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馬の眼科検査7:超音波検査

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眼組織の超音波検査(Ocular ultrasonography)について。

超音波検査は、安全、迅速、かつ比較的安価に、眼内または眼球後部組織(Intraocular/Retrobulbar structures)の検査を実施できることから、多くの眼疾患の診断法として応用されています。眼組織の超音波検査においては、深い検査深度は必要ではないものの、高い解像度(High resolution)を要することが多いため、眼内組織の検査には10-MHzのプローブが使われ、眼球後部組織の検査には5-MHzまたは7.5-MHzのプローブが使用されます。この際には、角膜表面にプローブを当てることで最も明瞭な像が得られますが(=経角膜超音波検査:Transcorneal ultrasonography)(上記写真)、閉じた眼瞼越しに検査が行われる場合もあります(=経眼瞼超音波検査:Transpalpebral ultrasonography)。

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また、眼組織の超音波検査では、一般的に鎮静剤(Sedation)および点眼麻酔(Topical anesthesia)を用いて検査が行われ、眼球に対して垂直および水平方向にビームを当てた状態での超音波像が診断に使用されます。正常眼においては、前側から後側眼球の方向に向かって四つの高エコー性の線(Hyperechoic lines)が見られ、それぞれが、角膜(Cornea)、前側水晶体膜(Anterior lens capsule)、後側水晶体膜(Posterior lens capsule)、強膜&脈絡膜&網膜(Retina/Choroid/Sclera)の各境界部に相当します(上記写真)、

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眼組織の超音波検査は、重度外傷(Severe trauma)を呈した眼において特に有用で、罹患眼の疼痛が重度であったり、眼瞼の開閉が不能であったり、角膜の透明性が失われている場合には、超音波検査が唯一の有効な診断法となる症例も多々あります。重度外傷を起こした眼組織では、前房出血(Hyphema)、角膜実質膿瘍(Corneal stromal abscess)(上記写真)、硝子体出血(Vitreous hemorrhage)、水晶体亜脱臼&脱臼(Lens subluxation/luxation)、網膜剥離(Retinal detachment)、角膜縁破裂(Limbal rupture)などの症状が見られる場合があり、また、穿孔性創傷(Penetrating wound)を起こした場合には前眼房が浅くなっている所見(Shallow anterior chamber)が認められる症例もあります。

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重度外傷の罹患眼では、対側眼(Contralateral eye)の超音波所見との比較を行って、後側水晶体膜と強膜壁(Scleral wall)の距離が短縮している場合には水晶体後側脱臼(Posterior lens luxation)が疑われ(上記写真)、後側水晶体膜と強膜壁の距離が伸長している場合には水晶体前側脱臼(Anterior lens luxation)または後側強膜壁破裂(Posterior sclera wall rupture)が疑われます。

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また、前房出血を起こした症例では、前眼房内に生じた線維素(Fibrin)は、断端性音響密度(Disconnected echodensities)として観察されますが(上記写真)、前眼房内に生じた蓄膿(Hypopyon)は、腹側前房(Ventral posterior chamber)における均一性音響密度(Uniform echodensities)として示されます。

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眼組織の外傷以外の症例において、超音波検査で診断が可能な水晶体の異常としては、白内障(Cataract)、水晶体亜脱臼&脱臼、水晶体破裂(Lens rupture)が挙げられます。白内障の罹患眼では、内部組織の音響密度の上昇(Increased internal echodensities)が認められ(上記写真)、前側&後側水晶体膜(Anterior/Posterior lens capsules)が二重に見られる所見が示されたり(下記写真)、水晶体自体のサイズの増加が見られる場合もあります。

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前側&後側水晶体膜の観察が困難な場合には、水晶体亜脱臼&脱臼が疑われます。一方、水晶体サイズの減少が見られた症例では(下記写真)、過熟白内障(Hypermature cataract)や小水晶体(Microphakia)に続発する、液化皮質吸収(Resorption of liquefied cortical material)の発生が示唆されます。

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眼組織の超音波検査は、散瞳薬(Mydriasis)の点眼投与や眼底鏡(Ophthalmoscopy)を使用することなく、硝子体、網膜、視神経(Optic nerve)などの眼底(Fundus)にある組織の評価を行う手法としても有用です。超音波検査で診断が可能な後側区域(Posterior segment)の異常としては、硝子体出血、硝子体変性(Vitreous degeneration)、硝子体膿瘍(Vitreous abscess)、星状硝子体症(Asteroid hyalosis)、網膜剥離などが挙げられます。

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硝子体出血を起こした症例では、硝子体内に分散性~広汎性変動エコー(Discrete to diffuse amplitude echoes)が見られるのに対して、硝子体変性の罹患眼では、硝子体内に複数の音響輝度線(Multiple echogenic lines)の出現が認められます(上記写真)。また、星状硝子体症に罹患した眼では、反射性の高い分散性自由可動性エコー(Highly reflective, discrete, and freely moving echoes)が観察される場合もあります(下記写真)。

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正常眼の超音波検査では、網膜、脈絡膜、強膜の三つの層の区別は出来ず、その厚さは0.5~1.0mmであることが一般的です。網膜剥離を呈した検査眼では、はがれた網膜が音響高密度な線状組織(Echo-dense linear structure)として見られ、視神経乳頭(Optic disc)の部位では剥離しにくいことから、特徴的な漏斗様またはカモメの翼様剥離(Funnel or gull-wing-appearing detachment)として観察されます。

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この際には、網膜下腔(Subretinal space)が無反響性(Anechoic)を示した場合には(上記写真)、眼内炎症(Intraocular inflammation)に伴う神経感覚網膜(Neurosensory retina)と網膜色素上皮(Retinal pigment epithelium)の隙間への液体貯留(Fluid accumulation)(=水疱性網膜剥離:Bullous retinal detachment)が示唆され、原発疾患である眼内炎症の改善によって貯留液体の減退が生じれば、剥離した網膜の再癒合(Re-attachment)が期待できると考えられます。一方、音響高密度な物質(Echo-dense material)が網膜下腔に見られた場合には、出血または炎症性細胞の浸潤(Infiltration of inflammatory cells)の可能性が示唆されます(下記写真)。

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眼内疾患以外の眼組織超音波検査の適応症としては、眼球突出(Exophthalmos)が挙げられ、高エコー性腫瘤(Hyperechoic mass)の超音波所見を示す腫瘍と(下記写真)、無エコー性~低エコー性腫瘤(Anechoic to hypoechoic mass)の超音波所見を示す血腫(最下記写真)との鑑別が試みられます。また、超音波誘導を介しての針吸引(Ultrasound-guided fine-needle aspiration)によって、病巣検体の生検が行われることもあります。

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Photo courtesy of Gilger BC, Equine Ophthalmology, 2005, Elsevier Saunders, St Louis, Missouri (ISBN: 978-0-7261-0522-7), Diaz OS. Ultrasound of the Equine Eye and Adnexa and Clinical Applications. Clin Tech Equine Pract. 2004; 3: 317-325, and Scotty NC. Ocular Ultrasonography in Horses. Clin Tech Equine Pract. 2005; 4: 106-113.



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