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馬の抗真菌剤の局所灌流

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抗真菌剤の局所灌流によるカビ症の治療例が報告されています。
参考文献:Doria RG, Freitas SH, Linardi RL, Mendonça Fde S, Arruda LP, Boabaid FM, Valadao CA. Treatment of pythiosis in equine limbs using intravenous regional perfusion of amphotericin B. Vet Surg. 2012 Aug;41(6):759-65.

この研究では、遠位肢のPythium insidiosum感染によるフハイカビ症の診断が下された12頭の患馬に対して、抗真菌剤(=アンフォテリシンビー)の局所灌流、および肉芽組織の外科的切除による治療が試みられました。その結果、92%の症例において、治療開始から35~60日後に、病巣の完治が達成された事から(下写真)、馬の遠位肢における真菌感染症に対しては、抗真菌剤の局所灌流によって、充分な治癒効果と良好な予後が期待できることが示唆されました。また、42%の症例では、浮腫や疼痛などの合併症が認められましたが、これらはいずれも二週間以内に回復したことが示されました。

一般的に、馬の遠位肢の細菌感染に対しては、止血帯によって遠位肢血液循環を孤立化させた状態で、抗生物質を静脈内局所灌流することで(上写真)、軟部組織および骨組織に極めて高濃度の抗生物質を作用できる事が知られています。この場合には、経口および経静脈投与よりも全身性副作用の危険性が低く、治療費も安価に抑えられるという利点があります。そして、今回の研究では、遠位肢の真菌感染に対しても、同様な手法で、抗真菌剤を局所灌流する事によって、良好な治療効果が達成できることが示され、今後は様々なタイプの真菌症に対して応用可能な治療指針になりうると推測されています。

一般的に、馬に遠位肢におけるフハイカビ症は、好酸球性の肉芽組織形成に伴う壊死病巣を呈し、かなり難治性の病気であることが知られています。治療に際しては、アンフォテリシンビーの全身投与または局所塗布、および、病巣の外科的切除が行われますが、充分な治療効果が認められるのは30~50%の症例に過ぎない事が報告されており[1]、また、アンフォテリシンビーには強い腎毒性があることから、長期間にわたる全身投与は困難であるという問題点が指摘されています[2]。今回の研究では、アンフォテリシンビーの局所灌流によって認められた副作用は軽度かつ一過性で、難治的なフハイカビ症の治療法として充分に許容できると考えられました。

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参考文献:
[1] McMullan WC, Joyce JR, Hanselka DV, Heitmann JM. Amphotericin B for the treatment of localized subcutaneous phycomycosis in the horse. J Am Vet Med Assoc. 1977 Jun 1;170(11):1293-8.
[2] Chapman SW, Sullivan DC, Cleary JD. In search of the holy grail of antifungal therapy. Trans Am Clin Climatol Assoc. 2008;119:197-215.

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