馬の会陰尿道切開術
診療 - 2022年10月24日 (月)

馬の会陰尿道切開術についてまとめてみます。あくまで概要解説ですので、詳細な手技については成書や論文を確認して下さい。
オス馬における、尿道の坐骨湾曲部の会陰尿道切開術は、膀胱結石の摘出、血尿症の治療、および、尿道結石や陰茎腫瘍による尿路閉塞の整復のために実施されます。通常は、起立位で施術され、鎮静と硬膜外麻酔(会陰皮膚の浸潤麻酔を要することも)のあと、術部の剃毛と消毒を実施します。
そして、会陰縫線上で肛門から2~3cm下方に皮膚切開層を設け(約6~8cm長)、陰茎後引筋、球海綿体筋、尿道海綿体を切開することで尿道にアプローチして、尿道粘膜を切開します。個体によっては、尿道が深部を走行していたり、正中線上に無いこともあるため、術前に尿道カテーテルを挿入しておくことで、術中に尿道の位置を特定するのが容易になります。正中から離れた箇所を深部切開する際には、外陰部動脈の分枝を傷付けないよう注意します。

尿道に到達した後は、会陰切開創の上下の長さを、尿道粘膜の切開創よりも長くしておき、尿の排出路を漏斗状にしておくことで、皮下識に尿が貯留してしまうのを予防できます。もし、結石の摘出や血尿の治療の目的で、一過性の排尿処置のみを要する症例では、尿道切開部は開放創として、二次性癒合を促します。通常は、術後の二週間で、創部の癒合閉鎖が見られます。
もし、陰茎腫瘍による尿路閉塞の目的で、持続的な排尿処置を要する症例では、切開した尿道粘膜を反転させて、皮膚と縫合することで、永続的な排尿路を形成します。術後は、尿道切開創が肉芽形成によって拘縮・閉鎖しないように、フォーレーカテーテルを留置します。術後には、カテーテルによる膀胱炎を起こすケースが多いため、一日二回はカテーテルを通して生食を注入して、膀胱洗浄を施すことが有用です。

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参考文献:
Kilcoyne I, Dechant JE. Complications associated with perineal urethrotomy in 27 equids. Vet Surg. 2014 Aug;43(6):691-6.
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