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馬の文献:ロドコッカスエクイ肺炎(Giguere et al. 2010)

「マクロライド系抗生物質およびリファンピンへの耐性を持つロドコッカスエクイ菌の発生率の判定と、抗生物質耐性のロドコッカスエクイ菌に感染した子馬における治療成績」
Giguere S, Lee E, Williams E, Cohen ND, Chaffin MK, Halbert N, Martens RJ, Franklin RP, Clark CC, Slovis NM. Determination of the prevalence of antimicrobial resistance to macrolide antimicrobials or rifampin in Rhodococcus equi isolates and treatment outcome in foals infected with antimicrobial-resistant isolates of R equi. J Am Vet Med Assoc. 2010; 237(1): 74-81.

この研究では、子馬のロドコッカスエクイ感染(Rhodococcus equi infection)の病態把握のため、1997~2008年にかけて、マクロライド系抗生物質(Macrolide antimicrobials: Azithromycin, Erythromycin, Clarithromycin)およびリファンピン(Rifampin)への耐性を持つロドコッカスエクイ菌の発生率の判定(Determination of the prevalence)と、抗生物質耐性(Antimicrobial-resistant)のロドコッカスエクイ菌に感染した子馬における、治療成績(Treatment outcome)の評価が行われました。

結果としては、マクロライド系抗生物質およびリファンピンへの耐性を持つロドコッカスエクイ菌の発生率は3.7%(12/328検体)で、このうち、二種類以上の抗生物質に耐性を持つ菌は、63.2%であった事が示されました。そして、抗生物質耐性のロドコッカスエクイ菌に感染した子馬における生存率(Survival rate)は25%(2/8頭)に留まり、抗生物質感受性のロドコッカスエクイ菌に感染した子馬における生存率70%(55/79頭)よりも、有意に低かった事が示されました。さらに、抗生物質耐性のロドコッカスエクイ菌に感染した場合には、斃死または安楽死(Death/Euthanasia)となる確率が、七倍近くも高くなる(オッズ比:6.9)ことが報告されています。このため、ロドコッカスエクイ感染が疑われる子馬に対しては、臨床症状や画像所見による推定診断(Presumptive diagnosis)に偏り過ぎることなく、必要に応じて適切な細菌培養(Bacterial culture)および抗生物質の感受性試験(Antibiotics susceptability test)を実施して、有効な治療薬の選択に努めることの重要性を、再確認させるデータが示されたと言えます。

一般的に、人間の医学領域における結核菌(Mycobacterium tuberculosis)では、複数の抗生物質への耐性を持つ菌の発生率(2004年の調査)は4%である事が知られており(Zignol et al. J Infect Dis. 2006;194:479)、また、子馬から分離されたロドコッカスエクイ菌では、リファンピンへの耐性を持つロドコッカスエクイ菌の発生率は1.6%であった事が報告されています(Takai et al. J Clin Microbiol. 1997;35:1904)。そして、体外実験(In vitro experiments)では、ロドコッカスエクイ菌のうち、リファンピンへの耐性を持つのは十万個~百万個にひとつである事が知られていますが(Fines et al. J Clin Microbiol. 2001;39:2784)、エリスロマイシンとリファンピンを併用した場合には、リファンピンへの耐性を持つロドコッカスエクイ菌の発生を減退できるという知見も示されています(Nordmann and Ronco. J Antimicrob Chemother. 1992;29:383)。

この研究では、マクロライド系抗生物質およびリファンピンへの耐性を持つロドコッカスエクイ菌においては、その全てが、Ciprofloxacin、Gentamicin、Imipenem、Linezolid、Moxifloxacin、Vancomycinに感受性を示しており、また、これらの菌の75%においては、Tetracycline、Chloramphenicol、Trimethoprim-Sulfamethoxazoleへの感受性も認められました。このため、これらの抗生物質が代替的な治療薬(Alternative therapeutic drugs)になる可能性がある反面、培養分離された菌への感受性試験の結果が、必ずしも実際の患馬に対する治療効果を保証するものではない事が知られています。過去の文献では、細胞培養によってGentamicinへの感受性が確かめられた17頭の子馬の肺炎に対して、Gentamicin投与が実施されたものの、治療は奏功しなかったという知見も報告されています(Sweeney et al. Vet Microbiol. 1987;14:329)。

この研究では、1997~2008年にかけての調査期間のうち、年代が新しくなるほど、抗生物質への耐性を持つロドコッカスエクイ菌の発生率が増加していく傾向が認められ、これは、マクロライド系抗生物質およびリファンピンの併行投与が選択される症例が増えるに連れて、これらの治療薬に対する耐性菌が発生し易くなっている実状を反映するものである、という解釈が成り立ちます。しかし、今回の研究は、前向き試験(Prospective study)ではないため、細胞培養および感受性試験を行うという選択は、それぞれの獣医師に判断に任されていた事から、(1)耐性菌の重要性が認識されるにつれて、検査される子馬の数も増えた、(2)超音波検査(Ultrasonography)によるスクリーニングが可能になるにつれて、画像診断によって推定診断が下されるケースが増えて、重篤な病態を呈した子馬の検体のみが検査に回される割合が増えた、等の要因によって、見た目の耐性菌発生率が上昇した可能性もある、という考察がなされています。

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