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馬の文献:ロドコッカスエクイ肺炎(Chaffin et al. 2008)

「風土性感染のある馬繁殖牧場の子馬に対するアジスロマイシンによるロドコッカスエクイ肺炎の化学予防効果」
Chaffin MK, Cohen ND, Martens RJ. Chemoprophylactic effects of azithromycin against Rhodococcus equi-induced pneumonia among foals at equine breeding farms with endemic infections. J Am Vet Med Assoc. 2008; 232(7): 1035-1047.

この研究では、子馬のロドコッカスエクイ肺炎(Rhodococcus equi pneumonia)に有用な予防法を検討するため、2005年の一年間において、風土性感染(Endemic infection)のある十箇所の馬繁殖牧場(Equine breeding farm)で生まれた338頭の子馬を、アジスロマイシン(Azithromycin)の投与郡(生後の二週間にわたって)または対照郡に無作為選択(Random selection)して、その後の経過追跡(Follow-up)による化学予防効果(Chemoprophylactic effect)の評価が行われました。

結果としては、アジスロマイシン投与郡におけるロドコッカスエクイ肺炎の発症率(Incidence)は5.3%(9/170頭)に抑えられたのに対して、対照郡におけるロドコッカスエクイ肺炎の発症率は20.8%(35/168頭)と、有意に高かった事が示されました。また、アジスロマイシンの投与に起因する副作用(Adverse effect)として知られている(Stratton-Phelps et al. JAVMA. 2000;217:68, Lakritz and Wilson. Compend Contin Educ Pract Vet. 2002;3:256)、発熱(Hyperthermia)、頻呼吸(Tachypnea)、大結腸炎(Colitis)、全腸炎(Enterocolitis)などを示す臨床症状は認められませんでした。このため、風土性感染の見られる馬繁殖牧場では、生後の二週間にわたるアジスロマイシン投与によって、子馬のロドコッカスエクイ肺炎に対する予防効果が期待できることが示唆されました。

一般的に、子馬のロドコッカスエクイ菌感染では、ワクチンが無く、高免疫血漿(Hyperimmune plasma)の予防的な投与は、経済的に実施が困難で、効能も限定的であることが知られています(Martens et al. EVJ. 1989;21:249, Hurley and Begg. Aust Vet J. 1995;72:418, Giguere et al. JAVMA. 2002;220:59, Caston et al. Vet Ther. 2006;7:361)。このため、ロドコッカスエクイ肺炎を発症する危険性が高い子馬(High-risk foals)に対しては、感染を起こす重要期間(Critical period of infection)において、抗生物質を予防的投与する方針が提唱されています。

一般的に、アジスロマイシンは、ロドコッカスエクイ菌感染に対する古典的な治療薬であるエリスロマイシンに比べて、副作用が少なく、一日一回の投与で済み、また、生物学的利用率(Bioavailability)が高いことから、高い組織内&細胞内濃度(Tissue/Intracellular concentration)が長期間にわたって維持されるという利点があります。このため、子馬に対するアジスロマイシンは、ロドコッカスエクイ肺炎に対する良好な治療作用が示されており(Jacks et al. AJVR. 2001;62:1870, Davis et al. J Vet Pharmacol Ther. 2002;25:99, Suarez-Mier et al. J Vet Pharmacol Ther. 2007;30:109)、今回の研究では、充分な予防作用もある事が示唆されました。

一般的に、抗生物質を予防的に使用する場合に心配される問題としては、耐性菌(Resistant bacteria)の発生が挙げられますが(Morley et al. JVIM. 2005;19:617)、今回の研究では、アジスロマイシンの予防的投与後における細菌培養(Bacterial culture)および感受性試験(Susceptibility test)の結果から、アジスロマイシンに対する耐性菌(ロドコッカスエクイ菌、および、その他の腸内細菌)の発現は確認されませんでした。しかし、アジスロマイシンの予防的投与が広範囲かつ長期間にわたって行われれば、耐性菌を生じる可能性は否定できない事から、その実施には細心の注意を要する、という警鐘が鳴らされています。

一般的に、子馬のロドコッカスエクイ肺炎では、病原菌への感染は、生後まもなく(Horowitz et al. JVIM. 2001;15:171)、または、二週間以内に起こる事が示唆されています(Martens et al. Proc AAEP. 1989;35:199)。また、子馬における免疫防御(Immune defense)は、生後の数週間で獲得されることから、この期間中には、ロドコッカスエクイ菌に対する感受性が高いという報告がなされており(Chaffin et al. Vet Immunol Immunopathol. 2004;100:33, Breathnach et al. Vet Immunol Immunopathol. 2006;112:199, Boyd et al. Vet Immunol Immunopathol. 2003;92:75)、今回の研究で試験されたように、生後の二週間にわたって、抗生物質を予防的投与することで、ロドコッカスエクイ肺炎の有効な予防につながると結論付けられています。

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