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馬の文献:ロドコッカスエクイ肺炎(Kenney et al. 1994)

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「ロドコッカスエクイ肺炎の治療期間中にエリスロマイシンとリファンピンへの耐性および反応性関節炎を発症した子馬の一症例」
Kenney DG, Robbins SC, Prescott JF, Kaushik A, Baird JD. Development of reactive arthritis and resistance to erythromycin and rifampin in a foal during treatment for Rhodococcus equi pneumonia. Equine Vet J. 1994; 26(3): 246-248.

この研究では、ロドコッカスエクイ肺炎(Rhodococcus equi pneumonia)の治療期間中に、エリスロマイシンとリファンピンへの耐性(Resistance to erythromycin and rifampin)および反応性関節炎(Reactive arthritis)を発症した子馬の一症例が報告されています。

患馬は、十ヶ月齢のスタンダードブレッドのメス子馬(Filly)で、六週間にわたる呼吸器症状の病歴で来院しました。初診時には、発熱(Fever)、頻呼吸(Tachypnea)、聴診での異常肺音(“Crackles”)、球節&飛節&腕節&膝などの関節腫脹(圧痛は無し)、等の症状を示し、血液検査では、貧血(クームズ試験は陰性)、白血球増加症(Leucocytosis)、成熟好中球増加症(Mature neutrophilia)、高フィブリノーゲン血症などが認められ、また、関節液からリウマトイド因子活性(Rheumatoid factor activity)が探知された事から、非特異性の免疫介在性滑膜炎(Non-septic and immune-mediated synovitis)の推定診断(Presumptive diagnosis)が下されました。

治療としては、エリスロマイシンとリファンピンの経口投与(Oral administration)が六週間にわたって実施されましたが、七週間後の再来院時には、重度の発熱と呼吸困難の症状を再発(Recurrence)していました。そして、胸部レントゲン検査(Thoracic radiography)によって肺硬化(Lung consolidation)と膿瘍形成(Abscessation)が認められ、また、経気管吸引液(Transtracheal aspirate)の細菌培養によって、ロドコッカスエクイ菌が分離され、エリスロマイシンとリファンピンへの耐性獲得が見られました。患馬は、症状悪化と経済的な理由から、残念ながら安楽死(Euthanasia)が選択されました。

一般的に、馬のロドコッカスエクイ菌感染では、エリスロマイシンとリファンピンの併用によって、良好な治療効果と、相乗作用(Synergistic effect)が期待できる事が知られており、高濃度または長期間にわたる投薬時には、耐性菌の発現が問題となる事が知られています(McNeil and Brown. Eur J Epidemiol. 1992;8:437)。そして、その際の代換治療薬(Alternative treatment)としては、スルファメトキサゾール・トリメトプリム (Sulfamethoxazole and trimethoprim)およびクロラムフェニコール(Chloramphenicol)が用いられる事もあります。

この研究の症例で認められた反応性関節炎は、関節組織への循環免疫複合体の沈着(Deposition of circulating immune complexes)に起因すると推測されており、他の文献では、子馬のロドコッカスエクイ肺炎において、免疫複合体の存在とリウマトイド因子の活性に有意な相関が見られるという報告もあります(Sweeney et al. Vet Microhiol. 1987;14:329, Hay et al. Ann Rheum Dis. 1979;38:1)。今回の症例では、初回の来院後にはリウマトイド因子の活性低下と、それに併行する一時的な症状改善が見られたものの、エリスロマイシンとリファンピンへの耐性獲得と呼吸器症状の悪化に伴って、関節炎も再発しており、耐性菌の発現と反応性関節炎に何らかの因果関係(Causality)が齎された可能性もある事が示唆されています。

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