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馬の喉詰まりを予防する10個の対策

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ホースマンの中には、頻繁に喉詰まりを起こす馬に苦労されている方もいらっしゃるのかもしれません。

喉詰まりとは、食道梗塞のことを指し、食道に飼料が詰まって通過障害を起こす病気です。また、喉詰まりが悪化すると、誤嚥性肺炎を続発して命に関わることもあるので、シッカリとした予防対策を取ることが大切です。喉詰まりは高齢馬に好発することが知られており、15歳以上の馬では、食道梗塞を起こすリスクが3.1倍も高いことが報告されています。ここでは、馬の喉詰まりの予防対策を紹介します。

参考資料:
Haywood LMB. Understanding Choke in Horses. The Horse, Topics: Nov27, 2020.
Phillips SP. Senior Horses and Choke Risk. The Horse, Topics: Mar23, 2020.
Janicki KM. Feeding Choke-Prone Horses. The Horse, Topics: Sep24, 2018.



対策1:飼い付けの回数を増やす

馬の喉詰まりは、エサを慌てて食べるときに、充分に咀嚼されていない飼料を飲み込むことで発症することが一般的です。この方策では、一日あたりの飼い付け回数を増やすことで、給餌間隔が狭くなり、飼い付け時間に馬が空腹で興奮してしまうことが防げるというメリットがあります。また、一食当たりの給餌量も減らせるため、食道に詰まらせてしまう確率も下げられます。もし可能であれば、通常の3~4回の飼い付け(朝昼夕夜)の量を減らし、それらの合間で、2~3時間おきに少量の乾草を投げ込む等の方策が考えられます。



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対策2:飼い桶を床に置く

馬の喉詰まりを防ぐためには、飼い桶の高さも重要です。もし飼い桶が、比較的高い位置(馬の肘から肩の高さ)にあると、食道の入り口が水平に近い角度になり、多量の飼料を一気に嚥下してしまう危険性が増えます。一方、飼い桶を床に置いておくと、食道の入り口が垂直に近い角度になり、一回の嚥下動作で食道に入っていくエサの量を減らせるため、喉詰まりを起こしにくくなると言われています。この場合、ゴム製の柔らかい飼い桶を使えば、馬が飼い桶に肢を突っ込んでも、怪我をする心配がありません。なお、水桶は、ホコリや飼料片が入らないよう、比較的に高い位置に設置しておいて問題ありません。



対策3:飼い付け直前に数個の角砂糖を与える

これは、チョッとしたコツですが、喉詰まりの常習馬に対して有用だと言われています。飼い付けの直前に、数個の角砂糖を与えることで、口内に唾液が出てきて、それを飲み込むことで、食道壁の潤滑剤となるため、喉詰まりを予防に役立つと考えられています。また、最初に甘いものを口に入れて唾液分泌を刺激することで、摂食中の唾液量が増やせるという効能も期待されます。



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対策4:スローフィーダーを使って給餌する

一般的に、早食いするクセのある馬は、充分に咀嚼されていない飼料を飲み込むことが多いため、喉詰まりを頻繁に起こし易いと考えられています。そのため、スローフィーダーを使って給餌することで、馬が早食いしてしまうのを防いで、喉詰まりの予防につながると言われています。また、飼い桶の中に、大きめの石やプラスティック製のブロック等を入れて、馬の摂食を妨げることで、早く食いを防止する方策も有用です。いずれの方法でも、馬が慣れてくると早食いできてしまうので、実際に馬が完食するまでの時間を計測してみて、本当に早食い防止になっているかを確認することが大切です。



対策5:定期的な歯科検診を受ける

特に高齢馬において、歯科的な問題から噛み合わせが正しく出来なくなると、充分に咀嚼されていない飼料を飲み込むことで、喉詰まりを起こし易くなると言われています。また、咀嚼する時間が短縮すると、エサに混ざる唾液の量も減るため、食道に詰まり易くなることも考えられます。通常、馬の歯科検診は、5歳以下の若齢馬では年二回で、それ以降の馬は年一回は実施すべきと言われています。しかし、永久歯が抜けてしまったり、階状歯や波状歯などになってしまった高齢馬では、鋭利な鉤状の箇所が生じて、咀嚼痛を引き起こしやすいため、年に2~3回の歯科検診を受けることが推奨されています。

