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馬の文献:息労(Couetil et al. 2005)

「回帰性気道閉塞の罹患馬に対するフルチカゾンプロピオン酸エステル吸引投与、プレドニゾンの経口投与、および、飼養環境改善による無作為対照試験」
Couetil LL, Chilcoat CD, DeNicola DB, Clark SP, Glickman NW, Glickman LT. Randomized, controlled study of inhaled fluticasone propionate, oral administration of prednisone, and environmental management of horses with recurrent airway obstruction. Am J Vet Res. 2005; 66(10): 1665-1674.

この研究では、馬の回帰性気道閉塞(Recurrent airway obstruction)(息労:Heaves)に対する有用な治療法を検討するため、十二頭の回帰性気道閉塞の罹患馬に対して、飼養環境改善(Environmental management)を行いながら(=放牧飼養への切り替えとペレット飼料の給餌)、フルチカゾンプロピオン酸エステル吸引投与(Inhaled fluticasone propionate)、プレドニゾンの経口投与(Oral administration of prednisone)、または、薬剤投与なしの三種類の治療法を無作為選択(Random selection)して、臨床所見スコア(Clinical scores)、肺機能(Pulmonary function)の評価、気管支肺胞洗浄液(Bronchoalveolar lavage fluid)の細胞学的検査(Cytologic examination)、および、副腎機能(Adrenal gland function)の検査が行われました。

結果としては、全ての患馬において、治療開始の四週間以降での臨床所見スコアおよび肺機能の改善が認められ、このうち、飼養環境改善のみが行われた馬郡と、飼養環境改善にプレドニゾン投与が併用された馬郡のあいだで、治療成績に有意差(Significant difference)は認められませんでした。また、プレドニゾンが経口投与された馬では、気管支肺胞洗浄液の細胞学的検査所見に有意な変化は無かった一方で、血清コルチゾル濃度は有意に低下していました。このため、回帰性気道閉塞の罹患馬に対しては、アレルギー抗原(カビ、埃、粉塵、etc)の少ない環境へと変更(舎飼い→放牧、乾草→ペレット)すれば、それだけで充分な治療効果が認められ、コルチコステロイド療法の併用は、副腎機能減退による副作用の危険を増やすだけで、治療効果の向上にはつながらない事が示唆されました。

この研究では、重篤な症状を呈した馬に対しては、フルチカゾンプロピオン酸エステル吸引投与が併用された馬郡のほうが、飼養環境改善のみが行われた馬郡に比べて、治療開始の二週間後の時点での臨床所見スコアおよび肺機能の改善効果が、有意に高かったことが示されました。このため、特に病状が重い回帰性気道閉塞の罹患馬に対しては、飼養環境を改善しながら、吸引療法(Inhalation therapy)も併用することで、病態や症状の回復効果を加速(Acceleration)できる可能性がある、という考察がなされています。

この研究の実験デザインは、対照郡を含めながらの、無作為での治療法の選択による、盲検的な臨床応用試験(Controlled, randomly selected, blinded, clinical trial study)であり、実際の臨床症例への治療効果を、より綿密に調査した点が特筆されます。しかし、約半数の症例に対しては、獣医師の指示に基づいて馬主自身が治療を行っている事から、投薬方法にミスがあった場合には、コルチコステロイドの吸引投与または経口投与による効能が、過小評価(Under-estimation)されてしまった可能性は否定できません。一方、医学的な技術を要しない飼養環境の改善のみによって、充分な治療成績が認められた事は、馬の回帰性気道閉塞の治療において、クスリによる内科的な治療はあくまで付加的なものと考えるべきであるという原則を、再確認させるデータが示されたと言えます。

一般的に、馬に対するコルチコステロイドの全身投与(Systemic administration)では、副腎皮質抑制(Adrenal suppression)、蹄葉炎(Laminitis)、免疫抑制に起因する二次性細菌感染(Secondary bacterial infections due to immuno-suppression)などの合併症(Complications)の危険性があるため、噴霧化薬剤の吸引を介して、コルチコステロイドを投与することで、副腎機能の低下を抑える指針が推奨されています(Martin et al. Am J Respir Crit Care Med. 2002;165:1377)。今回の研究では、副腎皮質刺激ホルモン(Adrenocorticotropic hormone: ACTH)の刺激試験(ACTH stimulation test)こそ実施されていませんが、プレドニゾンが全身性に投与(経口投与)された場合には、血清コルチゾル濃度の低下が認められ、コルチコステロイドによる副腎機能減退の有害作用(Adverse effect)の危険性が再確認されました。

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