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馬の眼科検査2:培養と細胞診

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角結膜培養&細胞診(Corneoconjunctival culture and cytology)について。

角膜または結膜検体の培養および細胞診は、馬の眼科検査(Ophthalmic examination)における重要な診断法の一つで、適応症としては、全てのタイプの潰瘍性角膜炎(Ulcerative keratitis)、化膿性の眼性&鼻涙管浸出液(Purulent ocular/nasolacriminal discharge)、感染性の眼瞼炎&結膜炎(Infectious blepharitis/conjunctivitis)、角膜または結膜の増殖性腫瘤(Proliferative mass)などが含まれます。

一般的に培養および細胞診の検査結果は相関を示しますが、細胞診に陰性で培養に陽性を示す症例では、検体採取が不適当な場合(病変部位以外からの採取、充分に病巣深部まで達していない採取、etc)、病原体の数が微量である場合、染色手技のミス、等の原因が考えられます。一方、培養に陰性で細胞診に陽性を示す症例では、検体の取り扱いが不適当な場合、培養手技が不適当な場合(不適当な培養液や栄養素、etc)、病巣部位以外からの細菌&真菌混入、等の原因が考えられます。

培養用の角膜または結膜検体は、PET樹脂綿棒(Dacron-tipped swab)(上記写真)やメス刃の鈍端(Blunt end of surgical blade)(下記写真)などを用いて採取されることが多く、PET樹脂綿棒を使用する場合は、通常は点眼麻酔薬を要しないという利点があるものの、メス刃の鈍端を使用する場合のほうが、より限定的な病巣部位からの検体採取が可能であるため、非病原体である細菌や真菌の混入の危険が少ないと考えられています。

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角膜または結膜検体の培養では、一般的に好気性細菌(Aerobic bacteria)および真菌(Fungus)の培養と抗生物質感受性試験(Anti-microbial susceptibility test)が行われますが、嫌気性細菌(Anaerobic bacteria)や二形馬ヘルペスウイルス(Type-2 equine herpesvirus: EHV-2)の分離が試みられる場合もあります。培養用の検体に際しては、点眼麻酔薬(Topical anesthesia)や蛍光色素(Fluorescein)が病原菌増殖を抑制する可能性を考慮して、これらの薬剤を使用する前に採取することが重要ですが、Proparacaine等の麻酔薬の単回点眼では培養結果には有意な影響が出ないことが示されています。

角膜または結膜検体の細胞診では、培養よりも迅速に検査結果が得られるため、簡易的な病原体の特定(細菌、真菌、etc)や炎症病態の把握(好中球、リンパ球、好酸球、etc)を目的として、特に潰瘍性角膜炎の罹患馬に対して実施されます。細胞診用の角膜または結膜検体は、上述のようにPET樹脂綿棒やメス刃の鈍端を用いて採取されることが一般的ですが、サイトブラシ(Cytobrushes)やスパチュラ(Spatulas)(下記写真)が使用されることもあります。

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角膜または結膜検体の染色法としては、ライトギムザ染色(Wright-Giemsa stain)による細菌、真菌、炎症性細胞(Inflammatory cells)、腫瘍細胞(Neoplastic cells)等の探知、およびグラム染色(Gram stain)による細菌種の推定が行われますが、真菌糸(Fungal hyphae)の明瞭な視診のために過ヨウ素酸シッフ染色(Periodic acid-Schiff stain: PAS stain)が併用される場合もあります。また、PCR法や免疫蛍光抗体試験(Immunofluorescent antibody test)を用いて、真菌のDNAやEHV-2を探知する診断法も報告されています。

Photo courtesy of Gilger BC, Equine Ophthalmology, 2005, Elsevier Saunders, St Louis, Missouri (ISBN: 978-0-7261-0522-7).


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