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安全な馬の点眼方法

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ホースマンの中には、馬の目薬がうまく差せずに苦労されている方もいらっしゃるようです。

一般的に、馬の眼病を治療するためのクスリは、筋注ではなく局所的に投与する場合が多いですが、点眼したクスリは、すぐに涙で流れてしまうため、一日に3回以上の点眼を要することが殆どです。このため、眼病の治療に際しては、獣医師が処方した目薬を、馬主や飼養管理者が自ら点眼しなくてはいけない事が多いと言えます。その際、点眼処置が適切に実施されなければ、目薬の効能が得られないばかりか、馬の目を傷付けてしまうリスクもあります。ここでは、安全な馬の点眼方法について紹介します。

参考資料:
How to Give Eye Medications to a Horse. AMERICAN COLLEGE OF VETERINARY OPHTHALMOLOGISTS, References, Tricks and Treatments: Oct12, 2020.

通常、馬は、目の周りを触られるのを怖がることが多く、特に、眼病を発症している場合には、触られるときに疼痛を呈するため、更に点眼作業を難しくしてしまいます。また、馬では、犬猫のように頭部を完全に固定することが出来ず、眼瞼を閉じようとする筋肉も強いことも、点眼作業の難易度をあげる要因となっています。

馬の目薬には、軟膏状と液体状のクスリがあり、軟膏薬のほうが点眼は容易になります。また、目を触られるのを極度に嫌悪する馬においては、補助者に無口と鼻梁を保定してもらう事が推奨され、必要に応じて、鼻捻棒を使って頭部を保定することで、馬が点眼されることに徐々に慣らしていける事もあります。

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軟膏状のクスリを点眼する際には、まず利き手でない方の手のひらの付け根を、治療する目の横に当てながら、人差し指を使って上眼瞼を持ち上げながら、親指で下眼瞼を押し下げます。そして、軟膏チューブを利き手に保持して、手のひらの付け根を目の横に当てながら、軟膏薬(5~6mmの長さ)を内眼角または結膜の縁に載せるように注入します。この際、馬が急に頭部を動かしても、軟膏チューブの先端で角膜を傷付ける事がないように、チューブの先端を内眼角のほうに向けておくことが推奨されます。その後は、上眼瞼を上下左右に動かすことで、軟膏を角膜全体に塗り拡げるようにします。

なお、上眼瞼が重度の炎症や腫脹を起こしていて、触ったときの痛みが強い場合には、下眼瞼を押し下げるだけで、目薬を注入できる事もあります。また、軟膏チューブから直接クスリを注入する代わりに、軟膏薬を人差し指または親指の腹に載せておいて、それを内眼角または結膜に塗り込む方法もあります。この場合、角膜を傷付けるリスクが少ないですが、処置前に手指を十分に洗浄するか、手袋を着用する必要があります。

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一方、液体状のクスリを点眼する際には、前述と同じ手順で、上下眼瞼を開かせた後、点眼瓶の先端を内眼角に当てて、薬液を滴下しますが、当てた際に目を背ける馬も多いため、1mLシリンジに点眼液を吸って、内眼角または結膜に滴下する手法もあります。この際、補助者が馬の頭部を肩でかつぐようにして、馬の鼻先を斜め上方に持ち上げることで、治療する側の目が上になるように頭部を傾けさせると、薬液を滴下するのが容易になります。

また、液体状のクスリをシリンジ内に吸うときには、注射針を使うほうがやり易いですが、薬液を滴下するときには、針を外してシリンジ先を内眼角に当てるか、針の金属部分を折ってから、内眼角または結膜に向けて薬液を吹き付ける方法があります。この場合も、シリンジの先端を内眼角のほうに向けておくことが好ましく、また、薬液を角膜表面に吹き付けるのは避けるようにします。

いずれの点眼法を用いる場合にも、馬は頭部を背けて嫌がることが多いので、陽性強化(Positive reinforcement)によって徐々に点眼処置に慣らしていくため、角砂糖や人参を準備しておき、馬が処置を許容するたびに、御褒美をあげるようにします。また、警戒心が強かったり、臆病な馬に対しては、獣医師に依頼して、初回の点眼処置だけは鎮静をしてから行うことも推奨されます。

参考動画1:Medication of the Eye: Equine


参考動画2:How to Apply Eye Ointment to a Horse


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