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馬の抜歯方法による予後の違い

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馬の歯科疾患において、保存療法で難治性の場合には、抜歯による根治療法が選択されることもあります。ただ、馬の歯は、歯根が非常に長いため、歯の抜き方によっては、その後に問題が生じる可能性もあります。

ここでは、馬の臼歯の抜歯方法の違いが、治療成績や合併症に与える影響を評価した知見を紹介します。この研究では、1997~2013年にかけて、137頭の馬に実施された162箇所の臼歯の抜歯処置における、医療記録の回顧的調査、および、オッズ比(OR)の算出による合併症の危険因子の解析が行なわれました。

参考文献:
Caramello V, Zarucco L, Foster D, Boston R, Stefanovski D, Orsini JA. Equine cheek tooth extraction: Comparison of outcomes for five extraction methods. Equine Vet J. 2020 Mar;52(2):181-186.

この研究では、臼歯を抜歯する術式として、(1)口腔側から鉗子で歯を引き抜く方法、(2&3)円鋸術を介して歯根側から叩き出す方法(上顎骨と下顎骨)、(4)骨開窓術を介して歯根側から歯を叩き出す方法、(5)骨切術を介して側面から歯を摘出する方法、という5つの抜歯方法が比較されました。

結果としては、全体としての抜歯の成功率は71%であり、口腔から引き抜く方法以外は、ほぼ全頭が全身麻酔下で施術されました。そして、抜歯後の合併症の発生率や内訳を見てみると(下表)、口腔から引き抜く方法が最も合併症が少なく(発生率:20%)、その中では、副鼻腔炎が多く見られました。その一方で、骨開窓術から歯根を叩き出す方法が最も合併症が多く(80%)、内訳としては、副鼻腔炎や瘻管形成、肉芽形成の遅延などが認められました。また、筆者の予測に反して、骨切術を介して側面から歯を摘出する方法でも、合併症の発生率が五割を超えていました。

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このため、馬の抜歯を行なうときには、可能な限り、口腔側から罹患歯を掴んで引き抜く手法を実施することが推奨されました。また、近年では、最小侵襲性の経頬壁アプローチによる歯内螺子抜歯法や[1]、歯冠部分除去術による臼歯の抜歯法も提唱されていますが[2]、これらも、侵襲性の高いアプローチ法(円鋸、骨開窓、骨切術)を回避して、口腔側から歯を摘出することの利点を追求した術式であると言えます。ただ、今回の研究では、口腔側から引き抜く術式においても、九頭に一頭は副鼻腔炎の合併症を発生していたことから、術後の創部洗浄や抗生物質投与によって、二次性副鼻腔炎の予防を図ることの重要性が再確認されました。

この研究では、骨開窓術を介して歯根側から罹患歯を叩き出す手法では、他の方法と比較して、隣りの歯を損傷するリスクが十倍以上も高くなり(OR=11.5)、また、副鼻腔炎を起こすリスクも六倍以上高くなる(OR=6.2)という結果が示されました。ただ、骨開窓術が選択された症例では、術前の時点で病態が慢性化していて、既に副鼻腔炎を起こしているケースが半分程度あったことから、これによって、周辺の歯が虚弱化して医原性損傷を起こし易くなったり、術後も副鼻腔炎が継続していたと推測され、必ずしも、骨開窓術のデメリットと見なされる訳ではないと考察されています。

この研究では、骨切術を介して側面から歯を摘出する方法では、他の方法と比較して、顔面神経麻痺を起こすリスクが二十倍以上も高くなる(OR=24.9)という結果が示されました。これは、頬部筋層を切開する術式であるため、物理的侵襲や術後の創部周囲炎症によって、神経損傷や神経炎を続発しやすかったためと推測されます。

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参考文献:
[1] Langeneckert F, Witte T, Schellenberger F, Czech C, Aebischer D, Vidondo B, Koch C. Cheek Tooth Extraction Via a Minimally Invasive Transbuccal Approach and Intradental Screw Placement in 54 Equids. Vet Surg. 2015 Nov;44(8):1012-20.
[2] Rice MK, Henry TJ. Standing intraoral extractions of cheek teeth aided by partial crown removal in 165 horses (2010-2016). Equine Vet J. 2018 Jan;50(1):48-53.

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