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馬の文献:ロドコッカスエクイ肺炎(Higuchi et al. 1998)

「風土性汚染された牧場における子馬のロドコッカスエクイ感染の早期診断のための30日齢および45日齢での身体検査および血清学的検査」
Higuchi T, Taharaguchi S, Hashikura S, Hagiwara S, Gojo C, Satoh S, Yoshida M, Takai S. Physical and serologic examinations of foals at 30 and 45 days of age for early diagnosis of Rhodococcus equi infection on endemically infected farms. J Am Vet Med Assoc. 1998; 212(7): 976-981.

この研究では、子馬のロドコッカスエクイ感染(Rhodococcus equi infection)に有用な診断法を検討するため、1995~1996年にかけて、30日齢および45日齢の144頭の子馬における、肺聴診(Lung auscultation)、血清生化学検査(Serum biochemical examinations)、血液学的検査(Hematologic analysis)、ELISAによるロドコッカスエクイ菌への抗体価(Antibody titer against Rhodococcus Equi)の測定、経気管吸引液(Transtracheal aspirates)の解析が行われました。

結果としては、ロドコッカスエクイ感染の病歴を持たない子馬のうち、呼吸器疾患の臨床症状(Clinical signs of respiratory tract disease)を示した馬の割合は、風土性汚染された牧場(Endemic forms)では42%に上ったのに対して、散発性発症の見られる牧場(Sporadic farms)では20%、発症歴のない牧場では8%に留まりました。また、ロドコッカスエクイ菌への抗体価が陽性を示した馬の割合は(30日齢と45日齢の両方において)、風土性汚染された牧場では25%に上ったのに対して、散発性発症の見られる牧場では3%、発症歴のない牧場では0%に留まりました。さらに、臨床症状が見られず、抗体価測定に陽性であった子馬における、経気管吸引液の解析では、その86%(6/7頭)においてロドコッカスエクイ菌が分離されました。このため、子馬のロドコッカスエクイ感染の診断に際しては、臨床症状の有無に関わらず、血清学的検査や経気管吸引液の解析によって、感染を早期発見できる可能性がある事が示唆されました。

一般的に、子馬のロドコッカスエクイ肺炎では、呼吸器感染の拡散の遅さ(Slow spread of respiratory tract infection)や、進行性肺機能損失の代償能の高さ(Remarkable ability to compensate for progressive loss of lung function)などに起因して、早期診断が難しい症例が多いことが知られています(Prescott and Hoffman. Vet Clin N Am Eq Pract. 1993;9:375, Giguere and Prescott. Vet Microbiol. 1997;56:313)。今回の研究では、ロドコッカスエクイ感染の診断のため、二週間おきの身体検査に併行して、30日齢および45日齢におけるELISA検査が実施され、特にロドコッカスエクイ菌に風土性汚染された牧場においては、30日齢の時点では四分の一の子馬、45日齢の時点では半数の子馬が、抗体価に陽性を示していました。このため、ロドコッカスエクイ菌による汚染の疑いが濃い飼養環境では、血清学的検査を介してロドコッカスエクイ感染をモニタリングすることで、患馬の早期治療および予後向上につながると考えられました。

一般的に、子馬のロドコッカスエクイ感染では、臨床症状の発見のみに頼る診療では、感染を見落とす危険性があるという知見が示されており、ロドコッカスエクイ肺炎の罹患馬のうち(剖検で確定診断された場合)、21%において呼吸器症状や発熱が見られなかった事が報告されています(Zink et al. Can Vet J. 1986;27:213)。一方で、ロドコッカスエクイ肺炎の発症歴のある牧場では、35%の健常な子馬において、経気管吸引液からロドコッカスエクイ菌が分離されており(Ardans et al. Proc AAEP. 1987;32:129)、実際の診断時には、菌による肺組織の感染が起きているのか、単に菌が付着した粉塵を吸引しただけなのかを、正確に見分けるのが困難なケースもありうると考察されています。

この研究では、風土性汚染された牧場および散発性発症の見られる牧場においては、病原性(Virulent)のロドコッカスエクイ菌が、子馬の糞便、母馬の糞便、および、飼養環境下の土壌から分離された事が報告されています。他の文献では、糞便検体と土壌検体において、病原性の菌が占める割合は類似しており(Takai et al. J Eq Sci. 1994;5:21)、風土性汚染された牧場で生まれた子馬は、持続的に病原性のあるロドコッカスエクイ菌に曝露されている事を再確認させるデータであると考えられています。

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