馬の文献:息労(Robinson et al. 2009)
文献 - 2022年10月06日 (木)
「噴霧化フルチカゾン・プロピオン酸エステルは、回帰性気道閉塞の治療よりも予防に効果的である」
Robinson NE, Berney C, Behan A, Derksen FJ. Fluticasone propionate aerosol is more effective for prevention than treatment of recurrent airway obstruction. J Vet Intern Med. 2009; 23(6): 1247-1253.
この研究では、馬の回帰性気道閉塞(Recurrent airway obstruction)(息労:Heaves)に有用な治療法および予防法を検討するため、九頭の回帰性気道閉塞の罹患馬を用いて、乾草給餌および藁敷料に曝露することで呼吸器症状を誘発(Induction of respiratory signs)した後、噴霧化フルチカゾン・プロピオン酸エステル(Fluticasone propionate aerosol)の吸引投与、および、デキサメサゾンの経静脈投与(Intra-venous administration)を実施してから、肺機能(Pulmonary function)の評価および気管支肺胞洗浄液(Bronchoalveolar lavage fluid)の細胞学的検査(Cytologic examination)を行い、また、他の六頭の回帰性気道閉塞の罹患馬を用いて、噴霧化フルチカゾン・プロピオン酸エステルおよび経静脈デキサメサゾンの投与開始から三日後に、乾草給餌および藁敷料に曝露して、その後の肺機能の評価および気管支肺胞洗浄液の細胞学的検査が行われました。
結果としては、経静脈デキサメサゾンおよび噴霧化フルチカゾン・プロピオン酸エステルの投与によって、胸膜緊張最大変化(Maximal change in pleural pressure)の有意な減退が認められ、気道閉塞(Airway obstruction)の悪化予防(Prevention of exacerbation)に有用であることが示唆されました。しかし、投与から24~48時間後における胸膜緊張最大変化の改善度合いは、経静脈デキサメサゾンでは70.4%に達していたのに対して、噴霧化フルチカゾン・プロピオン酸エステルでは37.7%に留まっていました。一方、噴霧化フルチカゾン・プロピオン酸エステルの投与に比べて、デキサメサゾンの経静脈投与のほうが、短期間にわたる治療(Short-term treatment)としては、一貫性のある治療効果(Consistently effective)が期待されることが示されました。このため、回帰性気道閉塞の罹患馬に対するフルチカゾン・プロピオン酸エステルの吸引療法(Inhalation therapy)は、症状が発現してしまった後に使用するよりも、呼吸器症状の悪化予防の目的で、アレルギー抗原への曝露前に投与する方針が有用であると考察されています。
この研究におけるフルチカゾン・プロピオン酸エステルの吸引投与が、回帰性気道閉塞に対して、治療よりも予防に効果的であった要因としては、気管支痙攣(Bronchospasm)や粘液浸出(Mucoid secretion)が生じていない段階でフルチカゾン・プロピオン酸エステルを投与したほうが、噴霧化薬剤がより効率的に深部組織まで到達できたことが上げられています。このため、呼吸器症状を呈した時点で治療を要するケースでは、抗炎症剤に気管支拡張剤(Bronchodilator)を併用した吸引療法を実施することで、肺機能の改善効果をより向上できる可能性がある、という考察がなされています。
一般的に、馬に対するコルチコステロイド投与では、副腎機能の低下(Diminished adrenal function)や蹄葉炎(Laminitis)などの合併症(Complications)を生じる危険性が知られています。今回の研究では、いずれの投与郡でも血漿コルチゾル濃度(Serum cortisol concentration)の低下が認められましたが、その度合いは、経静脈デキサメサゾンに比較して、噴霧化フルチカゾン・プロピオン酸エステルのほうが、顕著に低い傾向が認められました。一方、今回の研究の中では、ACTH刺激試験(Adrenocorticotrophic hormone stimulation test)は実施されていませんでしたが、跛行検査(Lameness examination)において蹄葉炎の兆候が認められた症例はありませんでした。
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結果としては、経静脈デキサメサゾンおよび噴霧化フルチカゾン・プロピオン酸エステルの投与によって、胸膜緊張最大変化(Maximal change in pleural pressure)の有意な減退が認められ、気道閉塞(Airway obstruction)の悪化予防(Prevention of exacerbation)に有用であることが示唆されました。しかし、投与から24~48時間後における胸膜緊張最大変化の改善度合いは、経静脈デキサメサゾンでは70.4%に達していたのに対して、噴霧化フルチカゾン・プロピオン酸エステルでは37.7%に留まっていました。一方、噴霧化フルチカゾン・プロピオン酸エステルの投与に比べて、デキサメサゾンの経静脈投与のほうが、短期間にわたる治療(Short-term treatment)としては、一貫性のある治療効果(Consistently effective)が期待されることが示されました。このため、回帰性気道閉塞の罹患馬に対するフルチカゾン・プロピオン酸エステルの吸引療法(Inhalation therapy)は、症状が発現してしまった後に使用するよりも、呼吸器症状の悪化予防の目的で、アレルギー抗原への曝露前に投与する方針が有用であると考察されています。
この研究におけるフルチカゾン・プロピオン酸エステルの吸引投与が、回帰性気道閉塞に対して、治療よりも予防に効果的であった要因としては、気管支痙攣(Bronchospasm)や粘液浸出(Mucoid secretion)が生じていない段階でフルチカゾン・プロピオン酸エステルを投与したほうが、噴霧化薬剤がより効率的に深部組織まで到達できたことが上げられています。このため、呼吸器症状を呈した時点で治療を要するケースでは、抗炎症剤に気管支拡張剤(Bronchodilator)を併用した吸引療法を実施することで、肺機能の改善効果をより向上できる可能性がある、という考察がなされています。
一般的に、馬に対するコルチコステロイド投与では、副腎機能の低下(Diminished adrenal function)や蹄葉炎(Laminitis)などの合併症(Complications)を生じる危険性が知られています。今回の研究では、いずれの投与郡でも血漿コルチゾル濃度(Serum cortisol concentration)の低下が認められましたが、その度合いは、経静脈デキサメサゾンに比較して、噴霧化フルチカゾン・プロピオン酸エステルのほうが、顕著に低い傾向が認められました。一方、今回の研究の中では、ACTH刺激試験(Adrenocorticotrophic hormone stimulation test)は実施されていませんでしたが、跛行検査(Lameness examination)において蹄葉炎の兆候が認められた症例はありませんでした。
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