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馬の文献:息労(Leclere et al. 2010)

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「回帰性気道閉塞の罹患馬における持続性抗原曝露の状況下でのプレドニゾンおよびデキサメサゾンの経口投与の効能」
Leclere M, Lefebvre-Lavoie J, Beauchamp G, Lavoie JP. Efficacy of oral prednisolone and dexamethasone in horses with recurrent airway obstruction in the presence of continuous antigen exposure. Equine Vet J. 2010; 42(4): 316-321.

この研究では、馬の回帰性気道閉塞(Recurrent airway obstruction)(息労:Heaves)に有用な治療法を検討するため、七頭の回帰性気道閉塞の罹患馬を用いて、乾草給餌および藁敷料に曝露することで呼吸器症状を誘発(Induction of respiratory signs)してから、プレドニゾンおよびデキサメサゾンの経口投与(Oral administration)の後、肺機能(Pulmonary function)の評価が行われました。

結果としては、プレドニゾンおよびデキサメサゾンの経口投与によって、肺内外圧差(Transpulmonary pressure)、肺抵抗(Lung resistance)、肺伸縮性(Lung elastance)などの、肺機能指標の有意な向上が認められました。また、デキサメサゾン投与から三~七日目における肺内外圧差および肺抵抗は、放牧時の測定値と同程度まで回復していましたが、プレドニゾン投与から三~七日目では、いずれの肺機能指標も、放牧時の測定値よりも有意に悪化していた事が報告されています。このため、回帰性気道閉塞の罹患馬において、厩舎飼いから放牧への切り替えや、飼料の完全な変更などの、管理法の改善(Management improvement)が経済的に難しく、持続性の抗原曝露の状況下(Presence of continuous antigen exposure)での飼養を続けなければならない場合には、抗炎症剤(Anti-inflammatory agents)の経口投与によって、ある程度の治療効果が期待できると結論付けられています。

この研究では、飼養環境の変更は実施せず、クスリによる治療のみによって、肺機能の改善作用が示されましたが、他の文献では、アレルギー抗原を減らす管理法改善なしで、抗炎症剤を投与しても、有意な治療成績は期待できないという知見が示されています(Cesarini et al. EVJ. 2006;38:570)。このような違いが見られた理由としては、今回の実験デザインでは、(1)投薬前の抗原への曝露期間が短かったこと、(2)投薬の直後には、アレルギー抗原となる飼料は給餌されていなかったこと、(3)過去の研究とは異なった組成の抗炎症剤であったため、生物学的利用率(Bioavailability)に差異が生じていたこと、等が挙げられています。このため、今回の研究のデータのみから、馬の回帰性気道閉塞の治療における管理法改善の重要性を、安易に過小評価(Under-estimation)するのは適当ではない、という考察がなされています。

この研究では、ACTH刺激試験(Adrenocorticotrophic hormone stimulation test)こそ実施されていませんでしたが、プレドニゾンおよびデキサメサゾンのいずれの経口投与においても、血中のコルチゾル濃度の低下が認められました。他の文献では、一~二週間にわたるコルチコステロイド投与では、副腎皮質機能不全(Adrenocortical dysfunction)を生じる可能性は低いことが報告されていますが(Rush et al. AJVR. 1998;59:1044, Picandet et al. EVJ. 2003;35:419)、実際の回帰性気道閉塞の罹患馬において、長期間にわたる抗炎症剤療法を要する場合には、医原性の副腎皮質機能亢進症(Iatrogenic hyperadrenocorticism)および副腎皮質機能不全を続発する危険性を常に考慮する必要がある、という警鐘が鳴らされています。

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