蹄葉炎の馬における飼養管理
馬の飼養管理 - 2022年09月10日 (土)

蹄葉炎になった馬に対する飼養管理で悩んでいるホースマンも多いのかもしれません。
蹄葉炎の馬において、体重を少し絞って、罹患蹄への負荷を軽減するのが良い場合があります(理想体重の約一割減)。その場合でも、急激にエサの量を減らすのではなく、給餌量は体重の1.5%を維持するようにします。なお、ボディコンディションスコアは、9段階中の5を維持するように努め、体重計のない牧場等では、胸囲と体長から体重を計算することが出来ます。
一般的に、蹄葉炎の馬への飼料では、糖分や澱粉の量を抑えることが必要であり、非構造性炭水化物(NSC: Non-structural carbohydrates)を12%以下にすることが推奨されます。殆どの濃厚飼料(大麦やエン麦)は、NSCが50%を越えるため、必然的に粗飼料が中心となりますが、どの乾草のNSCが12%以下であるかは、刈り取り時期や原産地の気候で多様性があります。このため、乾草を水に浸して糖分等を洗い出してから給餌する(勿論、浸した水は捨てる)ことで、NSCを抑える給餌法が推奨されています。

また、濃厚飼料を制限することで、馬の活力が下がるときには、構造性炭水化物を多く含むビートパルプを給餌することが推奨されます。この際には、ビートパルプ1gで乾草1.5kgを代替するようにしますが、ペレット状のビートパルプは、糖蜜が添加されていてNSCが高めになるので注意しましょう。そして、粗飼料中心の給餌では、ミネラルやビタミン、必須アミノ酸が不足しがちになるため、サプリメント(特にリジンを含有するもの)を添加することも有益です。
そして、蹄葉炎の馬を牧草地に放牧するときには、早朝(日の出前)から午前9-10時頃までにすることが推奨されており(牧草中の糖分や澱粉は光合成で増えるため)、それ以外の時間に放牧するときには、口カゴを装着させることも検討しましょう。さらに、牧草は “ストレス”によってNSC量が増えるため、霜が下りる時期(寒冷ストレス)や雨量が少ない時期(干ばつストレス)には、放牧時間を減らす工夫も必要です。

その他には、オメガ3脂肪酸による抗炎症作用が蹄葉炎馬には有益で、インスリン抵抗性を向上させるとも言われており、オメガ3脂肪酸を多く含む亜麻仁油(リンシードオイル)の飼料添加が推奨されています。また、抗酸化作用を得られるビタミンEサプリや、蹄壁の質を改善させる亜鉛やビオチンを含有するサプリメントが飼料添加されることもあります(下記リンク)。
蹄葉炎の罹患馬に対する給餌では、病気の悪化を防止することと、全身の健康状態を維持することを両立させる必要があり、とてもデリケートな飼養管理を求められると言えます。このため、個々の馬の蹄葉炎の病態(代謝系異常に起因するか否か、蹄骨変位のステージ、痛みによる運動量の減り具合など)を鑑みて、給餌内容を精査すると同時に、定期的に健康診断やX線検査を受けて、病気の進行度合いを小まめに評価することが大切だと言えるでしょう。
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参考資料:
Oke S. Focus on Forage for Successful Recovery From Laminitis. The Horse: Jun20, 2022.
West CM. Feeding Laminitic Horses. The Horse, Topics: May1, 2007.
Lisa Elliott MSc. Feeding And Caring For Laminitis. FormaHoof column.
What to feed a Horse with Laminitis. Hygain columns: Oct6, 2021.
Feeding Horses with Laminitis. Vibrac Australia, Every Horse Care.
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