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競走馬の故障と落馬との関連性

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一般的に、競走馬がレース中に重篤な故障を発生した場合、乗っている騎手にも危険が及ぶと推測されます。ここでは、競走馬の致死的故障(安楽殺となるような重度骨折や心臓疾患による突然死など)の発生が、騎手の落馬や怪我にどの程度影響しているのかを調査した研究を紹介します。この研究では、米国のカリフォルニア州の競馬場において、2007~2012年に起こった競走馬の致死的故障、および、騎手の落馬や怪我のデータが収集され、その関連性の回顧的解析が実施されました。

参考文献:
Hitchens PL, Hill AE, Stover SM. The role of catastrophic injury or sudden death of the horse in race-day jockey falls and injuries in California, 2007-2012. Equine Vet J. 2016 Jan;48(1):50-6.

結果としては、計264,055回のレース出走のうち、致死的な故障が発生したのは707回であり、致死的故障の発生率は0.27%となっていました。また、馬が致死的故障した際に、騎手が落馬する確率は27%(191/707回)であり、それ以外で騎手が落馬する確率(0.2%)よりも有意に高く、結果的に、馬の致死的故障によって騎手が落馬するリスクが162倍高くなることが分かりました。そして、馬が致死的故障して落馬した際に、騎手が怪我をする確率は17%(123/707回)であり、それ以外で騎手が怪我する確率(0.1%)よりも有意に高く、その結果、馬の致死的故障での落馬によって騎手が怪我をするリスクが171倍高くなることも示されています。

この研究では、競走馬が致死的な故障を起こす確率は、幸いにも極めて低く、約373回の出走ごとに一回となっていましたが、馬の致死的故障によって、騎手が落馬や怪我をする確率は大幅に増加する(162倍、171倍)ということを再確認するデータが示されました。また、致死的故障による落馬で騎手が怪我をする割合は64%に達している(123/191回)のに対して、そうでない落馬で怪我をする割合は49%に留まっており(202/410回)、馬の致死的な故障が起こると、騎手の落馬の仕方も激しくなり、怪我の増加に繋がるというデータが示されました。このため、競走馬の致死的故障の予防を図ることは、馬と騎手の両方の健康と福祉のために極めて重要であることが再認識されました。

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この研究では、サラブレッドとクォーターホースの競走馬が調査対象でしたが、このうち、サラブレッド競走馬における致死的故障を具体的に見てみると、前肢球節の故障が最も多く(52%)、次いで手根関節の故障となっており(11%)、また、故障した部位を見ると、体躯(7%)や後肢の故障(7%)に比べて、前肢の故障(76%)が圧倒的に多いことが報告されています。このため、サラブレッド競走馬では、前肢の中でも特に球節や手根関節を慎重に検査して、致死的な故障の前兆を見逃さないように注力することの大切さが、改めて示されたと言えます。

また、この研究では、サラブレッド競走馬の致死的故障のうち、騎手の怪我に繋がった件数を具体的に見ると、前肢の球節や管部が顕著に多い傾向が示されました(下図)。一方で、騎手の落馬が怪我に繋がる確率は、体躯の致死的故障では81%とかなり高いことが分かり、前肢(62%)や後肢(67%)の致死的故障よりも顕著に高くなっていました。つまり、騎手が怪我をする実数で言えば、前肢の遠位部の致死的故障が重要ではあるものの、体躯の致死的故障においても、騎手の落馬が怪我に繋がる確率は高いことが分かりました。このため、競走馬のレース前には、四肢だけでなく、体躯の疾患についてもその前兆が無いかを精査して、致死的故障を未然に防ぐことが重要であると考えられました。

この研究では、品種によって致死的故障の発生傾向に差異が見られ、サラブレッド競走馬と比較した場合、クォーターホース競走馬における致死的故障の発生率は1.37倍も高く、それによる騎手の落馬の確率も2.03倍も高いことが報告されています。また、クォーターホース競走馬の致死的故障の発生箇所では、手根関節が最も多く(34%)、次いで前肢球節(22%)となっていました。このような品種差が生じる要因は、明瞭には結論付けられていませんが、直線のみの短距離を疾走するという競走スタイルの特異性が、致死的故障の発生傾向に影響していた可能性があると考察されています。なお、この研究では、致死的故障による落馬から騎手が死亡したのは一件のみで、それは、クォーターホース競走馬の手根関節の故障が原因であったと報告されています。

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この研究で最も印象的なデータは、馬に致死的な故障が発生した場合でも、大多数の事例では騎手は落馬していない、という事なのかもしれません。たとえば、サラブレッド競走馬のデータを見てみると、計527回の致死的故障のうち、騎手が落馬したのは24%(127/527回)であり、言い換えれば、レース中に致死的な故障が起こった馬であっても、その3/4以上の事例では、騎手が落馬することなく減速および下馬していたことになります。これは、騎手の巧みな騎乗スキルが馬の転倒を防いだことに加えて、馬が痛みに耐えてバランスを立て直し、騎手を落とさないように踏ん張ってくれたことを意味しているのかもしれません。

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