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対策6:エサを水でふやかして給餌する

喉詰まりをよく起こす馬に対しては、与えるエサを水でふやかすことで、乾燥した飼料が食道に入って詰まってしまうのを防げると考えられています。しかし、ふやかした飼料であっても、咀嚼が不十分であれば喉詰まりを起こしてしまうという点には注意すべきです。このため、上記の歯科検診を定期的に行なって、馬が正常に咀嚼できるよう努めることが大前提で、水でふやかすのは補助的な対策である、という理解が大切です。また、水の代わりにオイルを混ぜて、食道の潤滑作用を期待することもありますが、摂取カロリーが増えすぎる危険があるため注意が必要です。



対策7:充分な飲水量を維持する

馬が脱水を起こしていると、食道壁が乾燥して、エサが詰まり易くなることに加えて、唾液の分泌量も減るため、食道の潤滑剤となるべき唾液の不足から、食道梗塞のリスクが増すことに繋がります。このため、特に高齢馬においては、水桶の減り具合を常に監視して、飲水量が減っている時期には、運動後に電解質溶液やフスマ水を用手給水したり、一時的にエサに添加する塩を増やして、自発的な飲水を促す方策が有益です。また、飲水量が減り易い時期(晩秋~初冬)だけ、エサを水でふやかして与えるのも予防対策になるかもしれません。



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対策8:リンゴや人参は細断して与える

馬の喉詰まりでは、リンゴや人参などを、大きな破片のまま飲み込んだ時に発症することもあります。このため、喉詰まりの常習馬に対しては、リンゴや人参を細断してから給餌することが推奨されます。その際、ナイフで2~3cm角に切っただけでは、食道に詰まる可能性は残るため、おろし金などを使って、すり潰す又はスライスして与えるのが望ましいと言えます。



対策9:放牧中には口カゴを装着させる

通常、牧草地に放牧するときには、青草は水分も多くて柔らかいので、喉詰まりを起こす心配はないと考えられます。しかし、特に、春先で伸び始めの青草では、糖分が多く甘味があるので、馬は喜んで早食いしてしまいがちです。このため、喉詰まりをよく発症する馬では、放牧中に口カゴを装着させて、青草を食べさせない(または少量ずつしか摂食できない)ようにしておくことが推奨されます。



対策10:喉詰まり後には流動食を与える

喉詰まりの常習馬においては、喉詰まりを発症したあとの飼養管理に気をつけることが、次の喉詰まりを予防するうえで重要になってきます。一般的に、食道梗塞を発症したときの食道壁は、完治までに数日から一週間を要し(内壁の損傷度合いによる)、給餌再開のタイミングが早すぎると、食道壁の慢性炎症から線維化を起こし、食道の一部分が分節運動をうまく出来なくなったり、食道憩室や食道狭窄などの合併症を続発してしまいます。これらのケースでは、非常に頻繁に喉詰まりを繰り返すようになり、食道破裂から重篤な首のフレグモーネを起こして命に関わることもあります。このため、喉詰まりを起こした馬では、最初の48~72時間は絶食させ、その後は、最低一週間は流動食を給餌して(ヘイキューブやペレットをお粥状にふやかしたもの)、食道壁の十分な治癒を促します。また、月一回以上の頻度で喉詰まりを再発する馬は、獣医師に内視鏡検査をしてもらい、外科的治療を要するか否かを精査してもらうことが推奨されます。

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馬の喉詰まりの予防について重要なこと

馬の喉詰まりを予防するためには、上記のような対策を、継続的に行なう必要があります。なかには、飼い付け方法の変更などのように根気強く続けていく方策や、歯科検診などの費用が掛かるものもあります。しかし、食道梗塞を頻繁に起こす馬に対しては、ヒト医療でいう介護が必要になった高齢者と同じように、その馬の余生に渡りずっと喉詰まりの予防対策を続けてあげることで、はじめて生活の質(QOL)の維持につながるという認識やコミットメントを持つことが重要なのかもしれません。

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