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去勢してもオスっ気が取れない馬

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一般的に、牡馬を去勢した後には、テストステロン濃度は六時間後には基底値まで低下しており、牡馬様の行動は、去勢の8週間後までには徐々に消失することが知られています。しかし、この期間を過ぎても、オスっ気が取れない馬に対しては、原因および対処を検討する必要が出てきます。

まず原則として、精巣を切除したオス馬(騙馬)においても、春季や初夏の時期に牡馬用行動を示すことは、一定数の個体において認められることが知られており、“偽騙馬”(False Rigs:“偽金持ち”)という用語で呼ばれています。古典的には、去勢手術で精巣を切除するときに、精巣上体を取り残してしまうと、牡馬様の行動が残ってしまうという通説があります。しかし、精巣と精巣上体は固着しており、うっかりと取り残す可能性は低く、また、本来、精巣上体にはテストステロンを分泌する機能は無いため、この通説は否定されてきています。

また、騙馬が牡馬様行動を示す要因としては、副腎皮質からテストステロン分泌が起こることも挙げられています。生理学的には、去勢後に血中テストステロン濃度が下がり、循環中の黄体形成ホルモンが増加することで、副腎肥大を生じる可能性があります。しかし、“偽騙馬”では、血中テストステロン濃度は上昇しておらず、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)での刺激試験にも陰性を示すため、副腎皮質からのテストステロン分泌が、牡馬様行動の主因であるかについては論議があります。

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他の動物種では、異所性の精巣組織からホルモン分泌が起こるという病態もありますが(胎児期の始原生殖細胞の分散から発生)、馬では確認されていません。さらに、“偽騙馬”の多くで、精管の断端が遺残していたことから、牡馬様行動との関連性が懸念されていますが、精管にはライディッヒ細胞は含まれていないため、精管を短く切除することで、牡馬様行動を抑えられるかは不明です。そして、高齢になってから去勢されたオス馬では、牡馬様の行動や気性が残り易いという経験則に関しても、相反する知見があり、真偽は定かではないと言われています。

騙馬が牡馬様行動を示すときの、もう一つの潜在的な病因としては、多精巣症が挙げられており、過去の文献では、左右の精巣を正しく去勢したにも関わらず、その4~11ヶ月後に、三つ目の精巣が陰嚢部に見つかったという症例報告があります[1-3]。ただ、これらの文献では、三つ目の精巣組織の所見に不自然な点もあり、本当に多精巣症だったのか、それとも、単なる停留精巣が誤認されたものかについては疑念が呈されています。

結論としては、去勢したハズのオス馬(騙馬)が牡馬様行動を示している場合には、停留精巣が腹腔内に残存している可能性を除外するため、安静時の血中テストステロン濃度(もしくは抗ミューラー管ホルモン濃度)を測定したり、hCG刺激試験、または、腹腔鏡検査による停留精巣の探索を実施することが推奨されます。もし、これらが陰性であった場合には、騙馬の正常行動の多様性であると理解するのが妥当だと言えます。過去の文献では、騙馬の20~30%において、牡馬のように牝馬に興味を示す行動が認められ、ヒトに対して、牡馬様の攻撃的な行動様式を示す個体も4%に上ることが報告されています[4]。

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参考文献:
[1] Davies EV. Polyorchidism in a horse. Vet Rec. 2010 Aug 21;167(8):310.
[2] Earnshaw RE. Polyorchidism. Can J Comp Med. 1959;23:66.
[3] Foster AEC. Polyorchidism. Vet Rec. 1952;64:158.
[4] Line SW, Hart BL, Sanders L. Effect of prepubertal versus postpubertal castration on sexual and aggressive behavior in male horses. J Am Vet Med Assoc. 1985 Feb 1;186(3):249-51.

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