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馬の結腸の吻合術

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馬の結腸の切除および吻合術のまとめです。あくまで概要解説ですので、詳細な手技は成書や論文をご確認ください。

馬の結腸の切除・吻合術は、結腸捻転で虚血性壊死した腸管の除去のために実施されることが一般的です。捻転を整復した後は、結腸テーブル上で骨盤曲切開術を行ない、腸内容物を排出しますが、結腸内に水を残し過ぎないよう注意します。結腸の切除は盲腸結腸ヒダの位置(もしくはそれより骨盤曲側)で行なうので、腸管の下にスポンジ等を敷いて腹腔汚染を抑えます。まず、切除部位の高さにある右結腸動静脈および回結腸動脈結腸枝を結紮しますが(下図)、腸管ステープラーで結腸間膜をまたぐように挟み付けて脈管閉鎖する方法もあります。

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結腸の側々吻合術

結腸を側々吻合する場合には、結腸切除する前に吻合部を形成できることから、手技が容易となり、より広範囲の結腸を切除できます。結腸先端の重みで、右側の腹側・背側結腸が引き出され、腹腔内に引き戻されるのを抑えてくれるからです。まず、右側の腹側・背側結腸に、30~35cm間隔で保持糸をかけ、腹側と背側の結腸間を連続カッシング縫合で縫い合わせ(25~30cm長、No.0吸収糸)、両結腸に切開創を設けます(15~25cm長)。そして、両切開創の辺縁同士を連続全層縫合で縫い合わせることで、側々吻合の連絡孔を形成して、更にその外側を連続カッシング縫合して補強します(下図)。

吻合部形成のあとは、結腸切除のため、ドワイヤン腸鉗子(またはサリンズ・スカッダー腸鉗子)で結腸内容を遮断してから、その鉗子の辺縁に沿って、右腹側結腸→右背側結腸の順で切除していきます。切除端は、二重の連続縫合(全層縫合+レンベルト縫合)またはパーカーカー縫合で閉鎖します(下図)。

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なお、結腸の側々吻合は、腸管ステープラーを用いて実施することも可能ですが、結腸壁の浮腫が重篤でない場合に限られます。まず、吻合部形成の際には、腹側と背側の結腸間を縫い合わせた後、両結腸に穿刺切開創を開けてステープラー(GIAタイプ)のアームを通して、両結腸壁を十分に挟み付けてから、ステープル発射と連絡孔切開を施します。また、結腸切除の際には、腹側と背側の結腸それぞれにステープラー(TAタイプ)をかけて、ステープル閉鎖した後、遠位側を切除して連続レンベルト縫合で補強します。

馬の結腸の側々吻合術では、結腸間膜をまたぐように連絡孔を形成する手法もあります。この場合は、結腸切除を先に行ない、背側と腹側の結腸の切除端が開いた状態で、結腸間膜の箇所にステープラー(GIAタイプ)をかけて連絡孔を形成します。結腸間膜は、太い動静脈が走行していて、この部位での吻合を手縫いで実施すると、出血や血腫の危険があるため、腸管ステープラーを用いることが推奨されます。その後は、背側と腹側の結腸それぞれを、二重の連続縫合(全層縫合+レンベルト縫合)またはパーカーカー縫合で閉鎖します(下図)。

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結腸を側々吻合する利点としては、腹腔汚染が抑えやすいこと(特にステープラーを使った場合)、吻合部形成を切除前に実施できること、手縫いでもステープラーでも実施可能なこと、などが挙げられます。一方、側々吻合の欠点としては、吻合部の連絡孔が狭窄する可能性があること、および、吻合部と切除部とのあいだに、行き止まり構造のポケットが出来てしまう事があります。



結腸の端々吻合術

結腸を端々吻合する場合には、盲腸結腸ヒダから10~12cmの箇所で動静脈を結紮した後、右腹側結腸は長軸に対して直角に切除し、右背側結腸は長軸に対して30度の角度(結腸間膜側が鋭角になる角度で)で切除します(下図)。こうすることで、両結腸の切除断端の外周が等距離に近づき、縫い合わせるときに隙間やジャバラが出来にくくなります。

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その後は、背側と腹側の結腸のあいだの端々吻合を行ないますが、まず結腸間膜側を連続全層縫合または連続コンネル縫合(No.0吸収糸)で縫い合わせてから、次に対側を同様に縫い合わせます。この際、縫合針の刺入間幅は、背側結腸より腹側結腸のほうが長くなるようにして(よい多い組織を引き寄せるように)、内径が異なる両結腸の辺縁が、出来るだけ均等に向かい合うようにします(両結腸の断面が八の字型[8]からファイ字型[Φ]になるように)。その後、更に外側を連続レンベルト縫合で補強します(連絡孔は12~14cm径となる)(下図)。

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なお、端々吻合の変法としては、結腸切除したの時点で、ステープラー(GIAタイプ)を用いて結腸間膜の箇所にスリット状の切れ目を形成することも出来ます(下図)。このステップは、前述の側々吻合術にて、結腸間膜の部位に連絡孔を形成する手順と同じです。これによって、端々吻合による連絡孔も、サイズを大きくできると考えられますが、このステップは必須ではないと言われています。

結腸を端々吻合する利点としては、吻合部の連絡孔サイズを十分に確保できること、連絡孔が狭窄化しないこと、などが挙げられています。また、側々吻合よりも短時間で施術できることや、切除箇所がそのまま吻合部になるため、結腸のより根元(近位側)にて切除できることもメリットと言えます。一方、端々吻合の欠点としては、結腸を切除した後に吻合部形成するため、結腸が腹腔内に引き戻されやすく、腸内容物による腹腔汚染を起こし易いこと、および、結腸間膜側を縫い合わせる際の難易度の高さがあります。

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結腸の切除・吻合術で重要なこと

結腸を広範囲に切除された馬では、残りの大腸領域での水分吸収能が上がることで、一年以内には順応できることが知られていますが、術後は、自発飲水量が増える個体もあるため、自由に飲水できるようにしておくことが推奨されています。また、発酵タンクである結腸がサイズダウンすることで、粗蛋白や繊維質の消化能も落ちますが、飼料を調整(アルファルファペレットを体重計算量より多めに給餌するなど)することで、充分に体重維持できると言われています。ただ、特にポニー症例では、持続的な低リン血症を呈することが報告されています。

前述のように、結腸を切除および吻合する場合には、吻合箇所を完全に創外に出すことは困難なケースが多いため、出来るだけ迅速に切除および吻合作業を完了して、腹腔汚染による腹膜炎のリスクを抑える必要があります。このため、腹腔内の狭い場所でも、正確かつ素早く縫合できる手技を習熟しておくことが大切だと言えるでしょう。

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