馬の文献:ロドコッカスエクイ肺炎(Cohen et al. 2008)
文献 - 2022年11月04日 (金)
「ケンタッキー州中部の牧場の子馬におけるロドコッカスエクイに起因する肺炎と土壌中のロドコッカスエクイ菌濃度の関係」
Cohen ND, Carter CN, Scott HM, Chaffin MK, Smith JL, Grimm MB, Kuskie KR, Takai S, Martens RJ. Association of soil concentrations of Rhodococcus equi and incidence of pneumonia attributable to Rhodococcus equi in foals on farms in central Kentucky. Am J Vet Res. 2008; 69(3): 385-395.
この研究では、子馬のロドコッカスエクイ肺炎(Rhodococcus equi pneumonia)の病因論(Etiology)を解明するため、ケンタッキー州中部の牧場の子馬における、ロドコッカスエクイに起因する肺炎の発症率(Incidence)と、土壌中のロドコッカスエクイ菌濃度(Soil concentrations of Rhodococcus equi)の関係が評価されました。
結果としては、調査が行われた2006年の一月、三月、七月のいずれにおいても、全てのロドコッカスエクイ菌および病原性のロドコッカスエクイ菌(Total or virulent Rhodococcus equi)の土壌中濃度は、ロドコッカスエクイ肺炎の発症の有無に関わらず、全ての牧場で類似した測定値を示していました。一方、菌の土壌中濃度に関わらず、ロドコッカスエクイ肺炎の発症率と、母馬&子馬の密度には有意な相関が見られました。このため、子馬のロドコッカスエクイ肺炎においては、土壌中におけるロドコッカスエクイ菌の濃度よりも、単位面積当たりの母馬と子馬の飼養頭数の多さが、その発症に深く関与している事が示唆されました。
一般的に、子馬のロドコッカスエクイ肺炎の有病率(Prevalence)と、土壌中の病原性ロドコッカスエクイ菌の濃度とのあいだには、比例関係は認められない事が報告されており(Muscatello et al. Appl Environ Microbiol. 2006;72:6152)、今回の研究でも、同様の傾向が示されました。一方、過去の文献では、大気中の病原性ロドコッカスエクイ菌の濃度は、ロドコッカスエクイ肺炎の有病率と有意に相関するという知見もあります。つまり、牧場の土がどの程度に汚染されているかよりも、その土を粉塵として吸い込む度合いによって(土が剥き出しになっている放牧地などの、埃っぽい飼養環境)、ロドコッカスエクイ肺炎の発症率に強い影響が出ると考えられています。
この研究では、ロドコッカスエクイ肺炎の発症が見られる汚染牧場においては、土壌中の病原性ロドコッカスエクイ菌の割合が、三月&七月(繁殖時期および子馬の成長時期で、ロドコッカスエクイ肺炎が多く発症する月)のほうが一月よりも有意に高い値を示していました。これは、この時期に土壌中の病原菌数が増えた結果として、ロドコッカスエクイ肺炎の発症率が増したという解釈と、子馬が多く飼養されてロドコッカスエクイ肺炎が多発した結果として、土壌中の病原菌数が増えたという解釈が成り立つため、このデータの重要性(Importance)を結論付けるのは難しいと考察されています。
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結果としては、調査が行われた2006年の一月、三月、七月のいずれにおいても、全てのロドコッカスエクイ菌および病原性のロドコッカスエクイ菌(Total or virulent Rhodococcus equi)の土壌中濃度は、ロドコッカスエクイ肺炎の発症の有無に関わらず、全ての牧場で類似した測定値を示していました。一方、菌の土壌中濃度に関わらず、ロドコッカスエクイ肺炎の発症率と、母馬&子馬の密度には有意な相関が見られました。このため、子馬のロドコッカスエクイ肺炎においては、土壌中におけるロドコッカスエクイ菌の濃度よりも、単位面積当たりの母馬と子馬の飼養頭数の多さが、その発症に深く関与している事が示唆されました。
一般的に、子馬のロドコッカスエクイ肺炎の有病率(Prevalence)と、土壌中の病原性ロドコッカスエクイ菌の濃度とのあいだには、比例関係は認められない事が報告されており(Muscatello et al. Appl Environ Microbiol. 2006;72:6152)、今回の研究でも、同様の傾向が示されました。一方、過去の文献では、大気中の病原性ロドコッカスエクイ菌の濃度は、ロドコッカスエクイ肺炎の有病率と有意に相関するという知見もあります。つまり、牧場の土がどの程度に汚染されているかよりも、その土を粉塵として吸い込む度合いによって(土が剥き出しになっている放牧地などの、埃っぽい飼養環境)、ロドコッカスエクイ肺炎の発症率に強い影響が出ると考えられています。
この研究では、ロドコッカスエクイ肺炎の発症が見られる汚染牧場においては、土壌中の病原性ロドコッカスエクイ菌の割合が、三月&七月(繁殖時期および子馬の成長時期で、ロドコッカスエクイ肺炎が多く発症する月)のほうが一月よりも有意に高い値を示していました。これは、この時期に土壌中の病原菌数が増えた結果として、ロドコッカスエクイ肺炎の発症率が増したという解釈と、子馬が多く飼養されてロドコッカスエクイ肺炎が多発した結果として、土壌中の病原菌数が増えたという解釈が成り立つため、このデータの重要性(Importance)を結論付けるのは難しいと考察されています。
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