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馬の文献:ロドコッカスエクイ肺炎(Chaffin et al. 2003c)

「風土性感染としての子馬のロドコッカスエクイ肺炎の発症に関わる子馬に関連した危険因子」
Chaffin MK, Cohen ND, Martens RJ, Edwards RF, Nevill M. Foal-related risk factors associated with development of Rhodococcus equi pneumonia on farms with endemic infection. J Am Vet Med Assoc. 2003; 223(12): 1791-1799.

この研究では、風土性感染(Endemic infection)としての子馬のロドコッカスエクイ肺炎(Rhodococcus equi pneumonia)の発症に影響を与える、子馬に関連した危険因子(Foal-related risk factors)を解析するため、1999~2000年にかけて、二箇所の馬繁殖牧場における220頭の子馬の、医療記録(Medical records)の回顧的解析(Retrospective analysis)が行われました。

結果としては、二変数または三変数の条件的ロジスティック回帰解析(Bivariate and trivariate conditional logistic regression analysis)によって認められた、ロドコッカスエクイ肺炎の発症に影響する「子馬に関わる危険因子」としては、(1)一ヶ月齢未満で舎飼いされなくなった事(No longer stalled at less than one-month of age)、(2)二組~五組の母馬&子馬のペアーで飼養されている事(Housed in groups of 2 to 5 mare-foal pairs)、(3)他の感染性呼吸器疾患の病歴がある事(History of other infectious respiratory tract diseases)、などが含まれました。しかし、複数ロジスティック回帰解析(Multiple logistic regression analysis)の結果では、これらはいずれも有意な説明変数(Significant explanatory variable)にはなっていなかったため、ロドコッカスエクイ肺炎の発症においては、「子馬に関わる危険因子は見つからなかった」(Foal-related factors significantly associated with Rhodococcus equi pneumonia were not identified)という結論付けがなされています。

この研究では、二箇所の牧場の相違は、二変数ロジスティック回帰解析では有意な因子ではなかったものの、複数ロジスティック回帰解析では有意な因子となっており、つまり、上述のような「子馬に関わる危険因子」は、牧場の相違に対する交絡変数(Confounding factor)であると推測されるため、ロドコッカスエクイ肺炎の発症に影響を与える因子とは見なされない、という論理立て(Rationalization)がなされています。しかし、今回の研究では、220頭の患馬のうち、発症郡は32頭に留まっており、一方の群のサンプル数が少なかったことが(n=32)、上述の「子馬に関わる危険因子」における有意性(Significance)が立証されなかった理由であるケースも、一概には否定できないと考えられます。もしも、そうであるとすれば、ロドコッカスエクイ肺炎の発症に影響する可能性のある、(1)子馬を放牧に出すのが早過ぎる、(2)他の子馬と接触する機会が多過ぎる、(3)他の呼吸器感染からロドコッカスエクイ感染が誘発された、などの「子馬に関わる危険因子」を考慮して、飼養管理法の改善に取り組むことで、ロドコッカスエクイ肺炎の予防につながる場合もありうる、という解釈(Interpretation)が成り立つのかもしれません。

この研究では、風土性感染を起こしていた二箇所の牧場における、ロドコッカスエクイ肺炎の有病率(Prevalence)は15%(32/220頭)に達しており(飼養子馬のうち、七頭に一頭はロドコッカスエクイ肺炎を発症する)、また、これらの子馬における死亡率(Mortality rate)は13%(4/32頭)に上っていました(罹患子馬のうち、八頭に一頭は死亡する)。このため、風土性感染に対する重要性の認識(Recognition of its importance)と予防的処置(Preventive measures)が講じられている環境下でも、ロドコッカスエクイ肺炎による経済的打撃(Economic impact)はやはり大きいという実状を、再確認させるデータが示されたと言えます。

この研究では、二年間の調査期間のうち一方(2000年)において、ロドコッカスエクイ肺炎の発症率が高い傾向が認められましたが、このように、1999年よりも2000年のほうが、ロドコッカスエクイ肺炎が起き易かった要因は、今回の研究においては、明瞭には結論付けられていませんでした。一方、他の文献では、乾燥して風の強い気候(Dry and windy climate)が馬の繁殖シーズンに重なった場合には、空気環境内のロドコッカスエクイ菌濃度(Rhodococcus equi concentration in the airborne environment)が高くなりやすい、という知見も示されています(Takai et al. Vet Microbiol. 1987;14:233)。

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