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馬の半腱様筋腱切断術

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馬の半腱様筋腱の切断術についてまとめてみます。あくまで概要解説ですので、詳細な手技については成書や論文を確認して下さい。

馬の後肢に発症する機械性跛行として半腱様筋の線維化筋症(Fibrotic myopathy)があり、歩幅の頭側相で後肢が急激に尾側引張されることで、特徴的な雁様踏着という歩様を示します。この疾患の治療法としては、線維化組織の切除や筋切除術も可能ですが、より侵襲性の少ない術式として、線維化している半腱様筋の腱を切ってしまう方法があります。

この手術は、全身麻酔下の横臥位で実施され、罹患後肢を下にすることで、下腿部の内側部にアプローチします。ただ、馬の気性によっては、立位で施術することも可能です[1]。半腱様筋腱を切断する箇所は、脛骨の尾内側かつ伏在静脈の尾側の部位で、この腱が腓腹筋の上を通過している箇所(半腱様筋の脛骨付着腱)になります。下腿部の内側を剃毛して、術部の消毒とドレーピングを施した後は、半腱様筋腱の真上に8cm長の皮膚切開創を設けて、皮下識と大腿筋膜を切開して、腱を露出させます(上図B)。

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その後は、ケリー鉗子(曲)を半腱様筋腱の裏側に通過させることで、腱を深部組織から剥離させてから切断します(上図C)。この際、約3cmの腱組織を切除しておくことで、歩様異常の再発を防いだり遅延させることが出来ます。閉創では、筋膜を吸収糸で連続縫合してから、皮膚を非吸収糸で単純結節縫合します。なお、エコー画像を用いることで、より侵襲性を抑えながら半腱様筋の脛骨付着腱を切断(上写真)する術式も提唱されています[2]。

脛骨付着腱を切断した後は、術中に罹患後肢を前方に引き出すことで、半腱様筋の踵骨付着腱が非常に強く緊張してしまう場合には、この腱も一緒に切除する必要があります。このため、踵骨付着腱の真上に3~4cmの皮膚切開創を設けて(最初の切開創より尾側かつ少し遠位側になる位置:下図の点線と矢印)、腱を深部組織から剥離したあとに切断します。閉創は、上記と同様に実施します。

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半腱様筋腱を切断(切除)した後は、すぐに曳き馬運動を開始することで、切断箇所が線維組織で再結合してしまうのを予防します[3-5]。術後の歩様改善に関しては、単に筋肉内の線維化組織を切除するよりも、腱を切断するほうが治療効果は高いものの、完全に健常な歩様までは回復しないこともあります[1,5,6]。また、退行性神経障害が病因であった症例では、歩様異常を再発する確率が高いことが知られています。

Photo courtesy of Equine Surgery: Jorg A Auer, John A Stick, Jan M Kümmerle, Timo Prange; 5th eds, 2019, Saunders (ISBN: 978-0-323-48420-6); Vet Surg. 2018 Apr;47(3):350-356; Vet Surg. 2021 May;50(4):843-847.

参考文献:
[1] Suarez-Fuentes DG, Tatarniuk DM, Caston SS, Kersh KD, Gillen AM, Hays AM. Tenotomy of the semitendinosus muscle under standing sedation versus general anesthesia: Outcomes in 20 horses with fibrotic myopathy. Vet Surg. 2018 Apr;47(3):350-356.
[2] Zetterström SM, Boone LH, Weatherall KM, Caldwell FJ. Minimally invasive tenotomy of the tibial insertion of the semitendinosus muscle: An ex vivo study in horses. Vet Surg. 2021 May;50(4):843-847.
[3] Magee AA, Vatistas NJ. Standing semitendinous myotomy for the treatment of fibrotic myopathy in 39 horses (1989-1997). Proc Am Assoc Equine Pract. 1998;44:263–264.
[4] Pickersgill CH, Kriz N, Malikides N. Surgical treatment of semitendinosus fibrotic myopathy in an endurance horse: management, complications and outcome. Equine Vet Educ. 2000;12:242–246.
[5] Janicek J, Lopes MA, Wilson DA, Reed S, Keegan KG. Hindlimb kinematics before and after laser fibrotomy in horses with fibrotic myopathy. Equine Vet J Suppl. 2012 Dec;(43):126-31.
[6] Bramlage LR, Reed SM, Embertson RM. Semitendinosus tenotomy for treatment of fibrotic myopathy in the horse. J Am Vet Med Assoc. 1985 Mar 15;186(6):565-7.




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