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SAAによる馬の輸送熱の診断

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血清アミロイドエー(SAA: Serum amyloid A)は、急性期蛋白の一つで、炎症発生から36~48時間で血中に増加することから、炎症病態の早期診断に有用であると言われており、馬においても、呼吸器疾患を探知する目的などで臨床応用されています。

ここでは、長距離輸送による炎症病態を早期診断する目的で、SAA測定の有用性を評価した知見を紹介します。この研究では、2016年に三つの目的地に向けて空路輸送された122頭の競技馬において、輸送前、輸送直後、輸送24時間後での、血中SAA濃度の測定および身体検査所見との比較が行なわれました。

参考文献:
Oertly M, Gerber V, Anhold H, Chan DS, Pusterla N. The Accuracy of Serum Amyloid A in Determining Early Inflammation in Horses After Long-Distance Transportation by Air. J Equine Vet Sci. 2021 Feb;97:103337.

結果としては、空路輸送の到着時における獣医師検査によって、健康または病的状態と判断された馬群のうちで、血中SAA濃度の23μg/mL(輸送24時間後)をカットオフ値とした場合には、93%の感度、および91%の感度で、病的な馬を鑑別できることが分かりました。一方、高体温(直腸温の測定)を指標とした場合、鑑別ができたのは3%の馬に留まったことが報告されています。このため、空路輸送される馬の血中SAA濃度をモニタリングすることで、発熱症状よりも正確に病的状態の馬を検知できるという考察がなされています。

馬の空路輸送に関する他の研究[1]では、欧州から米国に空路で輸入された143頭の馬における、血中SAA濃度の測定、および、身体検査と血液検査の調査が行なわれました。この研究で調査対象となった143頭の馬のうち、109頭は健常馬、30頭が非症候性の炎症状態と判定され(血液検査での炎症性所見)、残りの4頭は病的状態と判断されました。このうち、血中SAA濃度の上昇が認められたのは、病的状態の馬のうち75%(3/4頭)のみであったため、一回のSAA測定では、空路輸送による炎症性病態を評価できないという考察がなされています。

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また、馬の陸路輸送に関する研究[2]では、長距離輸送(320km)された15頭の競技馬において、輸送前、輸送直後、輸送24時間後、および、輸送48時間後に、血中SAA濃度、ハプトグロブリン(Hp)、フィブリノーゲン、白血球数が測定されました。その結果、対照馬と比較して、長距離輸送された馬では、SAA濃度、Hp濃度、白血球数が有意に高いことが分かり、測定タイミングも有意に影響していました。また、馬の輸送ストレスでは、SAA濃度よりもHp濃度のほうが、より急激に上昇する傾向も認められました。このため、SAA等の急性蛋白の血中濃度を測定することで、馬の長距離輸送における炎症病態を評価できるという可能性が示唆されています。

さらに、馬の陸路輸送に関する他の研究[3]では、長距離輸送(1,122km)された68頭の競走馬において、輸送の直前に抗生物質(エンロフロキサシン)または生食を投与して、輸送前と輸送後における、血中SAA濃度の測定、身体検査、血液検査が行なわれました。その結果、対照馬に比較して、抗生物質を投与された馬では、直腸温、白血球数、SAA濃度が、いずれも有意に低いことが示されました。このため、輸送直前の抗生物質療法によって、輸送熱の予防が可能であると考察されており、血中SAA濃度が、炎症病態を評価するのに有用であることが示されたと言えます。

そして、近年の研究[4]では、馬における血中SAA濃度を経時的に測定するために、携帯可能なポータブル型のSAA測定機器について、その測定値の信頼性が評価されています。その結果、免疫比濁法をゴールドスタンダードとして比較した場合、ポータブル機器による馬のSAA測定値は、中程度の相関を示しており(相関係数=0.69)、良好な検量線(R^2=0.92)が得られたものの、同一検体を複数回測定したときの再現性はそれほど高くない(変動係数=16~30%)ことが分かりました。このため、ポータブル機器で馬のSAA値を測定するには、独自の正常値範囲を確立させて、同一検体を三回以上は測ることが推奨されました。

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参考文献:
[1] Middlebrooks BT, Cowles B, Pusterla N. Investigation of the Use of Serum Amyloid A to Monitor the Health of Recently Imported Horses to the USA. J Equine Vet Sci. 2022 Apr;111:103887.
[2] Casella S, Fazio F, Giannetto C, Giudice E, Piccione G. Influence of transportation on serum concentrations of acute phase proteins in horse. Res Vet Sci. 2012 Oct;93(2):914-7.
[3] Endo Y, Ishikawa Y, Arima D, Mae N, Iwamoto Y, Korosue K, Tsuzuki N, Hobo S. Effects of pre-shipping enrofloxacin administration on fever and blood properties in adult Thoroughbred racehorses transported a long distance. J Vet Med Sci. 2017 Mar 18;79(3):464-466.
[4] Kiemle J, Hindenberg S, Bauer N, Roecken M. Comparison of a point-of-care serum amyloid A analyzer frequently used in equine practice with 2 turbidimetric immunoassays used in human and veterinary medicine. J Vet Diagn Invest. 2022 Jan;34(1):42-53.

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このエントリーのタグ: 検査 呼吸器病

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