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馬の文献:ロドコッカスエクイ肺炎(Chaffin et al. 2003a)

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「子馬のロドコッカスエクイ肺炎の発症に関わる危険因子としての馬繁殖牧場の特徴の評価」
Chaffin MK, Cohen ND, Martens RJ. Evaluation of equine breeding farm characteristics as risk factors for development of Rhodococcus equi pneumonia in foals. J Am Vet Med Assoc. 2003; 222(4): 467-475.

この研究では、子馬のロドコッカスエクイ肺炎(Rhodococcus equi pneumonia)の発症に関わる危険因子(Risk factors)を解析するため、2764頭の子馬が飼養されていた64箇所の馬繁殖牧場の特徴(Equine breeding farm characteristics)が評価されました。

結果としては、ロジスティック回帰解析(Logistic regression)の結果から、子馬のロドコッカスエクイ肺炎の危険因子としては、牧場の総面積が200エーカー以上、牧場の飼養面積が60エーカー以上、持続的に飼養されている繁殖牝馬が10頭以上、子馬の頭数が17頭以上、子馬一頭当たりの飼養面積が4エーカー以下、一過的な繁殖牝馬(Transient breeding mare)を用いていること、等が挙げられました。また、ロドコッカスエクイ菌に清浄な牧場では、汚染された牧場に比べて、持続的に飼養されている繁殖牝馬と子馬のペアーが全体の75%である割合が、有意に高かった事が報告されています。このため、馬の繁殖牧場において、(1)総面積が広い、(2)飼養頭数が多い、(3)子馬の密度が高い、(4)一過的な繁殖牝馬を導入している、などの要件に当てはまる場合には、子馬のロドコッカスエクイ肺炎が起こりやすい事を考慮して、慎重なモニタリング(特に3~24週齢の子馬)による早期診断(Early diagnosis)、および、管理法の改善(Management improvement)による危険因子の排除等を、積極的に実施することが推奨される、という考察がなされています。

この研究で検証された、上述のような危険因子のうち、特に(3)の「子馬の密度」に関しては、全体としての馬の密度は、ロドコッカスエクイ肺炎の危険因子になっていなかったため、単位面積当たりの子馬の飼養頭数を抑えることで、ロドコッカスエクイ肺炎の発症を減退できる可能性がある、という考察がなされています。また、(4)の「一過的な繁殖牝馬の使用」に関しては、他の牧場からの馬の出入りが多い場合には、病原性菌(Virulent bacteria)の伝播(Transmission)を生じ易かった可能性もあり、一過的な繁殖牝馬のための隔離厩舎(Isolation barn)を適切に設ける、等の処置が推奨されています。一方、(1)の牧場面積と(2)の飼養頭数は関連した因子であり、大規模な繁殖牧場ほど、隅々まで子馬のケアーが行き届くような管理法を要することを示唆するデータであると考えられ、単に牧場サイズを小さくするだけで、ロドコッカスエクイ肺炎を減らせる訳ではない、という考察がなされています。

この研究では、ロドコッカスエクイ菌による汚染牧場と清浄牧場のあいだで、馬の飼養および繁殖への使用年数の長さ(Number of years that farms had been used for raising horses or foals)には有意差はありませんでした。一方、子馬のロドコッカスエクイ肺炎に関する他の文献では、30年以上にわたって馬が繁殖されている牧場のほうが、そうでない牧場に比べて、厩舎や放牧地にロドコッカスエクイ菌が蓄積(Accumulation)している割合が高かった事が報告されています(Prescott et al. Can J Comp Med. 1984;48:10)。つまり、今回の研究のデータに基づけば、適切な飼養管理法が徹底されていれば、牧場の使用年数が長くても、ロドコッカスエクイ菌による環境汚染を最小限に抑えることができる、という解釈(Interpretation)が成り立つのかもしれません。

一般的に、子馬のロドコッカスエクイ肺炎は、どの繁殖牧場でも一律に発症するわけではなく、一部の牧場における風土病(Endemic disease)または散発病(Sporadic disease)であり、大多数の牧場では殆ど見られない傾向にある事が知られています(Prescott. Clin Microbiol Rev. 1991;4:20, Giguere and Prescott. Vet Microbiol. 1997;56:313, Takai. Vet Microbiol. 1997;56:167)。そして、汚染された牧場におけるロドコッカスエクイ肺炎の有病率(Prevalence)は6.6%で、このうち、四分の一の牧場では、有病率が20%以上にも上っていた事が報告されており、有病率が5%である場合には充分な早期診断法および予防法の導入を要する、という提言がなされています。

一般的に、子馬のロドコッカスエクイ肺炎における死亡率(Mortality rate)は、診療環境や治療法によって大きく異なり、今回の研究では、罹患した子馬全体における死亡率は29%でした。一方、過去の文献では、子馬のロドコッカスエクイ肺炎による死亡率は、ErythromycinおよびRifampinの併用投与が実施される以前では80%以上であったのに対して(Elissalde et al. Microbiol Infect Dis. 1980;3:433, Bain. Aust Vet J. 1963;39:116)、それ以後では12%に抑えられたという報告があります(Hillidge. Vet Microbiol. 1987;14:337)。また、紹介症例(Referring cases)の多い獣医大学の病院では、より重篤な症例が占める割合が高いため、報告されている死亡率はやや高い傾向にあり、28%(Ainsworth et al. JAVMA. 1998;213:510)、51%(Falcon et al. JAVMA. 1985;186:593)、58%(Sweeney et al. Vet Microbiol. 1987;14:329)などとなっていました。

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