目)。最後に、空回腸の手前側1/2の漿膜面も、盲腸漿膜面に連続レンベルト縫合(またはカッシング縫合)で縫い合わせます。さらに、腸間膜を盲腸・回盲ヒダ・回腸盲端に縫い付けて、穴を残さないようにします(腸管迷入して閉塞させる危険が残ってしまうため)。

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空回腸と盲腸の側々吻合術

空回腸と盲腸の側々吻合術においては(下図)、盲腸に吻合させる近位側の空回腸は、断端を縫合(パーカーカー縫合)して盲端としておきます。吻合箇所は、端側吻合と同様で、盲腸基底部に可能な限り近く、背側ヒモと内側ヒモの中間点で、空回腸の走行を盲腸基底部に向けます。吻合時の一層目から四層目の縫合方法も、基本的には、前述の端側吻合と同じ手順ですが、一層目の縫合のあとに、盲腸壁および空回腸壁を切開して、側々吻合の開口部を形成します。その後には、腸間膜を縫い付ける処置を同様に実施します。

空回腸と盲腸の側々吻合術では、腸管ステープル(GIAタイプ)を使うことも可能です。その場合、空回腸の切除端は盲端にせず、開いた状態のまま、盲腸の漿膜面に縫い付けます。その後、盲腸壁に穿刺切開創を開け、ステープラーのアームで空回腸壁と盲腸壁を挟み付けてから、ステープル発射及び腸壁切開処置を施します。両腸壁にステープルが貫通していることを確認してから、空回腸の切除端をパーカーカー縫合で閉鎖し、盲腸の穿刺切開創は全層縫合で閉鎖します。さらに、ステープル線の両側を、連続カッシング縫合で縫い合わせて補強します。なお、ステープルを発射する際には、ヒト用の4.8mmステープルが堅固に二重腸壁を貫通できるよう、ステープラーのアームで挟み付けた後に15秒以上は待つことが大切です。

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回腸を切除しない盲腸との側々吻合術

空回腸と盲腸の側々吻合術では、回腸が生存していれば、回腸を切除することなく、盲腸に繋がったままの状態で、近位側の回腸を盲腸に側々吻合する手法[1]もあります(下図左)。これは、盲腸の不完全迂回手術とも呼ばれ、回腸の肥厚と機能不全を起こした場合や、回腸盲腸重責を引き抜くことが出来ない場合などが含まれます。側々吻合の手法は、前述の手法(一層目から四層目の縫合手順)と同じであり、腸管ステープラーを用いて施術することも可能です。また、類似の術式としては、空腸から回腸近位部が絞扼性疾患のため切除されたときに、空腸と遠位回腸を端々吻合したあと、更にその吻合箇所を盲腸へと側々吻合するという手法(ハイブリッド空回盲腸吻合術[2])も試みられています(下図右)。

回腸と盲腸の不完全迂回では、回盲部を盲端にしないため、そのための作業時間を節約できる上に、この部位の虚血性壊死や膿瘍化を続発する心配が無いという利点があります。また、遠位空腸から回腸、そして盲腸への腸管の連続性が維持されているため、側々吻合部を盲腸に繋ぎ留めて、不必要な緊張が掛からないよう錨の役目を果たし、加えて、吻合箇所が捻じれにくいというメリットが考えられます。一方で、吻合部を越えて、回盲部の方向に腸内容物の流入することで、食滞を再発させる危険性もあると言えます。

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空回腸と結腸の側々吻合術

空回腸と結腸の側々吻合術では(下図左)、盲腸への吻合術と同様に、回盲部側の回腸は切除および断端縫合(パーカーカー縫合)して盲端とします。また、近位側の空回腸の端も、同様に盲端とします。吻合箇所は、創外に出ている右腹側大結腸の出来るだけ近位側で、結腸の外側ヒモと内側ヒモの中間点になります。空回腸と結腸の側々吻合では、結腸内容の漏出による腹腔汚染を抑えるため、腸管ステープラーを用いて行なうことが推奨されます(右腹側結腸は創外に出せないため)。

側々吻合術では、まず、空回腸の走行が盲腸基底部に向かうように、空回腸の盲端を結腸壁に縫い付けます。その後に、空回腸壁と結腸壁の両側に穿刺切開創を開けて、腸管ステープラーのアームを差し込み、両腸壁を挟み付けます。その後、腸壁同士が堅固に密着されているのを確認してから、ステープル発射及び腸壁切開処置を施して、ステープルが両腸壁をシッカリ貫通していることを確認します。そして、空回腸と結腸の穿刺切開創を全層縫合で閉鎖した後、ステープル線の両側を、連続カッシング縫合で縫い合わせて補強しておきます。腸間膜の穴を縫い寄せて塞ぎ(腸管迷入の予防)、盲腸結腸ヒダ(回腸結腸ヒダを含む)も縫い閉じておきます(内ヘルニア予防)。そして、吻合部から離れた箇所で、空回腸と結腸の漿膜を縫い合わせて固定しておくことで(約10cm長)、吻合部が捻じれてしまうのを防げます。

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回腸を切除しない結腸との側々吻合術

空回腸と結腸の側々吻合術においては、前述の盲腸の不完全迂回手術と同様に、回腸を切除することなく、盲腸に繋がったままの状態で、近位側の空回腸を結腸に吻合する手法もあります(下図右)。この場合、回盲部の盲端が虚血性壊死する懸念がなく、回盲部が錨となり吻合箇所が捻じれにくいという利点があります。ただ、盲腸食滞の治療として実施される場合には、盲腸への流入が続くと食滞の再発や盲腸破裂のリスクがあるため、吻合部位と回盲部のあいだの回腸は、ステープルまたは縫合糸を四箇所にかけて(2cm間隔)、小腸内容が盲腸内に流入するのを遮断しておくことが必要です。



空回腸と盲結腸の吻合術で重要なこと

上記のように、空回腸を盲腸または結腸に吻合する手法は様々で、原因疾患やその症例の腸管病態の重さに応じて、適切な術式を選択する必要があります。また、盲腸体部や右腹側大結腸などの操作しにくい場所を縫合する場面も多く、腸管ステープラー(下写真)を使用する方式もあります。このため、複数の術式を習得しておくことに加えて、ステープラーの使用方法を熟知し、腹腔内の不自由な場所でも正しく縫合できる手技を鍛錬しておくことが大切だと言えるかもしれません。

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参考文献:
[1] Giusto G, Cerullo A, Labate F, Gandini M. Incomplete Ileocecal Bypass for Ileal Pathology in Horses: 21 Cases (2012-2019). Animals (Basel). 2021 Feb 5;11(2):403.
[2] Gandini M, Giusto G. Combination of end-to-end jejuno-ileal anastomosis and side-to-side incomplete ileocecal bypass (hybrid jejuno-ileo-cecal anastomosis) following subtotal ileal resection in seven horses. J Am Vet Med Assoc. 2021 Nov 1;259(11):1337-1343.








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