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馬の眼科検査4:顕微鏡検査

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生体顕微鏡検査(Biomicroscopy examination)について。

生体顕微鏡検査は、透過照明(Transillumination)および反帰照明(Retroillumination)の二つの手法を介して、角膜(Cornea)、前眼房(Anterior chamber)、虹彩(Iris)、黒質体(Corpora nigra)、水晶体(Lens)、前側硝子体(Anterior vitreous)の異常を検査する方法で、散瞳薬の使用前と使用後における視診が行われ、また、角膜の厚さ(Corneal thickness)、角膜のY字縫合線(Corneal Y-sutures)、前眼房の深さ(Anterior chamber depth)、前房発赤(Aqueous flare)などの評価も実施されます。

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透過照明法による生体顕微鏡検査では、角膜、前側水晶体膜(Anterior lens capsule)、後側水晶体膜(Posterior lens capsule)の三箇所の境界部からの反射光が認められ(=プルキンエ・サンソン反射光:Purkinje-Sanson reflexes)、この三つの反射光の明るさや距離を比較することで、角膜の透明性(Corneal clarity)、水晶体の厚さ(Lens thickness)(=散瞳薬使用時)、前眼房の深さなどの評価を行います。また、前眼房水内に炎症由来性の細胞や蛋白(Inflammatory cells/proteins)が存在する場合には、ティンダル現象(Tyndall effect)と呼ばれる反射光の不明瞭性が認められます(上図)。

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反帰照明法による生体顕微鏡検査では、瞳孔内に絨毯状反射光(Tapetal reflex)が見られ、また、皮質髄質境界部(Nuclear-cortical junctions)からの反射に起因する指輪状光(Ring-shaped reflexes)が認められます。反帰照明法では、角膜のY字縫合線は観察されず、また、白内障病巣(Cataract lesions)は透過照明では白色に(上記写真)、反帰照明では黒色として示されます(下記写真)。

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角膜の異常所見と示唆される病態:
(1)角膜混濁(Corneal opacities)(下記写真)= 潰瘍性角膜炎(Ulcerative keratitis)、角膜瘢痕形成(Corneal scar)、慢性の馬回帰性ブドウ膜炎(Equine recurrent uveitis)、鈍性外傷(Blunt trauma)、慢性緑内障(Chronic glaucoma)。
(2)角膜肥厚(Corneal thickening)= 角膜浮腫(Corneal edema)、炎症細胞浸潤(Inflammatory cell infiltration)。
(3)不連続性(Irregularities)= 細菌&真菌性の潰瘍性角膜炎(Bacterial/Fungal ulcerative keratitis)、ヘルペスウイルス性角膜炎(Herpes viral keratitis)。
(4)黄色~白色浸潤(Yellow to white infiltration)= 角膜実質膿瘍(Corneal stromal abscess)、免疫介在性角膜炎(Immune-mediated keratitis)。
(5)脈管浸潤(Vascular infiltration)(下記写真)= 感染性進行性角膜潰瘍(Infected progressive corneal ulcer)、角膜実質膿瘍、馬回帰性ブドウ膜炎、眼内炎(Endophthalmitis)。

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前眼房の異常所見と示唆される病態:
(1)前眼房の浅化(Shallow anterior chamber)= 慢性の馬回帰性ブドウ膜炎、眼球癆(Phthisis bulbi)、角膜裂傷に起因する眼房水漏出(Aqueous humor leakage from corneal laceration)。
(2)前眼房の深化(Deep anterior chamber)= 慢性緑内障、水晶体脱臼。
(3)眼房水のにごり(Hazy aqueous humor)= 前房発赤。
(4)前眼房出血(Hyphema)= 外傷。
(5)前眼房蓄膿(Hypopyon)= 慢性の馬回帰性ブドウ膜炎、感染性眼内炎(Infectious endophthalmitis)。

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虹彩の異常所見と示唆される病態:
(1)虹彩の赤色化= 慢性の馬回帰性ブドウ膜炎。
(2)虹彩の青色化= 稀に見られる急性炎症の症状、前眼房出血。
(3)黒質体肥大(Enlarged corpora nigra)= 黒質体嚢胞(Corpora nigra cyst)、メラノーマ。
(4)黒質体肥萎縮(Atrophic corpora nigra)(上記写真)= 慢性の馬回帰性ブドウ膜炎。
(5)瞳孔散大(Dilated pupil)= 後眼房癒着(Posterior synchea)、慢性の馬回帰性ブドウ膜炎。

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水晶体の異常所見と示唆される病態:
(1)髄質白内障(Nuclear cataract)= 通常は非進行性(Nonprogressive)で予後良好。
(2)前側&後側白内障(Anterior/Posterior cataract)= 慢性の馬回帰性ブドウ膜炎、通常は進行性で予後不良。
(3)前側水晶体膜の色素沈着(Pigmented anterior lens capsule)(上記写真)= 慢性の馬回帰性ブドウ膜炎、鈍性外傷、通常は進行性で予後不良。
(4)水晶体亜脱臼(Lens subluxation)= 慢性緑内障、鈍性外傷、先天性の小水晶体(Congenital microphakia)。
(5)水晶体脱臼(Lens luxation)(下記写真)= 慢性緑内障、鈍性外傷。

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Photo courtesy of Gilger BC, Equine Ophthalmology, 2005, Elsevier Saunders, St Louis, Missouri (ISBN: 978-0-7261-0522-7).



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