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馬の文献:息労(Hotchkiss et al. 2007)

「英国の馬主に対する馬の管理に関する聞き取り調査:回帰性気道閉塞の危険因子」
Hotchkiss JW, Reid SW, Christley RM. A survey of horse owners in Great Britain regarding horses in their care. Part 2: Risk factors for recurrent airway obstruction. Equine Vet J. 2007; 39(4): 301-308.

この研究では、馬の回帰性気道閉塞(Recurrent airway obstruction)(息労:Heaves)の発症に関与する危険因子(Risk factors)を検討するため、2003~2004年にかけて、873人の英国の馬主(Horse owners in Great Britain)に対する、馬の管理に関する聞き取り調査(Survey)が行われました。

この研究では、患馬の年齢が高いほど、回帰性気道閉塞の有病率も高い傾向が認められました。例えば、5歳未満の馬に比較した場合の、回帰性気道閉塞を発症する確率の高さは、5~7歳では五倍以上(オッズ比:5.1)、7~9歳では八倍以上(オッズ比:8.1)、9~11歳では十一倍以上(オッズ比:11.4)、11~15歳では九倍以上(オッズ比:9.5)、15歳以上では十八倍以上(オッズ比:18.3)と、高年齢な馬ほど発症しやすいというデータが示されました。この要因としては、回帰性気道閉塞の発症においては、長年にわたる複数回の呼吸器炎症の発症(Repeated bouts of inflammation)、進行性の気道再構築(Progressive airway remodeling)、粘膜細胞の異形成(Mucus cell metaplasia)、気管支の上皮過形成(Epithelial hyperplasia)、平滑筋の肥厚(Smooth muscle thickening)などが、関与している事が上げられています。

この研究では、田舎(Rural area)で飼われている馬に比べて、都会(Urbanized area)で飼われている馬のほうが、回帰性気道閉塞を発症する確率が、二倍以上も高いこと(オッズ比:2.2)が示されました。この要因としては、都会では馬主の住所から離れた場所で馬が飼養されている場合が多く、放牧や運動などの馬房から出る時間がどうしても少なくなりがちで、また、新鮮な青草よりも乾草の給餌量が多くなりがちであったため、結果的に、ホコリや粉塵などのアレルギー抗原に曝露される割合が増加したことが上げられています。一方、一年の半分以上にわたって牧草地へとアクセスできる馬では、そうでない馬に比べて、回帰性気道閉塞を発症する確率が、半分程度も低いこと(オッズ比:0.5)が報告されており、前述の仮説(Hypothesis)を裏付けるデータが示されたと言えるかもしれません。

この研究では、五歳未満の馬に限ってみた場合、子馬の時に呼吸器感染(Early respiratory infection)を起こしていた病歴を持つ馬では、そうでない馬に比べて、回帰性気道閉塞を発症する確率が、五倍近くも高いこと(オッズ比:4.6)が示されました。また、これらの五歳未満の馬において、二歳未満の時期に購入された馬では(若齢期に繁殖牧場を出た馬)、そうでない馬に比べて、回帰性気道閉塞を発症する確率が、二倍近くも高いこと(オッズ比:1.8)が示されました。さらに、子馬の時に乾草に曝露(Early exposure to hay)されていた馬では、そうでない馬に比べて、回帰性気道閉塞を発症する確率が、四倍近くも高いこと(オッズ比:3.9)が示されました。このように、例え若い馬においても、呼吸器感染、都会での飼養、乾草給餌によるホコリや粉塵への曝露などを呈した場合には、回帰性気道閉塞を発症する危険性が、有意に増加することが示唆されました。

この研究では、繁殖に使われている馬(Used for breeding)では、そうでない馬に比べて、回帰性気道閉塞を発症する確率が、六割以上も低いこと(オッズ比:0.37)が示されました。この理由は明確ではありませんが、繁殖牧場で飼われている馬は、放牧される時間が長くなる傾向にあり、アレルギー抗原に曝露する割合が低かった事や、騎乗に用いられない繁殖馬では、長距離輸送(Long-distance transportation)などのストレス要因が少なかった事などが、回帰性気道閉塞の有病率の低さに寄与していた可能性があると考えられました。

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