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SAAによる馬の滑膜感染の診断

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血清アミロイドエー(SAA: Serum amyloid A)は、急性期蛋白の一つで、炎症発生から36~48時間で血中に増加することから、炎症病態の早期診断に有用であると言われており、馬においても、呼吸器疾患を探知する目的などで臨床応用されています。

ここでは、滑膜組織の感染を早期診断する目的で、SAA測定の有用性を評価した知見を紹介します。この研究では、ドイツのギーセン大学の馬病院において、四肢の外傷の治療を受けた55頭の馬における、医療記録の回顧的解析、および、血液中のSAA濃度の測定が行なわれました。

参考文献:
Muller AC, Büttner K, Rocken M. Using systemic serum amyloid A as a biomarker for synovial structure infections in horses with acute limb wounds. Vet Rec. 2022 Jul;191(2):e1841.

結果としては、四肢外傷を呈した55頭の症例のうち、滑膜穿孔が起こった26頭(感染群)と、起こっていなかった29頭(対照群)とのあいだで、SAA測定値に有意差は無かったものの、外傷発症の48時間後までにSAA値が上昇し、その後、徐々に減少していく特徴的な徴候を示しました。一方で、感染群のうち滑膜の細菌感染を再発した3頭の症例では、それに伴ってSAA測定値が上昇していく徴候が認められ、対照群ではその所見は見られませんでした。なお、感染群と対照群のいずれも、長期的な予後は良好で、71%の症例が外傷前と同レベルの競技能力まで回復したことが報告されています。

このため、四肢の外傷を呈した馬においては、滑膜以外の軟部組織の損傷によってもSAA値は上昇してしまうため、発症日や翌日において、滑膜穿孔を起こしたか否かを鑑別する目的としては、SAA測定の有用性は低いと考えられました。一方で、炎症反応が再発した時には、SAA値はすぐに上昇することから、経時的にSAA測定を行なうことで、滑膜組織の感染が再発したことを早期診断できることが示唆されています。また、SAAの測定値は、炎症発現による上昇も早く、炎症減少による下降も早いことから、外傷病変の治療が奏功しているかをモニタリングする意味でも、経時的な測定が有用であると考察されています。

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過去の文献[1]では、SAA測定値が、細菌性関節炎を早期診断するのに有用であるという知見が示されています。この研究では、大腸菌の関節注射により実験的に作成した細菌性関節炎において、感染後3~4日目までにSAA値が上昇しており(血液および関節液のいずれのサンプルでも)、その一方で、LPSの関節注射により作成した非感染性関節炎では、SAA値の上昇は認められないことが分かりました。なお、生食を注射した場合にもSAA値上昇は見られず、また、関節の細菌感染から9~10日後でも、感染前よりも有意に高いSAA値を示していました。

このため、血液または関節液のSAAを測定することで、滑膜組織の感染の有無を鑑別診断できるという考察がなされていますが、SAA値の上昇のタイミングは多様であるため、経時的な測定を行なうことが推奨されています。この研究は、実験的な関節炎モデルを用いた知見であり、関節以外への侵襲は無いことから、SAA値の上昇が、関節が感染したことの指標になりうるという結果が示されました。しかし、実際の臨床症例では、たとえ関節腔が感染していなくても、周囲の軟部組織が損傷して炎症を起こすことで、SAA値の上昇が起きてしまうことから、他の手法を用いて、関節穿孔が生じたか否かを早期診断する必要があると言えそうです(関節内に注入した生食の創傷部からの漏出試験など)。

さらに、近年の研究[2]によれば、抗生物質を筋注することでも、血中のSAA値が上昇してしまうという知見が示されており、この徴候は、抗生物質の投与開始から6日目以降に認められました。実際のところ、四肢外傷の臨床症例に対しては、外傷を発症した直後から、抗生物質の投与が行なわれるケースが殆どであり、その際には、クライアント自身が実施できる筋注での投与となる場合も多いと推測されます。このため、SAA値を用いて、滑膜感染の有無や重篤度を判定するためには、滑膜以外の組織の治癒度合いや、筋注のタイミング等を考慮して、SAA値が増減したことの有意性を見極める必要があると言えそうです。

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参考文献:
[1] Yoshimura S, Koziy RV, Dickinson R, Moshynskyy I, McKenzie JA, Simko E, Bracamonte JL. Use of serum amyloid A in serum and synovial fluid to detect eradication of infection in experimental septic arthritis in horses. Can J Vet Res. 2020 Jul;84(3):198-204.
[2] Gordon DL, Foreman JH, Connolly SL, Schnelle AN, Fan TM, Barger AM. Acute phase protein concentrations following serial procaine penicillin G injections in horses. Equine Vet J. 2022 Oct 6. doi: 10.1111/evj.13886. Online ahead of print.

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