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馬の病気:鶏跛

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鶏跛(Stringhalt)について。

後肢の機械性跛行(Mechanical lameness)を呈する疾患のひとつで、飛節と膝関節の不随意性過剰屈曲(Involuntary exaggerated hyperflexion)が見られ、重症例では挙上した球節が腹部に達することもあります。病因(Etiology)としては、ガンマ遠心性反射弓(Gamma efferent reflux arc)の異常が挙げられており、外傷性の末梢神経損傷(Peripheral nerve damage)、または、原虫性脊髄脳炎(Equine protozoal myeloencephalopathy: EPM)等の中枢神経損傷が、散在性鶏跛(Sporadic stringhalt)の原因となりえます。このうち、反射弓のうち運動神経線維の異常を呈した場合には、脱神経性筋萎縮(Denervation muscle atrophy)が観察されます。また、毒性植物(Hypochaeris radicata, Taraxacum officinal, Malva parviflora, etc)の摂食によって神経異常が起きた場合には、散在性に加えて流行性(Outbreak)の発症傾向を示すこともあり(いわゆるオーストラリア鶏跛:Australian stringhalt)、主食牧草の質が低下しがちな晩夏~初秋に好発することが知られています。

鶏跛の診断は、視診によって特徴的な鶏跛歩様を確認することで下されますが、軽度の歩様異常の場合には、膝蓋骨上方固定(Patella upward fixation)との鑑別を要する場合もあります。多くの場合、病因の特定は困難ですが、外傷病歴、牧草地の視察、脳脊髄液検査によるEPMの診断などが試みられます。

外傷性鶏跛は自然治癒(Spontaneous resolution)が見られず、また、流行性鶏跛も完治には放牧中止後、数ヶ月~一年を要することもあります。鶏跛の外科的治療としては、外肢伸筋腱切除術(Lateral digital extensor tenotomy)を介して、物理的に飛節や膝関節の過屈曲消失が試みられますが、反射弓のどの部位が損傷しているかによって、鶏跛歩様の改善度合や速度には差異が見られます。内科的治療としては、GABA受容体作動薬(GABA receptor agonist)であるバクロフェン(Baclofen)、ナトリウムおよびカリウムチャンネル拮抗薬(Sodium and potassium channel blocker)であるフェニトイン(Phenytoin)等の投与によって神経異常(Neuropathy)を改善して、生理的に過屈曲の減退を講じる治療法も試みられます。毒性神経異常(散在性・流行性)を疑う症例では、速やかに放牧を停止して内科的療法が施され、また牧草地の改良による再発予防が推奨されます。

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