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キネシオテープは馬の腹筋に効く?

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キネシオテープとは、正式名をキネシオロジーテープ(Kinesiology taping)と言い、伸縮性のある綿やアクリル製のテープに接着剤がついているもので、筋肉と同じ伸縮率を持ったテープだと言われています。このテープを筋肉の走行に沿って、緊張を掛けるように皮膚に貼り付けることで、体内に隙間が出来てリンパ液の流れが良くなり、新陳代謝の改善および自然治癒力の向上を誘導して、筋肉の痛みを取り除くと言われています。

キネシオテープは、ヒト医療において、慢性の筋肉痛を緩和するのに役立つと提唱されている反面、プラセボ作用以上の治療効果に関する科学的エビデンスに乏しいとも言われています。馬の分野でも、キネシオテープを用いて筋肉病態を改善する試みがありますが、経験的に使用されている側面が大きく、効能に関する科学的知見は限定的です。

そこで、下記の研究では、11頭の健常馬を用いて、腹底部の皮膚に腹筋走行に沿ってキネシオテープを貼り、調馬索運動の前後における、背腹・内外・長軸方向への筋活動およびストライド頻度などが測定されました。この際、キネシオテープは、緊張を掛けない状態(無緊張時)または掛けた状態(緊張時)で張り付け、その差異を比較し、また、筋活動や歩様の指標は、常歩または速歩の歩様において、三軸加速度計を用いて計測されました。

参考文献:
Biau S, Burgaud I. Application of kinesiology taping to equine abdominal musculature in a tension frame for muscle facilitation increases longitudinal activity at the trot. Equine Vet J. 2022 Sep;54(5):973-978.

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結果としては、速歩での長軸方向の筋活動を見ると、調馬索運動をする前(キネシオテープを貼ってから30分間経過)においては、無緊張時(5.4W/kg)のよりも、緊張時(7.6W/kg)のほうが有意に高値を示していました。同様に、調馬索運動をした後においては、無緊張時(6.1W/kg)のよりも、緊張時(7.3W/kg)のほうが有意に高値を示していました。このため、緊張を掛けた状態で張り付けたキネシオテープによって、馬の腹部筋群の長軸方向への筋活動を活発化させる作用があると考えられ、これは“需要のある品質”(Sought-after quality)であることから、トレーニング効果を上げるために有益だと考察されています。

この研究では、幅6cm又は10cmのキネシオテープを用いて、腹直筋に対しては前後方向に、外腹斜筋に対してはX字形にテープが貼り付けられ(膁部から腹底を通って対側腋窩領域にクロスさせる方向)、これによって、腹直筋には25%の牽引を掛け、外腹斜筋には100%の牽引力を掛けたと述べています。これらのテープは、歩様の負重相における腹直筋と外腹斜筋の収縮を促進して、腰仙部屈曲時における胸腰部伸展を減少させて、長軸方向への筋活動を活発にする効能が得られたと考察されています。また、キネシオテープの緊張時には、馬は歩数が少なくなっており、歩幅を延長させる効果も期待できると考えられました。

一般的に、皮膚に貼り付けられたキネシオテープは、筋膜に緊張を与え、リンパ器官や感覚受容器を刺激することで、筋収縮を活性化させると考えられており、馬の腹筋にこれを作用させることで、調教による筋力増強効果を更に増すと提唱されています。この研究者は、馬の皮膚は敏感で、感覚受容器の数も多いことから、ヒトよりもキネシオテープの効能が高く得られるのではないか、とも述べています。また、キネシオテープを背中に貼り付けることで、慢性背筋痛を良化させる効果も得られると考察しています。

この研究の限界点としては、三軸加速度計による測定は、馬を曳いた状態でのみ実施されており、今後の研究では、騎乗時の歩様においても、同様な筋活動の活性化作用が得られるかを検討すべきであると考察されています。また、本実験では、速歩歩様の速度は計測されておらず、もしキネシオテープを貼り付けられた馬が、腹部の違和感から歩様速度を速めたとすると、必然的に長軸方向への筋活動を活発になるため、それは必ずしもテープの効能とは言えないのかもしれません。

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参考資料:
Christa Leste-Lasserre, MA. Kinesiology Tape Might Improve Horse Propulsion, Core Strength. The Horse, Topics, Article, Conditioning, Horse Care, Lameness, Recovering from Injury & Surgery, Sports Medicine: Apr5, 2022.
Bonny Henderson, DVM. Elastic Veterinary Kinesiology Taping. The Horse, Topics, Horse Care, Injuries & Lameness, Lameness, Lower Limb, Recovering from Injury & Surgery, Sports Medicine: Jun26, 2020.

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